「があああああああああああああああああ!!!!」
峰田は直感していた。
オイラはここで死ぬ。それも人らしい尊厳を持った死ではなくただの実験材料として消費されて。
雄英に入学してからのトラブルもあったけど輝いていた日々。それがこのような形で終わりを告げるとは思わなかった……。
「た、助けて。息が……目が……」
恥も外聞もなく、自分を捕まえている人間に助けを求める。
しかし帰ってきたのは何の感情も浮かんでいない目線であった。
「大分形になっ……たんじゃ…えか?」
「まだ凍ら…までは、それに………ダメー…を受けてるよ…」
朦朧とした意識の中で彼らの言葉が断片的に聞こえる。
ああこの実験はまだ終わらないのだ。
オイラが命尽きるまで、彼らは実験を続けるのだろう。
涙はもう流れない。
実験の果てに顔面は凍り付いたようにされて、もはや表情を変える事すら困難である。
体はもう動かない。
手術台に縛り付けられた体はまさにまな板の上の鯉。抵抗するすべなどあるはずがない。
「では第七次…………画を始め………」
「もう少し…の割合を増や………」
彼らが再び動き始めた。
この実験はオイラの命が尽きるまで終わらないのではないか。
やはりオイラはここで死ぬ運命なのか?
「いやだああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「あの二人ともそろそろ開放してあげても…」
天使の声が聞こえる。
現在自分が縛り付けられてる手術台造ったのがその天使だとしても、確かにそれは救いの声であった。
奴らの一人が残念そうに声を上げる。
「もう少し、もう少しで形になりそうなのにゃ」
まあニャーの事なんですけどね。
何をしているかというと、体育祭に向けての特訓中にゃ。
ニャーだけじゃにゃくA組全員参加にゃよ。
何故このような事をしているかというと
「おい、もう少し氷の割合を増やすと上手くいきそうだぞ」
「ナイスにゃ饅頭。それで行ってみるにゃ」
「もう嫌だあ。オイラを開放してくれーーーーー!!!」
「? お前が志願してきたんだろ?」
「そうにゃ。お前が始めた物語にゃ」
「確かに訓練に付き合う承諾はしたよ!!佐藤の上目遣いとオイラの胸に「の」の字を書く仕草に騙されてよぉ。でもこんな人体実験みたいなのとは思ってなかったんだよぉ!!」
あ、その前に何をしているかというと
「合体技」
の作成にゃ。
訓練中に饅頭と話す機会があってびっくりしたのにゃが、この饅頭『凍て曇』が使えないらしいのにゃ。
とするとあの授業中に尻尾が苦しんでたのは一体……
はっ、ヴィラン連合の仕業にゃ。
奴らそんな前から雄英に魔の手を伸ばしていたのにゃ。
先生にこの事実を伝えねば!!と早速相澤先生に報告に行ったのにゃが……。
何か残念なモノを見る目をされたにゃ。
先生がそんな危機感のない事でどうするにゃ!!やはり雄英を守るのはニャーだけにゃ。
あと一緒にいたミッドナイト先生が飴くれたにゃ。甘くて美味しかったにゃよ。
で、ニャー達は考えたにゃ。
饅頭の氷とニャーの煙。合わせれば『凍て曇』が出来るのではないかと!!
幸い快く協力してくれるブドウも見つかって……
「快くじゃないよな。オイラが内容聞いて逃げ出しそうになったのをわざわざ手術台まで創造してもらって縛り付けてだよな!!」
実け……訓練は成功しそうだったにゃ。
「今、実験て言おうとしたよな!!訓練じゃなく実験って!!」
もう少しで成功しそうだったし……
「こうなったらビリビリ連れてくるにゃ。ブドウと同じ手段で何とかなりそうにゃ」
「あの流石にこれ以上は……」
百ちゃんが言うなら仕方ないにゃ。
あ、それで何故こんな訓練をしてるかの話にゃね。
それは……
数日前の事にゃ。
何か廊下がうるさいにゃね。
ん?なんで放課後にうちの教室の前に大勢集まってるにゃ?
ひょっとしてオールマイトがもじゃもじゃに手でも出したのかにゃ?
「敵情視察だろ雑魚」
あ、違ったにゃか。
校長の謝罪会見が無さそうで何よりにゃ。
「意味ねぇから、どけよモブ共」
三太郎の言葉に集まった連中のイライラが溜まるのがわかるにゃ。
沸点低いにゃね。
小魚食べるにゃか?牛乳飲むにゃか?ヤニ吸うにゃか?
「どんなもんかと見に来たけど、随分偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんなのか?」
お、何か目の下に隈が出来てるのが嚙みついたにゃ。
わかるにゃ。三徹目くらいになるとテンションおかしくなって、些細な事に噛みついたり笑いだしたりするにゃ。前世でのブラック企業での経験にゃ。
「体育祭のリザルトによっちゃあヒーロー科編入も検討してくれるんだって、その逆もまた然りらしいよ」
え?普通に考えて普通科の方がツブシが効く分有利と思うけどにゃ。
わざわざ一芸特化の所に来たいって変な奴もいたものだにゃ。やっぱ睡眠不足でテンションおかしいのかにゃ。
そういえば前世で変なテンションのままyoutu〇erになるって仕事辞めたY君元気にしてるかにゃ。
消息聞かないけど収益化通ってたらいいのににゃ。
「隣のB組のモンだけどよ!敵と戦ったっていうから話聞こうと思ってたんだがよ!調子付いちゃってんなオイ!!」
と今度は灰色の髪のが切れたように言ったにゃ。
こいつもテンションおかしいにゃね。
それ以上に………ニャーと髪の毛でキャラ被るのむかつくにゃ。
もっと言うと…
そこでニャーが彼の前に出ると、何か怯んだように一歩後ろに下がったにゃ。
「ニャーで良ければ話するにゃ」
「お、おう」
「じゃあ相澤先生が大怪我をした話とニャーの頭が叩き潰された話、どちらがいいかにゃ?あれハンバーグだったみたいにゃ。相澤先生はオールマイト並みのパワー持つ敵に殴られたにゃけど。あとプールに仲間がいるのに毒物が撒かれたって話でもいいにゃよ。味方のはずのヴィランがプカプカ浮いてたにゃ。どれが聞きたいかにゃ?」
ん?話聞くんじゃなかったにゃ?
何か全員引いた感じになってて、さっきまでの勢いがみあたらにゃいにゃ。
「じゃあニャーの頭が叩き潰された話から……」
「すまん!!」
いきなりB組の男の子が頭下げたにゃ。
「調子に乗ってたのはこちらだった。正直軽い気持ちで話聞こうとして、お前らの気持ちを考えてなかった」
「に、にゃー?」
「改めて挨拶させてもらうぜ。B組の鉄哲徹鐵だ」
「佐藤ヤニ子にゃ」
「ヤニ子さんか。それじゃ体育祭を楽しみにしてるぜ」
握手に応じるとその手をブンブン上下に振って、この場を後にしたにゃ。なかなか豪快な奴にゃね。
睡眠不足を見ると何かを考えるようにじっとしていると、不意にニャーの方を向いて口を開いたにゃ。
「なあ、あんた。ヴィランと戦って怖くはなかったのか?」
「ニャーは逃げようと考えていたんだけどにゃ。相澤先生が戦ってるのを見るとそれも寝ざめが悪いにゃ。何とか搔っ攫ってオールマイトが来るまで誤魔化せたけどにゃ」
そう言うと
「恐れない力……」
とか何とかブツブツ言いだしたにゃ。
コイツはアレにゃ。もじゃもじゃの亜種にゃ。
他の野次馬も静まり返ってるし、三太郎は煮詰まった感じだし、もじゃもじゃは何かに耐えるような感じだし、A組のみんなも沈んでるし、わけわからんにゃ。
「あ、終わったにゃか?じゃニャーは裏庭行くにゃ」
そう言ってその場を後にすると何人かが後を付いてきたにゃ。
これを機会にヤニデビューする気かにゃ?
「佐藤さん、ちょっと怒ってます?」
「ん~、ヤニ吸う時間が遅くなるからにゃ」
何かさっきの連中の態度見てると、相澤先生が生徒を守ったのまで軽く扱われてる気がしたにゃが。
イラッとしたのはヤニが切れたせいにゃよね。
そこで黙って横を歩いていたお茶子ちゃんが思いつめたように言ったにゃ。
「ヤニ子ちゃん。体育祭に向けて特訓せん?」
「「「それよ!!」」」
え?何でそうなるにゃ?
「私思っとったんよ。こないだのUSJでヤニ子ちゃんだけに全部任せてしまっとたなって……」
「そうですわ。だから今の佐藤さんの言葉で改めて思い出しましたの!!あの佐藤さんの姿見た時の絶望感を」
「うん、ヤニ子ちゃんには及ばないかもしれないけど、私らも強くならないといけないかなって。体育祭に向けてって丁度いい機会になるし」
百ちゃんと芦戸ちゃんまで参加してきたにゃ。
他のみんなもうんうんと頷いてるし……。
特訓とか正直面倒臭いにゃ。
以前はニャーも特訓してたにゃ。雄英に入った時、一日500メートルのランニングと朝のラジオ体操、各種筋トレ。
そして……
三日持たなかったにゃ。
わかったのは早起きしてのヤニは美味しいって事だけだったにゃ。
でもそんな事言える雰囲気じゃないにゃ。
というわけで特訓するハメになったわけにゃが……。
ブドウが逃げたし、話を聞いたらしいビリビリもニャーが近寄ったら慌てて逃げたのでやる事が無いにゃ。
ニャーは訓練の場所借りに行った百ちゃんに相澤先生が
「アイツには室内で個性使わないように言っとけ」
と釘刺されたらしくやることがないにゃ。
仕方ないので他のみんなの訓練でも見学するかにゃ。
お、三太郎が爆発してるにゃ。
「三太郎はダメにゃ。まったくなってないにゃ。ニャーのアドバイスを無駄にしてるにゃ」
「誰が三太郎だ!!殺すぞ、ヤニカス!!大体てめぇにアドバイス貰った覚えはねぇ!!」
「覚えてないとは、全く頭まで三太郎にゃ。ほら、前に話したアレにゃ」
「……アレってアドバイスだったのかよ。腹にダイナマイト巻いてるコスチュームとか正気か、お前!!」
「腹マイトは十分有効な手段にゃ。その格好で至近距離まで近寄ればどんなヴィランも降伏するにゃ」
「降伏しなかったらどうするんだよ……」
「その時はその時で花と散るにゃ」
「死ね!!!!!!お前一人でマイト持って突撃してりゃいいだろう!!」
「ニャーならやるにゃ。ニャーなら出来るにゃ。煙人形にマイト持たせてヴィランに突撃させるのなんて朝飯前にゃ」
「おまっ……よくそんな卑劣な事考えれるよな!」
「二代目火影様を参考にしたにゃ」
「誰だよ、火影って……」
「そういえばオールマイトと腹マイトって似てるにゃね。ダメもとでやってくれるか頼んでみるかにゃ」
何故か切れた後に呆れかえる三太郎にゃ。情緒不安定かにゃ?
彼を後にして次の人間にアドバイスしに行くにゃ。
お、もじゃもじゃが何か力んでるにゃ。
「ふふ、へただなあ、もじゃもじゃは」
「え?」
「へたっぴにゃ………!個性の使い方が下手」
「え?でも指導してくれてる人がレンジでゆで卵作るイメージだって……」
「個性を使う時はうんこをイメージするといいにゃ」
「う、うんこ???」
「そうにゃ。もじゃもじゃは個性を使おうとすると意識して使おうとしているにゃ。これは便秘と一緒にゃ。あそこにいるビリビリやカチカチを見るにゃ。個性を極めて自然に使ってるにゃ。あれは下痢便と一緒にゃ」
「ふ、二人がとても嫌そうな顔でこっち見てるんだけど……。でもそうか、意識しないで全身に…うぅ」
「どうしたにゃ?」
「いや、何かわかりやすいのが逆に嫌かなって……今の説明でオールマ、色々教えてもらってる人よりわかりやすいっていうのが何か腹立つというか……」
「諦めなければ夢は必ず叶うにゃ」
「それ……思い出すと傷つくから止めて欲しいかな」
「ノーカン!ノーカン!ノーカン!」
もじゃもじゃは情緒不安定かにゃ。気分が乱高下しすぎにゃ。
「お茶子ちゃんは空気を無重力にしてみたらどうかにゃ?」
「空気を?そしたらどうなるん?」
「無重力になった空気が周りの重力に引っ張られてヴィランの周囲が真空になるにゃ。六部で言ってたから間違いないにゃ。オールマイトの授業でコレやってたら一人でもあの二人相手にして勝てたにゃ」
「え?真空になるって何か怖いんやけど…」
「大丈夫にゃ。体液や血液が沸騰しやすくなって10秒程度で失神するだけにゃ」
「それ危険すぎる技だよね。ヤニ子ちゃんのアドバイスは嬉しいけど私はもう少し穏健な方がいいかな」
「じゃこういうのはどうかにゃ。お茶子ちゃんと百ちゃんとニャーの合体技にゃ。やり方は……」
「え?それやっていい事なん?何かの条約に引っかかるんじゃ…」
「大丈夫にゃ………多分。じゃ練習できるものじゃにゃいし、体育祭の日にぶっつけ本番でやってみるにゃ」
「今、多分って言わんかった?え、ええんかな……死人とか出んよね」
さて次は誰にアドバイスするかにゃ。と他の人を見ると目を逸らされて蜘蛛の子を散らす如く逃げられたにゃ。
いろいろ技を考えていたのににゃー。
まあいいにゃ。
みんな強くなるにゃよ。