連鎖の復讐 ~性犯罪の濡れ衣を着せてきた黒幕が30人って何~ 作:冴木甲士
「何言ってんだ?」
瞬時に、その言葉が出た。
頭を大して回転させるでもなく、疑問の感情が口に直結してそのまま発言したかのような具合だった。
「ゴメンなさい。私がそんなこと頼める筋合いないのはわかってる。だけど、明日からの学校生活が、どうしても怖い」
菅が頭を上げるも、俺に顔を隠すかのように
さっきのファミレスでの強気な態度は一体どうしたのか、今はただ庇護を求める愛玩動物のごとく
「アンタが……小泉がどんなことになるのかろくに考えもせず、お金のためにとんでもない嘘を吐いたのは、ゴメン。小泉が実際にどんな目に遭ってきたのかろくに見てこなかったのは、ホントにゴメン。自分がこれから同じ目に遭うと思うと、アンタにどれだけひどいことをしてきたのか、ようやくわかった。正直、独りぼっちになりながら明日から受けるようないじめを耐え抜ける気なんて、私にはしない。庇ってくれとは言わないし言えない。でもお願いします、どうか教室にいる間は、一人にならないように、どんな話でもいいから、一緒に何か話す関係になってくれないでしょうか?」
知ったことか。勝手に不登校なり何なりになってろよ。
感情に身を任せるなら、どうしようもなくそう言ってやりたかった。
というより、口から出かかっていた。
出かかっていたものを飲み込もうとしたのは、俺の復讐に終わりの
俺にそもそも冤罪を被せてきた犯人は菅を除いて29人。
末端であるコイツ一人だけに復讐して終わりにしようかとも頭をよぎったが、時間が経つにつれてまだまだ全然納得できないという気持ちが自分の中から湧き上がっていた。
それも菅が末端に過ぎないのであって、事の元凶が全くのノーダメージというのが腹立つからだろう。
人数の膨大さには圧倒しているが、当初に決めた目標である9人分にもまだほとんど達していない。
それほどの人数を相手にするには、こちらも協力者を増やす必要があった。
たとえこんな
そしてそれをさせられるだけの弱みを握っているのだから、奴の要求を聞く必要も義理も、本来ない。
しかし菅がもしも利害を度外視するようになったら、どうするかはわからない。
菅が過酷な学校生活――俺は散々味わわされたが――を受けて俺も含め誰からも助けも得られないなかでは、周りの全てに被害の及ぶような自暴自棄にでも走るかもしれない。
それが元凶どもの壊滅に向かってくれるなら万々歳だが、俺に逆上して殺しに来る展開だってあり得ることだった。
感情的には菅を許すことなんて、絶対にない。
しかし菅を少しでも扱いやすい状態に留めておくには、ある程度菅のケアをしておかねばならないという計算が、俺の脳の一部でなされていた。
放っておけよ。
いや菅はまだ必要だ。
脅せば済むことだろ。
それじゃ復讐が破綻するかもしれない。
そんときはそんときだ。
後悔するぞ。
しねーよ。
許さなくてもいい。利用するだけ利用すると割り切れ。
俺はあんな目に遭っても誰からの助けも得られなかった。その下手人を俺が庇わなきゃなんねーのかよ。
それがお前の目的に必要だからだ。
できるか!
やるしかねえんだよ。
自分の頭をもたげる2つの考えが、ひたすらせめぎ合う。
ただ、
菅がお願いしてきて結構な時間が経ったと思うが、奴はずっと俺の答えを待つようにたたずんでいた。
腹立たしいことに、それはもう腹立たしいことに、奴からすれば俺が奴と話し相手になるという線は譲れないのだろう。
しかし、この見るだけでムカつく存在は、これよりずっとムカつく存在を引きずり出すのに使えるわけで……。
いろいろと考え尽くした俺は、思考回路が焼き切れた。
「……教室の中だけ、な。それ以外は自分で何とかしろ」
焼き切れて考えるのが面倒になった俺は、投げやりに答えた。
「……! ありがとうございます!」
菅の目に少し涙が浮かんでたようにも見えたが、どうでもよかった。
「あーそうだそれからな。学校に置いてる上履き、今日の内に持って帰った方がいいぞ」
「え……う、うん」
今浮かんだアドバイスだけを菅に与えた後はまた駅へ向けて早歩きした。
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カクヨム
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