悪魔も泣き出す新エリー都   作:オムライスα

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Wanna know the name?

『Devil May Cry』


第七話 悪魔

「――来いよ。ワンちゃん!」

 

ダンテが笑った。

 

その瞬間、ケルベロスが咆哮する。

 

「グォォォォォォォォォッ!!」

 

三つの頭、その口から白い冷気が噴き出した。

 

「来るぞ!」

 

11号が叫んだ。

 

次の瞬間、ケルベロスの前足がダンテへ振り下ろされる。

 

ドゴォン!!

 

「おっと。」

 

ダンテは横へ跳んだ。

 

地面が粉々に砕ける。

 

その直後、左の頭が噛みついてきた。

 

「危ねぇな。」

 

ダンテは身体を捻って回避する。

 

牙が赤いコートの裾を掠めた。

 

そのままダンテはエボニーとアイボリーを抜く。

 

「じゃあ、こっちから行くぜ。」

 

ドンッ!!

 

ドドドドドドドッ!!

 

二丁拳銃が連続して火を吹いた。

 

狙いはケルベロスの前足。

 

氷に覆われた装甲へ弾丸が次々と叩き込まれていく。

 

パキッ。

 

パキッ。

 

パキィン!!

 

氷の装甲に亀裂が走った。

 

「……。」

 

トリガーが、その音を聞き取る。

 

「氷が、剥がれています。」

 

「足を狙ってるのか。」

 

11号が呟いた。

 

「なるほど。」

 

鬼火も感心したように目を動かす。

 

『あの野郎。ただ撃ってるんじゃねぇ。』

 

『装甲を削ってやがる。』

 

ケルベロスが怒りの咆哮を上げた。

 

「グルァァァァッ!!」

 

三つの頭が同時に動く。

 

中央の頭が冷気を吐き出した。

 

左、右、中央。

 

三方向から氷の刃が飛来する。

 

「おっとっと。」

 

ダンテは身体を低くする。

 

ヒュンッ!!

 

頭上を氷柱が通過した。

 

「まだまだ。」

 

右へ、左へ。

 

一歩、また一歩。

 

次々と飛んでくる氷を、まるで踊るように避けていく。

 

「……。」

 

オルペウスは思わず目を奪われた。

 

「速い……。」

 

「しかも、まったく慌てていないであります。」

 

『あれだけの攻撃を避けながら――』

 

鬼火がダンテを追う。

 

『まだ撃ってやがる。』

 

ドドドドドドッ!!

 

エボニーとアイボリー、二丁の銃撃が再びケルベロスの足へ集中する。

 

パキッ。

 

パキィン!!

 

氷が大きく剥がれた。

 

「グォォッ!!」

 

ケルベロスが前足を振り上げる。

 

「おっと。」

 

ダンテは、その場から離れない。

 

むしろ構えを取った。

 

「……?」

 

11号が目を細める。

 

「避けない?」

 

ケルベロスの前足が真正面から振り下ろされた。

 

ドゴォン!!

 

轟音とともに粉塵が舞い上がる。

 

「――!」

 

オルペウスが息を呑んだ。

 

しかし、その中から。

 

「……。」

 

ダンテが立っていた。

 

両腕を前に構えたまま、ほとんど傷を負っていない。

 

「なっ……。」

 

11号が目を見開く。

 

トリガーも僅かに驚いた。

 

「今の……受け止めた……?」

 

ダンテはゆっくりと腕を下ろす。

 

「ロイヤルガードってやつだ。」

 

「……。」

 

『何だそりゃ。』

 

鬼火が呟く。

 

ダンテは笑った。

 

「秘密だ。」

 

「グルァァァッ!!」

 

ケルベロスが再び襲い掛かる。

 

「はいはい。」

 

ダンテは軽く跳んだ。

 

巨大な牙を避け、そのまま空中で身体を捻る。

 

「――そこだ。」

 

中央の頭。

 

その瞳が強く輝く。

 

次の瞬間。

 

「グォォォォォッ!!」

 

巨大な氷塊が口から放たれた。

 

「お。」

 

ダンテが空中でそれを見る。

 

「それは危ねぇな。」

 

氷塊が真正面から迫る。

 

ダンテは空中で身体を回転させ、ギリギリで氷塊を回避した。

 

そのままケルベロスの前足へ着地する。

 

「――もらった。」

 

リベリオンを振り抜く。

 

「ハァッ!!」

 

ザンッ!!

 

大剣が前足を切り裂いた。

 

「グォォォォッ!!」

 

ケルベロスが苦悶の声を上げる。

 

ダンテは止まらない。

 

「もう一丁!」

 

ザンッ!!

 

「まだだ!」

 

ザシュッ!!

 

一瞬、ダンテの身体が低く沈む。

 

次の瞬間。

 

ズガガガガガッ!!

 

高速の連続斬撃。

 

リベリオンがケルベロスの前足を何度も切り裂く。

 

氷の装甲が次々と砕けていく。

 

「グルァァァァッ!!」

 

ケルベロスが前足を引いた。

 

その瞬間、ダンテが地面を蹴る。

 

空中へ跳躍し、斬撃を叩き込む。

 

ザンッ!!

 

氷が大きく吹き飛んだ。

 

「……。」

 

11号が思わず言葉を失う。

 

「一人で、ここまで……。」

 

「強い。」

 

トリガーが静かに呟いた。

 

「……あの人、普通の人間ではありません。」

 

「だろうな。」

 

11号が答える。

 

「人間なら、今の攻撃で立ってはいない。」

 

ケルベロスが怒りに震える。

 

「グォォォォォォォッ!!」

 

三つの頭が一斉に動いた。

 

冷気。

 

氷柱。

 

氷塊。

 

すべてがダンテへ殺到する。

 

「へっ。」

 

ダンテは笑った。

 

「派手になってきたじゃねぇか。」

 

ヒュンッ!!

 

氷柱を回避。

 

ドゴォン!!

 

氷塊を回避。

 

ガキィン!!

 

爪をリベリオンで受け流す。

 

そして巨大な前足が、もう一度振り下ろされた。

 

「――。」

 

ダンテは動かない。

 

両手を構える。

 

ドォン!!

 

衝撃が走る。

 

だが、ダンテは微動だにしない。

 

ケルベロスの攻撃が、完全に受け止められた。

 

「……。」

 

ケルベロスが驚く。

 

「今度は。」

 

ダンテが笑った。

 

「こっちからだ。」

 

ザンッ!!

 

氷の装甲が大きく割れる。

 

続けてブンッ!!

 

空気を裂く斬撃がケルベロスの身体へ飛んだ。

 

「グォォォッ!!」

 

さらに。

 

「――まだだ!」

 

ダンテが踏み込む。

 

ザンッ!

 

ザシュッ!

 

ズバァッ!!

 

連続斬撃。

 

氷が次々と剥がれていく。

 

そして最後の一撃。

 

ズガァン!!

 

ケルベロスの前足から、巨大な氷の塊が吹き飛んだ。

 

「グォォォォォッ!!」

 

ケルベロスが大きくよろめく。

 

「今だ。」

 

ダンテが銃を構えた。

 

エボニー。

 

アイボリー。

 

「少し、冷やしてやるよ。」

 

ドンッ!!

 

ドドドドドドドドッ!!

 

今度は頭部。

 

三つの頭へ、正確に銃弾が撃ち込まれる。

 

パキッ。

 

パキィン。

 

氷に亀裂が走った。

 

「……。」

 

トリガーが息を呑む。

 

「頭部の氷装甲。剥がしにいっています。」

 

「徹底してるね。」

 

シードが楽しそうに言う。

 

「弱点を一つずつ壊してる。まるで整備作業みたい。」

 

鬼火が呆れたように口を開く。

 

『あんなデカブツ相手によく冷静でいられるな。』

 

「それが。」

 

11号がダンテを見る。

 

「奴の強さなんだろう。」

 

その時、ケルベロスの中央の頭が大きく口を開いた。

 

「グォォォォォォォォッ!!」

 

巨大な冷気が一気に噴き出す。

 

「来る!」

 

オルペウスが叫ぶ。

 

だが、ダンテは笑っていた。

 

「――遅ぇ。」

 

身体を捻る。

 

冷気がすぐ横を通過する。

 

ダンテはそのままケルベロスの懐へ入った。

 

「いただき。」

 

リベリオンを大きく振り上げる。

 

ズバァン!!

 

斬撃が中央の頭部を直撃した。

 

氷が大きく剥がれる。

 

「今度は。」

 

エボニーとアイボリーを構える。

 

「こいつだ。」

 

ダンテはトリガーを引いた。

 

しかし、先ほどとは違う。

 

銃口に赤い光が集まっていく。

 

「……?」

 

オルペウスが目を丸くする。

 

「弾が……光って……。」

 

鬼火も目を見開いた。

 

『おいおい。』

 

『あれは銃弾じゃねぇぞ。』

 

ダンテが呟く。

 

次の瞬間。

 

「――食らえ。」

 

ドンッ!!

 

ドンッ!!

 

強烈な魔力弾がケルベロスの頭部へ直撃する。

 

ズガァン!!

 

ズガァン!!

 

氷の装甲が一気に砕け散った。

 

「グォォォォォォォッ!!」

 

三つの頭が苦しげに吠える。

 

ダンテはそのままリベリオンを構えた。

 

「まだ終わりじゃねぇぞ。」

 

一歩、踏み込む。

 

「――!」

 

ザンッ!!

 

ズバァッ!!

 

ザンッ!

 

ザシュッ!

 

ズガァン!!

 

三つの頭へ斬撃が次々と叩き込まれる。

 

氷の装甲が完全に剥がれ落ちていく。

 

「グォォォォォォォッ!!」

 

ケルベロスが大きく身体を震わせた。

 

そして。

 

――ドォン!!

 

巨大な身体が地面へ倒れた。

 

「……。」

 

静寂。

 

「倒れた……?」

 

オルペウスが呟く。

 

シードがビッグ・シードの中から楽しそうに声を上げる。

 

「ダウンだね。」

 

「今がチャンス。」

 

11号が構える。

 

「援護する。」

 

だが、ダンテは片手を上げた。

 

「いや。」

 

「こいつは俺がやる。」

 

ケルベロスは地面に倒れたまま、三つの頭を動かそうとしている。

 

しかし、まだ起き上がれない。

 

ダンテはその身体へゆっくり歩いていく。

 

「昔から、お前は頑丈だったよな。」

 

リベリオンを肩へ担ぐ。

 

そしてエボニーとアイボリーを構えた。

 

「だから、もうちょっとだけ付き合ってもらうぜ。」

 

ドンッ!!

 

ドンッ!!

 

魔力を込めた弾丸が撃ち込まれる。

 

ドンッ!!

 

ドンッ!!

 

再び頭部へ。

 

氷の欠片が宙を舞う。

 

「グル……。」

 

ケルベロスが呻く。

 

ダンテは止まらない。

 

「もう一発。」

 

魔力が二丁拳銃へ集まる。

 

ズガァァァァン!!

 

強烈な一撃が中央の頭へ直撃する。

 

氷が完全に砕け散った。

 

続けて左右の頭。

 

ドンッ!!

 

ドンッ!!

 

氷が粉々になる。

 

「……。」

 

ケルベロスの頭部が完全に露出した。

 

ダンテは銃を下ろす。

 

「よし。」

 

そしてリベリオンを構えた。

 

「仕上げだ。」

 

その瞬間。

 

「グォォォォォォォォォッ!!」

 

ケルベロスが咆哮した。

 

巨大な身体が再び立ち上がる。

 

「……!」

 

オルペウスが後退する。

 

「立った!」

 

ケルベロスが三つの頭を振る。

 

氷の破片が周囲へ飛び散った。

 

その目には、まだ闘志が残っている。

 

「ダンテ……。」

 

「貴様。」

 

「やはり強いな。」

 

ダンテが笑う。

 

「今さら気付いたのか?」

 

「……。」

 

ケルベロスが牙を剥く。

 

「ならば。」

 

「最後まで。」

 

「戦おう。」

 

「上等。」

 

ダンテがリベリオンを構える。

 

ケルベロスが三つの頭から同時に冷気を吐き出した。

 

「グォォォォォォォォォッ!!」

 

巨大な氷が周囲を覆っていく。

 

ダンテは真正面から駆け出した。

 

「――行くぜ!!」

 

冷気を跳び越える。

 

氷柱をリベリオンで斬り飛ばす。

 

そしてケルベロスの首元へ踏み込んだ。

 

ズバァッ!!

 

ケルベロスの二つの首が切り落とされる。

 

巨大な身体が大きくよろめいた。

 

そして。

 

――ドォン!!

 

ケルベロスが再び地面へ倒れた。

 

今度は立ち上がらない。

 

「……。」

 

静寂。

 

氷の粒が雪のようにホロウの空間へ舞い落ちていく。

 

ダンテはリベリオンを肩へ担いだ。

 

「……。」

 

そして、倒れたケルベロスを見下ろす。

 

「終わりだ。」

 

ケルベロスは三つの頭を僅かに動かす。

 

その目から戦意が消えていく。

 

「……見事だ。」

 

低い声が響く。

 

「やはり。」

 

「我が認めた男。」

 

ダンテが僅かに目を細める。

 

「覚えてたか。」

 

「忘れるものか。」

 

「……。」

 

ケルベロスはゆっくりと目を閉じた。

 

そして、その身体を覆っていた氷が淡い光を放ち始める。

 

「……?」

 

オルペウスが息を呑む。

 

「何かが起きているであります。」

 

鬼火が警戒する。

 

『全員、構えろ!』

 

だが、ダンテは動かなかった。

 

ただ静かにケルベロスを見ている。

 

「……。」

 

やがて巨大な身体が光の粒子へと変わっていく。

 

そして、その光がダンテの手元へ集まり始める。

 

光の中心から現れたのは、三つの棍を繋ぎ合わせた奇妙な武器だった。

 

「……。」

 

ダンテがそれを掴む。

 

氷の冷気が周囲へ広がった。

 

「……こいつ。」

 

ダンテは、その武器を眺める。

 

オルペウスが思わず尋ねた。

 

「……それは?」

 

ダンテは武器を軽く回す。

 

氷の軌跡が空中に描かれた。

 

「Too easy!」

 

「……。」

 

11号、トリガー、シード、オルペウス、そして鬼火。

 

全員が言葉を失った。

 

鬼火だけが、しばらくして口を開く。

 

『……待て。』

 

『さっきまで戦ってた化け物が、武器になっただと?』

 

ダンテがニヤリと笑う。

 

「そういうこと。」

 

『……。』

 

鬼火の目が白目を剥く。

 

『意味が分からねぇ!!』

 

「ははっ。」

 

ダンテは楽しそうに笑った。

 

その姿を、オルペウスは呆然と見つめていた。

 

「……。」

 

そして、ふと先ほど自分を庇った時のことを思い出す。

 

「……ダンテさん。」

 

「ん?」

 

「助けていただいて、ありがとうございました。」

 

ダンテは振り返る。

 

そして軽く手を振った。

 

「気にすんな。」

 

「これもデビルハンターの仕事だからな。」

 

「……。」

 

11号がダンテを見る。

 

「デビルハンター?」

 

「そう。」

 

ダンテはケルベロスだったものを手に持ちながら答えた。

 

「悪魔を狩る。」

 

「それが俺の仕事だ。」

 

トリガーが静かに呟く。

 

「……悪魔。」

 

彼女には、ダンテから今まで感じたことのない奇妙な波動が感じ取れていた。

 

人間とは違う。

 

しかし、エーテリアスとも違う。

 

そして、ケルベロスともまた違う。

 

「……あなたは。」

 

トリガーがダンテへ問いかけようとした。

 

その時だった。

 

鬼火隊長が銃口をダンテへ向けた。

 

『――動くな。』

 

「……。」

 

ダンテの動きが止まる。

 

鬼火の赤い銃身、その口がゆっくりと開いている。

 

銃口の奥には、エネルギーが集まり始めていた。

 

『お前。』

 

『あの化け物のことを知っていたな。』

 

「……まあな。」

 

『それだけじゃねぇ。』

 

鬼火の三次元的な目がダンテを睨みつける。

 

『あの化け物が何者なのかも知っている。』

 

「……。」

 

『なら話は早ぇ。』

 

『お前には聞きたいことが山ほどある。』

 

ダンテが首を傾げる。

 

「質問なら、一つずつ頼むぜ。」

 

『ふざけるな。』

 

「おっと。」

 

ダンテが両手を軽く上げる。

 

「怖いねぇ。」

 

『……。』

 

鬼火の目が細くなる。

 

「なあ。」

 

「銃を向けるなら、もう少し優しくしてくれよ。」

 

『黙れ。』

 

即答だった。

 

オルペウスが思わず口を挟む。

 

「姉さん。」

 

『何だ。』

 

「その……。」

 

「この方は先ほど私を助けてくれたのであります。」

 

『それは分かってる。』

 

鬼火は銃口を下げない。

 

『だからって、信用できる理由にはならねぇ。』

 

「……。」

 

11号が静かに頷く。

 

「同意する。」

 

ダンテがそちらを見る。

 

「おいおい。」

 

「そっちの嬢ちゃんまでか?」

 

11号の眉が僅かに動く。

 

ダンテは肩をすくめた。

 

『お前は未知の存在と会話していた。』

 

『しかも、あの巨大な化け物を知っている。』

 

『その怪物から発生した武器もだ。』

 

『なら、お前は重要参考人だ。』

 

『防衛軍に来てもらう。』

 

ダンテは少し考える。

 

そして、ニヤリと笑った。

 

「いやぁ。」

 

「俺、軍隊って苦手なんだよ。」

 

「堅苦しいだろ?」

 

『……。』

 

「それに。」

 

ダンテはケルベロスだったものを肩に担ぎ直す。

 

「こいつを持って帰らなきゃならないしな。」

 

鬼火の目がぎょろりと動く。

 

『……お前。』

 

『話を聞いていたか?』

 

鬼火の顎がピクリと動く。

 

オルペウスは嫌な予感を覚えた。

 

「姉さん。」

 

『……。』

 

「落ち着くであります。」

 

『私は落ち着いてる。』

 

「その顔は、全然落ち着いてないであります。」

 

『今すぐ撃ち抜いてやろうかと思ってるだけだ。』

 

「それは落ち着いていないであります!」

 

シードがビッグ・シードの中から楽しそうに笑う。

 

「ははは。」

 

「面白いね、鬼火隊長。」

 

『何だ、シード。』

 

「この人、たぶん隊長の言うこと聞かないよ。」

 

『分かってる。』

 

「じゃあ、どうするの?」

 

『連れて帰る。』

 

「力ずく?」

 

『必要ならな。』

 

その言葉と同時に、周囲の兵士たちが一斉に武器を構えた。

 

カチャッ。

 

カチャッ。

 

銃口がダンテへ向けられる。

 

11号もナタを構える。

 

トリガーはプレゲトーンを握った。

 

オルペウスは大型ナイフを構えながら鬼火を見つめる。

 

「姉さん。」

 

『……。』

 

「本当にやるのでありますか?」

 

『任務だ。』

 

「ですが……。」

 

『オルペウス。』

 

鬼火の声が少し低くなる。

 

『こいつは悪人とは限らねぇ。』

 

『だが。』

 

『だからこそ、何者なのかを確かめる必要がある。』

 

「……。」

 

鬼火はダンテを睨む。

 

『未知の存在がホロウ内に大量発生している。』

 

『その中で、その化け物のことを知っている男が現れた。』

 

『偶然で済ませるには、出来すぎてる。』

 

「……。」

 

ダンテは黙って聞いていた。

 

そして小さく息を吐く。

 

「なるほどな。」

 

「ちゃんと軍人してるじゃねぇか。」

 

『当たり前だ。』

 

「……。」

 

『お前が何者なのか。』

 

『全部話してもらう。』

 

ダンテが鬼火を見る。

 

「全部?」

 

『ああ。』

 

「そりゃ。」

 

ダンテは再び笑った。

 

「長い話になるぜ?」

 

『構わねぇ。』

 

「じゃあ、ピザでも食いながら――。」

 

『食わない。』

 

「……。」

 

ダンテが少しだけ残念そうな顔をする。

 

「軍人ってのは、本当に融通が利かねぇな。」

 

『何とでも言え。』

 

「……。」

 

ダンテがゆっくりと両手を下ろす。

 

周囲を見る。

 

大量の銃口。

 

11号。

 

トリガー。

 

オルペウス。

 

そしてビッグ・シード。

 

逃げ道は、ほとんどない。

 

だが、ダンテは怯えていなかった。

 

笑みを浮かべたまま、一歩も引かない。

 

ホロウの奥で、氷の粒が静かに舞い落ちていく。

 

その場には、不穏な空気だけが残っていた。

 




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