悪魔も泣き出す新エリー都   作:オムライスα

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Wanna know the name?


『『Devil May Cry』』


第三十八話 解悩水

 

 

ダミアンが去ったあと、適当観には何とも言えない空気が漂っていた。

 

誰もすぐには口を開かなかった。ダミアンが残していった資料。そして、これまでロアから聞かされていた話。その二つを並べて考えてみると、どうにも辻褄の合わない部分が多すぎる。

 

やがて、アキラが口を開いた。

 

「……結論を急ぐべきじゃないな。とにかく、まずはダミアンのくれた資料を調べよう。依然として、彼が嘘をついている可能性だってあるんだ」

 

「お兄ちゃん、私に任せて! システムの調整が終わったら、ダミアンの情報が信頼できるか検証してみる」

 

「うむ。それがいい。その間、こっちは治療を受けている人間をあたるぞ。何かしら収穫があるだろう」

 

儀玄も頷いた。

 

「はい、お師匠さま! 福福は近所で聞き込みをしてきます!」

 

「ようし、おれも知り合いに聞いてくるぞ! 任しといてくださいよ!」

 

福福に続いて、潘も拳を握る。

 

「僕も行こう。ついでに、ロア先生とエリックさんに、どういうことなのか直接聞いてみるよ」

 

アキラが立ち上がる。

 

「俺もアキラに着いていくぜ」

 

ダンテも腰を上げた。

 

儀玄は一行を見回し、静かに息を吐く。

 

「ああ……既にあらゆるものが絡まりまくっているからな。はっきりさせるぞ」

 

こうして、皆はそれぞれの調査へと出かけていった。

 

 

――――

 

 

ロア先生は、どうやら何かを隠している。

 

そしてダミアンの話によれば、彼が労働者たちに提供してきた「解悩水」にも問題があるかもしれない。

 

その真偽を確かめるため、ダンテとアキラは澄輝坪へ向かっていた。二人は道行く労働者たちに声をかけ、「解悩水」について聞き込みを続けている。

 

そんな中だった。

 

「……ん?」

 

アキラがふと足を止める。

 

少し離れた場所に、見覚えのある人物が立っていた。男は周囲を見回しながら、誰かを探しているようだった。

 

「……パロのやつ、どこ行きやがった? まさかホロウに入ったんじゃねぇだろうな……」

 

「狛野……真斗くん、だったかな。どうしてここに? 誰か探しているのかい?」

 

アキラが声をかける。

 

「押忍、アキラくん。ダンテくん。パロのやつ見なかったっスか? なんか連絡取れねえんだよな……」

 

狛野は振り返ると、二人に頭を下げた。

 

「ちょうど俺たちも探していてな……。彼とロア先生に、『解悩水』について尋ねたいことがある」

 

ダンテが答える。

 

「そうだったんスか……」

 

狛野は少し表情を曇らせた。

 

「あいつ……夫婦そろってロア先生の耐侵蝕治療を受けるために、ホロウへ行くって……それが最後のメッセージだったんス」

 

「ホロウへ?」

 

アキラの表情が変わる。

 

「まさかとは思うけど、ホロウに入っちまったんスかね……」

 

狛野は心配そうにホロウの方向を見る。

 

「それで、そっちは? 『解悩水』のことを聞きたいって、なんか問題でもあったんスか?」

 

「いや、『解悩水』について詳しく知りたいと思ってね。パロさんが言っていたんだろう? ロア先生はホロウでみんなを治療している……と。僕はどうにかして状況を聞いてくる。とにかく、ありがとう」

 

アキラが答える。

 

「あ、そうだアキラくん……」

 

狛野が何かを思い出したように声を上げた。

 

「言ってた写真の件、ダチに頼んで調べてもらったっス」

 

「ああ……どうだった? 何かわかったと言っていたかい?」

 

「それが……最近、ラマニアンホロウでミアズマが大量発生したとき、輝磁の生産エリアじゃ、そいつを写真に撮ってたやつが結構いたらしいんス。あの写真もそんとき撮られたやつっぽいんスけど……背景の写りが悪いから、どの生産エリアかまでは絞りこめねぇそうっス」

 

「そうか……」

 

アキラは考え込む。

 

そして、ふと狛野を見る。

 

「それにしても、落ち着いて話ができたのは意外だったよ。最初に啖呵をきられたときは、ずいぶんと驚かされたからね」

 

「ヘ!?」

 

狛野の顔が一気に赤くなる。

 

「あ、あれはただハッタリかましてただけっスから! とっとと忘れてくださいよ……!」

 

ダンテが横から口を挟む。

 

「そうか? にしては結構マジっぽかったんだがな」

 

「はは……」

 

アキラは苦笑した。

 

すると狛野は、少し真剣な表情になる。

 

「そうだ、パロのやつに会えたら伝えちゃくれないスか」

 

「何を?」

 

「娘さんに心配かけてんじゃねえぞ、って」

 

狛野は気まずそうに頭を掻いた。

 

「しばらくはなだめてられそうっスけど、泣かれちまったらお手上げなんで……電話のひとつくらいかけて、家族のそばにいてやれって……お願いします」

 

「ああ。分かった。必ず伝えるよ」

 

アキラが頷く。

 

二人は狛野と別れ、いったん適当観へ戻ることにした。

 

 

――――

 

 

適当観へ戻ると、ちょうどリンの調査も一段落していた。

 

「みんな。ダミアンがくれた事故報告書、確認したよ。あの人、ほんとに補償を申請してたみたい……支払いステータスは確認中のままだけどね」

 

「本当に?」

 

アキラが尋ねる。

 

「うん。市長さんがくれた特別なルートでも検証したけれど、やはり嘘をついていた様子はない」

 

リンは難しい顔をする。

 

「こうなるとダミアンはシロっぽいけど……まさかロア先生、そのことを隠してたのかな……? そっちはどうだった?」

 

福福へ視線を向ける。

 

「福福、労働者さんを何人か尋ねてまわったんですけど……みんな『解悩水』を飲んだことあるって言ってました。でもな~んか、話を聞いてると変なんですよねぇ……」

 

「変?」

 

「『解悩水』を飲むと、痛みが和らぐだけじゃなくて、すっごく眠くなって……変な夢を見ることもあるらしいんです」

 

その言葉を聞いた瞬間、ダンテの表情が変わった。

 

「……まさか!」

 

アキラも何かに気づいたように目を見開く。

 

「変な夢……もしや、昔のことをたくさん思い出す、という類の夢かい?」

 

「ふえっ、知ってたんですか?」

 

福福が驚く。

 

「……そうなんです。『解悩水』を飲んだら、あったかくて、懐かしい夢を見られる……って、みんな言ってるんです。楽しかったこととか……小さい頃のこととか……亡くなったご家族が夢に出てくるって人もいたんですよねえ」

 

福福は少し考えながら続ける。

 

「ロア先生はみんなに、薬が効いてる証拠だって言ってるそうですけど……あたしはどこか引っ掛かってて……」

 

そして、福福は儀玄を見る。

 

「あれ? お師匠さま? どうしたんですか?」

 

儀玄は腕を組んだまま、険しい顔をしていた。

 

「……まさか、あの『解悩水』とやら、ミアズマを混ぜてるんじゃないだろうな」

 

「ミ、ミアズマをですかぁ!? どういうことです?」

 

福福が目を丸くする。

 

「ミアズマに触れた人間は感覚が麻痺し、幻覚がちらつくようになる。早い話が、痛みなんかを感じなくなるのさ。侵蝕が和らいでいると錯覚するのも、無理はないな」

 

儀玄は静かに目を細めた。

 

「『解悩水』の治癒効果……正体見たり、と言ったところか?」

 

「ええ、その線は濃厚でしょう」

 

葉釈淵が静かに口を開いた。

 

「ロア先生は痛散をうたって患者に解悩水を飲ませていましたが、実際はとんだ偽薬……プラシーボにすぎなかったというわけです」

 

葉釈淵は淡々と続ける。

 

「となれば、彼が労働者を欺いた理由もおのずとわかります。ポーセルメックス製薬剤への不信感をあおり、自分の薬を売り込む隙を作っていたわけですから」

 

「……ああ」

 

アキラも頷いた。

 

「最近ラマニアンホロウでは、ミアズマが増大していると聞いた。ロア先生が偽の侵蝕緩和剤を作るうえで、材料には困らなかったろう……」

 

これまでの話を一つずつ繋ぎ合わせる。

 

「ポーセルメックスの廃棄した生産ラインが生きていたから薬を作れた……という話も、今思うと彼の捏造だったのかもしれないな」

 

「ほ、ほんとうにそうだったら……ひどすぎるにもほどがありますっ!!」

 

福福が声を震わせる。

 

「いったいどれだけの人が騙されてたんでしょう……薬にミアズマを混ぜるなんてことしたら、たちまち侵蝕が広がっちゃいますよっ!」

 

福福は立ち上がった。

 

「早く先生を止めないと! あの人はいま、一体どこにいるんですか!?」

 

「それが……」

 

アキラが答える。

 

「ロア先生の『定期診療』を受けるため、パロさんたち労働者がホロウに入ったようなんだ」

 

「ホロウに……」

 

ダンテが呟く。

 

「急ぎホロウへ向かって、状況を確かめなければ」

 

アキラが立ち上がる。

 

儀玄もすぐに頷いた。

 

「ああ。さっさと先生を探して、真相を暴いてやらないとな」

 

一行は顔を見合わせる。

 

これまで集めてきた情報が、一本の線へと繋がり始めていた。

 

ロアの目的。

 

解悩水の正体。

 

そして、ホロウへ向かった労働者たち。

 

もし推測が正しければ、時間は残されていない。

 

「行こう」

 

アキラが言った。

 

「パロさんたちを探す」

 

「おう」

 

ダンテも頷く。

 

こうして一行は、ロアと労働者たちのいるラマニアンホロウへ向かうことになった。

 

 

――――

 

 

 

一行はホロウの中に入っていた。

 

「お兄ちゃん、労働者たちが言ってた治療エリアはこのへんだよ」

 

リンが通信で話す。

 

「通信シグナルを追ってみた感じ、強度はいまいちだけど、すぐ近くから出てるみたい」

 

「ひええ……ここ、ミアズマまみれですよ!?」

 

福福が周囲を見回し、思わず身を縮める。

 

「どうしてこんなところで治療を……?」

 

「労働者たちが言うには、ポーセルメックスの目を避けるため……みたい。それもなんか怪しいって思うけどね。とにかく、このへんでパロさんを探してみよっか」

 

リンの言葉に、一行は先へ進もうとする。

 

その時だった。

 

目の前の道を、凝固したミアズマが塞いでいた。黒紫色の物質が壁のように広がり、通路を完全に覆っている。

 

「気をつけろ……ここには大量の凝固したミアズマがある。一度でも触れれば、ミアズマに侵蝕されるぞ」

 

儀玄が足を止める。

 

「でも、進めないんじゃ困りますよね?」

 

福福が尋ねる。

 

「まあ……我ら雲嶽山の術法をもってすれば、片付けることもできるが」

 

儀玄がそう言うと、アキラはすぐに前へ出た。

 

「なら、僕がやろう」

 

アキラは意識を集中させ、術法を発動する。

 

「……そこだ!」

 

力を込めた瞬間、バキッ!と音を立てて凝固したミアズマの一部が崩れ落ちた。

 

その横では、ダンテも動いていた。

 

「俺もやるか」

 

ダンテはミアズマへ剣先を伸ばす。次の瞬間、強烈な魔力が流れ込み、ミアズマが大きく震えた。そして、そのまま内側から砕け散っていく。

 

「……相変わらず無茶苦茶ですね」

 

福福が苦笑する。

 

二人の力によって、道を塞いでいたミアズマは次々と破壊され、ようやく先へ進めるようになった。

 

「それにしても……どうしてこんなにミアズマが多いんだ?」

 

アキラは崩れたミアズマを見つめる。

 

「治療を受けてた人たちは、どこに行っちゃったんでしょう……?」

 

福福も不安そうに周囲を見る。

 

「なんだか、事態がおかしな方向に向かってる気がします……!」

 

一行は警戒を強めながら、引き続きホロウへ入った患者を探すために先へ進んだ。

 

「お兄ちゃん、この先から通信シグナルが出てるよ。誰かが助けを呼んでるみたい……急いで向かおう」

 

リンから通信が入る。

 

「この場所はミアズマだらけだぞ……それにエーテリアスまで」

 

潘引壺が周囲を見回した。

 

「本当に、こんなところで患者の治療を……? おれにはむしろ、ホロウレイダーのたまり場に見えるが……」

 

「潘さんの言う通りです。あのお医者さん、なんだか怪しいですもん!」

 

福福も頷く。

 

そして一行がさらに奥へ進んだ時だった。

 

「ゴホッ……き、君たちは……!?」

 

物陰から苦しそうな声が聞こえた。

 

「助けて……助けて、ください……」

 

「パロさん!?」

 

福福が駆け寄る。

 

「どうしたんですかっ!」

 

「つ、妻と一緒に定期診療を受けようと、ロア先生を訪ねたんです……」

 

パロは苦しそうに胸を押さえる。

 

「か、『解悩水』を飲んだのに……ちっとも、痛みがおさまらなくて……!」

 

「僕と妻を……助けてください……妻はあっちに……ぐあああっ!」

 

突然、パロの身体が大きく痙攣した。

 

「侵蝕の発作だ!」

 

儀玄が叫ぶ。

 

「福福、潘、彼を支えられるか。私が体内のエーテルを整えてみる」

 

「はいっ!」

 

福福と潘がパロを支える。

 

「うぅ……あぁああ……!」

 

「こ、こんなになって……! どうしよう、かなり限界が近いかもしれません……!」

 

福福が顔を青ざめさせる。

 

「福姐、危ない! 彼から離れるんだ!」

 

潘が叫ぶ。

 

「え……?」

 

パロが苦しそうに顔を上げた。

 

「う、雲嶽山の先生がた……来ないでください!」

 

「パロさん……!」

 

「みなさんを傷つけてしまったら……ぐあああああっ!」

 

次の瞬間、パロの身体から凄まじい量のエーテルが噴き出した。

 

「なっ……!」

 

アキラが目を見開く。

 

パロの身体に異様な変化が起こっていく。そして胸元に、エーテリアスの「コア」のひな形が浮かび上がった。

 

「……そんな……」

 

福福が息を呑む。

 

パロは激痛に耐えながら身体をよじる。

 

「う……あああああああっ!」

 

そして、突然ホロウの奥へ向かって走り出した。

 

「パロさん!」

 

福福が追いかけようとする。

 

だが、その直後――。

 

「グォォォォォォォッ!!」

 

ホロウの奥から、凄まじく狂暴なエーテリアスの咆哮が響き渡った。

 

その声は、先ほどまでのパロの悲鳴とは明らかに違っていた。完全に、怪物の咆哮だった。

 

「どうしてこんなことに……」

 

福福が震える声で呟く。

 

「まさか、パロさんはもう……」

 

「福姐、彼にはさっき『コア』が現れた。もう……手遅れだろう……」

 

潘が静かに答える。

 

「福福……潘の言った通りだ」

 

儀玄が険しい表情を浮かべる。

 

「まずはこのエーテリアスどもを片付け、残りの人々を見つけるぞ。パロの悲劇を繰り返させてはならない」

 

「そうだね……」

 

リンが端末を見つめる。

 

「あの解悩水には問題があるみたいだね。他の人たちの様子を見に行かなきゃ」

 

福福が拳を握る。

 

「パロさんの状況を見る限り、侵蝕症状はちっとも良くなってませんっ。『解悩水』には、侵蝕を緩和する効果なんてなかったんです!」

 

福福の表情が怒りに変わる。

 

「ひどい……ロア先生は、みんなを騙してたんですね」

 

「けれど、なんでわざわざ患者を集めて、治療のフリなんて……?」

 

アキラは疑問を口にする。

 

ダンテはホロウの奥を見つめた。

 

「どうやら、事はそう単純ではないようだな」

 

その時、Fairyから通信が入る。

 

「マスター、付近に生体信号を検出しました」

 

「生体信号?」

 

「ジャミングにより、位置を特定できません」

 

「お兄ちゃん! 患者たちはすぐ近くにいるはずだよ」

 

リンが周囲を見回す。

 

「アキラ、方向を確認してみよう……」

 

一行は通信シグナルを頼りに、さらにホロウの奥へ進んでいった。

 

道中では、幾人もの患者が侵蝕症状の発作に襲われていた。

 

「大丈夫ですっ! もう少しだけ頑張ってください!」

 

福福たちは患者を一人ずつ安全な場所へ運びながら、まだ見つかっていない侵蝕緩和剤の供給地点を探した。

 

やがて、一行は患者たちが集められていた場所へ戻る。そこで発見した侵蝕緩和剤を使い、患者たちの治療を行った。

 

「これで少しは楽になるはずです」

 

福福が患者の様子を確認する。

 

「ありがとうございます……」

 

患者の一人が弱々しく頭を下げる。

 

しかし、安心するには早かった。

 

「……おかしい」

 

アキラが周囲を見回す。

 

「どうしたの?」

 

リンが尋ねる。

 

「ロア先生も、ついさっきまでここにいたみたいなんだ」

 

周囲には、患者が移動させられた痕跡が残っていた。

 

「つまり……」

 

福福が息を呑む。

 

「ロア先生は、患者さんたちをどこかへ連れていった……?」

 

一行は状況がおかしいことに気づき、残っている患者をひとまず安全な場所へ移した。そして、再びロアの行方を追うことにした。

 

しばらく進んだ先。

 

一行はついに、ロアを見つけた。

 

しかし――。

 

その周囲には、複数の人影が立っていた。

 

「おっと……こんなに早く、ここまで辿り着くとは」

 

ロアが振り返る。

 

「どういうことだ?」

 

アキラが周囲を見渡す。

 

「彼らは……」

 

ダンテが目を細める。

 

「讃頌会……か?」

 

「ロア先生……!」

 

福福が驚愕する。

 

「あなたはよりにもよって、讃頌会の人間だったんですか……!? みんなを騙してたんですねっ!」

 

「騙した?」

 

ロアは笑った。

 

「ハハハ……彼らは選ばれたんだ」

 

ロアの表情から、これまでの穏やかさは完全に消えていた。

 

「始まりの主に捧げられるべき『供物』として。ぜひ胸を張ってもらいたいものだよ」

 

「供物……?」

 

福福が絶句する。

 

「それと――」

 

ロアはダンテへ視線を向ける。

 

「そこにいるダンテ君には、我らと付いてきてもらいたいんだがね」

 

「新手の宗教勧誘か?」

 

ダンテは呆れたように肩をすくめる。

 

「遠慮しとくぜ」

 

「……まあいい。君たち自ら出向いてくれたんだ……ちょうどいい」

 

ロアは不気味な笑みを浮かべる。

 

「彼ら共々、『治療』してあげようか!」

 

「ひどい……どういうことですか……?」

 

福福が震える。

 

「ロア先生が、讃頌会の人だったなんて……」

 

アキラはロアを睨みつける。

 

「なるほど……あなたはみんなを騙していたんだな! その薬……元から病気を治すためのものではなかったんだろう」

 

「今さらそれに気づいたところで……」

 

ロアが手を掲げる。

 

「もう手遅れだ!」

 

ロアの合図と共に、患者たちの身体から一斉にエーテルが噴き出した。

 

患者たちの身体が大きく痙攣する。

 

そして――。

 

「グォォォォォッ!!」

 

一人。

 

また一人。

 

患者たちの姿が次々とエーテリアスへ変貌していく。

 

次の瞬間、周囲に潜んでいた讃頌会のメンバーたちが一斉に姿を現した。

 

「囲まれた……!」

 

福福が構える。

 

ダンテはゆっくりとリベリオンを構え直した。

 

「どうやら、まだ終わりじゃないらしいな」

 

ホロウの奥では、ロアの姿が闇へと消えていく。

 

そして、一行の前には讃頌会の新たな敵が立ちはだかっていた。

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