英雄讃歌 第四章 作:如月@カクヨムとなろうでも投稿しています
レオンの誘導によりやってきたのはダンドール家の中でも端に位置する場所である。その場所は屋根が半球形の建屋が立っており、訓練する場所は内部にある。
ただの訓練の間というには荘厳であるが、他の建物に比べたら装飾などが質素であり、頑丈さや機能性といった側面が強く出ていることが見て取れる。
「ここは剣聖の間。【剣聖】ダンドールが最期まで鍛錬したと言われる場所だ。」
「そんなところに入ってもいいのか?」
「ああ。特に制限はかけられていないからな。一番頑丈な場所がここだから、訓練にはもってこいだ。」
【剣聖】ダンドールが鍛錬した場所とは、言わば聖地として考えられてもおかしくないものだが、ダンドール家としてはそのように考えてはおらず、ただ鍛錬する機能がある場所という認識でしかない。
そのため、部外者とも言えるイリア一行が入ることが許可される。勿論、ダンドール家の敷地内であるため、外部の許可のない人間が入ることができる場所ではなく、そういった意味ではダンドール家の元で適切な管理をされているとも捉えられる。
「確かに妙に重々しいというか。そんな空気で包まれているな。」
「この空間に入る時は重い粘液に包まれるような、妙な感覚があるが問題はないから安心してくれ。ただ……いや、大丈夫か。」
建物の荘厳さがそうさせるのか、建物自体がイリアたちに重苦しい印象を与えており、簡単には近づけない。そんな風に思わせる何かがあった。
レオンもその感覚はあり、何度も入ったことがある経験から確かに建物の空間そのものに重さの概念があるようで、内部に入る際に妙な感覚を得るとのこと。
「いや、怖いんだが?ただ、何だよ。」
「資格がないものは入った瞬間に、そこから捩じれて圧し潰されるというだけだ。」
「全然大丈夫じゃないが?」
ただの後で不自然に言葉を止めたレオンに怪訝な表情を向けるイリアに、レオンは何もおかしなことが無いように通常通りの顔で恐ろしいことを宣った。
思い空気に入った時にその空気に耐えられないものは入ったところから捩じれて、切られ、圧し潰される。そんな状態になるのを特に説明もなく通らせようとするのは、悪魔的であると言っても良いだろう。
「ははは。大丈夫だ。強い人間には効かないようだからな。」
「それは何の保証にもなっていないのでは?」
「よし、入ろうか。」
何を基準か明確になっていないのに、レオンは特に問題ないと考えているようで、酷く楽観的な軽い言葉で言葉を投げ掛ける。
そのレオンにイリアは呆れたような表情を浮かべて疑問を呈する。しかし、その表情は見事にレオンにスルーされて、そのままレオンは訓練の間に入っていく。
「うおっ、確かに気持ち悪いな。粘度の高い水に包まれたような、でも水滴の一つも身体に付いていないし。何だこれ。」
「それは分からない。多分、【剣聖】も知らないことだ。」
イリアがレオンの後を追って空間に足を踏み込むと、空間を隔てる扉を境として四方八方から粘度の高い水に包まれるような感覚が襲った。だが、その感覚がある中でも身体には水に類するものは見えない。
重苦しい空気そのものが影響しているのだろうか。イリアはその感覚に眉を顰めながらも、訓練の間へと入り込んだ。
中に入り込むと、粘度の高い水に包まれているような感覚は消え去った。代わりに針を刺すような、空間そのものが身体を押すような感覚がイリアを包み込む。
「まぁ、ダンドールだからな。っと、アリスちゃんも大丈夫か?」
「うん。平気みたい。」
「それなら良かったよ。」
レオン、イリアが入ってすぐにアリスも訓練の間に入ってきており、全員が資格がないということはないようだった。
「さて、では俺は用事があるから、後は好きに使ってくれ。」
「助かる。」
「ああ、そうだ。イリアにはこれ。アリスにはこれを報酬として渡そう。」
レオンがイリアたちに渡したものは剣と腕輪であった。剣は刀身が黒く、筋状に赤い線がが言った直剣である。無骨な剣は機能性だけを追求しているようで、イリアとしてもいい品にテンションが上がる。
そして、腕輪には星屑があしらわれた黒と青を基調とした腕輪である。一番星に当たる赤い星に、周りには黄色と青の星が複数散りばめられており、それが形作るのは蝙蝠。
「貴重なもののはずだが、いいのか?」
「もちろんだ。だが、ちゃんと勝ってくれよ?」
「ふっ、任せておけ。」
イリアは剣を手に持つと鑑定を行う。同時にアリスが受け取った腕輪にも鑑定を行った。
EN:魔断の聖剣“ルプトューラ” Rank:3
攻撃力 27
Ability
1.魔法斬り
魔法を斬ることができる。
EN:星屑の腕輪“蝙蝠” Rank:3
防御力 4
Ability
1.魔法強化Ⅴ
魔法攻撃のダメージを25%上昇する。
2.物理弱化Ⅴ
物理攻撃のダメージを25%減少する。
「聖剣!?それに、この腕輪も強いぞ。」
「先行投資だな。これを使って、ちゃんと勝ってくれればいい。」
「これは責任重大だな。」
聖剣を報酬とするのはイリアたちの冒険者ランク帯においては破格であり、本来であればあり得ないことである。流石は貴族といったところか。
それに腕輪も魔法使いにとってはデメリットなどないに等しく、装備のランクに対しては大当たりの品である。そんなアイテムを渡してしまえるのだから、継承戦にかける思いはそれほど強いということだ。
「では、この部屋は好きに使ってくれて構わないからな。」
「ああ。ありがとな。」