英雄讃歌 第四章   作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています

2 / 17
002

「こほん。そろそろ、意見などは出尽くしましたか?」

 

 レオンとドラコの行動が過去のことまで掘り起こされ始め、収拾がつかなくなりそうという場面で司会の会議室によく通る声が響く。

 その声に話し合っていたダンドール家の面々はしんと静まり返り、司会とレオン、ドラコへと視線が集中する。

 

「ああ、もう大丈夫だろう。」

「そうだね。」

 

 今回の件の概要はとうに会議室の面々には伝わっており、その芯の奥にある本当の目的以外は開示が済んでいる。策略の詳細とその手を打った理由の共有が済んだことでレオンとドラコとしても話を進めることに異論はなかった。

 司会や会議室の面々からの鋭い視線に対して、動揺の一切はなく正面から堂々と受け止めている。

 

「はい。では、打ち止めとさせてもらいましょうか。結論ですが、レオン様とドラコ様両名とも過失があったと、そして、今後のリスクを考えて次期当主を決めないとならない。そう言うことでよろしいですか?」

「そうだ!それしかないだろう。」

「私は同意する。」

 

 司会の言葉に複数の面々が大きく頷き、反論の余地はないようだ。現状のまま二人を単純に元に戻すと、確実に今回のようなことが起るだろうと考え、面々は次期当主の決定を行うべきだという意見にまとまる。

 

「お二人もそうするしかないと思いますか?」

「ああ。だが、当主様の御意思次第だろうな。」

「私としても、同意見だね。」

 

 レオンとドラコとしても継承戦を行うことが目的なため、そこに異論があるはずもない。が、結局のところ次期当主の決定権を持っているのはクロウその人である。

 クロウの意思を聞かない事には話が進まない。この会議中、不気味なほど沈黙を保っていたクロウについに視線が集まった。

 

「ご当主様としてはどのようにいたしますか?」

 

 ごくりと面々が唾を飲み込む。当主としてどのような判断を下すか。緊張と期待、不安など様々な感情がうねり、一つの波になって当主へと視線と共に注がれる。

 そのプレッシャーの中でクロウは一拍、静かに目を瞑る。

 

「……こうなってしまえば、私が後継者を任命するというのも難しいだろう。そのため、ダンドール家の代々伝わる継承戦で決めるとしよう。」

「継承戦ですか。」

「それしかありませんか。」

 

 継承戦の言葉を聞き、ざわざわと面々が浮足立つ。継承戦が行われたのはもう数十年以上も前の話。この一大イベントにどこまで介入して、どのような結果になるのか。それがまた面々の感情を高ぶらせる。

 

「二人もそれでよいな。」

「「異論ありません。」」

 

 継承戦。レオンとドラコの目的が今達成された。後は継承戦までに最終調整を行い、二人それぞれの本当の目的に沿った結果へと手を進めるのみ。

 

「ここに継承戦の開催を宣言する。」

「「「「はっ。」」」」

 

 当主の静かながらも重い声は会議室に響き、その言葉に呼応して面々が揃って頭を軽く下げた。

 ついに継承戦が開催されることが当主の判断として決定したのであった。

 

「継承戦は5人での団体戦とし、星取り戦方式とする。また、レオン陣営とドラコ陣営で自由に戦士を選んでよい。詳細はまた追って伝える。二人ともしっかりと励むがよい。」

「「了解いたしました。」」

 

 

 

 会議終了後、会議室には親子が揃って残っていた。クロウとレオンとドラコ。気まずくなりそうなメンバーであるが、実際にはそんなことはなく、ただ静かな空間が広がっていた。

 三人には共通して継承戦というビジョンが共有されており、そこへの至る道も明解であった。その共有認識において、三人が気まずくなることはなかった。

 

「狙い通り行ったか?まさか、このような手を打つとは思わなかった。」

「父さんとしても予想外でしたか?」

「ああ。レオンが受ける意味もないからな。しかし、ドラコの手で最早継承戦を開催しないわけにはいかない。」

 

 だが、それは手がなったからこそ。その手を打った本当の目的、レオンとドラコの感情のすべてを把握することはクロウとしても出来ない。

 だからこそ、クロウとしては予想外の展開であり、驚きを胸の中に隠していた。幼少期の事から考えると、レオンが当主となり、それをドラコが支える。そんな未来を密かに期待していたのだ。

 

「そこについては上手く行ってよかったですよ。勢力差が五分まで調整されていたからできたことですがね。」

「ふっ。存外やんちゃに育ったものだ。」

 

 予想が外れていること。そのことに関してクロウは怒りという感情を抱くことはなく、逆に純粋に成長を喜ぶような感情があった。

 クロウというダンドール家の当主を策略に引っ張り出し、かつ二人の思い通りに操作する。それは並大抵のことで実現できることではなく、二人ともの度胸と知能どちらもが揃ったことで初めて可能になったことだった。

 

「「……。」」

「二人には期待している。当日は楽しみにしておこう。……一つ言っておくが、わざと負けることは許さん。いいな?」

「「分かっております。」」

 

 クロウは子供の成長を喜びながら、そして、当主として次期当主がダンドール家の益になりそうなことにも期待感を持っていた。純粋に子供の成長だけを祝えないのは当主としての性か、それを含めて成長を祝福しているということか。

 どちらにしても、二人に期待をしているという言葉に嘘偽りはない。

 

「ならいい。」

 

 クロウが会議室を出た後に残ったレオンとドラコ。その両名の間にもまた、気まずい空気感が漂うことはない。静かに目線を合わせて、お互いの意思を交換し合う。

 

「当日は楽しみにしておくよ。」

「そうだな。そこで全てを出し切ろう。」

 

 その言葉を最後にドラコも会議室から出て行き、残ったレオンは微笑みを浮かべていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。