英雄讃歌 第一章 作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています
「帰ってきたのかい。意外だね。」
「はぁ?何か文句でも?」
アリスちゃんを家に届けるためにやってきた雑貨屋にはやはりと言うべきか、ミザー婆さんがおり、目があったかと思ったら嫌味を言ってきやがる。なんて性格が悪いんだ。
言葉だけならまだいいが、心底驚いたように目を見開いているのが異常に腹が立つ。何なんだ、このババア。ムカつくぜ。
「ふん。あんたならそのまま戦いに行くのかと思ってね。」
「けっ、そこまで無鉄砲じゃねぇよ。」
「ふん。誰が言っているのやら。しかし、今回に関してはいい判断だったよ。今のあんたでは勝てないだろうからね。」
まぁ、前世の俺だったら確実にそうしていたし、おそらくイリアさんもそうしたんだろう。う~ん、俺は言うのもなんだけれど、イリアさん結構無茶しているよね。
しかし、俺では勝てないとは嘗められたものだな。切り札を使えば問題なく勝てる。そう見込んでいる。というか、切り札使っても勝てない相手なんて、そうそう居ないだろ。これでも英雄様だぞ。
「はぁ?誰が勝てないって?」
「あんただよ。あんた。悟ったから帰って来たのではないのかい?」
「ふん。ちげぇし。流石に巻き込むわけにはいかないだろ。」
そう。流石にアリスちゃんを巻き込むわけにはいかないだろ。切り札を使えば勝てるということと、危険な戦場に人を巻き込むことは話が別だからな。
正直、今の俺よりもアリスちゃんの方が強いまであるけれど、前世に比べたら流石に俺の方が圧倒的に強いからな。
「……へぇ。そう。そこを弁えていたとは驚きだね。」
「ちっ、もう小言はいいか?やることあるからもう行くぞ。」
「待ちな。これをあげよう。」
……赤い宝石のネックレス?どうして急にそんなものを?“鑑定”。
EN:赤玉のネックレス+5 Rank:2
防御力 4(+1)
Ability
1.火属性強化Ⅰ
火属性攻撃のダメージを3%上昇する。
2.攻撃力強化Ⅰ
STR・INTを5上昇させる。
そ、そこまで強くないし。でも、アクセサリなんて一つも持っていなかったからな。単純に防御力とステータスを上昇できるのは有難いな。これで火属性強化でもなければよかったんだけれど、贅沢は言えない。
しかし、急に何故なんだ?聖剣といい、今回のといいどうしてこんなにくれるのかよく分からないな。
「……有難いが、何故?」
「ふん。腐ってもあの子の友達だしね。死なれては目覚めが悪いだろう。それに……いや、こちらは個人的な事情だね。」
「……?まぁ、貰えるものは貰っておく。……あ、ありがと。」
確かにアリスちゃんが悲しむのは本望ではないか。しかし、個人的な事情とは何なんだ?よく分からないが、聞いても答えてはくれないだろう。今聞き出すことでもないしな。
ま、まぁ、くれるのなら貰っておくさ。婆さんに感謝するのは気恥ずかしいけど、有難いのも確かだからな。仕方ないからな。
「ふ、ふふ。あんたのデレなんて誰が望んでいるんだい?」
「な、なんだと!?こっちは恥ずかしい思いをして感謝したのに!!」
「ふ、ふふ。ふふふ。笑わせないでくれる?ふふふ、本当におかしい。」
「きぃ~、もう知らないからな。」
ば、ババア!!恥かいた。最悪だ。一生感謝なんてするものか。もし感謝するときがあるなら、それは婆さんが軽口言えない時だな。言葉を発せないタイミングでやり返し兼感謝を返してやる。
この恨み一生忘れないからな。覚えていろよ~。
「さて、あの婆さんのことは置いておいて、行くか。ポーション、マナポーション。どちらも10本ある。それと“鑑定”。」
CNイリア=ローズベルLv16/100 Rank:2
Race:天使族Lv20/30 Job:村人Lv27/30
HP 1293/1293 MP 1083/1083 SP 1284/1284
STR 56(+5) VIT 59
INT 61(+5) RES 90
AGI 69 DEX 78
英雄賛歌
前世の力を一時的に取り戻すことが出来る。ステータスは使用者のランクにより、ランク*10%分のステータスに制限される。なお、ステータスが前世を上回っている場合は100%ステータスを発揮することが出来る。
また、スキルは前世のものを使用することが出来るが、代わりに今世でのスキルは使用することが出来ない。
使用中はランク/毎秒分だけMPを消費する。
「541秒か。そこからマナポーションの500秒。合計1041秒か。まぁ、実際は切り札を切る必要もなく倒せるかもしれないからな。」
「ぐおおおおおおお!!」
「くくっ、久しぶりに高ぶってくるな。」
遠くから聞こえてくる魔物の声を聞くとテンションが上がる。やはり冒険というのは命を賭けてなんぼだからな。今までの冒険なんて、ただのレベル上げみたいなものだったからな。
ようやく冒険が始まる予感がする。
「イリアちゃん。」
「ん?アリスちゃんか。どうかした?」
「一人で行くつもりなんだね。」
これは予想外だ。アリスちゃんに気付かれない間にさっさと行ってしまおうかと思っていたけれど、こちらの考えていたことなんてお見通しなんだろうな。
その証拠に装備品を外していないし。折角部屋に行ったのに装備品をつけっぱなし何て、こちらの行動を予想していないと出来ない事だろう。
「うん。まぁ、ごめんね。」
「……そんなに頼りない、かな?」
「いや……そうじゃないよ。ただ、これは俺の我がまま。」
アリスちゃんが俯いてしまい表情を伺うことができない。でも、悲しんでいるのはその表情を見なくても分かる。こんな風にしたかったわけではないけれど、これが最善であるのも確かなのだ。
これはただ単に俺の我がままで、そのせいでアリスちゃんが悲しんでいる。それでも、今日は引こうとは思えない。
何よりもアリスちゃんに危険な目にあって欲しくないから。
「「……。」」
「分かった。絶対に帰ってきてね。」
「ああ、絶対に帰ってくる。」
アリスちゃんを悲しませる気はない。そんなことをしてしまっては英雄の名折れというものだろう。それに何より、俺がアリスちゃんを悲しませる自分自身を許せないからな。
だから、絶対に帰ってくる。
決意が伝わったのか赤の瞳は陰りなく、ただ青の瞳と交差して、それ以上の言葉を言うことはなかった。