神器がバスタオルだなんて聞いていない! ボロ宿から始める、温泉宿✖️異世界バトルファンタジー   作:maiboo

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第6話 新しい仲間

 

 カイはタオルを掴み、勢いよく外へ飛び出した。

 

 夜風が肌を刺す。

 昨夜の戦闘の余韻が、まだ街の空気に重く残っていた。

 

「どこだ!?」

 

 剣士が指差した先──

 

 そこにいたのは、

 

 ちょこん、と座る白い影。

 

「……あれ?」

 

 あれほど暴れ狂っていた黒獅子が、

 黒紋を吸い取られた結果──元の“白獅子”へ。

 

 その巨大な身体は嘘のように落ち着き、

 まるでカイを待っていたかのように静かに尾を揺らしていた。

 

「おまえ……待ってたのか?」

 

 白獅子はふわりと立ち上がり、

 犬のように柔らかい目をして、カイへ歩み寄る。

 

 そして──そっと頭を擦りつけてきた。

 

(黒紋が消えたことで正気に戻った……? 

 いや、それだけじゃない。意思が……通じてる?)

 

 胸の奥がじんと熱くなる。

 

「……感謝、してるってことか?」

 

 白獅子は小さく鳴き、頷くように見えた。

 

 周囲で武器を構えていた剣士たちも、ため息をつく。

 

「す……すげえ、あの怪物と同じ生き物とは思えない……!」

 

「でも黒紋……あの黒いオーラはいったい……」

 

 カイの疑問に、剣士のひとりが答えた。

 

「発生源は特定できていません。ですが、何らかの闇のエネルギーが及んでいるのは確実です。それを受け続けたモンスターはアビス化し、侵食が進むと体に黒紋が刻まれます。この黒紋持ちこそ……アビス化を超えた、真の危険種と言われています」

 

「闇のエネルギー……そんなものが、いったいどこから……」

 

「はい……特に元が凶暴なモンスターは、影響が強く出る傾向がありまして──」

 

 その時。

 

「カイさん!」

 

 ノクタニアの人々が駆けつけてきた。

 昨夜の戦闘で負傷した仲間を抱えている。

 

「黒獅子を倒してくださったおかげで命は助かりました。でも……まだ治療が必要で……!」

 

 カイの脳裏に浮かぶ。

 

 ──微癒の湯化。

 湯に触れるだけで、軽度の傷を回復させる力。

 

「……この宿の風呂、使わせてください。みんなを連れてきて!」

 

 浴場へ人々を案内し、布丸を湯へ浸す。

 

《特殊スキル【微癒の湯化】》

 

 淡い桜色の光がふわりと湯の表面を染めた。

 

 湯に入った人々が、一斉に息をのむ。

 

「……あれ? 痛みが……薄い……」

「体が軽い……! 疲れが消えていく……」

「すげぇ、本当に……癒やされてる……」

 

「それにしてもカイさん、そのバスタオル……やっぱり神器ですよね!?」

「黒獅子を倒し、回復の湯まで作るタオルなんて前代未聞ですよ!」

「もうタオル界のトップです!!」

 

「タオル界ってどんな界隈だよ!」

 

 浴場に温かな笑いが広がった。

 

 ──けれど。

 

 湯気の奥で、カイは静かに思考する。

 

(もし……この湯をもっと大きな場所で使えたら……)

 

 癒せる人の数は、もっと多くなる。

 

 剣士の一人が言う。

 

「黒獅子は倒れましたが、ほかの地域では黒紋・アビス化の被害が続いています。昨夜も話したんです……カイさんの湯が大都市にあれば、状況が変わるかもしれないって」

 

 さらに続けた。

 

「北には中都市セレンティア、その先には大陸最大の都市──首都ソルテミアがあります。そこなら……あなたの力がもっと多くの人を救うはずです」

 

 カイは拳を握る。

 

「……行くよ。ソルテミアへ。

 俺の温泉で……助けられる人がいるなら……。たくさんの人を笑顔にできるなら」

 

 翌朝。

 

 街は少しだけ明るさを取り戻し、

 人々はカイに深々と頭を下げていく。

 

 旅支度を整えたカイの横に──白獅子がついてきた。

 

「いや、お前はデカすぎて街で大騒ぎになるって……」

 

 白獅子は数歩下がり、

 静かに目を閉じる。

 

 そして──白い光に包まれた。

 

 光が晴れる。

 

 その場にいたのは、

 

 手で抱えられそうなサイズの──

 白い猫のような、小さな獅子。

 

 青く澄んだ瞳。

 ふわふわの白毛。

 尾の先には小さな太陽のような飾り。

 

「……かわ……反則級にかわいいんだけど!?!?」

 

 ちび獅子は当然のようにカイの頭へぴょんと飛び乗る。

 

「人の頭を“住処”にするな!!」

 

 しかし周りの住民は微笑み、

 不思議な温かさが街に満ちた。

 

「まずはセレンティアで情報収集だな……」

 

「カイさんならきっとできます。

 セレンティアは神器を持つ人もいる街ですから」

 

「神器持ち……」

 

 心が静かにざわつく。

 

(……忘れてた。俺以外にも、この世界には……)

 

 カイは歩き出す。

 

 頭の上で、ちび白獅子の尾が揺れた。

 

「そういえば……名前つけなきゃな。白……シロ……?」

 

「ピュイ〜!」

 シロは満足そうに声をあげた。

 

「よし、行こう! セレンティアへ!」

 

 こうしてカイは、新たな仲間とともに──

 北の街、セレンティアへと向かった。

 

《神器“布丸” ランク:Stage1 ー流布ー》

《スキル:変幻自在/布界収納・小/水纏状態》

《限定スキル:雫裂》

《特殊スキル:黒喰/転換布癒/微癒の湯化》

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