悪魔も泣き出す新エリー都   作:オムライスα

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休みだから徹夜で書いてます。

Wanna know the name?

『Devil May Cry』


第三話 赤い悪魔とヴィクトリア家政

バレエツインズ。

 

A棟とB棟を繋ぐ、渡り廊下。

 

爆煙が晴れていく。

 

その中心に、一人の青年が立っていた。

 

赤いロングコート。

白い髪。

そして、肩に担がれた巨大な剣。

 

ダンテ。

 

「……。」

 

エレンは無言で彼を見つめていた。

 

先ほどの銃撃。

 

あの距離。

あの状況。

 

普通なら、あれほど正確に狙えるはずがない。

 

だが、この男はやった。

 

しかも、まるで片手間のように。

 

「面倒なのが来たね。」

 

エレンが小さく呟く。

 

その言葉に反応するように、後方から白銀の髪を揺らした男が歩み出た。

 

フォン・ライカン。

 

ヴィクトリア家政の執行責任者である。

 

「皆さん。」

 

穏やかな声だった。

 

「警戒してください。彼は……見た目以上に危険な人物です」

 

ライカンの片目が鋭く光る。

 

対するダンテは、口元を吊り上げた。

 

「へぇ。俺を褒めてくれるとは嬉しいね」

 

ダンテがリベリオンを肩から抜く。

 

巨大な刃が床へ突き刺さり、重々しい音を響かせた。

 

ライカンは一礼する。

 

「我々はヴィクトリア家政。お客様の障害を排除することも、我々の仕事です」

 

「悪く思わないでいただきたい」

 

ダンテは笑った。

 

「仕事熱心ってわけか。嫌いじゃないぜ」

 

その瞬間。

 

エレンの姿が消えた。

 

「――!」

 

次の瞬間には、ダンテの背後。

 

巨大な鋏型武器が振り下ろされる。

 

ギィン!!

 

リベリオンの刃が、それを受け止めた。

 

「……。」

 

エレンの目が細まる。

 

「反応した」

 

「当然だろ」

 

ダンテは軽く笑う。

 

「その程度で俺を捕まえられると思ったのか?」

 

「Come and get me!」{捕まえてみな!}

 

エレンの眉が僅かに動く。

 

「……面倒」

 

「でも」

 

尾びれが大きく振り抜かれる。

 

「仕事だから」

 

次の瞬間、高速の連撃が始まった。

 

鋏。

尾びれ。

蹴り。

 

サメの身体能力を最大限に生かした猛攻が、次々とダンテへ襲いかかる。

 

しかし、ダンテはそれらを軽々と避けていく。

 

一撃。

また一撃。

 

その動きは、まるで踊っているかのようだった。

 

まるで攻撃そのものを楽しんでいる。

 

「……。」

 

エレンは理解した。

 

この男は、戦い慣れしている。

 

ただ強いだけではない。

 

敵の動き。

癖。

間合い。

 

すべてを見ている。

 

「You scared?」{ビビってんのか?}

 

ダンテが笑う。

 

その挑発に、エレンの目が細くなる。

 

「……別に」

 

「ただ」

 

「めんどくさい相手だと思ってる」

 

「そいつは光栄だ」

 

その時。

 

空気が変わった。

 

冷気が広がる。

 

ダンテの足元が凍りついた。

 

「――!」

 

ライカンだった。

 

いつの間にか接近していたライカンが、義足から冷気を放ちながら蹴りを繰り出す。

 

ダンテは咄嗟にリベリオンで防いだ。

 

ガァン!!

 

凄まじい衝撃が走り、床が砕ける。

 

「なるほど」

 

ダンテが笑った。

 

「執事ってのは足癖が悪いんだな」

 

「お褒めいただきありがとうございます」

 

ライカンは優雅に一礼する。

 

「ですが、次は逃がしません」

 

その言葉と同時に、連続蹴撃が繰り出される。

 

冷気を纏った足技が、嵐のように襲いかかる。

 

だが、ダンテは二丁拳銃を抜いた。

 

エボニー。

アイボリー。

 

ドドドドドッ!!

 

銃弾による牽制。

 

その隙にダンテは後方へ跳んだ。

 

「す、すみません!」

 

声を上げたのはカリンだった。

 

チェーンソーを構えながら、どこか震えている。

 

「でも……!」

 

「ヴィクトリア家政の一員として!」

 

「負けるわけにはいきません!」

 

エンジンが始動する。

 

ギュイィィィィン!!

 

巨大な刃が回転し、小柄な少女とは思えない力でカリンが突撃する。

 

ダンテは目を丸くした。

 

「おいおい」

 

「メイドがチェーンソー振り回す時代なのか?」

 

ギリギリで攻撃を回避し、そのままカリンの背後へ回る。

 

「Sweet, Babe!」{イケてるぜ、お嬢ちゃん!}

 

「え!?」

 

褒められたのかどうか分からず、カリンが混乱する。

 

その隙に、上空から声が響いた。

 

浮遊する二体のボンプ。

 

ドリシラとアナステラ。

 

「逃がさない!」

 

「ビリビリする!」

 

二体から電撃が放たれる。

 

「おっと」

 

ダンテはリベリオンを地面へ突き刺した。

 

その反動を利用して跳躍し、電撃をかわす。

 

そして空中で銃を構えた。

 

「いい連携だ」

 

「でも――」

 

ドン!!

 

銃弾が二体の間を撃ち抜く。

 

破壊ではない。

 

あくまで牽制だった。

 

ボンプたちは慌てて回避する。

 

「優しいじゃん」

 

エレンが呟く。

 

ダンテは笑った。

 

「勘違いするなよ」

 

「壊す価値がないだけだ」

 

――――

 

ダンテは着地すると同時に、リベリオンを肩へ担いだ。

 

「さて……」

 

「そろそろ、こっちから行かせてもらうぜ」

 

その瞬間、エレンの表情が変わった。

 

「……来る」

 

次の瞬間。

 

ダンテの姿が消えた。

 

「――!」

 

一番先に反応したのはライカンだった。

 

「後方へ!」

 

叫ぶ。

 

しかし、遅い。

 

ダンテはすでに空中へ跳び上がっていた。

 

リベリオンを大きく振り上げる。

 

そして。

 

刃が下から振り上げられた。

 

斬撃の衝撃波が走る。

 

エレンは咄嗟に後退したが、足元の瓦礫がまとめて吹き飛ばされた。

 

「……!」

 

ただの一撃。

 

それだけで、周囲の空気が変わった。

 

ダンテはそのまま空中へ舞い上がる。

 

そして二丁拳銃を構えた。

 

「まだまだ行くぜ」

 

エボニー。

アイボリー。

 

同時に火を吹く。

 

ドドドドドドドドッ!!

 

無数の銃弾が雨のように降り注ぐ。

 

空中で回転しながら放たれる銃撃は、逃げ場を奪うように広範囲へ弾丸をばら撒いていく。

 

「危険です!」

 

ライカンが叫ぶ。

 

リナは即座に判断した。

 

「ドリシラ、アナステラ」

 

「防御を」

 

「了解!」

 

二体のボンプが前へ出る。

 

電撃を纏った防御壁を展開した。

 

しかし、銃弾の威力に押され、徐々に後退していく。

 

「すごい……」

 

カリンが息を呑んだ。

 

「あの距離から……全部狙って……」

 

やがてダンテが着地する。

 

そして、笑った。

 

「悪いな」

 

「俺、手加減って苦手なんだ」

 

エレンが低く構える。

 

「……。」

 

今までのふざけた態度。

 

アイスを食べていた姿。

 

そのすべてが演技だったのではないか。

 

この男は、戦闘になれば完全に別人だ。

 

「なら」

 

エレンが踏み込む。

 

「こっちも本気」

 

サメの尾びれが大きく振られる。

 

一瞬で距離を詰め、鋏型武器がダンテへ迫る。

 

しかし、ダンテは笑った。

 

「いいね」

 

「そうこなくちゃ」

 

瞬間。

 

ダンテが姿勢を低くする。

 

そして、一直線に踏み込んだ。

 

リベリオンの切っ先が一直線に伸びる。

 

「っ!」

 

エレンはギリギリで横へ回避した。

 

だが、その余波だけで背後の壁が崩壊する。

 

「速い……」

 

エレンが呟く。

 

あれは攻撃ではない。

 

移動そのものが攻撃になっている。

 

まるで弾丸だ。

 

「まだ終わりじゃないぜ」

 

ダンテはそのまま振り返る。

 

背後には、ライカン。

 

冷気を纏った蹴撃が迫っていた。

 

「お見事です」

 

「ですが」

 

「隙があります」

 

蹴りが迫る。

 

しかし、ダンテは振り向かない。

 

そのまま上空へ跳ぶ。

 

次の瞬間。

 

巨大な剣を振り下ろした。

 

ズドォォォォン!!

 

凄まじい衝撃。

 

床が陥没する。

 

ライカンは咄嗟に後退するが、完全には避けきれない。

 

冷気を纏った義足で受け止める。

 

「……!」

 

凄まじい力だった。

 

足元の地面が大きく沈む。

 

「なるほど」

 

ダンテは笑う。

 

「その足」

 

「かなり頑丈だな」

 

ライカンは距離を取る。

 

その時。

 

エレンが背後から迫った。

 

鋏が振り下ろされる。

 

だが、ダンテは振り返らない。

 

銃口だけを向ける。

 

「悪いな」

 

「背中にも目はあるんだ」

 

ドン!!

 

銃撃。

 

エレンは舌打ちしながら軌道を変える。

 

「……本当に面倒」

 

「だろ?」

 

ダンテは楽しそうに笑う。

 

「でも」

 

「こういうの」

 

「嫌いじゃないぜ」

 

赤いコートが翻る。

 

「では」

 

ライカンが静かに構えた。

 

「次で決めさせていただきます」

 

その瞬間。

 

周囲の空気が変わった。

 

冷気。

 

足元から凍てつく気配が広がっていく。

 

ライカンの義足が淡い冷気を纏う。

 

エレンも鋏型武器を握り直した。

 

気だるげだった赤い瞳が、完全に獲物を狙う捕食者のものへと変わる。

 

カリンも震える手でチェーンソーを構えた。

 

「……。」

 

怖い。

 

それでも。

 

ヴィクトリア家政の一員として、彼女は一歩も引かなかった。

 

そして、リナの二体のボンプ――ドリシラとアナステラが浮遊する。

 

電撃を纏いながら、ダンテを囲んだ。

 

完全な包囲。

 

逃げ道はない。

 

普通なら、絶対に追い詰められた状況だった。

 

しかし――

 

「……。」

 

ダンテは突然、動きを止めた。

 

「?」

 

全員が警戒する。

 

何をするつもりなのか。

 

誰もが身構えた。

 

そして次の瞬間。

 

ダンテは――

 

リベリオンを背中へ戻した。

 

「……え?」

 

カリンが目を丸くする。

 

「えっと……」

 

エレンも呆然とする。

 

「……何してるの?」

 

ダンテは何でもないように肩を回した。

 

「いや」

 

「もういいかなって」

 

「…………。」

 

沈黙。

 

数秒。

 

「……は?」

 

エレンの目が細くなる。

 

ライカンですら、わずかに表情を崩した。

 

「失礼ですが」

 

「今、なんと?」

 

ダンテは指を立てる。

 

「依頼人はこう言った」

 

「侵入者たちを――」

 

「妨害してほしい」

 

「……。」

 

全員が黙った。

 

ダンテは満足そうに頷く。

 

「つまり」

 

「倒せとは言われてない」

 

「追い出せとも言われてない」

 

「侵入を完全に阻止しろとも言われてない」

 

そして、ニヤリと笑う。

 

「だから」

 

「十分妨害した」

 

「依頼達成だ」

 

「…………。」

 

ヴィクトリア家政全員が沈黙する。

 

最初に口を開いたのはエレンだった。

 

「……屁理屈」

 

「だよね?」

 

カリンも困惑した表情を浮かべる。

 

「えっと……確かに……」

 

「言葉だけなら……」

 

「でも普通は最後まで……!」

 

リナは困ったように微笑む。

 

「まあ……そういう解釈もできますね」

 

ライカンは額へ手を当てた。

 

「……まさか」

 

「まさか、依頼内容の解釈ひとつで、この状況を終わらせるとは」

 

「実に自由なお方です」

 

ダンテは笑った。

 

「褒め言葉として受け取っとくよ」

 

その時だった。

 

「ふざけるなァァァ!!」

 

怒声が響く。

 

全員が振り向く。

 

瓦礫の向こう。

 

そこには、反乱軍の兵士たちが立っていた。

 

兵士は怒りに顔を歪めている。

 

「敵を残したまま帰るつもりか!!」

 

ダンテは首を傾げた。

 

「ん?」

 

「いや、依頼は終わった。だから帰るだけだが?」

 

その態度が、さらに兵士たちの怒りを煽った。

 

「舐めるな!!」

 

「撃てぇ!!」

 

一斉に武器が構えられる。

 

ライフル。

拳銃。

ランチャー。

 

すべての銃口がダンテへ向けられた。

 

「……。」

 

ヴィクトリア家政の面々が身構える。

 

だが。

 

ダンテは動かなかった。

 

ただ、小さくため息を吐く。

 

「やれやれ」

 

「今日はやけに絡まれる日だな」

 

次の瞬間。

 

消えた。

 

「――!?」

 

誰も、その姿を追えなかった。

 

聞こえたのは、銃声ではない。

 

「ガッ!」

 

「ぐあっ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

兵士たちの悲鳴。

 

一人。

 

また一人。

 

武器だけが宙へ舞う。

 

ダンテは兵士たちの間を歩いていた。

 

まるで、散歩でもしているかのように。

 

足元を崩す。

 

武器だけを破壊する。

 

殺さない。

 

傷つけすぎない。

 

数秒後。

 

立っている兵士は、一人もいなかった。

 

「…………。」

 

ヴィクトリア家政の全員が言葉を失う。

 

エレンが小さく呟いた。

 

「……やっぱり」

 

「この人」

 

赤い瞳がダンテを見つめる。

 

「本気で敵に回しちゃダメなタイプ」

 

ダンテは倒れた兵士たちを眺める。

 

そして、何事もなかったかのように、地面に落ちていたストロベリーサンデーの空容器を拾った。

 

「さて」

 

「今度こそ帰るか」

 

その背中を見つめながら、ライカンは静かに息を吐く。

 

この日。

 

ヴィクトリア家政は、ダンテという男を――

 

決して敵に回してはいけない存在として、深く記憶することになった。

 

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