連鎖の復讐 ~性犯罪の濡れ衣を着せてきた黒幕が30人って何~ 作:冴木甲士
菅が俺の冤罪の真相を広め、ファミレスとかでいろいろ話した翌日。
「お、おはよう」
菅が俺の前に立って
「さようなら」
「いや何でだよ。いきなり別れようとしないで」
「ただの言い間違いだ。いちいち気にすんな」
ポンコツ状態になった頭で受けた約束でも、一応は破らない。
これをすることも自分の野望の達成に必要だと、割り切れなくはない。
「あーそれと昨日の上履きのこと、ありがとうね」
「上履きのことって何だ。お前に上履きを買ってやった覚えはないぞ」
「どんな同級生だよ。そうじゃなくて持って帰るよう言ってくれてありがとうってこと。
どうやら本日の菅の靴箱も、往年の俺の靴箱と同じく
俺の方はというと至ってクリーン。昨日の放課後の内に掃除をしたところ、本日は誰も汚すことなく綺麗さを保ったままだった。
「どうせ掃除してもしばらくはそんな感じが続くだろうな。ほとぼり冷めるまで持って帰った方がいい」
「ほとぼりっていつ冷めんのさ……」
「知らん」
そんなのやらかしてるアホどもが飽きるまでとしか言えん。
「強制的にやめさせたいなら監視カメラでもどっかに設置して証拠を抑えるんだな」
「そんなの難しくない? 校内なんだし」
「だから後は自分で考えろって。そこまで面倒見切れるか」
いやマジで。今の俺は残り29人の幕どもと争ってる最中だから。菅への嫌がらせを何とかする余裕なんてないから。
ただ仮に余裕なんてできたとしても、コイツにそこまで世話を焼いてやることはまずない。
「うん、そうだね……」
菅もこれ以上は俺に助力を求めず、大人しくなった。
「ところでアンタ、普段は何してんのさ」
「は? 何だいきなり」
「いや、話すにしても共通で盛り上がれる話題があれば楽しいじゃん」
「共通、ねえ。例えば豪邸を見て回ることとか」
「豪邸を見て回るって何」
「結構楽しいもんだぞ。これがいずれ俺の住まいになるかもしれないと思うと」
「え、大富豪か何か?」
「いや全然。ただ思うだけだ」
「ただの妄想じゃねーか」
「あとはバンジージャンプだな。あのスリリングな感じがたまらん」
「え、そんなのやってんの。そもそも近場でそんなのやれる場所あんの」
「誰がやると言った、想像するだけだ」
「だからそれ妄想! 実行に移してる趣味何にもねーじゃねーか!」
「ただのバンジーと思うな。ヘリコプターの上から飛び降りて豪邸の庭の池にある
「また豪邸出てきた! 何なの⁉ お前の妄想の世界観何なの⁉」
「まあ全部嘘なんだけどな」
「少しはホントのこと話せない……?」
朝から少し疲れた感じを出してくる菅。嘘については冤罪ふっかけたお前が文句言う筋合い一切ないんだが?
その日の昼休みに、菅はまた俺の席へやって来た。
自分の机をわざわざ俺の机とくっ付けながら。
「おー、これはまた前衛的なアートになってんな」
そこで見たのは、昨日までの俺の机と同じイラスト。
例によって公共には放送できない類の表現がズラリと並び、狂いに狂った様相を
「これもほとぼり冷めるまで待てばいい?」
「そうじゃねーの」
「はあ……」
「溜息を俺に対して吐くなよ」
「ああ、ゴメン……」
菅は席に付いて、俺の真向かいで弁当箱を広げた。
「ところで変なこと聞くけどさ」
「変なことなら聞かんぞ」
「いやちょっとは聞いてよ。えーと、アンタは普段一人でご飯食べてんの?」
「そうだが?」
「あー、休み時間でも私以外話し掛ける人いなかったけど、それって私が冤罪掛けてからそんな感じに……?」
「いや入学時からそんな調子だが」
言葉を選んでいるが「お前ぼっちなの?」って聞きたそうにしてんのが丸わかりだ。
この高校に入って2か月経つが、友達はいてもいなくてもどっちでもいいと思ってる俺は特に誰とも遊ぶことなく一人で過ごしていた。
例の冤罪は入学2週間後ぐらいの出来事だったが、その前にも一緒にしゃべる奴がいたわけではない。
「あー、そうなんだね……」
「別に腫れ物扱いとかいらんぞ」
「あ、いや、そんなつもりはなくって」
「それとここの奴らと仲良くしようなんて気にはならん」
元からその気分は薄かったが、今はうわべですら極力関わりたくない。
「どうして?」
「自分を無実のことで犯罪者と疑って掛かった奴らと仲良くしたいか? お前」
「あー……」
あの日にも違うと訴えはしたが俺の言うことを信じる奴は少なくともこのクラスにはいなかった。
そしてコイツらは昨日までの俺や今日からの菅に対して器物損壊といった犯罪行為も辞さないような連中だ。
別に自分が得するわけでもないのにそんな奴らと親しくできるほど俺は人間できてない。
「じゃあもし新しく友達を作るとしたらどういうのがいい?」
「そうだな……猫とか犬とか」
「それって友達というかペットじゃ……」
「俺達は同じ動物だぞ。対等な関係も結べるさ」
「いやそれはどうだろ」
「その気になれば猫じゃらしで猫と一緒にじゃれ合って楽しさを分かち合うこともできる」
「
「そこに犬が
「まず犬語がさっぱり理解できないんだわ」
「お前は知らなかっただろうが、今日の俺の昼食はドッグフードなんだぞ」
「じゃあ今お前が食ってるその弁当は何だよ」
「これは仮の食事ってところだな。たまには人間の味に慣れておかないと人間の社会に溶け込めなくなるから」
「そんなに人間以外の動物に合わせたいなら動物園で飼われてみたら?」
「いや全部嘘に決まってんだろ。何マジに捉えてんだバカだなー」
「……話しててこんなに疲れる奴初めてだわ」
菅がこれ以降無言になりただ弁当を口に運ぶだけの時間となった。何だよ、話し相手になれとかぬかしたのお前じゃん。まあ今の状態の方が俺には気楽だが。
「そんなことより今日の放課後、わかってるよな?」
昨日の打合せで決まった流れについて、菅へ念を押す。
「ああ、わかって……」
話してる途中に菅がとある人物のいる方へ顔を向けようとする。
「バカ、アイツを見んな。警戒されるだろーが」
「あ、そっか」
菅が視線を向けようとした先には、宮澤がいた。
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カクヨム
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にて本作を先行で連載しているので、
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