朝、目が覚める。
私は身体を起こすと、何か違和感を感じた。というのも、私の視界には人間の手が映っている。
この人間の手は私の意思で動くようで、グーパーしてみると同じようにグーパーと動く。
私は起き上がり、鏡を見てみると、そこには元の自分の姿があった。
「戻ってる……!」
人間の姿に戻っている。
にしてもなんでいきなり元の姿に戻ったんだろう。まあ気にしなくていいか。深いことは。
私は隣で眠っているネムを起こそうとすると、ネムに違和感を感じた。ネムの手が白い。
私はネムの布団を捲ると、そこにいたのはサーナイトだった。
「ね、ネム……?」
「んー、どーしたよ」
「ね、ネム……ポケモンに……」
「ポケモンに……? なんじゃこりゃ」
ネムは鏡を見て、唖然としていた。
ネムがサーナイトに……。てっきり才能持ってる人は準伝説以上になると思ってたが違ったのかな。まあ、仮説だし間違うことはあるか……。
ネムは自分の姿を見て、うーんと唸っていた。
「悠はなんで戻ってるの?」
「わかんない。いきなり人間の姿に……」
「謎ばかりだな……」
「ね」
なんでなんだろう。なんでいきなり戻ったのか。
考えていると、突然目の前の景色がぐらりと歪み、また再び上体を起こした。
「ゆ、夢だったのか……」
私の手はカプレヒレの手だった。
うん、まあそうだよね。なんの脈略もなく戻るなんてことはまずないよね。
ネムは……人間のままだ。よかった。
「ん……早いな」
「ちょっと変な夢見てねえ」
「変な夢……?」
「私が人間に戻ってネムがサーナイトになる夢」
「ふぅん……。それはそれで嫌だね」
ネムはそう言って起き上がり、リビングに向かう。
私の分の朝食も一緒に作ってくれたので、テレビをかけながら私はモグモグと朝ごはんを食べる。
ベーコンエッグ。美味い。ハウルを見て一度は憧れた料理だ。
『また全世界でポケモン化現象が進んでおり、各国の研究機関はポケモン化の原因を突き止めるべく奮闘しております』
「ポケモン化って全世界の人間がポケモンになるまで終わらないのかな」
「さぁ。でも私とか見えない人もいるからそういうわけではなさそうだけどな」
お味噌汁を飲みながら、テレビのニュースを眺めるネム。
ポケモン化する条件も、理由もなにもかも分かってないからなぁ。早く解決して元に……。
「悠、悠は元に戻りたい?」
「え? あー……」
戻りたいかと聞かれたら悩む。
人間に戻るとポケモンの技を使えないし、水の中でも呼吸できたりとかしなくなっちゃうだろうしそれはそれで楽しくなさそうだからなぁ。
この姿もまあまあ楽しいから……。
「あんまし戻りたくないかも?」
「最初は戻りたがってたのにか?」
「最初はね。でもこの姿ちょー楽しいし! ネムをトレーナーに据えてポケモンバトルなんかやっちゃったりして!」
「ふふ。ま、戻れなかったらトレーナーにでもなんでもなってやるよ」
私は味噌汁を飲み干し、今日の補習の準備をすることにした。
今日はあいにくの雨模様で、外はザーザーと強い雨が降り注いでいる。人間だったらこんな天気の中行きたくないと思うだろうが、私は水タイプのポケモン。濡れることは別に構わない。
ネムの家を出て、ネムが傘をさす。
「こんな雨の中やらなくてもいいのにな」
「今日一日雨みたいだからねぇ。水タイプの私としては別に降っても構わないんだけど」
「私は人間だからな。雨の中行くのめんどい」
にほんばれが使えたらなぁ。ネムのために使ってあげるんだけど。