雄英高校裏でヤニ吸う猫   作:DEMIDEMI

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誤字報告、感想ありがとうございます。


遥かなる旅路さらば友よにゃ

「死んだらヤニ吸えないにゃ」

 

その言葉が響いた途端、周囲は一面の煙に包まれた。

 

「何だこれ?脳無、煙を晴らせろ」

 

死柄木の言葉に従い、脳無はその剛腕を撃ち振るい煙を吹き飛ばさんとする。

普通ならその一振りで周囲の煙は跡形もなくなっているはずであった。

 

「ん?」

 

しかしその力は何かに押さえつけられているように見え、普段の三分の一も出ていない。

よく見ると煙は脳無の手足に絡みつき動きを封じようとしている。

その近くには先ほどの猫耳の生徒と奪い返されたイレイザーヘッドの姿も見える。

あの一瞬で奪い返されたのか。

 

「何か気味悪い敵にゃ。バイオに出てきそうにゃ」

 

ギリッ

 

死柄木は首筋を血の出るほど引っ掻く。

 

「デバフ系キャラかよ。次から次へと」

「にゃはは、ヌルゲーはもう終わりにゃ。今からはフロムゲーの時間にゃよ。マレニアの地獄見せてやるにゃ」

 

猫耳の生徒が煙を吐くと、それは脳無の姿を完全に覆い隠す。

 

「脳無。さっさとそこから出てこい」

「無駄にゃ。この監獄ロックを力で打ち破るのはまず無理にゃ。中ボス閉じ込めた実績もあるにゃよ」

 

その言葉は嘘ではないらしく、煙の内部からは暴れる音が聞こえてくる。

重い何かを打ち付ける打撲音。しかし煙で出来た壁はわずかに振動するばかりでびくともしない。

 

「ちっ、状態異常系キャラかよ…」

「ギミック系ボスにゃよ。解き方がわからないのなら素直に降参するにゃ」

「クソ、雄英で見かけた時に殺しとけばよかった!!」

「にゃはは~。ペットを倒されたテイマーなんて後は狩られるだけにゃよ」

 

ヤニカスの煽りに堪え性の無い死柄木は今にもブチ切れそうである。

そんな目を血走らせる死柄木の元へ黒霧が帰ってくる。

 

「すいません。生徒に一人逃げられました。死柄木弔」

「その話は後だ。ちょうどいい所に帰ってきた。手を貸せ」

 

と何やら耳打ちした次の瞬間。

煙の壁は崩れ去っていた。一瞬煙で周囲が見えなくなる。

その煙は黒い影が腕を一振りすることで晴らされた。

 

そこにあるのは死柄木を守るように仁王立ちする脳無。

そして黒霧のワープゲートから満足したように腕を抜く死柄木の姿であった。

 

「何にゃ?その個性。ニャーの監獄ロックは力での突破は無理にゃ。とすると力以外、今の様子を見ると崩す個性にゃね」

「さてギミック破られたボスは倒されるのがお約束だよな。脳無、あの生徒を始末しろ!!」

 

その言葉が言い終えられる前にヤニカスの顔面に拳が叩きつけられていた。

吹き飛び壁に小さなクレーターを作り蹲るヤニカス。

脳無はついでとばかり倒れ伏したイレイザーヘッドの頭部を踏みつぶし、ゆっくりと歩いてその後を追う。

 

 

二本目のタバコを咥えながらヤニカスは安堵していた。

 

「良かった……」

 

あの黒いのが対オールマイトの秘密兵器であるというのもあながちフカシではないらしい。

だとするとやはり対抗できるのはオールマイトくらいであろう。

幸い彼が来るまでは何とか釘付けできそうだし。

 

「アイツらがニャーの仕掛けに気付かないバカで本当に良かったにゃ」

 

ゆっくりと吹き出された煙は空へと消える。

見てる先ではヤニカスがマウント取られてボコられ、挙句の果てには頭部を粉砕されていた。

 

「しっかしおっかないにゃね。てっきり序盤のボスかと思ったら、タイラントとか追跡者だったにゃ。怖い怖い。

あって良かった『隠者の濃煙』にゃね。『もう大丈夫』……お、オールマイト来たにゃ」

 

 

「私が来た」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふーあの脳味噌凄いパワーにゃ。

煙で辺りが見えなくなった瞬間に自分と先生のデコイ作ってなかったら危なかったにゃね。

オールマイトも来たし、これで一安心……

 

あれ?オールマイト滅茶苦茶切れてないかにゃ?

 

「すまない……私がもう少し早く来ていれば……」

 

ニャーと相澤先生見た途端、問答無用でヴィランたちに殴りかかっていったし、あの黒い脳味噌ボコしてるしにゃ。

手マンが衝撃吸収とか言ってるけどあれじゃ唯のサンドバッグにゃ。幕ノ内にデンプシーロール喰らった相手を思わせるにゃね。

脳味噌もやられっぱなしってわけじゃなく手を出してるにゃが、その上からさらに殴られて意味をなさないにゃ。

手マンが

 

「弱ってたんじゃないのかよ!!アイツ嘘ついたのか!!」

 

とか呆然と言ってるけど、これで弱体化にゃら全盛期どんなだったにゃよ。

 

 

それにしてもあの手マン、ヴィランだったのにゃね。単なる痛い中二系芸人志望じゃなかったのにゃ。

今の様子はテンプレじみたやられ役にゃけれども。

 

あ、それでも黒い人がワープ出して上半身と下半身分断し……

 

「オールマ……」

 

うわーお構いなしに脳味噌跳ね飛ばして殴りつけたにゃ。もじゃもじゃが何か言いかけたけど、その暇も無かったにゃ。

完全にブチ切れてるにゃね。鷹村みたいにゃ。

 

 

他のみんなも帰ってきたけど三太郎と紅白饅頭は戦いを見てどうしていいかわからないみたいだし、もじゃもじゃとか梅雨ちゃんとかカチカチとかはニャーや先生のデコイの傍に集まって泣いてるし……

 

 

消すの忘れたにゃ!!!

 

 

ニ、ニャーは何も悪い事してないにゃ。全部あの手マンが悪いにゃ。

税金が高いのも、未成年喫煙禁止なのも、少子高齢化なのもヴィランが悪いにゃ。

証明終わり、これで突っぱねるしかないにゃ。

 

お、先生が起きそうにゃ。

後の説明は全部やってもらうにゃ。

ニャーはクールに去るにゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……」

 

小さく呻いた相澤はゆっくりと目を開けた。

殴られたせいか一瞬状況判断が遅れるが、瞬時に思い出して戦闘態勢をとろうとする。しかし体が言う事を聞かない。その時ようやく体が煙に覆われている事に気がついた。

 

「気が付いたにゃ?結構派手に殴られたから頭動かしちゃだめにゃよ」

 

普段問題ばかり起こしている生徒の声が聞こえた。

 

「状況はどうなっている?生徒たちは?」

「今、オールマイトが来たところにゃ。こちらの被害はニャーと先生が頭吹き飛ばされた以外無事にゃよ」

「そうか……煙で良く見えん。おい、この煙を晴らせ」

「これで見えるかにゃ?今出たらだめにゃよ。オールマイトと脳みそが派手に殴り合っているにゃ。足手まといになるにゃ。我々にできる事は最高のタイミングで横合いから殴りつける事にゃよ。マクスウェルも言ってるにゃ」

「悔しいがこの体では参戦は無理か」

「出来ることはあるはずにゃ。芋砂の本領見せてやるにゃ」

 

 

 

 

「おい」

 

オールマイトが戦っているのををもどかしい思いで見ながら、相澤はヤニ子に問いかける。

本来なら彼が戦っているのなら自分も戦いに参加すべきだろうが、

 

『最高のタイミングで横合いから殴りつけるにゃ』

 

先ほどの言葉が自分の中で奇妙な信頼感を持っている。ならばそれに従うべきだろう。

 

「何にゃ?」

「なぜ先ほど逃げなかった?お前の個性ならあっさり逃げ切って知らせに行く事も簡単だっただろ」

「ヒーロー科のみんなは優秀にゃ。メガネ辺りが通報してると思ったにゃ。それに……」

 

ヤニ子はそこで不意にそっぽを向いて言った。

 

「ただの気まぐれにゃ」

 

その言葉を聞いた相澤は驚いた顔をした後、この場に似合わぬ柔らかな笑みを浮かべた。

 

「何笑ってるにゃ?頭でもしこたま殴られたかにゃ?」

「いや、こんな時だが教師やってて良かった事もあるなと思っただけだ」

「わけわからんにゃ」

 

そう呟いたヤニ子にもう一度微笑を向け、相澤は再び戦いを注視する。

 

オールマイトと脳無、二人の勝負も佳境に入り凄まじい殴り合いが展開され……展開というより切れたオールマイトが優勢で殴り合っている。

 

ああ、やはり彼はNO・1なのだ。しかし気になるのはその相手、自分を一方的に破った上に曲りなりにもオールマイトと勝負できるアイツは何なのか?

 

「私対策!?私の100%を耐えるなら!!さらに上からねじ伏せよう!!」

 

オールマイトの腕が引き絞られ、攻撃が放たれようとしたその瞬間、

 

 

「今にゃ」

 

「これは…個性が発動しない」

 

ヤニ子の言葉と同時に彼は黒霧を見つめ、何か行動しようとしたのを防ぐ。

 

「煙が……ヴィランの周囲に!!」

「佐藤ちゃん!!」

 

同時に周囲に残っていた煙が脳無に纏わりつきその動きを封じる。

 

「相澤君、佐藤少女……これが二人の残した遺志!!」

 

拳がさらに固く握りしめられる。

 

「Plus Ultra!!!」

 

その拳は脳無に纏わりついていた煙を巻き上げて、ヴィランを遥か上空へと吹き飛ばしていた。

 

 

その煙で相澤の視界が途切れる。

 

「死柄木弔、撤退しましょう。先ほどの個性の未発動といい何かがおかしいです」

「……ラスボスは倒せなかったが、二人倒しただけか」

 

そう言うと彼は無理をした反動が来たのか、片膝を付き方で息をするオールマイトに向かって言った。

地獄のような怨念を込めた声で。

 

「次は殺すぞ、オールマイト!!そのガキとヒーローみたいにな」

 

 

 

二人が逃げたその時。

 

「煙が……」

 

脳無に纏わりついてその動きを止めていた煙はしばらくその場に漂っていたが、やがてゆっくりと天に向かって上昇し、何かを形作り始めた。

それは皆の見慣れた顔。

 

「相澤君!!佐藤少女!!」

「先生、ヤニ子ちゃん」

「相澤先生!!」

「先生、佐藤さん」

 

 

煙で形作られた相澤とその背に乗った猫はこちらを振り向くような仕草をした後、風に吹かれて……消えた。

残されたのは青空だけ。

 

どこまでも果て無く続く蒼天が二人を悼むように輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オールマイトつえーにゃ。やっぱり悪は滅びるにゃね~、この世の理にゃ」

「おい、最後のは何だ!?」

「ノ、ノリにゃ。第三部ラストのアレにゃ。ほら、アブドゥルさんとかイギーとか…」

「見直したと思ったらこれか!!いいからさっさと煙を晴らせろ。完全に誤解されているだろうが!!」

「い、今なら、に、二階級昇格でヒーロー免許とかもらえないにゃ?」

「貰えるわけないだろうが。それと何時まであの分身出してるつもりだ。オールマイトさんが敵を倒した時点で消せばいいだろうが!!」

「こ、この空気の中消せるわけないにゃ。先生なんだから彼らに上手い事説明するにゃ」

「この空気の中出ていくのか……」

「お互い腹くくるにゃ」

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