舞がマッギョになったヨッシーを頭に乗せ、観音崎さんの屋敷に向かうべく玄関に向かうと、観音崎さんと執事服を着たスラーっとした高身長のイケメンが待ち構えていた。
「お待ちしておりました」
「え……ガチの執事?」
「はい。私は観音崎様に仕えております矢場と申します」
矢場と名乗る執事の人は車のドアを開けてくれる。
め、めっちゃ高級車ですやん。車に詳しくない私でもわかる。この車すごい高い。
観音崎さんってお嬢様だとか言ってたけどここまでガチなお嬢様だったんですか?
そうしてやってきた観音崎さんの屋敷。
なんというか、漫画でしか見たことがないような大きな屋敷でものすごく感動している。
中に招かれる。この中で唯一の人間である舞は靴を脱いで上がるが、他は靴という概念がない。
「なぁ五木さん。こんな屋敷コラッタごときの俺が来ていいと思う?」
「それを言うならマッギョの私もだよぉ……」
「モロバレルの私もなんというか……」
コラッタたちが恐れ慄いている。
いや、私でもだいぶギリじゃないだろうか。こんな金持ちの豪邸、私は来たことがない。
こんな身近にフィクションの世界の人がいたんだぁ(遠い目)
「さ、父がお待ちしております。どうぞこちらへ」
ふよふよと浮きながら私たちを案内してくれる観音崎さん。
書斎と書かれた部屋に恐る恐る入ると、コワモテのおじさんが机にエヴァの碇ゲンドウみたいな座り方で待ち構えている。
「よく来てくれたね、ポケモンになった諸君」
「ひいっ!?」
なんで声が立木文彦そっくりなんだこの人。見た目も声もそっくりすぎる。
「そんな怖がらなくてもいい。私は君たちに話を聞きたいだけなんだ。座ってくれ」
「は、はい」
私たちは恐る恐るソファに座る。
いや座ったのは舞一人だけだが。私たちははポケモンだし古田くんとかヨッシーは座るまでもない。
私たちの目の前におやつが置かれる。
「君たちに聞きたいのはポケモンになる前、なにか不思議なものを見なかったかということなのだ」
「不思議なもの?」
「それなら俺見ました! ゲームしてると外が突然紫色の光でぶわぁあーーっと!」
「私もです……。勉強してたら突然……」
「私も夜食買いにいくときに」
「ふむ……。やはりか」
「やはり?」
舞がやはりとおうむ返し。
「他のポケモンになった人もその紫色の光を見たと述べている」
「みんな紫色の光を……」
「おそらく、その光が君たちをポケモンに変えたのは間違いないだろう。だが気がかりなのは私はその光を見ていない」
「私とお父様はその日ちょうど庭で天体観測していたんです。よく晴れた日でしたから、星が綺麗で。私は紫色の光を見たのですがお父様は見ておらず……」
「そういうことだ。仮定としては複数ある。ポケモンになるのは限られた人物……人間が原因だとしたらポケモンになる人を選抜してポケモンにさせている。まあこれはないだろう。私はその技術を聞いたことも見たこともない。第一特定の人にだけ知覚できる光は存在し得ないだろう」
たしかに。私は動画投稿サイトでそういう動画もたまに見てはいるのだが、光の屈折とかそういうのはあっても特定人物にのみ見える光は聞いたことがない。特定の角度で見えるとかならばわかるが……。
「もう一つ。地球外生命体の謎技術」
「……宇宙人ってことですか? いるんですか?」
「わからん。まず宇宙人の存在も何もかも証明されていない。だが今の現代では存在し得ない技術を使うのは未知なる存在として仮定する他ないということ」
「要するにどういう技術かわかんねーからどういうやつかわからないやつの仕業にしようってことか」
「まあそういうことだ。そしてもう一つ。元よりポケモンになる素質があったのではないか? というものだ」
「なんでです?」
「ポケモン化は昨日から突如起きたわけではない。今もどこかでポケモンになってしまう被害は起きてるだろう。ポケモンになってしまう素質があったからこそ、紫色の光を認識でき、それがトリガーとなった可能性がある」
観音崎さんのお父さんのお話では主にその三つが仮定として挙げられた。が、イマイチ納得ができない。
私としても、どの仮定に対してもまあまあ疑問はある。
まず一つ目。人間が原因だと仮定すること。これは観音崎さんのいう通りに未知の技術であるなら人間ではまず無理だろう。
二つ目、宇宙人の仕業。宇宙人がポケモン知ってんの?
三つ目。トリガーとなったとして、紫色の光の謎については言及できない。私たちがその素質があったとしてその紫色の光は子どもの時とかから見えていてもおかしくはないはず。
だからイマイチどれもピンと来ない。
「まあ謎なことを考えても仕方がないとしてですね……。元に戻る方法とかはあるんですか?」
「わからん。私たちとしても研究はしているのだが……。ポケモンによって細胞が異なるのだ。例えばダストダスになった人は身体がゴミで出来ている。ベトベトンはヘドロだ。見たことのない細胞とかあるから少なくとも全部解剖されるまでに少なく見積もっても数十年はかかるだろう」
「すうじゅ……」
「それが私の娘や悠さんのような準伝説と呼ばれるポケモンならなおさらかかる。個体が少ないからね」
「……やっぱ少ないんですか?」
「あぁ。私が今までに確認できているのはレジスチル、ファイヤー、ビリジオン、アグノムのみだった。それぐらい個体が少ない」
ということは私がカプレヒレの一体目ってことかぁ。
「ただ、準伝説は世界に一体だけしか存在できない可能性がある。カプレヒレとなったのは君だけだし、君以外に生まれない可能性もある」
「……根拠は?」
「元となったポケットモンスターで同じバージョンで同一のポケモンが2体以上出ないからだ」
な、なるほど。
サンムーンではたしかに同じソフト、同じデータでは2体以上存在していない。それに準拠する可能性がある……ってことか。
「準伝説がたくさん出るのなんてそれこそGOくらいだよね?」
「ヨッシーすぐ飽きてやめてたよな〜」
「俺なんかガチでやってたんだぜ……? 休みは毎日チャリ漕いでは……。なのにコラッタ……」
「コラッタ引きずりすぎ……。ベトベトンとかダストダスよりかは害もないしマシじゃない?」
「そういうわけでもない。コラッタは前歯がどんどん伸びていくから何か噛んで前歯を削っていかないと……」
「たしかになんか前歯伸びてる気がする!」
「図鑑説明であったね〜そんなん。生態とかは図鑑説明準拠なのかな」
「おおよそな」
古田くんは召使いの人に丸太を渡されて齧っていた。
「そこで君たちにお願いがある。しばらくうちに泊まって研究させてくれないか? もちろん君たちが快適に思えるような部屋はこちらで用意する」
「……えっと」
「報酬も出す。治験のようなバイトだと思ってくれていい。時給は弾もう」
「やります」
ヨッシーはなんの迷いもなくやると告げる。
「ちなみに時給はおいくらほどで……」
「そうだな……。このくらいでまずは1ヶ月」
「……金持ちぱねぇーーーーっ!」
マッギョのままその場で気絶した。
気絶するほどの額?
「……時給1万!?」
「8時間きっちり、1ヶ月休みなしで過ごしてもらうことになるが」
「となると……」
計算してみる。
「げ、月給248万円……」
これが一年だったら月収2000万……。
「こ、これ扶養なんちゃらとかダメなんじゃないの……?」
「そこは私に任せてくれ。私の権限があれば君たちのそれは誤魔化せる。一応私は国の人間であるからね」
「け、権力ってこえー……」
権力ってなんでも解決できるんだ……。