夜明け前、火の海と化した街の中心で、ゴジラ=アースは動きを止めた。
それは獣が水を飲むときの格好に似ていた。膝を折り、上体を低くし、地面へ覆いかぶさるような姿勢を取る。
「……何をする気だ」
サカキの呟きと、それの開始はほとんど同時だった。
垂れた頭が持ち上がり、顎が開いて光の輪が凝縮される。狙いは水平ではない、真下だ。足元めがけて撃ち放たれた放射熱線が、自らの足元のアスファルトへ突き立った。
地面が、爆ぜた。
舗装が消し飛び、下水管が捲れ上がり、砂と鉄骨が噴水のように吹き上がる。それでも熱線は止まらず、同じ一点を穿ち続ける。地層が抜け、土が抜け、岩盤が焼けて赤く溶ける。
やがて熱線が止んだとき、街の中心には直径二百メートルを超える巨大な竪穴が開いていた。縁が溶けたガラス質に光り、底が見えない。
ゴジラ=アースはその穴の縁に立ち、そして裂けるように顎を開いて、喉の奥から赤黒い触手を垂らしはじめた。
そのものは、飢えていた。
紫の光は取り逃がした。あれこそが最後の勘定であり、あれさえ取り込めば器は満ちたはずなのに、小さな鉄の鳥どもがそれを掠め取っていった。
そして今、そのものの内側は空に近い。水棲類、両生類、陸生類、三つのものから受け継いだ力はあの重い雨に揺さぶられたためにこぼれ落ちて、街を焼くのに使い果たしてしまった。。
真上を見る。
そのときが来るまでに器は満ちていなければならない、生まれる前からそう決まっている。間に合わなければこれまでのすべてが無駄になる。
このままではいけない。
ならば、この星から取るまでだ。
地の底には星の動脈がある。溶けた岩の川、圧された熱、この星が生まれたときから溜め込んできた古い熱量。生き物の血のように濃くはなく、粗く、雑で、効率が悪い。だが量は無限に近い。触手が穴の底の赤い光へ届き、星の血潮が流れ込んでくる。
そのものは、身を震わせた。
粗い熱が食道を通り、腹の底の空っぽへ落ちていく。うまいとは思わなかったが、ただ満ちていく感覚だけがあった。皮膚が張り、骨が伸び、細胞が割れて増える。増えた身体は、より多くを溜められる器になる。
もっとだ。
もっと満たせ。もっと大きく。そのときが来る前に。
そのものは、地の底から星を飲みながら静かに育ちはじめた。
「……信じられん」
三時間後、指揮所のモニターを見つめたままサカキが呟く。
その隣でタニ=ユウコ少佐が、震える指で数値を指した。
「観測結果は同じです。目標は地面に開けた直径二百メートルの穴から、熱エネルギーを吸収しています。竪穴の直下は旧火山帯の脈です。深度千メートル付近に高温層があることは地質調査で分かっていましたが……あれは、そこへ届いています」
「吸って、どうしている」
「成長しています」
タニは、二枚の画像を並べた。
「上陸時、全高百メートル。六時間前、百十メートル。三時間前、百十五メートル。現在、百二十メートル……まだ止まりません」
指揮所が静まり返り、誰かが椅子を鳴らした。誰も何も言わなかった。数字の意味が全員の腹に落ちるのに数秒かかったからだ。
ゴジラは成長している。その後も際限なく。
「偵察機を出せ。あの穴の様子を、直接見たい」
その後、偵察機は三機出したが、三機とも帰ってこなかった。
映像の最後は、どれも同じだった。廃墟の谷間を縫って接近し、距離千五百、千二百。ゴジラは振り向きもしなかった。そこで尾の先端が割れて閃光を放ち、細い青い光の一条が正確に機体を迎撃した。頭は穴に向かって垂れたまま、地中から吸い続けたまま、尾だけが独立した砲塔のように持ち上がった。
「意識は、あるのか」
「分析班は『ない』と言っています。脳波相当の反応は、食事に集中している状態そのもので……防御反射だけが、独立して作動していると」
「眠りながら食って撃つ、ということか。器用だな」
燃え尽きた街の真ん中に、誰も近づけない空白の円が生まれていた。円の中では、溶けたガラスの竪穴に触手が垂れ、その上で山が育っている。円の外では、人類が遠巻きにそれを見ていることしかできない。
そして、そのそばの報告書にはもう一行あった。
『モナークの協力者。深昏睡。全身の熱傷および翅の損壊。意識回復の見込み、不明』
ヒーローは眠り、災厄は食事をし、街だけが燃えている。そういう夜明けだった。
連合政府統合幕僚部との回線が開いたのは、その日の午後だった。
回線の向こうの声は、事務的だった。
〈現状の推移を考慮し、戦術核の使用を選択肢に含めることとした。目標は現在ほぼ静止状態にあり、位置は固定されている。周辺住民の避難は完了済み。これ以上の巨大化を許せば、我々の保有するいかなる通常兵器も無意味になる。現時点が、最後の機会である可能性が高い〉
「発言、よろしいでしょうか」
〈なにかね、タニ少佐〉
タニ少佐は静かな口調のまま、楔を打つように言った。
「核の使用には断固反対します。理由は三つ。第一に、あれは受けた攻撃をすべて学習し、次に活かしてきた種です」
タニは、四体分の戦闘記録を並べた。
「アクアティリスはメーサーへの耐性を持っていませんでしたが、アンフィビアは持っていました。続くテレストリスは、生体反応装甲……そしてゴジラ=アースは、それらを上回る対策としてメタマテリアルシールドを持っています。核を使って仕留められなければ次は核兵器に対応してくる可能性がある」
〈それは通常兵器の話だろう。さしものゴジラといえども核なら……〉
「怪獣黙示録時代、オリジナルのゴジラのことをお忘れですか。あの生物はもともと水爆や原爆に耐える生物だったんですよ? その後継であるゴジラ=アースが同じ耐性を持っていないとどうして言えるんです」
〈だが停止状態の今なら――〉
「第二に、場所です」
タニは、断面図を投影した。街の中心の竪穴と、その真下へ伸びる地脈。
「目標は現在、深度千メートルの高温層に接続しています。その直上で戦術核を使用した場合、地下構造に何が起きるか、地質班は『試算不能』と回答しています。最悪の想定は、地脈への通路が拡大することです。あれの食事を、我々が手伝う結果になりかねません」
〈…………〉
「そして第三に」
タニは、一拍おいた。
「仮に、すべてが理想的に運んだとしましょう。核攻撃が通用し、ゴジラが倒されたとします。そのあと、あの土地はどうなりますか」
〈……何が言いたいのだね〉
「新東湾中央区。人口三十二万。今は全員が避難所にいます。住民たちはいつか帰るつもりでいる。焼けた家を建て直すつもりでいるはずです。しかしそこへ核を落とせば、放射能で汚染される。あの人たちは自分たちの住んでいた街に二度と帰れなくなります。今ならまだ三区の除染で済みますが、核を使えばそれも難しくなります」
回線の向こうが、初めて言葉に詰まった。
「街を犠牲に怪獣を倒す。それでゴジラを倒したとして、住んでいた町や故郷に帰れなかったら、我々は何を守ったことになるんですか」
〈…………。〉
回線の向こうが沈黙し、サカキが静かに付け加えた。
「……現場指揮官として、タニ少佐の分析に全面的に賛同します。核は最後の手段ですらない。最悪の判断です」
〈では、どうするのだね。中佐に代案があるのか〉
「あります」
サカキは、モニターを見返した。
「三日、時間をください。核を使わずに殺す方法です」
回線が切れたあと、指揮所の大型モニターにこの二日間の戦闘記録がすべて並べられた。
メーサーの照射記録。バトラの光線の記録。爆撃時の応答。暴走の瞬間の熱量変化。偵察機撃墜の三件。分析班とタニ少佐が徹夜で洗い直したデータの束を、サカキは腕を組んで一つずつ見ていった。
「まず、あれのメタマテリアルシールドの正体から」
タニが、ゴジラの体内電磁波をスキャンした映像を映した。バトラのプリズム光線が直撃して防がれた瞬間の映像である。
「これを見てください。ゴジラの体内電磁波は平時は安定していますが、一定以上のダメージを受けると波形が変調しています」
「テレストリスの生体反応装甲とは違うのか」
「それとは次元が違います。ゴジラ=アースの皮膚自体がまず頑強ですが、それでも防ぎきれない衝撃を受けた場合、表皮下に電磁的な構造体を形成し、入射する物理的干渉や光線の進路を任意に曲げて受け流しているものと推定されます」
「攻撃を受け流す……なるほど、それが奴のメタマテリアルシールドの正体か」
サカキは眉を寄せた。往年の怪獣黙示録時代において、オリジナルのゴジラは百発以上の核ミサイルによる飽和攻撃にも耐えている。あるいはその桁外れの防御力の正体は、このシールドだったのかもしれない。
「シールドの発生源は? 発生している器官があるはずだろう、どこから出ている?」
「それもバトラのおかげで特定できています」
タニは、別の解析画像を出した。
背鰭である。バトラのプリズム光線を受けた刹那、三列に並んだ突起の一つ一つが周期的に明滅している。
「シールドが形成される直前、背鰭の発光パターンが移動し、電磁波の波形の変動も背鰭から生じています。根元から先端へ、一列ずつ」
「背鰭が発生器か」
「はい。そして、ここが重要です」
タニは、明滅の記録を時間軸に沿って並べた。波形が、規則正しい山を描いている。
「明滅には、周期があります。三列が順に発光し、一巡して、また戻る。この一巡のあいだ、シールドの密度が均一ではありません」
「防御の薄い瞬間がある、ということか」
はい、とタニ少佐は頷いた。
「あります。周期の切り替わり、三列目が消えて一列目が立ち上がるまでのおよそ〇・四秒。この間、背鰭そのものが露出します」
指揮所が、静かになった。
「〇・四秒か」
「はい。手動照準では不可能です。ですが、周期は安定しています。ゲマトロン演算で予測できます」
「背鰭を落とせば、シールドは」
「消えます。少なくとも、再構成までの時間は稼げます」
サカキは、モニターの前に立った。
「では、シールドを剥いだあとはどうする。シールドがなくても単なる飽和攻撃ではびくともしない奴だぞ」
「そこで、これを」
タニは、最後の資料を投影した。巨大な銛のような兵器が映し出されている。
「EMPハープーン。着弾後に内部で強力な電磁パルスを発生させる、貫通型の対怪獣弾頭です。これを撃ち込んで体内電磁波を乱せば……」
「ゴジラは暴走状態に陥って自滅する、と?」
「理論上は。ただし、シールドが生きているうちはEMPハープーンも防がれる可能性が高い。まずはシールドを発生させ、タイミングを同期し、背鰭を破壊してシールドを破る必要があります」
サカキは、しばらく黙っていた。
この数日、頭の底でばらばらに転がっていたものがいま形になった。
「……整理する」
彼は、モニターの前を歩いた。
「第一に、補給を断つ。あの触手と地脈のあいだを断つ」
「しかし、どうやって? ドローンですら自動迎撃されて近づけませんよ」
「ああ、地表から穴に近づくのは不可能だ。……だが、地面の下からなら?」
タニ少佐が、目を見開いた。
「ランドモゲラー、ですか」
ランドモゲラーは、Mプロジェクトの片割れとして開発が進められている地底戦闘車だ。地中を時速六十キロという速度で掘り進み、地上で暴れる怪獣の死角となる足元を突く構想で設計された。
「第二に、シールドを剥ぐ。周期は演算できるのだろう」
「できます。ただし、〇・四秒に確実に当てるには、目標の注意を逸らして姿勢を固定させる必要があります」
「囮を出す。全国から集めた無人機を全部飛ばせ。飛べて、あれの視界に入るものなら何でもいい。玩具だろうが農薬散布機だろうが構わん」
「必要数の試算、出します……三千から四千機、です」
「四千で足りなければ八千だ。防衛省、警察、放送局、農協、模型店、個人。手段は問わん。タニ少佐、輸送計画を頼む」
「はい」
「第三に、背鰭を落とす。メーサー戦車隊を投入する。〇・四秒の窓に、全隊で同時に撃ち込め」
サカキは、モニターの隅に映るものを見た。工廠の格納庫で出撃命令を待ち続けている、白銀の巨大な機体を。
「そして第四に、EMPハープーンだ」
彼は言った。
「Mプロジェクト、起動準備。三日で仕上げろ」
避難所の朝は、放送で始まる。
『……おはようございます。本日の配食は八時より、体育館入口にて……』
段ボールの仕切りの中で目を覚まして、最初の数秒ここがどこだか分からなくなる。天井が高くて、知らない人の咳が聞こえて床が固い。ああそうだ、避難所だ、と思い出して、それから毎朝同じことを考える。
……家、まだあるかな。
うちの街区は燃えた区域から二キロ離れているから。たぶん無事だ。たぶん。でも「たぶん」のまま、確かめに帰ることはできない。あの巨体が街の真ん中に立っている限り、半径何キロかは立入禁止のままだ。
避難所の生活は、四日目に入っていた。
配食の列に並ぶ。順番が来たら、おにぎりと味噌汁を受け取る。ママは炊き出しの手伝いに入り、パパは町内の人たちと物資の仕分けをやっている。わたしは小さい子たちの相手をしたり、お年寄りの荷物を運んだりする。みんな、何かしらやることを見つけて動いている。動いていないと考えてしまうからだ。
たとえば、こういうことを考えてしまう。
……一週間前、わたしたちは縁日にいた。屋台で遊んで、盆踊りを踊って、花火を見上げていた。あの夜提灯の下を歩いていた人たちも、今ごろどこかの避難所で固い床に段ボールを敷いて寝ている。楽しい夏祭りと避難所のあいだには、たった数日しかなかった。
平和って、こんなに薄かったんだ。
学校があって、売店のメロンパンがあって、放課後があって、夕飯の唐揚げがあって。あれら全部が薄い薄い氷の上に載っていただけだったなんて、氷が破れるまでわたしはちっとも知らなかった。
そして怪獣黙示録を生きた大人たちは、たぶんずっと知っていたのだ。パパもママも避難の手順を「訓練どおり」にこなせた。あの手際は知っている人の手際だった。
テレビは、一日じゅうあの映像を流している。
燃え尽きた街の中心に開いた、巨大な穴。その縁に立って、地面へ口をつけているゴジラ。
〈……専門家によりますと、巨大生物は地下の熱エネルギーを吸収しており、これに伴って体組織が増大しているとみられます。政府の発表では、本日午前六時の観測で全高およそ二百二十メートル。上陸時の、およそ二倍……〉
画面の下に、折れ線グラフが出る。日ごとに右上がりの、あの数字。
避難所のどこかで、舌打ちが聞こえた。
「二倍って、なんだよ」
「対処するって言ってたじゃないか。四日間、何もしてないだろ」
「爆弾も効かなかったんだろ。あんなの、どうやって」
何も言えないまま、わたしは配食の列で味噌汁を受け取る。
スマホだけが、外との回線だった。
【カンナ】ねえ見た? ドローンのニュース
【カンナ】政府が民間のドローン募集してるやつ 怪獣対策に使うって
【わたし】見た。何に使うんだろ
【カンナ】わかんないけど あたしのドローン供出した 三号機
【カンナ】ってか聞いて チャンネルで呼びかけたら視聴者がめちゃくちゃ応えてくれてる
【カンナ】「うちの倉庫に農薬散布用がある」とか「息子のラジコン使ってくれ」とか DMがめっちゃ超えた
【カンナ】リスト作って窓口に送った あたしにできるの これくらいだからさ
【アヤノ】カンナちゃん、すごいねぇ
画面の向こうのカンナがどんな顔でこれを打っているか、分かる気がした。一千人のチャンネルが、数字じゃなくて回線になっている。
【アヤノ】うちはね、会社のホテルを避難してる人たちに開けることになったの わたしもお布団運びのお手伝いしてる
【アヤノ】ツグミちゃんたちも、もし避難所が大変だったら、来て? お部屋、用意できるから
【わたし】ありがと。でも大丈夫。ここ、意外と快適だよ
【アヤノ】ほんとに? 無理してない?
【わたし】してないしてない。ママが炊き出し仕切りはじめて、もはや第二の台所と化してる
【アヤノ】ツグミちゃんのお母さんらしいね
ふいにアヤノがこんなことを言った。
【アヤノ】バトラちゃんと連絡ついてる?
指が、止まった。
既読だけつけて、しばらく画面を見ていた。アヤノは何も知らない。知らないけど、バトラがこのチャットに一度も現れないことには気づいている。
前のようにアヤノに嘘を吐くことは出来たけれど、ついたところで見抜かれる気がしたし、なにより言えないときは言えないと伝える約束だから正直に言った。
【わたし】ついてない。ごめん、それ以上は話せない
数秒ほどの間があって、アヤノから返信があった。
【アヤノ】うん、わかった。待ってる
【アヤノ】無事だと、いいね
……通じたのだろうか、なんてことを思いながらわたしは安堵の溜息をつく。
それからチャットの一覧のいちばん上を開く。【バトラ】。最後のメッセージはあの夜のわたしの「気をつけて」。
三日間、既読はついていない。
わたしは毎晩ひとつだけ送ることにしていた。返事は期待しないし、既読も期待しない。ただ、あいつが目を覚ましたとき通知が溜まってたら、うるさくてちょっと笑うかなと思って。
【わたし】今日の炊き出し、豚汁だった。里芋がごろごろ入ってて、たぶんあんたなら「三段階」とか言い出すよ
【わたし】おやすみ
【わたし】焼き芋、忘れてないからね
送信。既読はつかない。
段ボールの仕切りの天井を見上げて、わたしは目を閉じた。生きてる。あいつは生きてる。だってまだ「必ず」を果たしてない。嘘のつけないあいつが、嘘をついたままでいられるわけないのだ。
三日後の、夜明け前だった。
「全部隊へ。〇六〇〇、反転攻勢を開始する」
封鎖された幹線道路を、超大型輸送車の列が地響きを立てて進んでいた。
分割された装甲。畳まれた腕部。コーン状の頭部を覆う保護幕が、明け方の風にはためいている。三日三晩、工廠から不眠不休で運ばれてきたものが燃えた街の入口で組み上がろうとしていた。
クレーンが唸り、装甲が接合される。両脚が大地を掴み、胴体が起こされ、頭部の保護幕が外れる。
朝日が、白銀の機体を頭頂から順に照らしていった。
全高、六十メートル。対G用決戦機動兵器。
Mobile Operation Godzilla Expert Robot Aero-type、略称:
燃え尽きた街を背にして立つ白銀とブルーダイヤ装甲のロボット怪獣を、指揮所の全員が無言で見上げていた。
この夏、届かない砲を撃ち続け、燃える街から人間を運び出すことしかできなかった男たちが、生まれて初めて怪獣と直接殴り合える味方を見上げていた。
誰も何も言わなかったが、指揮所の空気が変わったのがサカキには分かった。
「……中佐」
タニ少佐が、搭乗員名簿の端末を差し出した。機長の欄は空白のままだ。
サカキはそこへ自分の名を入れて、返した。
「……タニ少佐。地上の全指揮を預ける」
「……はい」
タニ少佐は端末を受け取り、それから一度だけ、確かめるように言った。
「あれは、二百四十メートルまで育っています。MOGERAの四倍です」
「知っている」
「勝算は」
「作戦どおりにやれば、ある」
サカキは指揮所を出た。朝日の中、白銀の巨人の足元へ歩きながら、彼は一度だけ燃えた街の中心を見た。巨大な穴の縁で、ゴジラ=アースが地面に口をつけまだ育っていた。
幼少期、丘の上で両親の上着を握りしめていた子供への答え。
その答えが今、書き上がった。
好きなキャラは?
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バトラ
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ツグミ
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カンナ
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アヤノ