連鎖の復讐 ~性犯罪の濡れ衣を着せてきた黒幕が30人って何~   作:冴木甲士

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第03章 白幕の上
第007話 一回休み


 宮澤が警察に御用になってから数日経過。

 同じクラスの生徒達も最初は宮澤の話題で持ちきりだったのが今はすっかり風化されており、今度来る体育祭の話に盛り上がっていた。人の噂って儚いもんだねえ。まあ噂の主がこの学校からいなくなったからもあるんだろうけど。

 

 俺はというとそんなクラスメイト達をよそにスマホから無料のマンガを読んで時間を潰していた。

「ねー、聞いてる?」

 さっきからやけに近くてうるさい女のものと思われる声が聞こえるが、気にせず時間を潰す。

「聞こえてる? 聞こえてるよね? 無視してるだけだよね?」

 何が聞こえようともシカトを貫けばいつかきっと声は()む、そう信じて時間を潰す。

「いい加減リアクション取れよ」

 俺のスマホがなぜか急に左へスライドアウト。あれ、特に意識した覚えないんだけどスマホを持つ手が不思議な力で左に動いていくよ。

 

「世の中には不思議なことがあるもんだ。自分の腕が他人に操られたかのようにひとりでに動くなんて」

「いや私がどけただけだから」

 俺の腕が怪奇現象に見舞われた原因は目の前の女子こと、菅佳美だった。

 少し前に俺を冤罪へ追いやったばかりのゴミッカスであり、今は俺の壮大なる復讐にこき使っているパシリ。

 冤罪の真相がバレて孤立して以降は、何の因果か学校にいる間の話し相手を引き受けることになってしまった。今はとても後悔している。

 

「コイツ目の前から消えてくれないかなー……」

「おい少しは心の内隠せ。本音ポロッと漏れてるから」

「安心しろ。言って聞かせるつもりで漏らしている」

「人への配慮ないの? 正直に何でもしゃべるのが美徳だと思ってるタイプなの?」

「お前に対しては特にする配慮もないし」

「あ、そ」

 ラグビーのタックルぐらいに当たり強く接してるのに柳に風の対応をする菅。コイツこんな強いメンタルだったの? どうすれば心を折ることができるの?

 

「それで、さっきも聞いたけど」

「さっきから全部聞き流してるから俺にとっては初耳だな」

「次の犯人を追い込むの、どうすんの?」

 俺が菅の言葉をスルーした仕返しなのか今後は菅が俺の言葉をスルーしてくる。

 

「犯人って何のことだ。まるで物騒な事件でもあったみたいに」

「いやまさにアンタの元に事件が起こったでしょ」

「起こした加害者側が言うセリフじゃないな」

「そこはゴメンだけど話進まないから。で、犯人ってのはその事件の黒幕? 白幕? そう呼んでる奴らのこと。知っててとぼけてんでしょ」

「相手が黒なのか白なのかハッキリしてくれ」

「お前らが名付けたんだろーが! 何だ紅白幕って!」

 菅が声を荒らげる。仕方ないので小声で教えてあげることに。

「おい、あんまり幕の呼び方バラすなよ。幕どもに聞かれたら動きづらくなるだろ」

「……ゴメン」

 渋々、という態度を隠しもせずに謝る菅。注意が納得いかないのかな。

 

「で、犯人もとい幕どもだが、別にどうも」

「は? アンタ復讐がしたいんじゃなかったの?」

「いやもう2人片付けたし。たまには休みを挟みたいなーって」

「休み?」

「お前は入ったばかりで知らんだろうけど俺もうこの復讐に動いて軽く1週間はぶっ続けでこなしてんだぞ。今日ぐらい休暇を取らないと過労で倒れるっつーの」

「労働? お前の復讐って業務か何かだったの? 趣味でやってるんじゃなくて?」

 菅がこれでもかと指摘してくる。いやある意味労働だぞ。金は稼げないけど。

 

 幕がわかるまでの追跡調査は伊藤さんの領分だったが、わかってからの作戦会議や準備、実際に幕どもを追い詰める作戦の実行にあたっては俺もガッツリ動いている。

 菅もまあ働いてることは働いているが、重要な作戦の立案などを任せるにはいろいろな意味で信頼できないので、俺の仕事の方が重めだった。

 

「復讐を趣味でやってるって何だよ」

「ああいやゴメン、変な言い方になっちゃったけど」

「とにかくしばらくは休みだ休み。営業時間も終わってるから問い合わせは休み明けにしてくれ」

「え、本当に休むんだ」

 用事は済んだみたいなので再びスマホを俺の目の前に戻す。

 菅のいる方から「何だこれ……」という声が聞こえた気がしたが、聞き流した。

 

 

 この日のHRにて、クラスの体育祭での出場種目の分担が決められた。

 一応勝つつもりはあるみたいで、運動部に所属している奴らには相応にパワフルな種目が、俺らのような文化部や帰宅部の連中には誰でも比較的簡単にできる種目がそれぞれ割り当てられた。

 俺としては以前の経緯もあってこのクラスに対する思い入れが全く湧かないため、どの種目でも構わなかった。どうせ体調不良で抜けるかすると思うし。

 

 そうしていたら俺の出場種目は二人三脚となり、

「よ、よろしく……お願いします」

 話したことのない、俺の方へ怯えたように挨拶してくる小柄な女子と組まされることとなった。

 




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