8月になり、フェアリーの部屋の人たちとも打ち解けてきた。
だがしかし……なんか足りないような気がする。私はなんというか、一抹の寂しさが心の隅に引っかかっており、なんだかもどかしい。
夜になり、夜に活動するポケモン以外は寝静まったころ、私は一人でこの微妙な気持ち悪さについて考えてみた。
「そーいや、今の今までどこに行くにもネムと一緒だったっけ」
基本的に私がどこかに行くときはネムも一緒についてきていた。
私はたぶん、ネムがいないから寂しいんだ。今の今まで一緒にいたネムがおらず、別行動。なんというか……寂しいな。
私はフェアリータイプの部屋を出て、職員がいる部屋に向かう。
何かあるといけないので、基本的に24時間誰かしらこの施設にいる。茂治さんは帰宅したようだが、見守っている職員の人がカップラーメンを啜っていた。
「ん、どうしたんだい五木さん」
「あの……申し訳ないんですけど明日から五日間程度一度帰ってもいいですか」
「どうしてだい?」
「なんか……寂しくて」
「そっか。まだ高校生だもんな。いいよ。所長には俺から言っておくから」
「ありがとうございます」
私は意気揚々と職員ルームから出ていく。
「ネム……お前がいないと寂しいよ」
なんて好きな漫画の真似をしながら、夜を明かす。
そして、帰ることにした。荷物は特にないので、山のふもとのバスに乗り私が過ごしていた町に戻る。
ネムは今日も補習のはず。補習はお昼からなのでぎりぎり家にいるだろう。
私は家の前で待っていると、ネムが少しだるそうな目で玄関の扉を開けてきた。ネムと目が合う。
「寂しいから来ちゃった」
「……悠。そっか。寂しいか」
「……なんか嬉しそう?」
「少しね。私も少し寂しかったんだ」
「そっか。お互い思うことは同じみたいだね」
同じく寂しく思ってくれていたのはちょっと嬉しい。
「でもこれから補習でしょ? 私待ってるからね」
「いや、一人くらい増えても大丈夫だと思うよ。一緒に行こう」
「そお? じゃ、一緒に」
私はネムの手を取り、ネムが持つモンスターボールの中に入る。
そして、私は一緒に補習を受けたのだが。
「ぜんっぜんわからん……」
私に配られたプリントには私が分からない問題ばかり並べられていた。これが高校二年生でやる内容だろうか。大学生でやる問題の間違いじゃないだろうか。
二か月間自堕落に過ごしていた弊害だ……。というか、自堕落に過ごさなくても勉強なんてあまり得意じゃないのに……。
「これはね、この公式を使って……」
「ん、あ、できた」
「ね? そしてここは……」
配られたプリントを、ネムの補助もありながらなんとか解けた。
うーん、やっぱり茂治さんが言っていたネムが努力家というのは間違いじゃないだろうか。そりゃ努力はしてるだろうけどネムはすっごい頭がいいし……。勉強してるところは見たことないんだよな。
「すっごいな。やっぱネムってすごい天才」
「そう? ありがと」
「なんかすごい分かりやすいし」
やっぱ頭のいい人って説明上手なんだよな。
補習を終え、帰ることになった。ぐぅぅとお腹がすいてきたので、近くのファミレスに行くことに。
「今日はガツンと肉にしよーかなー。バイト代すっごいあるし!」
「そうだね。じゃあ私はチキングリルにしようかな」
「サーロインステーキ!」
「お、豪勢だね」
「金はあるからね!」
豪華にサーロインを頼み、私は肉を頬張る。
うーん、やっぱり肉の脂ってなんて美味しいんでしょ。この体になって魚のほうが好みになるのかなーとか思ってたけど全然懸念だった。肉のほうが断然好きだった。
「それよりウチのクラスの内田、ポケモンになったよ」
「え、マジ?」
「昨日紫色の光を見たんだってさ。先生がポケモンになったらしいから休むって」
「ほへぇ……。あれってなんなんだろうね」
「さぁ。私も一度見てみたいものだけど」
「ネムはならなくていいよぉ。最悪このままでもネムは私のトレーナーとしてやっていてほしいからさぁ」
「……そう」
私がそういうと、ネムは少し寂しそうな顔をしていた。
「ま、でもネムがポケモンになったらきっと準伝説はいくんじゃないかな。茂治さんの推測では才能ある人が準伝説になるんじゃないかって話してたし」
「……だったらいいんだけどな」
ネムがなんか寂しそうにつぶやいていた。
「ネム、どうしたの?」
「いや、なんでもないさ。さ、食うよ」
なんかネムが変なの。