英雄讃歌 第一章 作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています
「イリアちゃん、今日も洞窟に行くの?」
「いや、行かない。とりあえず防具を揃えようと思う。」
「うん。それがいいと思うよ。昨日もイリアちゃん村人の服で来たもんね。」
そう、実のところ俺の服は防御力など欠片もない村人の服なのである。村人の服で魔物と戦うのは我ながら、馬鹿だったと思う。あの時は少しテンションが上がっていたのだ。
それに対してアリスちゃんの装備はというと、まず武器は柏の杖。木製の杖に魔物の魔石が取り付けられている魔法使い用の装備だ。魔力伝導率を良くして、魔法の攻撃力を強化するらしい。
そして、防具は黒のローブを主軸にして、その中に黒のTシャツとミニスカートを着ている。ミニスカートは黒を基調に赤と紫のストライプが入っており、全体的に黒でまとめながら、所々で紫や赤といった色を使っているようだ。
黒いタイツとスカートの間に形成される絶対領域が眩しい。
「アリスちゃんの服いいよね。二日前までは村人の服で仲間だと思っていたんだけど。」
「え?魔物と戦うなら、当然ちゃんとした装備を付けるよ。それに、イリアちゃんも装備持っているよね。」
「あれ?そうだったけ。」
そんなの俺が知るわけない。と言っても、アリスちゃんが知るわけないからな。イリアさん、あなた装備持っていたんですか。どこにあるのだろうか。家の中を探索した方がよかっただろうか。
だが、終わったことは仕方ない。とりあえず、防具の問題は済んだということだ。でも、折角買い物に出かけるなら、アクセサリーでも見に行くのがいいかな。
「あはは、忘れてたよ。今日はアクセサリーでも見に行く?」
「アクセサリー?この村にアクセサリー屋なんてないよ。街には魔法効果付きのアクセサリーも売っているんだってね。」
「あ、あはは。そうだった。」
俺のバカ。ただ墓穴を掘っただけじゃないか。そうだよな。ただの村にアクセサリー屋なんてあるわけないよな。当たり前だ。
どうしよう。もう今日の予定ないんだけど。このまま洞窟に行っちゃうか?
「もう、しっかりしないと。とりあえず、イリアちゃんの装備を探しに行こ。」
「あ、うん。そうだな。そうするか。」
そう言うことになった。何故か自分の家だけど、アリスちゃんに先導されるようにイリア家に向かうのだった。
家の位置はアリスちゃんに教えてもらったから、ちゃんと案内出来るんだけどな。
「お邪魔します。」
「あら、アリスちゃん。いらっしゃい。」
「ただいま。」
「イリアもおかえり。あんたがアリスちゃんを連れてくるなんて珍しいわね。」
「あ、うん。まぁ。」
出迎えてくれたのは肝っ玉お母さんである。明らかに俺の様子がおかしいのは分かっていると思うけど、大雑把な性格なのか悉くスルーされている。
いや、そちらの方が都合がいいからいいのだが。でも、あまりにもスルーされるから逆に恐ろしいまである。アリスちゃんといい、お母さんといいこれが田舎の村人クオリティーなのだろうか?
「あんたどうしたのよ。アリスちゃんをしっかりもてなしなさいよ。」
「分かってる。部屋こっちだから。」
「うん。流石にイリアちゃんの部屋までは案内出来ないからね。」
そうだよね。というか、家もちゃんと辿りつけるからな?本当だ。昨日もちゃんと一人で家に帰った。アリスちゃんの中で俺はどんな扱いになっているのか謎だ。
聞きたいような、聞きたくないような。どちらとも言えないが、とりあえず部屋の位置は流石に知らないようだから、ちゃんと誘導しなければならない。
「わっ、ここがイリアちゃんの部屋なんだね。可愛い部屋だね。」
「う、ん。可愛いよな。」
俺も二日前には驚いたものだ。あまりにも女の子女の子しているというか、可愛らしすぎたから。俺には結構きつい部屋だ。
リボンやフリルなどがベット、カーテンにふんだんにあしらわれており、白、黄色を主としているためまだいいが、これでピンク系統の色が主だったら部屋に入ることを拒否していたかもしれない。
怖くてタンスの中開けられていないくらいだ。おそらく、村人の服が入っているだけだろうと思い、どうにも恐ろしくて開けられなかった。部屋は干してあったものを着まわしている。
「こういう部屋にも憧れるなぁ。私の部屋はもっと暗いから。」
「え、そっちの方が落ち着いてていいと思うけど。こちらは目がチカチカしているというか。」
「イリアちゃんがコーディネイトしたんだよね。」
「あー、そうだけど。趣味が変わったんだよ。」
暗いとは言うけど、絶対にアリスちゃんの部屋の方がよい。許可が出れば引っ越したいくらいなのだ。アリスちゃんに部屋の模様替えをして欲しい。
と、部屋の話をしている場合じゃなかった。イリアの防具は何処にあるのか。普通に考えたらタンスだよなぁ。
「それより、防具だよ。多分ここだよね。」
「そうだね。タンスに入っていると思うよ。」
「じゃあ、開けるよ。」
ゴクリ。恐怖から開けられなかったタンス。今から開けるが、どうか非情な現実が待っていませんように。いざ……
お、おぉ。普通。村人の服が数枚掛けられており、その横に防具らしきものがある。今のところ白と青の生地しか見えないから、可愛らしすぎるということは無さそうだ。
「それだね。」
「ああ、これだ。よし。」
その防具を取り出してみると、なんとアリスちゃんとの色違いではないか。こちらは黒の代わりに白を基調とされているようで、ミニスカートは青と黄色のストライプ。
ローブの代わりにケープマントを用いられており、動きやすさに割り振られた装備と言えるだろう。
ミニスカでなければ最高なのだが、そこは何とも言い難い。それともう一つ。ガーターベルトが見えており、これを俺が着るのかと思うと今から恐怖で頭がいっぱいになる。
他人の絶対領域を見るのはいいが、自分が形成するとなると……地獄だ。
「んふふ。何度見てもイリアちゃんの装備はカッコ可愛いね。」
「う、ん。そうだね。悪くない装備だとは思うけど、ズボンだったらなぁ。」
「え~、イリアちゃんはミニスカートだよ。肌も綺麗なんだし。」
「は、ははは。でもなぁ。」
「これ、私とのペアルックなんだけどなぁ。そんなに嫌?」
それは卑怯じゃないか?そんな悲しそうな表情を浮かべられたら、どうしようもないよな。嫌とは言えない。これを着るしかなくなる。……流石にな。
赤い瞳をウルウルさせてこっちを見ないでくれ。もう、逃げ場がないではないか。
「……そんなことないよ。アリスちゃんとお揃いなんて嬉しいなぁ。」
「んふふ。よかった。明日はちゃんと着て来てね。」
「はい……。」
明日が地獄なのが確定しました。なんて恐ろしい子。流石悪魔族。その悪魔的な所業はアリスちゃんが歴とした悪魔族の証明だな。
はぁ、明日ミニスカのガーターベルトか……。死ねるな。