悪魔も泣き出す新エリー都   作:オムライスα

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Wanna know the name?

『Devil May Cry』


第五話 Devil May Cry

――ホロウ内部。

 

ダンテたちが駆け付けた場所は、想像以上の惨状だった。

 

「……。」

 

ヴィクトリア家政の面々が、周囲を見渡す。

 

建物、道路、崩れかけた壁。

 

そのすべてが、まるで何か巨大な刃物で切り裂かれたかのように、無数の斬撃跡で覆われていた。

 

建物の壁には深々とした切れ込みが走り、道路には長く伸びた亀裂が刻まれている。

 

まるで、巨大な何かがこの場所を縦横無尽に切り裂いたようだった。

 

「これは……。」

 

カリンが息を呑む。

 

「エーテリアスの仕業でしょうか?」

 

ライカンは周囲を注意深く観察する。

 

「……しかし、エーテルによる侵食痕が見当たりません。」

 

エレンも鋏型武器を構えたまま、辺りを見回した。

 

「じゃあ、何がやったの?」

 

リナも警戒しながら、ドリシラとアナステラを周囲へ展開する。

 

「分かりません。」

 

モニターへ映し出される周辺情報を確認しながら、リンが通信越しに答える。

 

「エーテル濃度は高いけど……普通のエーテリアスの反応とは違う。」

 

アキラもイアス越しに周囲を確認する。

 

「何かがいるはずだ。」

 

その時だった。

 

先頭を歩いていたダンテが、ふと足を止めた。

 

「……。」

 

そして、周囲を見渡す。

 

「何もいないなぁ。」

 

あまりにも緊張感のない声だった。

 

エレンが呆れたように言う。

 

「こんな状況でよくそんなこと言えるね。」

 

「だって。」

 

ダンテは肩をすくめる。

 

「誰もいないだろ?」

 

「……。」

 

その瞬間だった。

 

ザシュッ!!

 

「――ッ!?」

 

ダンテの身体が突然、大きく揺れた。

 

「ダンテさん!?」

 

カリンが叫ぶ。

 

無数の巨大な鎌。

 

一本、二本、三本、四本。

 

それだけではない。

 

無数の刃が、ダンテの腕、足、そして胸を貫いていた。

 

「……。」

 

赤いコートが、ゆっくりと揺れる。

 

胸へ突き刺さった巨大な鎌。その刃先は、身体を貫通して前方へ突き抜けていた。

 

「……ダンテ!?」

 

リンが声を上げる。

 

「嘘……。」

 

エレンの表情が変わった。

 

「いつの間に……。」

 

ダンテは動かない。

 

「……。」

 

その周囲から、何かが姿を現した。

 

骸骨。

 

巨大な鎌。

 

黒い身体。

 

そして、まるで地獄から這い出してきたような異形。

 

「……エーテリアスじゃない。」

 

ライカンが呟く。

 

その怪物は、ゆっくりと鎌を引いた。

 

いや。

 

引こうとしていた。

 

だが――。

 

ダンテは動かない。

 

その怪物の名は、ヘル=プライド。

 

傲慢の罪を犯して死んだ人間を、地獄で責め続ける魔界の住人。

 

砂を媒介として人間界へ姿を現し、生者を地獄へ落とすために巨大な鎌を振るい、殺戮を繰り返す悪魔。

 

「……。」

 

ヘル=プライドが、再び鎌を振り上げる。

 

その瞬間。

 

ダンテの手が動いた。

 

「……。」

 

ギュッ。

 

目の前にいたヘル=プライドの身体を、片手で掴む。

 

「え?」

 

カリンが目を丸くする。

 

次の瞬間――。

 

ドォン!!

 

ダンテがヘル=プライドを、そのまま突き飛ばした。

 

凄まじい勢いで巨体が吹き飛び、壁へ激突する。

 

バキィィィン!!

 

壁が崩壊し、ヘル=プライドの身体が砂へと変わっていく。

 

ザァァァ……。

 

「……。」

 

誰も言葉を発することができなかった。

 

ダンテは何事もなかったかのように、自分の指先を見る。

 

そこには、先ほど突き飛ばした際に外れたヘル=プライドの骸骨があった。

 

ダンテはそれを指先でくるくると回す。

 

「…………。」

 

エレンは完全に言葉を失っていた。

 

ダンテは、そんなエレンの様子を面白そうに見ながら歩き始める。

 

ザッ。

 

ザッ。

 

ザッ。

 

腕には、依然として巨大な鎌が突き刺さっている。

 

足にも。

 

胸にも。

 

それでも、歩く。

 

「……。」

 

カリンの顔が青ざめる。

 

「ダンテさん……大丈夫なんですか!?」

 

ダンテは振り返る。

 

胸に鎌が突き刺さったままだというのに、まるで何でもないことのように答えた。

 

「何が?」

 

「何がって……!」

 

カリンが震える。

 

「鎌が刺さってます!」

 

「これ?」

 

ダンテは胸に刺さった鎌を見る。

 

「まあ、ちょっと邪魔だな。」

 

「ちょっと!?」

 

その時だった。

 

ダンテは胸に刺さった鎌を握る。

 

そして、そのまま歩き出した。

 

ズルズルズル……。

 

鎌を持っていたヘル=プライドまで、一緒に引きずられていく。

 

「……。」

 

ヘル=プライドが必死に抵抗する。

 

しかし、ダンテの歩みは止まらない。

 

次の瞬間――。

 

ドガァッ!!

 

強烈な蹴り上げ。

 

引きずられていたヘル=プライドが宙へ舞い上がる。

 

「ギギッ!?」

 

そのまま後方へ吹き飛び、後ろにいた別のヘル=プライドへ激突した。

 

ドォン!!

 

「ギッ!?」

 

何体かが巻き込まれ、体勢を崩す。

 

その隙を逃さず、ダンテは胸に刺さっていた鎌へ手を伸ばした。

 

ズブッ。

 

そして、何の躊躇もなく自分の胸から引き抜く。

 

血が赤いコートへ僅かに飛び散った。

 

「……。」

 

ダンテは手にした鎌を見る。

 

「悪くない武器だ。」

 

そして、そのまま一歩踏み込む。

 

「でも。」

 

「俺には必要ない。」

 

ブンッ!!

 

巨大な鎌が一直線に振り抜かれる。

 

ガッ!!

 

一体のヘル=プライドの頭部へ、深々と突き刺さった。

 

「――!」

 

次の瞬間、その身体が砂へと崩れていく。

 

ザァァァ……。

 

そしてダンテは、ゆっくりと腕を上へ掲げた。

 

口元には、不敵な笑みが浮かんでいる。

 

「This party's getting crazy!」

 

{イカれたパーティの始まりか。}

 

「Let's rock!」

 

{派手にいくぜ!}

 

「…………。」

 

ヴィクトリア家政。

 

リン。

 

アキラ。

 

その場にいる全員が、目の前の光景を見つめていた。

 

そして、ダンテがゆっくりと振り返る。

 

「……。」

 

その瞬間。

 

全員が気付いた。

 

周囲。

 

建物の影。

 

崩れた道路。

 

瓦礫の上。

 

そこには、無数の黒い影が立っていた。

 

「……。」

 

一体。

 

二体。

 

十体。

 

二十体。

 

数え切れないほどのヘル=プライド。

 

それぞれが巨大な鎌を構え、ダンテたちを完全に包囲している。

 

エレンが鋏を握り直す。

 

「……囲まれた。」

 

ライカンの目が鋭くなる。

 

「どうやら、先ほどの数体だけではなかったようですね。」

 

カリンがチェーンソーを構える。

 

「こ、こんな数……。」

 

リナがドリシラとアナステラを前へ出す。

 

「警戒してください。」

 

アキラはイアスを操作する。

 

「リン。」

 

「うん。」

 

そして、全員の視線が中央へ向いた。

 

そこには、胸から鎌を引き抜いたばかりの男――ダンテが立っていた。

 

赤いロングコート。

 

白い髪。

 

そして、いつの間にか手にしていた背中の大剣。

 

その顔には、不敵な笑みが浮かんでいる。

 

「……。」

 

ダンテは周囲を見渡す。

 

「へぇ。」

 

「随分と集まってきたじゃないか。」

 

そして、肩を回す。

 

「こりゃ、退屈しなくて済みそうだ。」

 

無数のヘル=プライドが、一斉に鎌を構えた。

 

ダンテは、ゆっくりと拳を握る。

 

――戦いの幕が、今まさに上がろうとしていた。

 

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