英雄讃歌 第一章 作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています
「さて、アリス隊員。」
「はいっ、何でしょう。イリア隊長。」
ぴょこんと跳ねながら手を挙げるアリスちゃん。こちらのおふざけに乗ってくれるのは、流石はガイド役とでも言うべきだろうか。
それはさておいて、俺とアリスちゃんの二人は昨日来ていた洞窟を抜けて、森のさらに奥へとやってきていた。とはいえ、徒歩十分圏内の浅い位置ではあるのだが。
昨日も思ったが、まず先立つものがないと魔物との戦いなど危なくてやっていられない。ということで、最低でも回復薬の常備をしたい。また、魔力回復薬にも手を出せたら出したいと思っている。
「そういうことで今日は薬草採集をします。」
「隊長。全く話が見えません。」
「わはは、とりあえず薬草取るぞ!!」
「「お~!!」」
元気いっぱいイリア団は森の中を散策し始める。森の中は比較的魔物が少なく、危なくないようだ。村の人が交代で魔物狩りをしているとか。ガイドさんが言っていた。
なので、魔物との戦闘での経験値は望めないが、安全に薬草採集などが出来て、お金を稼ぐことが出来るというわけだ。
だが、全く魔物がいないわけではなく、スライムなどの弱い魔物は見かけることがある。そのため、
「あっ、こっちにヒール草あるよ。」
「周辺は警戒しておく。」
「うん、お願い。」
アリスちゃんは道具屋のミザー婆さんに世話になっていることもあり、薬草採取の手際もよく品質も良い状態で採集が出来ている。
知識も婆さん仕込みと考えると、アリスちゃんがガイド役になったのはそういうことで、なんとも罪深いことをしたのだろうかと問い詰めたくなる。
「五本とったよ。これ以上は取っちゃダメだね。」
「いいね。これだけでも昨日の収入を抜いたのか。……なんだか虚しくなるな。」
「洞窟ももう少し奥に行けるようになれば、もう少し稼げるようになるよ。」
「そうかな?そうだといいな。」
じゃないと、英雄の物語はここで終了だな。アリスとイリアは平和な村でのんびりと寿命が来るまで過ごしましたとさ。ってなる。
それもアリスちゃんが主になる。前世の英雄じゃなくて、ただの村娘が主人公になっちゃうよ。
「うん、きっとなるよ。それより、次のところ行こうよ。」
「ああ、任せるよ。」
こうして二人で薬草採集巡りを続けたわけだけど、残り五か所採集して合計二十七本のヒール草を入手したのであった。これだけで2700で1350もの稼ぎである。
その頃にはいい時間にというわけもなく、意外と早く採集が終わったことで昼まで微妙に時間が空いている。今から洞窟に向かうと昼を逃しそうな時間のため、洞窟に行くことも出来ない。
ということで、道具屋へと向かっていた。
「ただいま~。」
「ん、お帰り。なんだい、その子も連れてきたのかい。」
「婆さん。お邪魔します。」
相変わらずと言えばいいのか、ぶっきらぼうな婆さんだ。ここに来たのはアリスちゃんが錬金術を持っているため、回復薬を作れないかという下心があるのも認めるところではある。
もしくは回復薬自体を安くしてくれないかと思ってな。
「何だい婆さんって、あたしの名前を言ってなかったかい?あたしはミザー。好きに呼ぶといいよ。」
「はいはい。ミザー婆さん。お……私の名前はイ……。」
「あんたの名前なんて聞いてないよ。今日は何のようで来たんだい?」
……礼儀と言いながら、本人がこの態度とはどういうことか。物事の順序が大事と言う話はをしたのはミザー婆さんであり、名前を名乗られたら名乗り返すのが普通だと思っていたのだが。
「……回復薬を作れないかと。」
「はん、あんたがかい?」
「いや、アリスちゃんにお願いしようかと。」
「あんた、その年でケチだねぇ。」
いや、この年だからこそだろう。収入も安定しないし、両親からもお小遣いを少額しかもらえない年だ。それなのに無駄遣いをするわけがないのだ。
「それに錬金術では回復薬を作らせないよ。」
「ん?どうしてだ。」
「錬金術は作成には時間がかからない代わりに、使用する素材の量が多くなり、結果的に作成できる数が少なくなるからだよ。」
「ああ、なるほど。」
作業の手間を無くす代わりに作れる量が少なくなるのか。面倒な天日干しの作業をやっているくらいだからな。ここの回復薬は“製薬”のスキルで作成しているのだろう。
それなら作らせるわけがないか。でも、製造コストと原価の釣り合いはどうなっているのだろうな。天日干しにはほぼ製造コストという意味ではかかっていないから“製薬”の方が安く済むのか?
「納得したね。なら諦めな。それでヒール草を売るのかい?」
「まぁ売るしかないからな。代わりに回復薬を安くしてくれないか?」
「残念だけど、それは聞けないね。回復薬の取引価格に関しては国の法律で決まっているからね。命に直結するものだから、仕方がないことだよ。諦めな。」
くっ、ここでも俺の目論見が崩れたな。収入はあるから別に問題ないはないけれど、どうにか支出を減らしたかった。
しかし、仕方ないことだ。国を盾に出されてしまえば、駄々をこねても曲げられないからな。
「代わりにヒール草を高く買い取ってあげるよ。自分で取りに行くよりは安いからね。何本とって来たんだい?」
「おお、本当か。二十七本だ。」
「2700ね。なら、3000でどうだい?」
「それでいい。助かる。」
まさか、高く買い取ってくれるとは。ラッキーだな。300だと150のプラスだな。それだけだとプラスが小さいように感じるが、全体の10%がプラスと考えると中々悪くないだろう。
「それで何本回復薬を買うんだい?」
「くっ、十本だ。500でいいだろ。それと魔力回復薬は三本。」
「800だね。毎度あり。」
金も稼ぐことができたけど、支出もまた大きいな。これではお金を貯めるのに時間がかかりそうだ。王都などに出稼ぎに行くなども検討しなければならないだろう。