連鎖の復讐 ~性犯罪の濡れ衣を着せてきた黒幕が30人って何~   作:冴木甲士

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第013話 幣原さんはちょっとS

 盗撮をしていた佐藤。

 盗撮の証拠をもって佐藤を追い詰める俺。

 盗撮の証拠を見つけ、俺に協力している幣原。

 

 三者の状況を整理すれば真っ先に対処すべき悪役は普通に考えて、佐藤になるだろう。

 しかし、何でだろう。

「フフフ……」

 悪魔のような笑顔で追い詰められた佐藤を楽しそうに撮影をしている幣原の方が、今この場においては最優先で対処すべき危険人物のように見えてくる。

 

「あ、あのー、幣原……」

 初対面のときの幣原のように恐る恐る声を掛けてみる。何か立ち位置逆になった気分。

「ひゃっ⁉」

 さっきの悪どい姿が嘘のように、幣原が可愛い悲鳴を上げた。

 その拍子に幣原の手からスマホが滑り落ち、カツンと乾いた音がした。

 

「え……私、何を……」

 こっちのセリフだよ。

 別に撮影してくれとも頼んでないのに何で嬉々として佐藤の方を撮ってたんだ。

「いやお前今の今まであそこにいる男をスマホで撮って変な笑いを浮かべてたんだが」

 ひとまず佐藤を指差しつつ、幣原に現実を突き付けてみる。

 ちなみに佐藤はこちらの方を怯えながら見ていた。いや視線的に、幣原の方に怯えながら、だな。

 

「……え? 私、笑ってましたか……?」

 途端に幣原がポカンとする。

「とぼけてるのか? それとも本当に自覚なかったか?」

「え、いや本当に。何かあの人がオロオロしている様子見てたら、何でか録画したくなっちゃって……」

 え、何それ怖い。

 

 ひょっとして佐藤のこと好きだったとか?

 いや、それだとこうして俺と一緒に奴を追い詰めてるのが説明付かないな。

 幣原の言葉とさっき俺が見た光景を振り返るに、佐藤がオロオロしてから急にスマホで佐藤のことを録画してほくそ笑んでいたことになる。

 ……まさか。

 

「お前ひょっとして、人の苦しむ姿を見るのが好きなタイプか?」

 

 早い話サディストなのか? と幣原に確認してみた。

「え⁉ い、いや、そんなことないです!」

 即座に否定する幣原。

「そうは言ってもさっきの佐藤への対応とお前の発言を考えると、なあ」

 佐藤の狼狽えぶりといったらいっそ哀れに感じるぐらい、(みにく)いものだった。

 その姿に愉悦(ゆえつ)を感じて記録にまで残そうとしたなんて、嗜虐的(しぎゃくてき)な感性持ってるようにしか思えないぞ。

 

「へ……まさか私、本当に……? い、いや、そんなわけ、ない! ない、よね……?」

 モノローグがそのまま声に出ちゃってるような独り言をブツブツ呟く幣原。

 これ、本人にとっては生まれて初めての感覚だったか?

 今回の件で目覚めた新しい自分を必死に否定しているところなのかな?

 

 わずかながらに交流した印象の限りだと真面目(まじめ)な善人、という感じだからなあ。

 人の苦しむ姿が大好きなんて意地でも認めたくないのだろう。

 でも、うん。この件が済んだらちょっと距離を置こうっと。

 

 そんな俺達の様子をチャンスと見たか。

 佐藤がいつの間にか俺達に接近し、ペットボトル型カメラへと手を伸ばしてきた。

「うお!」

 間一髪でカメラを引っ込めて、奪還を免れる。あっぶな。

 そのついでに接近してきた佐藤の顔を、思い切り殴りつけた。

 

「ごっ!」

 何だそれは、と言いたくなるような変な悲鳴を上げて奴は倒れ込み、俺に殴られた部分をひたすら両手で押さえていた。

 コイツ、ケンカ弱っ。素人の俺に一発であっさりやられるのどうなんだよ。

 まあコイツ半グレといっても末端らしいし、正真正銘パシリの中のパシリとして動き回ってたに過ぎないんだろうな。

 この調子じゃ宮澤も佐藤そのものじゃなくて、バックの半グレどもの方にビビり散らかしていたに違いない。

 

「おい、退散するぞ」

「は、はい!」

 ともあれ、奴が起き上がる前にこの場を逃げることにした。

 できれば幣原からも逃げたかったが、コイツも協力者として警察や学校からの事情聴取に付き合ってもらわなければならないだけに、一緒に連れていった。

 

 

 

 体育祭も終わり、後日。

 あの後佐藤は無事盗撮の罪で逮捕され、退学に至った。要は宮澤と同じバッドエンド。

 学校も、短い期間で逮捕者を2人連続で出したことで名誉が傷付くだろうに、きちんと公表して処分を下したのはなかなか立派だなと思った。

 これで白幕は全て攻略済み、と。何か呆気(あっけ)なかったな。残りの幕も同じ調子で片付けられればありがたいんだが。

 ちなみに体育祭の結果は青組の優勝でした。どうでもいいか。

 

「あ……お、おはよう、小泉君」

 あ、幣原。

「おはようございます、幣原()()

 じゃなかった、幣原さんだった。

「え……こ、小泉君?」

「今日もいい天気ですね。それでは私はこれで」

 幣原さんとの会話もそこそこに、自分の席へ向かう。

 

「ちょ、ちょっと待ってください! 何か初めて話したときよりよそよそしくなってません⁉」

「いやそんなことないですよハハハ」

「その敬語どうしたんですか⁉ あとさん付けも今までしてなかったでしょ⁉」

「いやこれは幣原さんが自分にお敬語を使ってらっしゃるので自分もそれに習わねばと思ったお次第です」

「別にいいですから! あと『お』の付け方も違うと思います!」

「いや参ったもうこんな時間だ。そろそろ家に帰らないとなので失礼します」

「まだ朝のHR前ですよ⁉ というか自席に行こうとしてましたよね!」

 機転を利かして幣原さんからうまいこと距離を置く俺。

 願わくばこのサディスティックなクラスメイトに人生を破壊されないようにしつつ、残り27人への復讐を成し遂げたいものだ。

 




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