ネムちゃん、本名を朝凪 音夢。いつも眠そうな顔をしている女の子でとても優しい性格の持ち主である。
「悠〜。おはよーさん。一緒に学校いこー」
「ネム……」
「おん? カプレヒレ……?」
「私だよっ! 悠!」
「……ポケモンになっちったの?」
「なっちったの」
流石のネムも困惑して目を見開いていた。
ネムはその場に座り、私をジロジロと眺めてくる。
「……カプレヒレって準伝説だったよな? そんなのになれるってすごくね?」
「そういう問題?」
「まー、それはいいとして……。なんでポケモンになったの? 心当たりはある?」
「昨日夜食を買いにコンビニ行った時紫色の光が見えたくらいで……」
「それじゃね?」
「かも……」
あの時の紫色の光。あれが私をポケモンにした元凶なのだろうか。
「でもそれっていつの話? 昨日?」
「うん」
「何時くらい?」
「寝る前だったから……11時ちょいくらいだった気がする」
「その時間私も眠れないからベランダにいたけどそんな光見なかったぜ?」
「え?」
ネムが言うにはそんな光なんて見えなかったという。
だがしかし、実際私は見ているわけだし、ベランダで休んでいたネムが見て居ないというのはちょっとおかしくないだろうか。
もしかしてポケモンになる人にしか見えてなかった光とかなのかな。
「十中八九その光が原因っぽいね……。その光の出どころはどこなのかな」
「わかんない。学校側のほうから徐々に広がってきてたけど」
「ドクターストーンみたいだな」
「復活液で人間に戻れたら苦労しないけどなぁ」
そんな漫画みたいな方法で人間に戻れるわけもない。
「あ、やべ、遅刻する。今日は休むんだろ? 私は行くからよ」
「あ、いや、私も行く。学校サボるのはなんか違うし……」
「いや、仕方のない事情ってやつだろ。休みなよ」
「いく。私以外にもポケモンになった人がいるかもしれないし、ワンチャン情報共有したい」
「そっか。ま、ならいいよ。でもその姿でいけるの? 動ける?」
「移動はできる」
私はふよふよと浮いてみせる。
ネムは溜息をつき、私と一緒に学校への道を歩いていく。学校に行く道中でもポケモンになった人をちらほら見かける。
「悠みたいな準伝説はいないね」
「私って相当レアケースなのかな」
「かもね。運がいい」
「いい……のか?」
電車に乗り込む。が、私の身体は人間より少しでかい。私は殻を閉じてみると、案外小さくなれたので殻を閉じて荷物棚の上に乗り学校近くの最寄り駅でネムに下ろしてもらう。
殻を閉じるとマグロの頭のような大きさまでなれるらしい。すごいよな。
学校に到着し、私はまず職員室に向かった。職員室で学生証を見せて事情を説明すると、先生たちも驚いて言葉が出ていない。
「これで4人目ですな……」
「私以外にもいるんですか?」
「あ、あぁ。その子たちは一応別室で待機してもらっている。君も申し訳ないが……」
「わかりましたあ」
私は別室にとりあえず待機らしい。
部屋に入ると、確かに中にポケモンがいる。
「……モロバレル?」
「2年の武宮 華、です……」
「あ、ご丁寧にどうも……。私は1年の五木 悠です」
「あ、悠ちゃんなんだ!?」
「……どこから声が?」
「一応ここ……」
テーブルの上で反り返っているマッギョ。
ひ、平べったい……。
「同じクラスの松木 芳香だよっ! 悠ちゃんもポケモンになっちゃったんだ!?」
「ヨッシー!?」
「うん……。ペラペラになっちゃった……」
ヨッシーがマッギョになっちゃったのか……。
……ガラルではなく普通のマッギョか。平べったいからマジでいたことに気が付かなかった。
「あと先生の話では一人いるはずなんだけど……」
「あ、私ですね」
と、登場したのはアグノム。
「観音崎 実憂です。よろしくお願いしますね」
「か、観音崎さん!?」
観音崎 実憂。3年の先輩で、この学校でも超有名なお嬢様。ものすごく美人で、品行方正。まさしく眉目秀麗を実体化させたような存在である。
そんな人が……同じポケモンに。というか同じ準伝説。
「カプ・レヒレですか。同じ準伝説ですね」
「はい……。準伝説の人はなかなか見かけなかったので新鮮です」
「そうですね。私も私以外の準伝説を初めて拝見いたしました」
準伝説ってやっぱなれる人少ないのかな……。
準伝説でこうなんだから伝説とか幻はもっと少なそうだ。