「こうしてれば、もっと早く進めたのか…」
対マタドール戦。
やはりラクカジャの有用性は高い。
最大まで重ねがをしてしまえば、少なくともマタドールに負ける要素は無さそうだ。
「変なホだホ〜、こんな強いマジン倒したのに…なんでぜんぜん嬉しそーじゃないんだホー?」
仲魔のジャックランタンがくるくるとランタンを回している。俺は答えない。
相手をしている暇は無い。
「ヒホー…悪魔使いの荒い悪魔だホー」
俺の態度に思う所もあるのだろうが、ランタンはそれでも怒らず、のんびりと俺の後ろに付いて浮かんだ。
この先の地下道をマトモに攻略していたら時間がどれだけあっても足らない。
重要度の高い宝玉輪だけを回収し、その後はざっくりとした頭の中にある地図を頼りに最短距離を駆け抜ける。
「MPがスッカラカンだホ〜…」
うるさいカボチャにはチャクラドロップを放り投げ。時には傷薬でMP消費を誤魔化しながら大地下道を突破した。
「先ずはマントラ本営にカチコム」
「ホッ!? 本気かホー?? もうちょっとレベル上げたほうが安心だホー?」
理屈はわかる…だが、ループを繰り返した俺からすれば、それは逆だと断言できる。
街中では誰がいつ、どんな手段で襲いかかってくるかわからない。コレはレベル差以上のリスクだ。逆に本営で俺達を待ち構えている悪魔は確定している。奴らを経験値タンクとしてレベリングしたほうが結果的にリスクが少ない。
ヒホヒホヒホヒホと小煩いランタンの首に縄をかけ、俺はマントラの扉を叩いた。
「ホ…ホ〜? オイラ…ちょっとヤバい悪魔に召喚されちゃったみたいだホー…」
───そして決闘裁判の終了後。
「次はデビルサマナーだ」
情報共有して欲しい、との要望を受けて仕方なく口を開く。
「ヒホッ!? オイラそれ知ってるホー! オイラの兄ちゃんはデビルバスターバスターだったんだホ!!」
「………ソウルハッカーズ?」
「ヒホ?」
人修羅になる前の記憶からだろう。
『ソウルハッカーズ』と言う単語が口から自然に転がり出たが、それがどんな意味のある言葉なのかがお互いにわからない。
ただ普段より格好良いジャックフロストとジャックランタンがセットで人間に立ち向かうイラストだけが頭に浮かぶ。
メガテンゲームのどれかの作品に登場したのだろうか。
情報源が曖昧で会話が続かない。
それでも、嫌でも。
少しだけコイツの事を知ってしまった。
それが俺には少し、重たかった。
◇
「相棒が居ればバスターしてやったのに…ホー!」
ライドウの必殺『ヨシツネ見参』のクリティカル2連撃を受けてランタンがマガツヒに溶ける。
ヤツの言う相棒…とはデビルバスターバスターにおける銃火器を手にしたジャックフロストの事だろう。
ゲームの枠にとらわれない自由な妄想と、何より『相棒』と言う単語が俺の鼓動を掻き乱した。
「ッ…来い! バイブ・カハ!!」
戦線の穴を埋める。
ランタンの安否など今は気にしても仕方がない。
冷徹に、冷静に。
俺は大正時代のデビルサマナーへと拳を振るった。
◆真◆・◆女◆神◆転◆生◆Ⅲ◆
2066.8.16
色々と考えた。
半世紀前、この頭の狂った縛りプレイが曲がりなりにも成立していたのは無印版であった事と、各ステージを攻略するための下準備に何百時間もかけていた事、そして何よりも若かったからこそ可能だったのだ。
脳死状態で強引にゴズテンノウ面会まで走ってきた。だがこの先はどうする?
また…登るのか?
オベリスクを?
また?
この脚で………??
不可能だ。
もぉ…お爺には、不可能なんだよ。
だがそれでも。
チラシの裏のような残念な日記でも片手で数える程度には読者が居るのなら、諦める訳には行かない。
けど、無理。
無理なもんは無理。
竜馬マラソンを制限時間内に走り切るくらいには無理がある。
八方塞がりな俺を妻が励ましてくれた。
それは無理だよと諭してくれたし、他のゲームで游べと言ってくれた。
だから俺は妥協点を設ける事にした。
アイツだ。
氷の悪魔ことスイキを倒す。
倒したら前のデータを復活しても良い事にする。
出現場所も坑道だからオベリスクを登らずに雪辱も晴らす事が出来る。これなら俺は俺を許せる気がする。
そう決意して、胸に希望を抱いてニヒロ機構を攻略した。
バックアタックでHPが残り1桁まで行ったり。
ディースのペトラアイを人修羅が食らって、どうせエストマ中だから増援は無いと判断して残敵を倒したら何故かそう言う時に限って増援が来て、しかもそれがフォーモリア・ディース・インキュバスの組み合わせで、放電がミスったりヒット回数が足らなかったりしたら終わりとか言う極限状態を綱渡りで攻略して。
そうやってなんとかニヒロを突破したんよ。
あとはカブキチョウ。
ここを乗り越えればほんの少しだけ自分を許せる…そう思いながらハイウェイを渡ったんやが。
【魔人の気配】
【留まりますか?】
【YES/NO←●】
【号鬼は逃げられなかった】
───は????
この瞬間にVR投げたね。
この選択肢って確定じゃ無かったの??
フザケてんの??
アトラスお前ヤッタよな?
またヤッタんよな??
魔人戦でわざわざ選択肢を設けといて逃げようとしたら【逃げられなかった】とか言うクソみたいな裏切りを仕込むとか本当にただの人間のカスやぞ。
前は逃げれたやろ!?
なんでや! 乱数か!? それとも何かしらの条件があるんか!?
…なんにせよ、本当に信じられん。
なんで俺はこんなクソゲーをやってんのか。
意味がわからんくなった。
もう縛りは捨てる。
とりあえずクリアする。
縛るのはその後で、やる気が残ってたら状況を揃えてから再挑戦する。
そうでなきゃもう出来ねーよこんなクソゲー。
本当にこの頃のアトラスはカス。
くたばれよ本当に………………。
2066.8.19
この数日で冷静になって考えてみた。
縛りを捨てる。
なりふり構わずにとりあえずクリアする。
その予定で11修羅のデータを再開したりもした。
…けど、やはり違うんや。
俺はしょうもない爺だ。
メガテニストと名乗る事すら烏滸がましいただの爺だ。だが、この縛りを始めたのは他ならぬ己自身の意思であり、どれだけ烏滸がましかろうとも、あの時代を知る古い時代のメガテニストの端くれには違いないのだ。
俺の知っているメガテニストはどんな生き物だった? 一人は俺の兄貴だ。
たった1体の悪魔を作るためにブラック企業で働きながら、数限られた休日を丸1日捧げるような変態だった。
一人は小説家。
数を数える事すら馬鹿馬鹿しい程の悪魔合体を繰り返し、独力で秘められた
一人はブロガー。
詳細こそ覚えてないが、人修羅ひとり旅とか言う頭のネジが吹き飛んだ縛りプレイを行って当時の俺を狂喜の渦へと陥れた大変態だ。
メガテニストとは…そうあらねばならんのではないか? 少なくともその端くれである干乾びた爺も、せめてそこを目指さねばならぬのではないか………??
爺はそう思った。
故に、また。
俺はVRに挑むのである。
───13修羅目へ…続く!!