「雄英体育祭が迫ってる!」
先生の言葉とそれが巻き起こしたみんなの歓声を聞いて、ニャーはちょっと混乱したにゃ。
運動会で大騒ぎするってココは高校だよにゃ?
ヴィランの精神攻撃でみんな幼児化してるって事ないにゃよね?
高校の体育祭ってアレだよにゃ?
いかに効率よくサボるかって行事だにゃ?
それともそれはニャーみたいな陰キャだけなのかにゃ?
ここにいるみんなは生粋の陽キャ。学校行事に思いっきり前向きなのもそのせいかにゃ?
とニャーはキラキラした目をこちらに向けてくる百ちゃんや梅雨ちゃんの目を眩しく思いながら疑問に耽っていたにゃ?
「待って待って!敵に侵入されたばっかりなのに大丈夫なんですか!?」
と誰かが疑問を投げかけるのを聞いて、ああニャーみたいなのは他にもいるにゃと奇妙な安堵感。
そうだにゃ。これが正しい態度にゃ。
前世でも学校行事に参加したくないために学校に爆破予告するバカとかいたけど、本来危険があれば二の足を踏むのが正しい高校にゃね?
だから梅雨ちゃんと葉隠ちゃん、
「頑張ろうね」
と言いながら手を握ってくるのをやめてください。
前世併せて精神年齢40になろうとするのに、その青春は余りにも眩しい。
百ちゃんとお茶子ちゃんもうんうんと頷いてにこやかにこっちを見てるだけだし。
後方腕組やめてもろていいかにゃ。
あの事件以来、女子が妙に距離を詰めてくるにゃ。
どうも心配かけ過ぎたみたいにゃ。放っておけないって言われても、ニャーはもう高校生にゃ、ヤニも一人でカートン買いできるにゃ。
やっぱり昇天雲はやりすぎだったかにゃ。
でもニャーは事において後悔と反省はしないにゃ。
ニャーはヤニカスという『サガ』を背負ってるが幸福に生きてやるにゃ。
それにしても…
「ヴィランごときで中止するイベントじゃない」
って危機感なさすぎじゃにゃいか?
で良く聞くとプロヒーローが生徒に目星を付けるイベントらしいにゃ。
良く言えばドラフト、悪く言えば談ご……何でもないにゃ。
うっかり利権の問題に口挟むと碌な事がないにゃ。
一瞬雄英の闇に触れかけた気がしたにゃが、身の安全のために忘れる事にして喜ぶみんなを微笑ましく見るにゃ。
ニャーは何も気付いては無いにゃよ。
わー たいいくさい たのしみにゃー。
「それと佐藤。お前体育祭で広範囲に煙を撒くの禁止だからな」
「なんでにゃ!!」
で、ぼーっとみんなの様子見てたら相澤先生にとんでもない事言われたにゃ。
「実践訓練での尾白の様子思い返してみろ。アレを無差別にやらかす気か?」
「アレはそこの紅白饅頭が悪いにゃ!!ニャーは悪くないにゃ!!」
思い出して顔色を青くする尻尾と、え?俺?という顔をして呆気にとられる饅頭。しらばくれるのもいい加減にするにゃ。
そんな二人を見て、説明して見ろ。と相澤先生は続きを促したにゃ。
「あれは紅白饅頭の個性にゃ。ニャー賢いから知ってるにゃ。あれは冷気を吸い込ませて相手の呼吸を封じる技にゃ。新興宗教の教祖の得意技にゃよ」
何か一同呆気に取られてる気がするにゃ。
そして
「そうか。俺にそんな力が……」
と妙な納得を見せる紅白饅頭。お前が始めた物語にゃよ。
「ほう、ではビルに充満した煙も轟の仕業だというんだな?」
先生、何か顔が怖いにゃ。
「もちろんにゃ。あれは『凍て曇』と言って冷気で煙幕を張る技にゃ。相手の眼球を凍結させて視界を奪うえげつない技にゃ」
ニャーが説明すると相澤先生のコメカミに血管が浮かんだにゃ。
そして饅頭!!何自分の力が怖いという顔してるにゃ?
大いなる力には大いなる責任が伴うにゃよ。だから責任を取ってニャーを擁護するにゃ。
「と に か く だ !!」
相澤先生の圧が強くなったにゃ。
「お前の個性は影響が強すぎる。無差別に煙を撒かれるとA組B組は兎も角、普通科や経営科、サポート科、果ては観客にまで影響が出かねん。そこを考えての学校の決定だ。Plus Ultraで乗り越えてみせろ!!」
「それブラック企業の言い分そっくりにゃ。Plus Ultraは無茶を通すための魔法の言葉じゃないにゃ!!」
「じゃ次にだ……」
ニャーが必死で抗議しているのに、先生はさっさと他の話題に移ってしまったにゃ。
終わってからニャーがニャーニャー文句言ってると梅雨ちゃんが頭撫でてくれたにゃ。百ちゃんや耳郎ちゃんも仕方ないなーという暖かい目線を送ってくるし。
ヒーロー目指してるだけあって、包容力高いにゃね。
それとお茶子ちゃん、妙に画風が変わった顔してるにゃ。
絵柄が北斗かゴルゴになってるにゃよ。
文句を言ってる間に昼飯の時間にゃ。
全く高校生活で楽しいのは飯の時間とヤニの時間だけにゃね。
さて校舎裏でヤニでも食べながらパンでも吸うとするにゃ。主食がヤニだから間違っておらんにゃ。
と立ち上がろうとした時に
「ケロッ、佐藤ちゃん。ご飯食べに行きましょ」
「みんなで行きませんか?」
と梅雨ちゃんと百ちゃんから誘われたにゃ。
よく見るとその後ろにお茶子ちゃん以外の女子勢ぞろいにゃ。
「ん~行きたいのはやまやまなんだけどにゃ」
「あら?お弁当ですか?」
「こないだ食堂で食事終わったのでヤニ吸いながら屁をしたらにゃ、ランチラッシュにマジ切れされて一週間出禁になったにゃ。三味線にされるかと思ったにゃ。海原雄山でもあんなに切れないにゃ」
「それは残念でもなく当然では?」
「じゃあ私たちもお弁当買ってくるわね。みんなで食べましょう」
葉隠ちゃんの優しさが染みるにゃ。
みんなが弁当買ってきたので、ニャーもパンを齧るにゃ。
百ちゃんは洋風で梅雨ちゃんは幕ノ内にゃ。美味しそうにゃ。
そう褒めたら
「お味見してみますか?」
「ちょっと食べてみる?」
と分けてくれたにゃ。ヤニ代で懐の寂しい身にはありがたいにゃ。
「じゃ、ウチも上げる」
「これも食べてみて」
葉隠ちゃんも耳郎ちゃんも優しいにゃ。
ありがてえにゃね。
肉美味しいにゃ。煮つけ美味しいにゃ。
ヤニ代が食費を圧迫する身としては何よりの贈り物にゃ。
さてんじゃ食事終わったしヤニ吸ってくるにゃ。
最近は校舎裏で吸ってても『またか』みたいな反応をしてくるのが多くてつまらんにゃ。
マンガだともっとこう、頭の固い生徒会みたいなのがいて
「私の在学中は煙草は吸わせません!!」
みたいなのがあると思うのにゃけど……。
そういえばこの学校生徒会にゃいにゃ。
「ヤニ吸ってくるにゃ」
と断って席を立つと、みんながもう少しお話ししようという顔をしてるにゃ。
ニャーとしてもそうしたいのはやまやまなのにゃが、生理的要求には勝てんにゃ。
とみんなと別れて校舎裏に向かってると
「お金欲しいからヒーローに!?」
おや、お茶子ちゃんともじゃもじゃ、メガネが何か話してるにゃ。
お茶子ちゃん、運動会の話聞いてから画風が薩摩義士伝みたいになってたから心配にゃ。
「飯田君とか立派な動機なのに恥ずかしい」
どうもお茶子ちゃんが自分の志望理由がお金である事を恥ずかしがってるみたいにゃ。
とんでもないにゃ。金が無いのは首が無いのと同じにゃ。
などと考えていると、気配に気が付いたのか三人と目が合ったにゃ。
メガネともじゃもじゃが目を丸くして、お茶子ちゃんは驚いたように少し恥ずかしそうに笑ったにゃ。
それはそうとしてさっきのには異論があるにゃ。
「お茶子ちゃん、お金のためにヒーローになるにゃ?」
「うん、みんなの理由聞いてるとちょっと不純かな?でも私の家って建設会社やってるんだけど……全っ然仕事なくってスカンピンなの」
「なるほど麗日君がヒーロー免許を取ればコストがかからずにという事か」
「うん、それを昔父に言ったんだけどね……」
ええ子にゃ。メガネも感動してブラボーブラボー言ってるにゃ。
お金は大事にゃよ。
大体他人の志望理由にケチ付ける人間とか、暇を持て余してるだけのダメ人間にゃ。
お茶子ちゃんは胸を張ってヒーローになれるにゃよ。
そう言うと三人が感心したような顔をしたにゃ。
ニャーも昔、カートンが無いのに気が付いて親に言うのも気まずいから、深夜に知り合いの家のドア叩きまくってバイト紹介してもらったからよくわかるにゃ。
ニャーと同じにゃ。
そう言ったら三人に微妙な顔されたにゃ。解せぬにゃ。
「そ、それで佐藤さんがヒーロー目指してる理由って何なの?」
と空気変えるようにもじゃもじゃが言ってきたにゃ。
「それはもちろん資格のためにゃ」
「資格?ヒーローでなりたい仕事とかあるん?」
「いやニャーの将来の夢は不労所得で寝て暮らす事にゃ。国家資格があると潰しが効くから取るだけにゃ」
何かますます微妙な顔されたにゃ。解せぬにゃ。
なんだか微妙な空気になったところにオールマイトが来たにゃ。
「緑谷少年。ごはん…一緒に食べよ?」
「乙女かにゃ?」
と何でそこで自分を見て微妙な顔するにゃ?
「ごほん……ええと佐藤少女。話は聞いたけど、あまり危険な真似はしないようにね」
「わかったにゃ!!」
「それとあまり人をからかったり、ノリで行動しないようにね」
「わかったにゃ!!」
ますます微妙な顔になる四人と別れてニャーは裏庭に向かうにゃ。
別れ際に見るとお茶子ちゃんの画風が元に戻ってたにゃ。やれやれにゃ。
それとオールマイト、やたらもじゃもじゃの事を気にかけてるにゃ。
まさか……
オタクっぽいのが好みって事は無いにゃろね??
そういえば何か気に掛ける視線が妙にねっとりしてるようにも感じられるにゃ。
二人で食べると言って去っていくもじゃもじゃの今後の学園生活に幸のあらん事を祈りながら……まあ、ニャーには関係ないにゃ。ヤニ吸いに行くにゃ。
と後は普通に校舎裏でヤニを吸って午後の授業に出たにゃ。
「じゃあ佐藤。次の文を英訳して見ろ」
「“Yanineko” airs every Thursday. Let's all watch it!」
「よし、じゃあここのポイントは……」
マイク先生、授業はあのテンションじゃにゃいのよね。
とか言ってるうちにあっという間に放課後にゃ。
基本寝てるうちに終わった気もするけどにゃ。
ん?何か廊下の方が騒がしいにゃね?
またヴィランのカチコミでも来たかにゃ?