決闘裁判は終わった。
オルトロス・ヤクシニー・トール。
ここは余裕。
問題はこの後。
「階段を登った瞬間だったね!」
「ンダ系はレジストされたよな」
「ヨシツネがズバババーって!!」
「基本脳筋なんよな〜…あの自称探偵」
「スクカジャはダメなんでしょ?」
「うん…いや、完全に無駄って事もないだろーけど」
「ならそれと、ラクカジャもあれはイーのかな?」
「そうなるよなー」
「ん〜、だったらカハクちゃん育てる?」
「う〜〜〜〜〜ん…(めんどい)あ、紅茶お代わりいーですか?」
「あー! アタシはリンゴじゅーす飲みたい!」
「んじゃそれも追加で」
邪教カフェで作戦会議。
その結果相棒はユニコーンとしてラクカジャと回復と隙を見て静天の打撃を流し込むチームの主軸を担う事になった。
アタッカーにバイブ・カハ、サブアタッカー兼スクカジャ要員としてモムノフ、そして俺がデバフによる行動阻害を担当する。
俺以外の全員が静天持ちであり、
これで無理なら何をどうやっても無理だろう。
「と…言うわけで〜!!」
「「イクゾー!!」」
◆
【………人修羅、決闘裁判での動きから出来る悪魔だとは思っていたが、なる程】
宝石のように輝く緑色の目を細めて黒猫──ゴウト(業斗童子)──がライドウへと振り向いた。
【強い…と言うよりも、アレには帝都を護る葛葉の嗅覚に通ずる物を感じるな】
モコイを使役した揺動にも無反応…いや、アレはそれよりも先に此方の存在に気付いていた。
『行くぞ』
彼の悪魔の宣言、それに傍らの悪魔ユニコーンが嘶きで応えた。
【カジャとンダ…退魔の基礎と言える初動ではあったが…あの目は嫌に臭う】
既に承知した式を解くような冷徹な眼差し。
人修羅から受けたタルンダを解呪する為にライドウが一手遅れる。
その遅れが彼奴等の陣形を磐石へと導き。
『ヨシツネ見参』
ライドウの剣舞、それにより体勢を崩した悪魔へ急急如律令の符を用いて呼び出したヨシツネが斬り込む一種の初見殺し。
しかし、彼奴の使役する悪魔はそれを容易く捌いて凌ぐ。
マガツヒを通じて使役される悪魔だから。
そう考える事が順当…しかし。
【どう思う?】
詰将棋のような采配。
それに全幅の信頼で応える悪魔。
【───面白い、か。なるほど…】
あの悪魔はまだ伸びる。
その先に待つのは修羅か、羅刹か…。
仏となるようには見えぬが…さて。
受胎した東京。
その中に足掻く悪魔を我らはただ見送った。
───今は、まだ───。
◆
「へいへ〜ぃ!! ラックショ〜☆☆☆」
前脚を振り上げて喜ぶ相棒の隣。
俺は仰向けで地に転がっていた。
「死ぬかと思ったー………」
今になって心臓がバクつく。
「なんで〜? 余裕だったじゃ〜ん!」
「余裕っても、最後の挑発とかマジでビビったし」
なんかマガツヒが回復してたんだよな。
体力が回復した感じは無かったから殴り続けて勝てたけど、あれにもし体力回復の効果があったなら今ここにいる俺の胴体には首が付いていなかっただろう。
「も〜せっかく勝ったのに情けないんだから…」
ハムハム…と、お馬ちゃんな相棒が俺の髪の毛を歯でかじる。
「ヤメロそれ、ハゲる。ヤメロって…ヤメ…もぉ!!」
イライラMAXでゴザルよ!?
相棒のお陰で? 元気を取り戻した俺はマントラ本営の攻略を開始した。
「オニが固ぇ…」
「ねーねー? それならアタシがカイチになろっか?」
「カイ…チ……ん、んん?」
「アタシ覚えてるよー? 毒ガスブレス
毒ガスブレスが有効。
そうやってアピールする相棒ではあるが、おそらく本当の狙いは別にある…ような、嫌な圧を感じながらも。
〔〔ズシシャーン!!〕〕
悪魔合体により新しい肉体を手に入れた相棒。
そのモコモコでふわっふわな羊毛が俺の渇いた魂を嫌と言う程に誘惑して………!!
「号鬼、これ…好きなんでしょ♡」
うっふん♡
とウインクする相棒に、俺の理性がハチ切れた。
「ゔわ〜〜〜〜!!!」
前回では相棒ではない悪魔をカイチにした。
相棒の目を盗んであの凶悪な癒やしのウールに顔を突っ込み、命令で動きを縛ってでも堪能した至高のモフモフ。
バレていないと思っていた。
思っていたのに……!!
欲望が理性を踏み潰す。
「ちょ…号鬼、指がエッチだよ…んん♡」
「ハァ…誤解を招く言い方は…ハァハァ♡ 止めるんだ相棒…ハァハァ♡♡♡」
この手触り、指に絡む弾力、肌を撫でる繊細さ。
間違いない…ループ前のカイチを凌駕している…流石は相棒。相棒しか勝たん…!!
クンカクンカしてモミモミしてチュッチュッする。
なんてケシカラン。
なんて、エッチな、羊毛なんだ………!!
そんな癒やしイベントを挟みつつマントラ本営ビルを攻略して行った。
屋上のバイブ・カハに後ろから蹴り飛ばされて脚を踏み外した時には紐なしバンジーによる11修羅の終了も覚悟した物だが(ここは地上60階)、仲間のバイブ・カハによるミラクルキャッチで事無きを得たり。
そうして辿り着いたゴズテンノウの御所で異変が起こった。
「あれ、カハちゃんとモムノフニキは?」
長い屋上階段を登り終え、神殿へと通じる直通路へ入った瞬間、2体の仲魔が姿を消した。
「え………あれ? 相棒??」
そして相棒の顔が青い。
いや、カイチの顔はもともと青いのだがこの場合は比喩として。比喩抜きならむしろ黒いと言えるほど顔色が悪くなり、産まれたばかりの子羊のように脚をぷるぷると震わせていた。
「は…はぁ? な、なん、で、わかんない…の!?」
「はへ…??」
聞けば、どうにもゴズテンノウの霊圧とやらに当てられているらしい。
いや…確かに設定上は大悪魔で、荒くれ悪魔を統括するヤクザの親玉みたいなポジションの悪魔だけどさ、別に戦闘する訳でもないイベントキャラと言うか、なんならモブでしか無い口パクおじさん(原作では口すら動かない置物)相手に何を言うのやら。
「アタシ、待ってる、死な、ない、で……!」
頑張っていた相棒も逃げるように俺のマガツヒに身体を溶かした。
「単純にゲームの演出上、仲魔をムービーに登場させるのは無理があったんだと思ってたけど、一応理由はあるんだな…」
怖い。
その感覚が理解できない。
そんな俺は気負いもなく扉を押し開けたのだが。
【よくぞ参った猛き悪魔よ!!】
「は………ぐぉ…」
ヤバかった。
さっきまでお昼寝中だった俺の中の悪魔の部分が暴力と言うより災害…天変地異とでも言うべき無尽蔵の厄災に遭遇したかのように生存本能を叫び出し、人間の部分は彼の呼吸が肌を撫でるたびにその魂を消そうとしていた。
(ばか…ば…バカじゃねぇの俺!?)
それは【神】だった。
それも表面だけは
(千切れる…精神が、千切れ…る………!!)
霊圧が臭う。
溶けた鉄の臭いに近いか。
製鉄所の、煮える金属の、油と血と暴力の臭い。
防ぎようのない鉛色の空気が俺の肺を制圧し、そこから全身を容赦なく喰い荒らす。
一息するだけで疲弊する。
怖いを一周したらやっぱり怖い。
何を言っているのか自分でもわからないが、目の前の神は酷くご機嫌だった。
【先の決闘、実に見事! 褒美として汝に力を授けよう! 受け取るがよぃ!!】
確かに集中すれば己の身体に力が漲る事は理解できる…だが今はそれよりも。
グワハハハハハハハハハ!!
冬の日本海の荒波に飲み込まれたような空気と霊圧の振動に膝が折れる寸前、哄笑をピタリと止めた【神】が俺を見つめて問い質した。
【どうだこの力は、マントラの悪魔として───】
「やります!!」
【…え??】
「俺はマントラの悪魔! 人修羅!! ゴズテンノウ様の為にあの
【んえ…あ、あれ? そう? なんかもっとこう…】
「やらせて下さいッッッ!!」
俺は土下座した。
正確にはゴズテンノウの霊圧に耐えきれなかった膝が折れて倒れただけなのだが、この場で弱味を見せる事は死と同義だと判断して土下座の体勢を形作ったのだ。
「マントラ軍の…否!! ゴズテンノウ様の一助となれるよう末席への参加をお許し下さい!!」
【あ…じゃあ……ソレで】
死ぬ寸前の馬鹿力だった。
ヤニの充満した個室、報酬先渡し、圧迫面接。
俺にマントラ以外の選択肢は…無かった。
断る事も出来る?
それが言えるのはゲームの向こうの人間だけだ。
絶対にYes。
それ以外口には出来ない。
俺はただ、本当に、死にたくなかった。
◆真◆・◆女◆神◆転◆生◆Ⅲ◆
2066.8.9-2
ゴズテンノウ謁見後。
ニヒロ機構本部(偽)ナウ。偽の中枢までは戦闘も無いので遠足気分で施設を散策。
流石にフルダイブ。
この臨場感が違うんよね〜。
施設の奥で出会ったヒジリさんとの会話イベントの後、速攻で『強い妖気を感じる』扉に行き当たった。
ん〜〜〜〜ニヒロ、扉、ボス。
…………オセ、かな?
ふんどし侍な二足歩行チータ。
となると物理。
やはり物理、ここでも物理。
物理物理。
物理しか勝たんのかアトラスよぉ!?
コッチには対葛葉用のパーティーが揃ってんだぜ!?
舐めんなオラ………あ。
コッパテングに…
ちょ〜っと間違えたようで〜(ノ´∀`*)
…なんだバカ野郎この野郎!
ザコが俺を舐めるなよ!?
コッパテング→シバブー→モムノフもカイチも弱点。
インキバス→イービルアイ(敵の残りHPを残り1にする悪魔のような呪殺魔法)で執拗に号鬼を狙い続けてきやがる。
マジで…肝が冷えた。
運が悪かったら普通に死んでた。
怖い…アトラスが怖い………。
さて。
またボスである。
…と言っても恐らくさっきと同じようなイベザコの可能性が高い。白の部屋…イクゾー!!
VSエリゴール。
確か…電気が弱点だったと思うが───これは正解! ナルカミで覚えてた放電が役立ったものの『速』のステータス差がモロに悪影響したのか、2回目からは放電を外しまくる。
そしてその隙にエリゴールのムドが発動。
最初の乱数チェックではカイチが選択され、次の乱数チェックではヒット判定。
なんとか勝ちはしたが、そろそろ色々厳しくなってきたなぁ……と、そんな風に思ってたらモムノフニキが進化に入った。
かなり長いこと一緒に戦ったもんな〜。
けどモムノフが何になるかは覚えなくてさ。
ワクワクしながら進化了承したんやが…。
ア・ラ・ハ・バ・キ・
(氷結反射及び物理・ハマ・呪殺無効ながらその他全てが弱点とか言う玄人向けの悪魔)
使え………なくは、無いと…思う…けど。
一手間違えたら詰みやぞコイツ。
モムノフニキが秘密兵器枠になってしまった。
その後はパーティーの強化に奔走。
ピクシー×エンジェルで作れるアメノウズメさんがコスパ的に最適なのだが、この時は何故か異様なほどエンジェルに嫌われてて30分近くはギンザの外をウロウロしたり。
とりあえず今、号鬼くんはレベル29。
プリンシパリティやエリゴール、テトラジャ継承のオニなんかも作れたので、これでなんとかここを突破したい。