悪魔も泣き出す新エリー都   作:オムライスα

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Wanna know the name?


『『Devil May Cry』』


第五十一話 青い悪魔

 

 

一行は、先ほどまで何度挑んでも開かなかった大扉の前まで戻ってきていた。

 

リンが扉を見上げる。

 

その時だった。

 

「下がれ」

 

バージルの声が響く。

 

「え?」

 

振り返った瞬間――。

 

ズンッ!

 

バージルがものすごい速度で走り込んできた。

 

「バージル!?」

 

次の瞬間、閻魔刀が抜かれる。

 

シュバッ!

 

一閃。

 

続けて二閃。

 

三閃、四閃、五閃――。

 

巨大な大扉が瞬く間に切り刻まれ、無数の金属片となって崩れ落ちた。

 

「…………」

 

バージルは何事もなかったかのように閻魔刀を納める。

 

カチン。

 

「急ぐぞ」

 

「……うん!」

 

一行は崩れた扉を抜け、外へ飛び出した。

 

「――あった!」

 

リンが前方を指差す。

 

「裂け目!」

 

そこには、ホロウの外へと繋がる巨大な裂け目があった。

 

「みんな、急いで!」

 

しかし、その瞬間――。

 

「グオオオオッ!」

 

背後から凄まじい咆哮が響き渡る。

 

「……!」

 

一同が振り返る。

 

巨大なミアズマフィーンドが、一直線にこちらへ突っ込んできていた。

 

「危ない!」

 

バージルが前へ出る。

 

ガキィィン!!

 

ミアズマフィーンドの槍と閻魔刀が激突する。

 

凄まじい衝撃が周囲へ広がった。

 

「先に行け」

 

バージルが低く告げる。

 

「でも――!」

 

「行け」

 

有無を言わせない声音だった。

 

「こいつは俺が止める」

 

「……行くぞ!」

 

真斗が叫ぶ。

 

「柚葉、アリス、リン!」

 

「うん!」

 

「分かったのだわ!」

 

「バージルさん、気をつけて!」

 

三人が裂け目へ駆け込んでいく。

 

最後にリンが振り返る。

 

「バージル!」

 

「早く行け」

 

リンは頷き、裂け目の向こうへ消えた。

 

それを確認したバージルは、ミアズマフィーンドを押し返した。

 

「フッ!」

 

ドゴォン!

 

巨大な身体が吹き飛ぶ。

 

バージルは一歩下がり、閻魔刀を静かに納める。

 

カチン。

 

そして――。

 

「…………」

 

裂け目へは近づかなかった。

 

むしろ、僅かに口元を上げる。

 

「これで周りを気にせず戦える」

 

ミアズマフィーンドが再び咆哮する。

 

バージルは閻魔刀の柄へ手を添えた。

 

次の瞬間――。

 

バージルの姿が消えた。

 

「Too slow.」(遅い)

 

ミアズマフィーンドの懐へ潜り込む。

 

シュババババッ!

 

無数の斬撃が走る。

 

一閃。

 

二閃。

 

三閃。

 

それだけではない。

 

バージルの周囲に、青白い魔力で形成された剣が次々と浮かび上がる。

 

一本。

 

二本。

 

四本。

 

八本。

 

それらが一斉にミアズマフィーンドへ向けられた。

 

「――――」

 

ズガガガガガッ!

 

無数の幻の剣が一直線に飛翔し、巨体へ突き刺さる。

 

「グオオオオッ!」

 

ミアズマフィーンドが身体を振り回す。

 

数本の幻の剣が弾き飛ばされ、砕け散る。

 

だが――。

 

バージルはすでに別の位置にいた。

 

「……」

 

刀を構える。

 

ミアズマフィーンドが突進してくる。

 

その周囲に幻影の剣が円陣を組む。

 

そして――。

 

一斉に放たれた。

 

シュシュシュシュッ!

 

全方位から飛来する幻の剣が、ミアズマフィーンドの身体へ次々と突き刺さる。

 

「グアアアアッ!」

 

巨体がよろめく。

 

バージルはその隙に踏み込む。

 

「…………」

 

閃光。

 

目にも止まらない抜刀。

 

巨大な真空の刃が発生し、ミアズマフィーンドの肩から腹部までを深く切り裂いた。

 

「グ……!」

 

それでも倒れない。

 

ミアズマフィーンドが槍を振り下ろす。

 

バージルは身体を捻る。

 

槍が目の前を通り過ぎる。

 

後ろから幻影の剣が飛来する。

 

一本。

 

二本。

 

三本。

 

次々と怪物へ突き刺さる。

 

そして――。

 

バージルが一瞬で距離を詰めた。

 

「――――」

 

刀を抜く。

 

シュンッ!

 

一閃。

 

ミアズマフィーンドの腕が切断される。

 

「グオオオオッ!」

 

反対側から別の腕が振り抜かれる。

 

バージルは閻魔刀を鞘へ戻す。

 

カチン。

 

そして――。

 

「……」

 

一瞬で消えた。

 

次の瞬間、怪物の背後へ。

 

「――――」

 

また一閃。

 

背中が大きく裂ける。

 

「グアッ!」

 

ミアズマフィーンドが振り返ろうとする。

 

しかし、その頭上にはすでに無数の幻影剣が並んでいた。

 

「…………」

 

一斉に降下。

 

ズガガガガガッ!

 

無数の剣が雨のように降り注ぎ、ミアズマフィーンドの全身を貫く。

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

怪物が地面を叩き、衝撃波を放つ。

 

バージルはそれを軽く飛び越えた。

 

空中で身体を回転させ、着地と同時に閻魔刀を抜く。

 

「――――」

 

シュンッ!

 

その一閃が空間そのものを裂いた。

 

ミアズマフィーンドの周囲に無数の斬撃が現れる。

 

逃げる方向さえない。

 

どこへ動いても、その場所を追うように斬撃が発生する。

 

「グ……ガ……!」

 

怪物の身体が次々と切り刻まれていく。

 

「…………」

 

バージルはゆっくりと刀を納めた。

 

カチン。

 

そして再び幻影の剣が浮かぶ。

 

今度は一本だけ。

 

怪物の胸へ向かって飛翔する。

 

ズシュッ!

 

深々と突き刺さった。

 

ミアズマフィーンドがそれを引き抜こうとした瞬間――。

 

ドンッ!

 

胸の内部から魔力の爆発が起こった。

 

「グオオオオオオオッ!!」

 

巨体が大きく仰け反る。

 

バージルはその隙を逃さない。

 

一歩。

 

二歩。

 

三歩。

 

そして、低く構える。

 

「……時間が惜しい」

 

その瞬間、青い魔力が一気に膨れ上がった。

 

「――――!」

 

バージルの身体が光に包まれる。

 

青い外殻が全身を覆い、青い鎧のような姿へと変わっていく。

 

頭部には昆虫のような鋭い輪郭。

 

目にあたる部分が不気味な光を放つ。

 

そして――。

 

左腕には閻魔刀の鞘そのものが一体化していた。

 

「…………」

 

人の姿ではない。

 

青い魔剣士。

 

悪魔の力を解放したバージルが、静かに立っていた。

 

ミアズマフィーンドが咆哮する。

 

だが。

 

すでに遅かった。

 

青い悪魔の姿が――消える。

 

「My power shall be absolute...!」(我が絶対なる力を…!)

 

無数のバージルが現れる。

 

一人。

 

二人。

 

三人。

 

四人。

 

それ以上。

 

超高速移動によって生み出された分身が、ミアズマフィーンドを完全に包囲する。

 

すべてのバージルが、閻魔刀を構える。

 

「…………」

 

一斉に抜刀。

 

世界が裂けた。

 

無数の次元の斬撃が、縦横無尽に飛び交う。

 

ミアズマフィーンドの身体が揺れる。

 

切断。

 

斬撃。

 

裂傷。

 

そして、そのすべてが同時に炸裂した。

 

ドォォォォォン!!

 

凄まじい爆発。

 

建物全体が大きく揺れる。

 

壁が崩れ。

 

天井が割れ。

 

研究所の一部が、まるごと崩壊していく。

 

爆煙の中を、一つの影が歩く。

 

青い悪魔。

 

バージルだった。

 

そして、彼の後ろでは――。

 

巨大な研究所の一角が、完全に半壊していた。

 

「…………」

 

バージルは振り返らない。

 

ただ、ゆっくりと閻魔刀を鞘へ収める。

 

カチン。

 

その瞬間――。

 

最後まで残っていた斬撃が、すべての対象を切り終えた。

 

静寂。

 

遅れて、崩れ落ちた建物の瓦礫が地面へ落ちていく。

 

 

――――

 

 

辺りには瓦礫が散乱している中でバージルは静かに立っていた。

 

「…………」

 

周囲を見回す。

 

先ほどまで戦っていたミアズマフィーンドの姿は、どこにもない。

 

「……仕留め切れていないか」

 

手応えがなかった。

 

あれだけの攻撃を叩き込んだにもかかわらず、最後の瞬間に感じた感触が妙に軽かった。

 

「逃げたな」

 

バージルはそう判断した。

 

青い外殻が少しずつ光へ変わっていく。

 

デビルトリガーを解除し、元の姿へ戻る。

 

「…………」

 

バージルは乱れた髪を軽く整える。

 

その時だった。

 

「――――ッ!」

 

空気を切り裂く音。

 

ドドドドドッ!!

 

無数の銃弾が、四方から一斉に飛来した。

 

「……」

 

バージルは立ち止まる。

 

次の瞬間。

 

カチン。

 

閻魔刀が抜かれた。

 

シュンッ!

 

一閃。

 

キィン!

 

弾丸が切断される。

 

二発。

 

三発。

 

十発。

 

二十発。

 

飛来する銃弾が次々と真っ二つになり、火花を散らしながら地面へ落ちていく。

 

「…………」

 

最後の一発を斬り落とす。

 

カチン。

 

閻魔刀が再び鞘へ戻る。

 

バージルは周囲を見回した。

 

「……なるほど」

 

いつの間にか、武装した集団が彼を取り囲んでいた。

 

銃器。

 

防具。

 

通信機。

 

どう見ても一般人ではない。

 

「全員、武器を下ろせ!」

 

誰かが叫ぶ。

 

「その場から動くな!」

 

バージルは無言で周囲を見る。

 

数が多い。

 

前方、左右、背後、完全に包囲されている。

 

「…………」

 

心の中で、バージルは小さくため息を吐いた。

 

――こいつらにも、手加減しないといけないのか。

 

本来なら。

 

こんな程度の相手なら、一瞬で終わる。

 

しかし――。

 

今の自分には、守るべき約束がある。

 

そもそも今回、バージルがアキラたちに同行している理由は一つではなかった。

 

もともとバージル自身にも調べたいことがあった。

 

だが――。

 

もう一つ、理由がある。

 

ダンテだった。

 

あの愚弟は、現在適当観から出ることを禁じられている。

 

だからこそ――。

 

「……」

 

バージルは思い出す。

 

『兄貴』

 

『リンのこと、頼んだぜ』

 

普段なら、そんな頼みを聞くはずがない。

 

ダンテのお願いなど、わざわざ聞いてやる義理はない。

 

だが今回は事情が違った。

 

ダンテ自身が外へ出られない。

 

そして、リンを守ってやる誰かが必要だった。

 

ならば――。

 

「仕方がない」

 

そう言って同行することになった。

 

その際に、一つだけ約束した。

 

――リンを守ること。

 

そしてもう一つ。

 

――人間は絶対に殺さないこと。

 

「…………」

 

その約束を思い出す。

 

バージルは目の前の武装集団を見る。

 

「面倒な約束をしたものだ」

 

一人が銃を構える。

 

「撃て!」

 

「――――!」

 

再び銃撃が飛んでくる。

 

バージルは動いたのだった。

 

 




バージルの強さ加減がわからない
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