「な?」
────そう 名だ
一方が地に伏し、一方がそれを見下ろす。戦の終幕に出現する構図である。
「どうして?」
────我を滅ぼす者の名を 聞いておきたい
「ふむ」
切っ先は真っ直ぐに向けたまま、剣の主は遠くを見つめるように目を細めた。
「そういえば、名も告げていなかったね」
出会いの始めに名乗り合うのが世の法ならば、彼らはまったくその埒の外に居るのだろう。その名よりも重く背負った称号が、宿命が、彼らの闘争の根源である。存在そのものが戦うには十分過ぎる理由となった。
死闘の果てに求められた問いに、初めて個としての意思を感じられたような気がする。
乙女は少し、少しだけ
「アリア」
研ぎ澄まされた刃の如く、凛とした声が響く。
「我が名はアリアスティル・エードリケ。アトロスとクリアスティルの子。
「君を討つ一振りの剣だ」
────ふ
────エードリケ “祝福されし血統”か
「そうだ。生まれた時から……いや、生まれる前から僕は君を討つ為に存在していた」
────そうでなくては
────
こちらが光で、あちらが闇。白と黒、正と邪。
“勇者と魔王”。
あらゆる対立する語が彼らを結んでいた。対極に置いた。
「そろそろ終わりにしよう」
だからこそ、なのかもしれない。奇妙なつながりを感じていた。それを否定できないままに、勇者は剣を振り上げた。
────
「うん」
────儂を討ってもまたいつか 世界のどこかで闇が生まれる
「かもしれない。でも」
「何度この世界が闇に覆われても必ず、どこかに光が灯る。そこに僕がいなくても、僕ではない誰かがかならず闇を祓う」
────ふ ふ ふふふ
────
地の底から響くような
────好かろう
────魔王ゾーアの首を
「ああ」
構え直した刃の先で。
────最後に
「うん?」
────
「……呪いではなく?」
────そうとも これは祝福
────儂から最後のおくりものだ
乙女勇者はその時初めて、かの存在を──魔王を、恐ろしいと感じたかもしれない。
────其方の道行きに 幸多からんことを
「っ!」
斬り落とした時の、粘つくような
その
敵への敬意からではない。
いつまたその目が開くかもしれないと、怖かったから──とは、仲間にも決して語ることはなかった。
戦いの幕は閉じた。
彼らの旅もまた終わったのだ。
故郷へ。帰りを待つ人々の元へ。
乙女勇者一行は静かな凱旋の途に就いたばかり。
共に旅立った仲間が、友が。
こうして誰一人欠けることなく並んで歩むことができる。
世界を救った英雄という誉れより、それが何より誇らしい。
何も
何も奪わせなかった。
ただ、ちょっと……
「あ、ゴメン。ちょっとお花を摘みに行ってくるね……えへへ」
なんか、こう……
「ん?」
「……ぉ?」
むしろ逆に……
「…………」
「ぬぁ……」
「ぬぁんじゃこりゃぁぁぁっっ!!?」
乙女の股間に……ある……!
あってはならない