英雄讃歌 第三章   作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています

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「がうっ!!」

 

 ロックウルフは最初イリア一行に気が付いていなかったようだが、鼻の良さか、あるいは耳の良さの為かすぐにイリア一行の方へと目線を向けて、周りの仲間たちへとすぐに注意を促した。

 その声に反応してすぐに5匹のロックウルフは臨戦態勢へと移行して、イリアたちに鋭い目線を向けて、その動きを観察している。

 

「“ライトアロー”。」

「“ダークカッター”。」

「“ぷるぷる“。」

 

 それに対してイリア一行はいつも通り魔法による牽制を行う。3人から放たれる魔法は光の矢となり、闇の刃となり、そしてロックウルフへと向かって飛来していく。

 イリアたちはレベルが上がっても、やはり魔法が主のダメージソースになっている。手に入れた聖剣が国守の聖剣“アレクシス”であり、防御方面の能力であるのも理由にあげられるだろう。

 魔法攻撃専門である祝福の聖剣“エルメシア”は魔法攻撃力を上げてくれるため、イリア自身のステータスも含めて、魔法に軍配が上がるのは仕方のないことだ。

 

「きゃいん!!」

「ぐるるるる!!」

「アリスちゃんとスラちゃんはそのまま頼んだ。特に魔法を使ってくるのを優先して牽制を頼む。」

 

 魔法が当たったロックウルフの様子を横目に見ていた他の1匹が怒りを目に宿して、イリアの方へと向かって駆け出していく。その後をもう1匹のロックウルフが追従して、ぐんぐんとその距離を近づけていく。

 それに対してイリア一行は冷静そのものであり、すぐにイリアがアリスに対して方針を伝えて、そのままロックウルフが近づいてくることをどしりと構えている。

 

「うん。分かった。」

「“ぐるる”。」

「“がうっ”。」

 

 その時、後方の2体のロックウルフから魔法が放たれる。石造りの矢はそのままイリアの方へと向けて放たれて、そして被弾する。

 大したダメージではないが、質量のある攻撃に当てられて若干ながら体勢が揺れる。とはいえ、接近してくるロックウルフはまだ先におり、そのロックウルフが到達する前には確実に大勢を整えることができる程度であった。

 

「ちっ、うざいな。“ライトカッター”、“ライトボール”。」

「“ダークアロー”、“ダークボール”。」

「“ぷるぷる”、“ぷるぷる”」

「がうっ。」

 

 魔法を撃ってきたロックウルフを対象に、さらに先ほど魔法を当てたロックウルフに魔法を分散して射ち放つ。魔法は発光してロックウルフに向かって進んでいき、そしてそのまま被弾させた。

 すると、最初にダメージを蓄積していたロックウルフは光の粒子になって消えてしまい、そして、もう1匹のロックウルフも瀕死状態へとなっていた。

 

「ぐるる~。」

「あれ、案外弱いな。このまま油断せずいこうか。」

「うん。そうだね。」

 

 簡単に倒してしまったロックウルフを見て、首を傾げる二人であるがそれもそのはず、ロックウルフのステータスは守護者の修練所と大して変わらないのだ。それと防御力もダンジョンの魔物より低い。

 王都周辺の魔物が極端に弱いというわけでもないが、レベル自体適性とされるレベルよりも大幅に上がっているため、その時点でこうなってしまうのは必然だったのだ。

 

「“がうっ”。」

「“がるる”。」

「二体は受け持つから、後三体はその間にお願い。」

 

 こうしてロックウルフは魔法を仕掛けて、かつイリアに対して2匹のロックウルフが接近するも、焦ることはなく、ただいつも通りに魔法で牽制して、アリスに向かってロックウルフが向かわないように動きを制限する。

 そんな単純な作業へと変化してしまっていた。もう戦意が無くなりかけているロックウルフであるが、逃げられないのは悟っており、懸命に攻撃を繰り出す。

 

「“ダークブラスト”、“ダークブロー”」

「“ぷるる”、“ぷるる”。」

 

 しかし、懸命虚しく、魔法によるアリスとスラちゃんの全体攻撃3発とアリスの単体攻撃でまた1匹減った。イリアをロックウルフが抜けるわけもなく、軽々と2匹を相手取り徐々にダメージを重ねていく。

 

「ぐるる……」

「終わりっと。」

 

 最後はロックウルフの首を断ち斬り、戦闘は終了した。

 呆気なく終わった昇格試験にイリア一行は釈然としないものを感じながらも、この程度であれば確かに簡単な内容であるから、納得するしかないのだった。

 

 

 

「鮮やかだな。」

「……ありがとう。」

 

 レオンによる評価を微妙そうにイリアは受け取る。戦闘内容としては危うげない勝利であったが、これが昇格試験であるという事実にどうにも言い難いものを感じているのだった。

 

「ははは。流石に鉄級の昇格試験は簡単か。だが、銀級からはレベルが違うからな。今のイリアでは厳しいだろう。」

「そうだな。もう少し強くならないといけない。」

「技術だけなら確実に金級以上はあるのだがな。それだけでは勝てないからな。」

 

 鉄級程度であるとこのレベルの戦闘であり、特に難しいことはない。一方で銀級レベルとなると、裏ダンジョンで出会ったイビルアーマーのレベルと同等の魔物を討伐できることが条件となってくる。

 今の段階では大体ステータスが半分以下であり、厳しい戦いになるだろう。パーティー6人フルであれば、魔物の相性によっては勝つことも可能だ。だが、今回のように群れを相手にすると、勝負にさえならないだろう。

 

「ああ。それで合格か?」

「勿論だ。鉄級は受かって当然だからな。最低限コミュニケーションを取れれば受かるとまで言われるものだ。この内容で受からないわけがない。」

「それもそうか。なら、今日から鉄級冒険者だな。」

 

 めでたくイリア一行は鉄級冒険者になることができたのだ。ちなみにヴァンは戦闘に参加していないが、それは斥候という役割かつ道案内人など他の仕事を行っているため、戦闘外の功績を主として評価されることとなる。

 また、戦闘に関しても現状では戦えないレベルと言うしかないが、【冒険家】カルアの弟子というような形式となっているため、いずれはイリア一行の力となれるだろう。

 

「これで、もう少し稼げるようになるんだね。」

「銅級では稼げないから大変だよ。」

「もう少し戦っていくか?」

「是非そうしてくれ。」

「……レオンがそういうのか。分かったよ。」

 

 イリアが呆れたような表情をレオンに向けるが、冒険者のようなことをしたいというレオンの気持ちを推し量り、イリアはそのまま冒険を続けることとなったのだ。

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