皇帝に成りたくない男の不本意奴隷ハーレム   作:サイリウム

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22:歯が痛いの!

 

「う゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛ぅ゛! ご゛主゛人゛!!!!!」

 

「はいはい、解りましたから、ね?」

 

 

というわけで無事帰還。

 

全員特に大きな怪我無くお家に帰ることが出来たのだが……。ま、まぁライカが少々頑張り過ぎちゃいまして。さっきからずっとこんな感じなんだよねぇ。

 

先程のオーガ戦だが、少々危うい所もあれど無事に勝利することが出来た。

 

途中武器にオーガの棍棒が当たり曲げられるという事態こそあれど、最後まで勝利を諦めず前々へと進み続けたライカの姿は、とても胸が熱くなるモノ。既に見せてもらったものではあるが、彼女の戦士としての心の強さを再度感じることが出来た戦いだった。

 

自身としても鑑定を用いて適宜彼女のサポートが出来たし、リシエラさんに課された『司令塔』に至るまでの問題点なども幾つか洗い出すことが出来た。彼女はリベンジを達成し、私にも成果あり。正に完璧なダンジョン攻略だったと言えるだろう。

 

ま、まぁそれだけならば、とてもカッコイイ彼女で幕を閉じたのだろうが……。

 

 

(歯で剣を握って振るっちゃったら、ねぇ?)

 

 

彼女は痺れる腕をそのまま使うのではなく、口で代用し敵の首を落そうとした。

 

そのガッツは大変素晴らしいものであるし、機転も素晴らしい。ただまぁ、この異世界でも前世同様一定の“常識”はあるわけで……。いくら人間よりも咬合力の高い獣人であっても、鉄製の剣を噛んで振るうのは負担でしかないわけで。

 

オーガ戦が終わった時から、ずっとこんな感じで泣き叫んでるんですよね、はい。

 

う、うん。変わってあげたいのは山々なんだけど、そう言う痛みは自分で乗り越えてもらうしか出来ないから……。

 

 

「あのねライカちゃん、どんだけ泣き叫んでも痛みは変わらないの。ほら薬塗ってあげたんだからもうちょっと我慢しなさいな。」

 

「あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」

 

「あぁもう、駄々っ子ねぇ。そりゃ『分身』でもやってるわけだから、2倍の痛み。戦闘時の高揚で最初は落ち着いてたとしても、徐々にキツくなってくるのは解るけど……。」

 

「……歯医者さんに泣き叫んでる子みたいですね。」

 

「あ、それね! さすがエド様!」

 

「違゛う゛ぅ゛!!!!!」

 

 

はいはい。

 

まぁリシエラさんの見立てでは歯に罅などは入っていなかったようだし、その痛みも一時的なもの。十二分に復帰が可能なレベルだ。一応自身が持ち込んだポーション、骨折などもすぐに治療できる薬を飲ませた後、その他塗り薬もリシエラさんによって塗り込んでもらっている。

 

本職には及ばないそうだが、医学の心得もあるらしい彼女が『大丈夫』と断言している以上、そう問題は起きないだろう。

 

けれどまぁ。その痛みだけは取り除けないわけで。

 

が、頑張って耐えてもろて……。

 

 

「ほらライカちゃん、大好きなご主人様に手を握って貰ったり、抱きしめて貰ったりしなさいな。痛みには人肌、これ有史以来決まってるのよね……!」

 

「え……?」

 

「ご゛主゛人゛!!!!!」

 

 

リシエラさんの謎発言に面食らっていると、何故か叫びながらこっちに飛び付いてくるライカ。

 

一瞬何事かと身構えてしまうし、全身に押し付けられる彼女の柔らかい身体にどうしたらいいのか解らなくなってしまうが……。その顔の中に、これまでのような『演技』は感じられない。完全に痛みに耐えきれず、何とかしてもらおうと飛び込んできた幼子の顔だ。

 

涙目というか、ガチ泣きしてるし。

 

……こうなって来ると、前世のトラウマ云々言ってる場合ではない。ここで拒否したり跳ね飛ばしてしまえば、確実に後に引くことだろう。震えだした自身の手を無理矢理抑え込みながら。その背に片方の手を少しだけ乗せ、もう片方の手で頭を撫でてやる。

 

こ、これで満足してくれるなら、まぁそれでもいいのですが……。

 

 

「まだ、痛みますか?」

 

「痛゛い゛ぃ゛ぃ゛ぃ゛!!!!!」

 

「で、でしょうね。」

 

 

そりゃ何かしらの脳内物質は出るだろうけど、痛みが収まるとかは早々無いというか……。

 

というか真っ先に私に飛び込んできてくれた当たり、ある程度は信用されてるってことでいいんですかね? まぁ最近精神年齢が何故か下がりまくってる彼女のことを考えると、当初の目的であった『対等な雇用関係』ではなく、『親子関係』みたいになってそうで色々と怖いのですが……。

 

というかリシエラさん。何故そのような発言を? 

 

 

「いやだって、そっちの方が面白いですし。……にしてもこれ、無自覚でやったのよね? 才能あるわぁ。」

 

「……リシエラさん?」

 

「おっと、お邪魔虫は消えた方が良いかしら?」

 

「勘弁してください……。」

 

 

ほんとこの人は何考えているのか解んないし、対処に困る。

 

あとライカはライカで、痛みに耐えるためか結構強めに抱きしめて来るので、色々と……。

 

 

(あ~~~、うん。落ち着くために他のこと考えよ、うん。)

 

 

話は戻るが、今回の攻略で10階層。ボスのオーガを撃破したことで、私達は次の区画。11~20階層に進める様に成った。

 

当初の予定ではもう少し時間をかけながら攻略していく予定だったのだが、ライカが色々暴走してしまった手前、こうなってしまった感じになる。まぁそれはそれでいいのだが……。両親によって命じられた課題であるダンジョン攻略。それが一つの節目を乗り越えたとなれば、報告せねばならないだろう。

 

 

(まぁ、色々支援してもらってる手前、ね? お手紙くらいはちゃんと書きませんと。)

 

 

親の金で色々している上に、求められている皇位継承戦に全くやる気が無いのが、自身だ。

 

この国がいくら崩壊一歩手前だとしても、親不孝者と言われればその通りでしかない。発覚すると色々と厄介なことになるので紙にすら残していないが、こっちはちょっとずつ脱出計画まで用意し始めているのだ。皇位継承戦に挑むフリして、色々見捨てて帝国崩壊に備え安全圏まで逃げる計画を最初から立ててたりすると……、ね?

 

だが親に対しての情が無いわけじゃないし、これまで育ててもらった恩がある。ライカやリシエラさんを購入できたのも、そしてこの家を使えているのも、両親のおかげだ。

 

最低限の報告ぐらいはやっておかないと、ってワケです。

 

 

(けど想定よりも早く攻略出来ちゃったから、絶対なんかお褒めの言葉とか、追加の課題とか出されそうなんだよなぁ……。スキルとか前世の記憶とかがあったせいで、昔から『他の兄弟よりも優秀』とか言われてたわけだし……。)

 

 

皇室特有のスキルもそうだが、自身は前世の記憶のおかげで、色々と持ち上げられる幼少期を過ごしていた。

 

当時はまだこの国のヤバさに気が付いていなかったし、新しいことを学ぶのには一定の楽しさがある。成人済みの精神で幼児向けの教育をされてはたまらないという側面からも、結構色々飛び超えながら教育を終わらせて行ったのだ。

 

 

(けどそれが、ダメだったわけで。)

 

 

母親だけならまだ良かったのだが、そういう褒め方を父親が“他の家族がいる前で”言ってしまうモノだから……、本当に大変だったのだ。

 

そのせいか幼少期から今に至るまで上の兄3人には恨まれてしまったし、腹違いの母2人にも相当嫌われている。皇位継承権のことも相まって、自分たちの地位を奪って来るかもしれないのが、彼らから見た私だ。おそらくこの国が全て吹き飛ぶか、全員死ぬか以外にこの解決策はないだろう。

 

そんな状況なのだ。手紙越しに何か言われるぐらいならまだいいが、『課題イイ感じっぽいし、一回帰ってこい』なんて言われたなら……、またあの地獄に戻ることになってしまう。

 

リシエラさんは過去の経験からかあの地獄にいても平気な顔をしてくれそうだが、おそらくライカでは耐えられないだろう。それぐらい、ウチの実家は空気が悪い。

 

 

(今は兄たちが戦争中というか、外にいるだろうから比較的マシだろうけど……。)

 

 

母親たちは母親たちでキャラが濃いからなぁ……。

 

といっても、ここで手紙を出さない、ということは出来ない。親に対する最低限の礼を欠く、という点でもそうだが、私達の活動は常に“見られている”からだ。

 

 

(……護衛さんたち、やっぱ見てるよねぇ。)

 

 

かなり距離を取ってくれているので意識しないと解らないレベルではあるのだが……。

 

私がこの町に来たその時から、実家から派遣された護衛さんたちが私のことを守ってくれている。ライカを買う前に少し考えていた“護衛兼監視”のことだ。

 

私の『鑑定』は結構無法で、やろうと思えば壁の中に隠れている人とかも見抜くことが出来る。というか制御できるようになるまで全て筒抜けだった。まぁそのせいで幼少期は隠れている護衛さんたちを自然と見つけてしまい、色々と迷惑を掛けてしまったんだよね。

 

 

(彼らは表向きの護衛じゃなくて、裏向きの護衛。敵どころか味方にもその姿をさらしちゃいけない人たち。けどまぁ、当時の私は全部見抜いちゃったわけで……。)

 

 

幼少期の自身は、まだこの世界への適応が済んでおらず、あまりその辺りの“常識”を理解していなかった。

 

だからこそ隠れている彼らに対し使用人同様お礼を言ったり、差し入れを置いて行ったりすることがあったのだが……。そういう裏の護衛の長に当たる人に『いないモノとして扱ってください、マジで!』と怒られてしまったのだ。

 

まぁ私が声を掛けてしまうことで、家の中にいるかもしれないスパイにその場所がバレたりする恐れがあるのだ。存在しないものとするのは彼らに対するマナーであり、ルールでもあったのだろう。

 

 

(だからそれ以降は見かけても無視するようになったんだけど……。結構罪悪感やばいから、後で纏めてお礼とかそういうのをしていた。)

 

 

んで、今こっちを見ているのはおそらく、母お付きの護衛だ。

 

何度か母を守っているのを見たことがあるし、顔を合わせて会話したこともある。確か女性で、結構長く仕えてくれていたはずだ。……そんな彼女に『若い女性に抱き着かれている』自身を見られるのは大変キツイものがあるが、おそらくあっちも変なものを見せつけられて気分が悪いはず。

 

こ、ここはお互い様ということで、ここは何卒……。

 

 

(……護衛さんたちの能力的に、家から距離を取っても“何をしているか”ぐらいはバレてるだろうしなぁ。)

 

 

まぁ、そんな人たちがいるのだ。

 

自身のダンジョン10階層攻略は既に把握しているだろうし、実家への報告も送っているはず。というか家の中で起きたことの大半を、資料化して実家に送られているはずだ。一応“彼女たちに害が及ばないよう”に動いてるし問題は無いと思うのだが、すっごく精神に悪い。プライバシーとか欠片も無いわけだし……。

 

あ、それと。この家から実家への直通郵便も彼らの仕事なので、ここで日和って手紙を出さないという選択はマジでない感じです。

 

とまぁそう言うわけで、ライカが落ち着いたらさっさと手紙を書いて報告しなくちゃなんですが……。

 

 

(マジでなんて書こ。)

 

 





〇ライカ

実は途中から痛みが収まって来て泣き叫ぶ必要もなくなったのだが、ちらっと見えたリシエラさんが『晩御飯までそのまま! というかお胸をもっと押し付けなさい!』と指示を送って来たので、“男女関係の師匠”の言う通りずっと抱き付いてる。ただ現状やほぼ直で感じてしまうご主人の匂いなど、様々なことに耐えきれなくなってきており、彼が他のことを考え始めたあたりから顔がゆでだこになっている。


〇リシエラ

もうやめて! 彼女の精神力はもう0よ! 脳までコンガリだわ!
(エド様を見た感じ、考え事が終わるまで思考と体を分離してる感じね。つまり声をかけるまで、ずっとライカちゃんのこと撫でてくださるだろうし……。彼女をもうちょっと“調理”したいからここは放置ね! さ、今日は私が晩御飯作りましょうかね~。流石に一服は盛れないけど、精力増強しそうなのは確か……。)





次回はお客様が来るようです。

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