スタナグちゃんなラブを余りにも見ないので自分で書きました。
……が、ブルアカの外縁部を覗くだけでラブさんの解像度が低いのでここに送りました。
一人の女の子が魔法少女のマスコットになるのを楽しむ物語だと思って頂ければ。
「リーダー、こんな倉庫に何の用があるってんです?」
「下調べの成果を発揮すんのよ」
学園都市キヴォトスの不良集団の一つ、ジャブジャブヘルメット団はリーダーの
ある目的の元この遊園地を訪れた彼女達だったが、大学園の一つ・トリニティといざこざになってしまった。
「シタシラベェ?」
「えーと、これよ!」
……自警団はカモフラージュの為か、魔法少女ヘヴィキャリバーの格好をしていた。
自警団の格好がヘヴィキャリバーという魔法少女だと知っていたラブは、自警団に邪魔されないよう下調べの成果を引っ張り出す。
「これって、着ぐるみっすか?」
ラブが引っ張り出したのは薄いイエローの着ぐるみ。
そののほほんとした顔の下には、着た者の顔を出す穴が空いている。
顔出し着ぐるみ、と細分もできるだろう。
「そーよ、あいつらのマスコットの着ぐるみよ!」
魔法少女には変身する力を与えたりナビゲートを行うかわいらしいパートナー、あるいはマスコットというものがありがちである。
これはヘヴィキャリバーのマスコット・スタナグちゃん、その着ぐるみだ。
「これを着ちまえばあいつらは手出しできないって寸法よ!」
「お〜!」
「さすがリーダー!」
……ただし彼女らはリサーチが足りていない。
ヘヴィキャリバーでスタナグちゃんが割と身体を張ってボコボコにされるポジションである事を知らない。
「でも顔見えちまいますよ?リーダー?」
「顔だけなんだからマスコットだって言い張れるだろ、
知らないが故に、──やられ役に、なってしまう。
もぞもぞもぞと着込んで、やりやすい相手になってしまう。
「……よし!どーだ!ほとんどマスコットだろ!」
「確かに……!」
「マスコットだ……!」
背中にデフォルメされた羽を小さく広げ、腹には星のマーク。
首にピンクのリボンを巻き、どこかのほほんとした表情をした哺乳類系のマスコット──。
──そののほほんとした顔とリボンの間にすっぽり顔を出して、ラブはスタナグちゃんになっていた。
確かに人の顔は出ているが、ゆったりした身体に包まれ、スタナグちゃんののほほんとした顔もしっかりある事でマスコットとしての割合が大きい。
むしろそこしか出ていないのに存在感を主張できる人体における顔というパーツの重要さについて論ぜられるべきなのかもしれない。
「そーだろそーだろ!」
……もし、このマスコットに多少でも厳つさがあれば彼女らはやられ役という真実に気付けたのだろうか。
いずれにしてももう遅い。
顔の隠れる着ぐるみではなく顔出し着ぐるみを着てしまった事で、ラブは中の人に押し込まれる事なくスタナグちゃんと一つになってしまった。
どちらでも大差は無かっただろうが……。
一心同体、宿業同体。
スタナグちゃんは己を着た少女のドヤ顔の上でどこかのほほんとした顔をするだけだ。
「む、ちょっと歩きにくいな……」
ぽてぽてぽて、と歩くスタナグちゃん=ラブ。
その道行きがどうなるかを、己の身体に慣れず足元を見る彼女の顔の上でスタナグちゃんはのほほんと見つめていた。
「あ、脱いじまうんすねボス……」
「意味なかったからな……」
結論から言えばスタナグちゃんのポジション故に自警団達には意味が無かったので、着ぐるみはあっさり脱ぎ捨てられた。
空っぽになった中の人が顔を出す穴の上で、スタナグちゃんはのほほんとした顔をするだけだった。
──だから、これは……
「……んあ……?どこだ?ここ……」
……気付けばラブはパステルカラーのふわふわした場所に居た。
「やあラブちゃん、出番だよ〜」
「あ……?なんだおま、え……⁈」
そこにふわふわ浮かんで来るのは片手で持てるくらいの大きさのマスコット……、……スタナグちゃんだと気付き、ラブは硬直した。
「で、出番ってなんだよ⁉︎」
「やだなぁ、忘れちゃったの?キミはボクで、ボクはキミなんだよ〜」
今や体感して知ってしまっている『出番』にラブは嫌な予感を覚えて叫ぶ。
だが、一手遅く。
スタナグちゃんがぶおっ、と膨らみ、ラブに襲い掛かる。
「ぎゃあああああ‼︎嫌だ、離せっ!」
「もー、いつもの事じゃんか〜」
ラブの抵抗虚しくスタナグちゃんはずずず、とラブを包み込む。
手足、腹腰胸背。
「──ーーっ‼︎」
最後にずぽんと頭も包まれた。
「はぁ〜、落ち着くなぁ〜」
「……クソっ、脱げねぇ……!」
そうしてずずず、と顔だけ出されて。
ラブはスタナグちゃんにされてしまった。
「じゃあ、いっくよ〜」
「待てっ、行くってなんだ、ヤメロ」
そうして身体が動かされ、──待ち受けるのは魔法少女と悪の女幹部。
──
「ぎゃあああああああああああ
ああああああああ!……あっ?……、……あっ……」
自分の叫びで目が覚め、ラブは自分が寝床にいると気付いた。
「あっ……、……ああ……」
どうもヘルメットの顎紐と毛布が妙な絡まり方をしてしまったらしいと発見し、先程の事は夢だったのだと思った。
「…………」
……いや、思いたかったのだが。
スタナグちゃんに包まれる感触が妙にリアルだったのがラブは気になる。
……いや、これもつい先頃着ていた着ぐるみの感触を夢が流用しただけだと説明はできる。
結局ヘヴィキャリバーも見てないからスタナグちゃんの口調も分かってないし、最後の方に出て来たのもスズミ・エイカ・シミコのままだったように思う。
「…………」
……思うの、だが。
……一抹の嫌な予感をラブは拭えなかった。
「……寝るか」
結局ラブは夢見を上書きすべく、寝直す事しかできなかった。
……ヘルメットは顎紐をしまって、枕元に置いて。
──そう、これは、夢の話。
:ポイント
・着ぐるみのボリュームがいい。
『入ってる』ではなく『着てる』感じの、しかし人間的な輪郭はしっかり崩して包み隠してくれるサイズ感がいい。
・顔周りをしっかり包んでる所がいい。
顎下まで隠してるとこは『着ぐるみを、着てる』感がマシマシになる。
・ちゃんとスタナグちゃんの顔があって、その視線が中の人とは違う方を向いてるのがいい。
中の人という異物を抱えてしまう着ぐるみの問題を、個人を識別する最も端的なアイコンである顔だけをすっぽり出してしまう事で着ぐるみと中の人を合体させた新たな魅力持つ存在にする事で解決した顔出し着ぐるみにとって、着ぐるみ側にも顔があればその魅力は倍以上。
それをしっかり達成し、顔を出す中の人とちょっと違う方向を向く事で絶妙な独立感を生み出し、中の人を曝け出しているはずの着ぐるみのスタナグちゃんに生命感を与えている。
・顔の出し方がいい。
耳から後ろを出してしまうと『着てる』感じが薄れて『……それって着ぐるみじゃなくね?』という迷いが生まれてしまう。
かと言って穴の奥にいってしまうと顔の印象がへこむ。
きっちりすっぽり出し過ぎずしまい過ぎず包まれたあの出し方は顔出し着ぐるみとしてのあり方的にすごくいい。
・表情がいい。
スタナグちゃんの中からラブの悪そうな表情が出てる様は『悪い奴に身体を乗っ取られてるとも知らずスタナグちゃんがのほほんとした表情をしている』ようにも見える。
……けれど設定を知ると『いつも通りのほほんとしてるスタナグちゃんの中からこれからボコされるとも知らず悪い顔を出している』ようにも見えて味がある。
・かわいい。
スタナグちゃんの着ぐるみと顔を出すラブが相互に高め合って一つの魅力持つ存在になってる。