『『Devil May Cry』』
――そのまま三人は、衛非地区の街中を歩いていた。
福福があれこれと街の説明をしながら先導し、アキラとダンテはそれを聞きつつ周囲の景色を眺めている。そんな時だった。
「……ん?」
少し先の通りで、何やら騒ぎが起こっている。見ると、作業着姿の労働者らしき人々と、スーツを着た企業関係者らしき男たちが言い争っていた。どうやら、何かの事故を巡って話をしているらしい。
しばらくすると、労働者たちは互いに何かを話し合い、やがて散り散りになってその場を離れていった。
「……あれぇ?」
福福が首を傾げる。
「あの騒ぎはなんだったんでしょうね? 今にも取っ組み合いになりそうな剣幕でしたけど……」
少し考えた後、福福は先ほど聞こえてきた言葉を思い出す。
「賠償金、とか言ってましたか? なにか事故でもあったんでしょうか……」
「そういえば」
アキラも騒ぎのあった方向を見ながら言う。
「さっき助けてくれた船頭さんも言っていたな。最近、ホロウの中にある輝磁の生産エリアで事故があったと……」
「なるほど」
ダンテが腕を組む。
「さっきの連中が、その関係者ってわけか」
「ああ」
アキラが頷く。
「あの人たちが関係者のようだな。TOPSに賠償がどうのと言っていた気がする」
そして、先ほどの会話を思い返す。
「TOPS側の責任者はダミアンと言ったか? 何やら後ろ暗いところがありそうだな」
「はえ~」
福福が感心したように目を丸くする。
「鋭いですねぇ! まあ、TOPSの子会社なんて、いかにも悪いことしてそうですけど~……」
そして、ぐっと拳を握る。
「あたしなら、そんな悪い奴らにはドロップキックで目にもの見せてやります! 『燃えよタイガー』の主人公みたいに!」
「『燃えよタイガー』か」
ダンテが反応する。
「最近見たな」
「『燃えよタイガー』だって?」
アキラも驚いたように振り返る。
「その映画なら僕も知っている。主人公が修行を積んだトラのシリオンで……なんという名前だったかな?」
「たしか『虎威威』みたいな名前じゃなかったか?」
「そうですっ!」
福福が嬉しそうに頷く。
「小さい頃は憧れでしたねぇ~……」
しかし、少しすると福福は苦笑した。
「でも、後になって知ったんですけど……威威を演じてたのはトラじゃなくって、ネコのシリオンだったんですよねぇ……」
「そうなのか?」
ダンテが意外そうに眉を上げる。
「しょうがないんですけどね。あたしたちトラのシリオンって、ほんとに数が少ないので……」
「なるほどな」
ダンテは納得したように頷く。
すると、アキラが福福を見る。
「福福先輩はトラのシリオンだったのか……」
「はいっ!」
「ほら……苗字に入ってる『橘』って、オレンジのことだろう? だから僕はてっきり……」
「――ああっ!」
福福が勢いよく振り向く。
「聞き捨てなりませんよっ!」
「え?」
「ひょっとして福福のこと、茶トラ猫ちゃんだと思ってましたね!?」
「いや、その……」
アキラが言葉に詰まる。
その横で、ダンテが何でもないように口を開いた。
「そうか? 俺は会った時からカワイイ虎ちゃんだと思ってたが」
「……!」
福福の耳がぴくっと動く。
「カワイイは聞き捨てならないですけど、虎のシリオンだってわかってくれたんですね!」
なぜか嬉しそうな福福。
アキラはそんな彼女を見ながら、苦笑する。
「茶トラのシリオンだって、すっごくかわいいんだけどな」
「……!」
「福福先輩? どうもよからぬ偏見があるようだね」
「えっ……?」
福福の表情が固まる。
「ええっ!?」
慌てて両手を振る。
「そ、そういうことでは……ないんですけど……」
「じゃあ、どういうことなんだ?」
ダンテが面白そうに尋ねる。
「えっと……」
福福はしばらく考え込む。
「でも茶トラ猫ちゃんはぐうたらで……えっと、あんまり強くないし……」
「…………」
「あたしとはタイプが違うって言うか……」
そこまで言ったところで、福福は咳払いをする。
「コホン!」
そして、妙に真剣な顔で胸を張った。
「とにかく、茶トラの猫ちゃんにはどんな偏見もありません!」
「……」
「以上! これが姉弟子としての結論ですっ!」
「結論になってるのか、それ?」
ダンテが苦笑する。
「なってます!」
福福は勢いよく頷いた。
「ほらほら、茶トラの猫ちゃんはもういいですから、早く適当観に戻りましょう! みんな待ってますよっ!」
そう言って、福福は二人を急かすように歩き始めた。
「おいおい、話を逸らしたな」
ダンテが笑いながら後を追う。
「してません!」
「してるだろ」
「してませんったら!」
そんなやり取りをしながら歩いていると、やがて三人の前に大きな建物が見えてきた。
「あっ!」
福福が指を差す。
「お弟子さん達、あそこが適当観の正門ですっ!」
三人の前にそびえているのは、古風で重厚感のある門だった。長い年月を経てきたことが一目で分かるほどの年代物だが、決して古びているわけではない。むしろ、その佇まいには独特の威厳があった。
「……なるほど」
アキラが門を見上げる。
「ここが……」
「適当観」
ダンテも門を眺める。
「随分と立派じゃねぇか」
「でしょう?」
福福が胸を張る。
アキラは改めて門の向こうを見る。その先には、さらに大きな建物が続いている。
「なんだか、思っていたより本格的だな」
「もちろんです!」
福福が笑う。
「これから修行する場所なんですから!」
「修行か……」
ダンテがぼそりと呟く。
「……」
福福が振り返る。
「どうしました?」
「いや」
ダンテは何でもないように笑った。
「何でもねぇよ」
――――
――適当観。
門をくぐったアキラ、ダンテ、福福の三人は、そのまま敷地の奥へと進んでいった。
古風な建物がいくつも並び、その間を石畳の道が伸びている。長い年月を感じさせる佇まいではあるものの、決して寂れているわけではなかった。
アキラは周囲を見回しながら歩く。
福福が嬉しそうに振り返った。
「じゃじゃーん!」
両手を大きく広げる。
「ここが天下に名を轟かせる、あたしたちの『適当観』ですっ!」
福福は満足そうに胸を張った。
その時だった。
「…………」
ダンテがふと足を止める。
「ん?」
少し先。
建物の屋根の上に、二つの人影があった。
一人は、鉄笠を被ったパンダのシリオン。
もう一人は、眼鏡をかけた青年だった。
二人は何やら屋根の端に立ち、さらに上の屋根へ向かって手を伸ばしている。
「……何してるんだ?」
ダンテが首を傾げる。
「え?」
福福も二人の姿に気づいた。
「あっ!」
そして、元気よく声を上げる。
「潘さん!」
屋根の上にいたパンダが振り返る。
「釈淵さん! 見てくださ――」
「シーッ!」
釈淵が慌てて人差し指を口元へ当てる。
潘も人差し指を口元へ当てる
「……!」
福福は慌てて口を塞ぐ。
「むぐっ……!」
しかし、潘はさらに両腕を大きく交差させ、バツ印を作った。
そして釈淵は、無言のまま上を指差す。
「……?」
アキラたちは視線を上へ向けた。
「…………」
そこには、一匹の猫がいた。
猫は建物の屋根の端に必死にしがみついている。小さな爪を屋根へ立て、なんとか落下を防いでいた。
「……!」
しかし、その前足が少しずつ滑っていく。
「ニャ……」
ズルッ。
「ニャアッ!?」
「――あっ!」
猫が屋根から滑り落ちた。
そのまま、二人が乗っていた屋根を転がっていく。
「危ない!」
アキラが叫ぶ。
猫は屋根の端まで転がり、そのまま地面へ落下しようとしていた。
その瞬間。
潘、釈淵、福福の三人が同時に動いた。
まるで示し合わせていたかのように、一瞬で猫の落下地点へ移動する。
潘が両手を構える。
釈淵も手を差し出す。
福福も両腕を広げる。
三人の手が、ほぼ同じ場所へ重なった。
「……」
猫が落ちてくる。
アキラは息を呑んだ。
その時だった。
「……」
ダンテの口元に、僅かな笑みが浮かんだ。
その目から、先ほどまでの気楽な雰囲気が消える。
次の瞬間。
ダンテの姿が消えた。
「――!?」
アキラが目を見開く。
速い。
潘たちが猫を受け止めようとするよりも早い。
ダンテは地面を蹴り、一気に三人のもとへ飛び込んだ。
「なっ!?」
釈淵が驚く。
ダンテは三人が重ねた手を踏み台にした。
「悪いな!」
「えっ!?」
福福が声を上げる。
その瞬間、ダンテの身体がさらに高く跳ね上がった。
落下してくる猫へ向かって手を伸ばす。
「よっと!」
――ぱしっ。
猫の身体をしっかりと抱き止める。
「ニャッ!?」
ダンテは猫を抱えたまま、その勢いを殺さず空中を突き抜けるように前へ飛んだ。
そして。
スタッ!
建物の前へ着地する。
靴底を地面へ擦りつけながら数メートル滑り、そのまま停止した。
「……ふぅ」
ダンテは腕の中の猫を見る。
「怪我はなさそうだな」
「ニャ……」
猫が小さく鳴く、その時。
「ダンテ」
いつの間にか、ダンテの隣に一人の人物が立っていた。
「お?」
ダンテが横を見る。
「儀玄か」
儀玄はダンテから猫を受け取ると、すぐにその身体を確認する。
「…………」
しばらく確認した後、静かに頷いた。
「問題ないようだ」
そこへ福福が駆け寄ってくる。
「猫ちゃん、大丈夫ですか?」
「ああ」
儀玄は猫を抱いたまま答える。
「怪我はない」
「よかったぁ……」
福福が胸を撫で下ろす。
アキラも二人のもとへ駆け寄ってきた。
「あ……師匠!」
儀玄はアキラを見る。
「到着早々バタバタしてすまないな」
「――ようこそ、適当観へ。」
――――
儀玄は腕の中で騒ぐ猫を見下ろした。福福も猫を覗き込む。
「どこから入り込んじゃったんでしょう? このへんのお家で飼われてたとか……?」
「まずは、こいつが落ち着ける場所を探す。近所に尋ねて回るのはそれからだ」
儀玄はそう言うと、福福へ視線を向けた。
「福福、アキラを皆に紹介してやれ。ついでに適当観の案内も頼む」
「任せてください、お師匠さま!」
福福が元気よく返事をする。
「私はこいつをどうにかしてくる。アキラ、ダンテ、また後で探してくれ」
「了解だ、師匠」
「了解」
儀玄は猫を抱えたまま、そのまま中庭の方へ歩いていった。
「それじゃあ!」
福福がパンッと手を叩き、アキラとダンテの方へ振り返る。
「ご紹介しますねっ! こちらが、新しく雲嶽山に加わるアキラさんとダンテさんですよ~!」
そして、二人を指差した。
「それでもってお弟子さん、こちらの二人は兄弟子の葉釈淵さんと潘引壺さんですっ!」
「初めまして、兄弟子のみなさん」
アキラが一歩前へ出る。
「僕はアキラだ。今後はご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願いするよ」
「おやおや」
眼鏡の青年――葉釈淵が穏やかに笑う。
「師匠がおっしゃっていた新参の方々ですね。百聞は一見に如かずとは、このことです。それに、先ほどの身のこなしも見事でしたよ」
「俺はダンテだ」
ダンテが軽く手を上げる。
「さっきはナイス連携プレイだったな!」
「おう!」
鉄笠を被ったパンダのシリオン――潘引壺が豪快に笑う。
「いいぞお、活きのいい新人だあ!」
そのままダンテとアキラの肩を叩く。
「さあさあ、腹が減ってるだろ? 何か食べるか? この兄弟子が腕を振るってやろう! 何を隠そう、雲嶽山の台所を預かる潘引壺とは、おれのことだ! きっと、お弟子くん達の胃袋をうならせてみせるからな!」
「ほう」
ダンテの目が少し輝く。
「食べたいものがパッと浮かばないなら、チャーシューまんなんてどうだ? おれの作るやつは絶品だぞお!」
「チャーシューまんか……」
ダンテが少し考える。
「食べたことないな」
「やったあ!」
なぜか福福まで喜ぶ。
「潘さん! あたしは角煮と、手羽先のから揚げと、それとえっと……」
「姉弟子さん」
釈淵が眼鏡を押し上げる。
「潘は『お弟子さんに』作ってあげると言ったんですよ。お腹がすいているなら、備蓄の乾パンはどうですか。そろそろ賞味期限が切れそうなんです」
「へっ?」
福福の動きが止まる。
「あはは……そうですよねぇ~。やっぱり、お弟子さんが食べたいやつにしましょう!」
「僕は乾パンでも構わないよ……」
アキラが苦笑する。
「ほら。こういうときは、やはり姉弟子を優先するべきだろう?」
「はっはっは……」
釈淵が笑う。
「わざわざ苦しみを背負わずともいいんですよ。あんな美味しくないものは、姉弟子さんにお任せしましょう」
「ガハハハ!」
潘も腹を抱えて笑う。
「福姐なら、鼻を洗濯バサミでつまんででも食べようとするからなあ!」
「もう、ふたりとも……!」
福福が頬を膨らませる。
「福福を何だと思ってるんですか!」
「なんにせよ、今は堪えどころですね、姉弟子さん」
釈淵が苦笑しながら続ける。
「お弟子さんと師匠はホロウから出てきたばかりなんですから。滋養のある食べ物と休息が必要です」
そして、ふと表情を真剣なものへ変えた。
「とはいえ、あの飛行船にはかつて僕たちも乗ったのですが……どうして今になって故障なんて?」
「……」
「はあ……」
釈淵がため息をつく。
「師匠は前も何やら保険に入っていましたが、まさか……わざとではないでしょうね?」
「おいおい」
ダンテが眉を上げる。
「儀玄が?」
「あの人が保険金詐欺のために一計を案じていたんだとしたら……ええ、辻褄は合いますから」
「兄弟子ぃ!」
潘が慌てて割って入る。
「また当てずっぽうで縁起でもないことを! おれたち雲嶽山が貧乏だからって、サギをやるほどじゃないでしょうが!」
「ははは……大丈夫だ、お弟子くん」
潘は笑いながらアキラを見る。
「兄弟子はちょいと用心深すぎるところがあってな……。とはいえ、本当のところ、二人に何があったんだ?」
「さっきは外だったから言わなかったけれど……」
アキラは少し間を置いてから答える。
「実は、乗っていた飛行船が襲撃されたんだ」
「襲われたぁ!?」
福福が目を見開く。
「じゃあ、事故なんかじゃなかったんですね?」
「ああ」
ダンテが頷く。
「儀玄が墜落した飛行船を調べたところ、ロケットランチャーのようなもので撃ち落とされた形跡があったらしい」
「ゆ、許せません~!」
福福が拳を握る。
「あたしたち雲嶽山を襲おうだなんて……! 誰の仕業かわかったら、福福がきつ~いお仕置きをしてあげますっ!」
「そうですね……」
釈淵も頷く。
「雲嶽山の調査を、意図的に妨害しようとした可能性も否定できません」
眼鏡の奥の目が細くなる。
「お弟子さん。師匠から聞いたのですが、あなたはかの有名なプロキシ『パエトーン』だとか。そして、そちらのお弟子さんは悪魔狩りだとか」
釈淵はダンテを見る。
「あなた達が雲嶽山に加わる以上、調査にめざましい進展があることは自明ですからね。その結果をよしとしない何者かが、あなたを狙ったというのは大いにあり得ます」
「なるほどな」
ダンテが腕を組む。
「誰かさんにとって、俺たちが邪魔だったってわけか」
「ただ……」
釈淵は少し考える。
「今回の調査は、市長が秘密裏に手配したものだったはずですから。情報が漏れた経緯は、どうも引っ掛かりますね。当初の計画では、あなたたち兄妹ふたりで衛非地区に向かってもらう手はずでした。直前で師匠自ら護衛を買って出なかったら、どうなっていたか……考えたくはありませんね」
「そうだったのか……」
アキラは儀玄が向かった方向を見る。
「師匠がついてきてくれて助かった」
「俺も一応いたが、キャロットは持ってなかったからな。助かったぜ」
ダンテが肩をすくめる。
「そうだそうだ」
潘が頷く。
「お師さんが占いで悪い兆しを見たらしくてな……それで自分で行くと言い出したんだぞ。お師さんの占いは、相も変わらずよく当たるもんだ……!」
「……」
アキラは少し驚いたように目を瞬かせる。
「とはいえ、この騒ぎで、おれたち雲嶽山が適当観に戻ったことは方々にバレちまったろうからなあ……」
「大丈夫ですよ、潘」
釈淵が落ち着いた声で答える。
「僕たちの師匠がここにいる限り、小悪党が手を出してくることはないはずです」
「適当観に、戻る?」
アキラが首を傾げる。
「みんな普段から、ここで寝泊まりしているわけではないと?」
「そうなんです」
福福が頷く。
「雲嶽山の総本山はここじゃないんです。昔からある拠点のひとつってだけで……」
少し寂しそうに笑う。
「旧都陥落があってから、みんなあんまり来なくなっちゃったんですよねぇ~……。だから今回、市長さんからラマニアンホロウの調査を依頼されて、みんなでこっそり戻ってきたんです」
福福は周囲を見回す。
「これでもできるだけ準備したんですが、お泊まりするにはちょっと質素すぎるかもですねぇ……。ほんと、お弟子さん達には申し訳ないです」
「そうだったのか……」
アキラは首を横に振る。
「大丈夫。僕は寝る場所にこだわりがないからね」
そして、福福と釈淵、潘を見る。
「姉弟子さんも兄弟子さんも、準備してくれてありがとう」
「俺はソファーでも寝れるぜ」
福福が思い出したように口を開く。
「あたしたち以外にも弟子がいるんですけど……今はみんな調査で出払っちゃってるんです。またこんど、ご紹介しますねっ!」
「それは楽しみだな」
アキラが頷く。
「どんな人たちなのか、気になるよ」
「きっと面白い奴らだぜ」
ダンテも笑う。
「そうだな」
潘が腕を組む。
「福姐……時間も時間だし、ぼちぼちお弟子くん達には休んでもらわないか? おれも何か作ってくるとするよ」
「あっ、それもそうですねえ」
福福が頷く。
「そういうわけで、お弟子さん達。いつでも横になってくれていいですよ!」
「ありがとう、潘さん」
アキラは礼を言う。
「けど、お腹は減っていないんだ……ご飯は大丈夫だよ。適当に散歩でもして、このへんに慣れておこうかな」
「おっと」
その横で、ダンテが腹をさする。
「俺は結構腹が減ってるぜ」
潘の目が輝いた。
「おお!」
鉄笠の下から嬉しそうな表情が覗く。
「そうこなくっちゃな、お弟子くん!」
ダンテの肩をがっしり掴む。
「さあ、何が食いたい? チャーシューまんか? 角煮か? それとも――」
「ピザ」
「…………」
潘が固まる。
「……ピザ?」
「ああ。できればオリーブ抜きで」
「おれの料理を差し置いて、ピザだとぉ!?」
潘が大げさに頭を抱える。
「くっ……! これは兄弟子としての威信に関わるぞお!」
ダンテは笑う。
「でも、チャーシューまんも気になるぜ」
「おおっ!」
潘が一気に立ち直る。
「なら話は早い!」
両手を打ち合わせる。
「まずはチャーシューまんを食わせて、それからピザの話をしようじゃねぇか!」
「いいねぇ」
ダンテが笑う。
「頼むぜ、兄弟子」
「任せろお!」
福福はその様子を見ながら、楽しそうに笑った。
「なんだか、もうすっかり馴染んでますねぇ」
アキラも小さく笑う。
「本当だね」
こうして、ラマニアンホロウから戻ってきた二人の新たな門下生は、雲嶽山の仲間たちとの最初の時間を過ごし始めるのだった。