「じゃぁ早速、作戦会議~! っていきたいところなんだけど。」
「きっつ」
「肝心のエド様が死んでるわね。……ライカちゃん?」
「おう!」
というわけでエド様のお父様との面談を終わらせ、応接室っぽい場所に移動した私達。
ご主人様のおかげでアチラが何を考えているのか大体解ったので、私としては大収穫だったんだけど……。まぁあの狂気的な瞳をすぐ傍で直視してしまえば、幾ら親子と言えどダメージがあったのだろう。人目が無くなった瞬間、即座に椅子に倒れこんじゃった。
まぁ明らかな“隙”なので、ライカちゃんに『顔の上に胸を置いて押し込め!』って指示を出すんだけどね? 精神的な疲れには柔らかな女体が一番よ、エド様! そのままイチャイチャチュッチュしてしまえ~!!!
「……やめてください。」
「あら、反応は出来るのね? んじゃライカちゃん、そのまま服全部脱がせて唾液交換しちゃって? そこまで出来たら後は本番だけだし、私は他に人が寄ってこないか外で見張ってるから。んじゃお二人でごゆっくり……」
「ぉ、おぅ!」
「いや起きるのでマジでやめて? ほらライカも従わなくていいから。」
私がそう言うと、椅子から飛び起きる様に姿勢を正すエド様。
その際に彼の手がライカちゃんの御胸に当たって、可愛らしい悲鳴というか嬌声が出そうになっている。今後ろを見たら唇をかんで叫ぶの我慢しながら真っ赤になってるライカちゃんを見れるのに……、それに気が付けるほどの余裕はないみたい。残念ねぇ?
ま。お父様の本性は理解してたけど、目の前でそれを見ちゃって再確認しちゃったから精神に大ダメージって所かしら?
(でもアレ、お父様側も『息子がこちらの本性を理解してる』って感じの動きだったわよねぇ。じゃないと顔が“緩む”わけないし。……彼なりの親愛表現だったのかしら? 逆効果だったけど。)
前々から理解していたけれど、やはりエド様は父に対して苦手意識を持っている。
これまでの会話からそう言うのが見て取れたので、おそらく典型的なお貴族様。私好みなグイグイ迫って来る人かもしれないと、ちょっとだけ期待してたんだけど……。
(うん、普通に期待外れね。)
あぁ、“貴族”としての話は別よ?
あの人って多分。完全に貴族として性格を構築しているというか、求められている役割に合わせて自分っていう入れ物を作っちゃうタイプなのよね。この国における“大貴族”に相応しいデータを集めて、それに見合った人間に成れちゃってる感じ。しかも適宜修正していけるかなり珍しいタイプ。事前調査で出て来た“傑物”って評価はあながち間違いじゃないみたい。
でも……、面白味は無い。優秀ではあるんだけど、優秀でしかないというか。
奥方たちや家族たちを愛してるのは本当なんだろうけど、その理由は『家族を愛するのが父だから』ってもの。本人の能力が高すぎるせいで上手く纏ってはいるけど、人に付いて書かれた本をそのまま実行しているみたいな、バケモノにしか見えない。
……お父様みたいなタイプって抱かれても事務的というか、えっちの教科書をなぞってるだけで確実に楽しく無いのよね。パパママ息子、3人とも食べられないかなって思ってたけど、やめておいた方が良さそ。
(そんな彼の根底は“貴族”で、その次に“家族”がある。)
つまりメインは貴族。故に子供たち全員に愛を振りまきながら、次の瞬間には『貴族って強くあるべきだよね? その証明の為に殺し合いなさい』とか普通に言えちゃうワケ。
そりゃお優しいエド様と合うわけがないというか……。
「大変なお父様、よねぇ?」
「普通に目が怖かったな。……大丈夫かご主人?」
「え、えぇ。……“父”として振舞ってる時はまだマシなんですけどね。」
私達の声にそう答えながら、大きなため息をつくご主人様。
結構精神的に参ってる感じなので、休ませてあげた方が良い。それこそ人肌で癒して差し上げた方が良いんだろうけど……、そうも言ってられない。何せここは既に“敵地”。知識奴隷としてはいち早くご主人様に現状を理解して貰わないと、取り返しがつかなくなるかもしれない。
(他陣営も既に動き出してるっぽいし。)
あの御父上の執務室に移動する前。そしてこの応接室みたいな所に通される間。
ちょっとだけこのお城の中を見ていたんだけど……。使用人たちの動きが活発すぎる様に見えた。
最初は『エド様が帰って来たからかな?』と思っていたのだが、それにしては騒がし過ぎる。まるでもっと“客”が来るような慌てぶりだ。まぁつまり、エド様以外の御子息たち。我らがご主人様の敵になる3人の御兄弟たちも、この家に帰って来るに違いない。
そしてそれを示す様な気配が、この部屋の周囲にチラホラ。
部屋に入った瞬間に隠れて防音などの隠蔽系魔法を発動したため問題は無いが、既にこの部屋を何人かの“暗部”が囲んでいる。お母様直属の者たちがカウンターとしてついているため攻撃されることは無いが、既に“狙われている”ことは確かだ。
色々気を付けませんと、ね?
(たぶんあのお父様、全員が同じタイミングで帰宅できるように帰還命令を出したわね? ……でもその中でも1番最初に到着できた。お父様と会話出来たのは明らかなプラス。ここで情報と立ち位置を固めて、動いてもらわないと。)
なにせこの国では、私達奴隷に出来ることは限られている。
細かなサポートは出来るし、身を挺して主人の命を守ることもできる。けれど身分の差がある限り、この人の代わりに動くことは出来ない。
つまり、ご主人様、エド様が覚悟を持って物事に立ち向かう必要がある。
(ならば私達は、その背を全力で支え押し込むだけ。)
既に彼は彼なりに、支えられるだけの良さを示しているのだ。
優し過ぎたり、女性に耐性が無かったり、貴族らしさが皆無だったり。色々と問題点は多いけれど、その分こっちで埋めてやればいい。……あとこう、防御が高い相手ほど崩壊した時の顔というか、羞恥というか、そういうの凄くえっちで滅茶苦茶興奮するわよねっていう。お預けされた分だけヤル気が出て来るわ……!
(あ、でも。爆発したら食べちゃうからガス抜きはしてね?)
お母様差し出すとか、お母様差し出すとか、お母様差し出すとか。もちろん速攻でライカちゃんモグモグして2回戦に私っていうルートも大歓迎よ?
そんな意思を込めた視線を送りながら、ライカちゃんに椅子に座る様に指示。自身もご主人様の対面に腰かける。
これから話すのは、今後の事。
先程エド様のお父様が言っていた『次の伯爵』についての話だ。
「それでエド様? お父様は“傍観しても良い”って言っていたけれど……、どう思う?」
「……何もしなければ終わりってことくらい私でも解りますよ。」
「そうなのか?」
「えぇ。早い話、『誰が自分にとってより良い場を整えられるか』っていう戦いね。多分成果さえ出せば伯爵にならなくても評価してもらえるんじゃないかしら?」
お父様は選択肢の一つとして“傍観”という単語を使っていたが、おそらくそれをすればエド様は終わり。完全な操り人形として使われることになるだろう。逃走計画のことも勘付かれてたみたいだし、そうなれば完全な詰み。
ご主人様としても、私達としても、それは好ましくない。
「たぶんお父様が思う“エド様”にとっての最適解は『兄弟たちの誰かを完全な支配下に置いて、意のままに操れるようにする』ね。皇帝らしく伯爵程度、完全な手中に納めてみろってことなんでしょ。」
「はぇ~。うん? でも……」
「そうね。エド様メッチャ嫌われてるから難しそうよね。」
「言わないでください……。」
ライカちゃんが思わず『でもアタシたちの目標はご主人を伯爵にすることなんじゃないか?』みたいなことを言いそうになったので、急いで口を挟む。ライカちゃんには共有したけど、それ彼のお母様との密約みたいなものよ……!?
どうやら彼女も“ご主人様には黙っておく”情報だったのを思い出したようで、目線だけで此方にお礼を送って来た。
うんうん、良いのよライカちゃん。でも私たち色々秘密にしてることがあるわけだから、気をつけてね? せっかくご主人様の信頼得て来たのに、ここで『皇帝にしようとしてる』ことがバレたら大問題だもの。
んで、ご主人様は……。全く気が付いてないわね。ヨシ!
「ま、どちらにせよ“味方に引き入れる”ぐらいはしなくちゃ駄目よ? 操り人形ならまだしも、結束して殺しに来る可能性もあるわけだし。」
「……我が家全体で考えれば、中央への影響力は欲しいが“必須”ではない。それこそ一族を皇帝にしなくても現状維持は可能ですからね。」
「そゆこと♡ エド様の価値は『居たらうれしいけど居なくても問題ない』ってレベルだからね!」
こう伝えれば、思いっきり顔を顰める我らがご主人様。
到着前に彼がライカちゃんに行っていた説明、この伯爵領に対する解説を思い浮かべてみれば。この地の者たちが『皇帝の外戚』を必要としていないことは簡単に理解できるだろう。
豊かな土壌に、資金を生み出す複数の鉱山。9つもの大都市を抱えているがゆえに独自の経済圏まで生み出すことが出来る。海に面してないので海産物などは入ってこないが、岩塩が取れるので塩の心配は無し。
「まぁちょっと経済に寄り過ぎてるから、常備軍の数が少ないってのが欠点かしら?」
「ですね、より強大な軍を持つ貴族は結構いるようですし。……というかいつの間にそこまで調べたので?」
「ふふ、女には“秘密”がつきものなのよ?」
つまり、このモーヴィル伯爵家領は既に“独立”しているようなものなのだ。
周囲から攻められないようにするため、外と貿易して資金を得るために帝国に所属しているだけで、もし国が崩壊すれば即座に独立できるだけの土壌を残している。息子を皇帝にして中央からの支援を受ける必要はないし、もし『帝国崩壊後』を考えるならば。余計な火の粉が降りかからないためにも、皇室とのかかわりは切っておいた方が良いまである。
(でも、お父様は“欲”に従って手を伸ばした。)
ソレが彼の真の欲なのか、それとも仮初のモノかは解らないが、エド様のお母様を嫁に迎え準備を整えた。
彼の後を継ぐ『次の伯爵』サマは、父の思いを継いでも良いし、継がなくてもいい。どちらのルートに進んだとしても、少なくとも彼らの代は家が崩壊することは無い。つまり、完全な自由。
今のこの家は、そんな節目に立っている。
(んふふ! た~のしくなって来たわね!!!)
やりがいばっかりでワクワクしてきちゃった。何せ私達の目標はこの人を帝位に就かせること。その前哨戦として伯爵位を巡る勝負が来たわけだ。ご主人様を成長させる糧になるし、私も目標に向かって進んでいるという明確な手ごたえを得ることが出来る。そしてライカちゃんにとっても、プラスになりそうな“イベント”がチラホラ。
これを全て成し遂げるためにも、エド様には大いに頑張って貰いませんと!
つまりこのままじゃお兄さんたちに殺されるか、一生操り人形ですよ~って脅しながら滅茶苦茶働かせるワケ! この人、生存欲に関してはガチだからね!
ま、彼って普通に出来る子ちゃんだから、何処かで気が付きそうだけど。その時はほら、良い感じにベッドに連れ込んでうやむやに……!
「……先輩?」
「あっと、ごめんなさいね? まぁそんなわけでここから先はお政治の時間よ? 全力で支えるけれど、奴隷である以上実際に動けるのはエド様だけ。私達を路頭に迷わせないためにも、頑張って頂戴ね?」
〇それぞれ
・ご主人くん
お家帰りたい……。あ、ここお家だった……。
いや二人のためにも頑張るけどさぁ!
・エロフ
ヤル気! 元気! 無敵!
・お母様
皇帝になる前に伯爵になりなさい! 応援オーラを送るわ……!
あと密かに裏で行動中。
・お父様
うんうんうんうん! どう転んでも大丈夫だからね! 頑張ってね!
・ライカ
……アタシ、話ついていけるかな?
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