英雄讃歌 第一章 作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています
この日、俺は世界を救う英雄になった。
この世界は長らく魔王の脅威にさらされており、各国がこぞって魔王討伐を競い合っていた。かく言うこの俺も魔王討伐の旅に選ばれた一人だった。
少ない軍資金と心許ない装備を渡され、魔王討伐の旅に出ろと言われた時は、何の冗談かと思ったものだ。
だが、六人の仲間たち。【聖女】フィリア,【守護神】ルーファス,【賢者】エルノア,
【剣聖】ダンドール,【冒険家】カルア。そして【隠者】ハーミットと出会い、嘆きの森、死の火山、呪いの大海など。環境に魔物、数多の脅威を退けて、魔王討伐を成し遂げたのだ。
「それが、どうしてこうなったんだ!!」
「おぉ、勇者よ。死んでしまうとは情けない。」
そう、世界を救う英雄になった俺だが、魔王との相打ちで死んでしまったのだった。あの場面では仕方がなかったことだが、そんな選択を取らないといけなかったことが悔しい。
そして、目の前にいる白髭を顎に蓄えた老人が神様ってやつなのだろう。この場の空気感や存在感が常人のものとは完全に別物だ。
「って、酷い言い草だな!!」
「ほっほっほっ。儂、神じゃぞ?」
「一応、世界を救った英雄なんだけど?」
世界を救った英雄にもかかわらず、この扱い。生き返らせるとか特例事項を認めるべきだと思うのだが。何より、魔王と相討ちになったのがな。
仲間たちともう話せないのが少し、寂しい。
「そうじゃのう。生き返らせるのは世の道理に背く行為じゃ。」
「そうだろうが、魔王を倒した褒美に少しくらい大丈夫じゃないか?」
当然、死者蘇生なんてものは禁忌も禁忌だろう。現世においても死者蘇生は厳禁とされていたし、実施に実行したものは大抵碌なことにはなりはしない。
愛するものを生き返らせたいが一身に魔王に心を捧げたものをどれだけ見ただろうか。その全てがただ意思もない操り人形にされていた。
「う~む。生き返らせると魂が穢れるからのう。今後の可能性と来世その全てを捨て去る覚悟があるなら、やってもよいがの。」
……そこまで代償がデカかったのか。道理で朽ちた死人たちは生前の力を発揮できていないわけだ。だけれど、神様特権か何かでどうにか出来ないのだろうか。どうにか代償が無いようにするとか。
「代償をなしには出来ないのう。とはいえ、お主が魔王を倒したのも事実。」
心を読めるのか。何でもありだな。余計なことを考えてはいないが、どうにも緊張するな。生前の最後にした仲間たちとの会話とか、聞かれると……って、思い出すものではないな。
「どれだけの代償を払えば可能ですか?」
「まず、同じ時代に生き返ることはできない。それに元の身体には戻れない。」
当然だろうな。元々、死んでしまえば仲間たちと会えるとは思っていなかった。だが、本当に少しの期待があっただけ、こう思うことも死者に許されることではないのだろうが、残念だ。
とはいえ、条件を満たせば生き返ることができるのか。
「それと、厳密に生き返ることはできない。英霊となって適合する器に移し替えることが可能というだけだのう。」
適合する器。……それはゴーレムとか、ホモンクルスなどといったものということだろうか。肉体は朽ち果て再現できないため、器だけ用意して魂を移植するというわけか。
そんなことが可能というだけで、神様の力が凄まじいということが分かる。それだけの力があるなら……、いやこれは言うことではないか。
「ほっほっほ。現世に介入できない道理があるのじゃ。すまんの。」
「いえ!!ただ……。いや、俺の我がままです。」
「ほっほっほ。それでじゃな、魂は230年後に器へ移し変えることができる。」
230年か。……仲間も皆いなくなっているだろう。いや、一人、あの女だけは生きてるかもしれなないか。あいつが生きているなら心強い。
「それ以外はありませんか?」
「以上じゃ。生き返る気のままかのう?」
正直、代償とも言えないものではないだろうか。元の肉体に宿る固有スキルはなくなってしまうかもしれないが、それ以上にまた生きることができる方がメリットが大きい。
それに、まだあちらにはやり残したことがある。例え、その時に仲間たちが完遂できていないとしても、俺が今度は完遂してみせる。
「……はい。生き返らせていただきたいです。」
「その願い叶えてやろう。」
「ありがとうございます。」
こうして、また俺は現世に戻ることとなり、新しい人生を歩むことになったのだ。昔の因果と今から辿る未来。その全てを今度は取りこぼさないように。
「……ふむ。おぬしに一つ頼みたいことがあるのじゃが。」
頼み事?神様が頼むこととは何だろうか?大体のことは出来るはずなのに。いや、230年なら、周期的に俺が動かないといけないのかもしれないな。
「230年。それだけの期間が経っていれば、世も色々と変化しているだろう。おぬしの体験を来世では伝えてやってくれ。」
「その程度でしたら、お任せください。」
なるほど。今度は英雄としての経験を次世代に伝承して欲しいのか。確かに俺も魔王討伐の旅ばかりで後継者を育てるとかはしてこなかったからな。
次に人生でそれを達成できれば確かによい人生と思えるだろう。また一つ目標ができたな。
「特典に“鑑定”を付与してやろう。」
「ありがとうございます。」
鑑定?おそらく、王都の鑑定士などが行っていることを出来るようになるものか。それは相当便利になるな。自分で見ることができれば、わざわざ見に行く時間もいらないし、お金もかからない。
「ほっほっほっ。では、精々楽しむのじゃ。」
ん?どうしてあくどい笑みを浮かべているんだ?現世で何か面倒なことが待っているとでもいうのだろうか?
くっ、嵌められたか?……何か意図があってやるのだろうか。それだったら、現世に送る意味も分からないが、全く分からないな。
「ほっほっほっ。ほっほっほっほっほっほ。」