「といっても、僕の提案は単純明快さエド! ……こちらの軍門に下らないかい?」
「いささか直球過ぎではありませんか、ザーン兄上。」
少し笑みを浮かべながらそう問いかけると、コロコロと笑い始める彼。
それだけ見れば親しみやすい青年にしか見えないが……。『鑑定』を用いてその頭の中を見れば、こちらの一挙手一投足全てを細かく分析し、この後の会話の組み立てを適宜修正しているのが見て取れる。普段の彼、というか長男と一緒にいる時の彼が腰巾着なせいでつい下に見てしまいそうになってしまうが、やはり油断ならない相手なのだろう。
……あの嫌に長男を持ち上げる動きも、対長男において最適で、同時に周囲から低く見られ油断させることを前提で行っているのか。
「あはは! 確かに急すぎたかな? でもエド、考えても見てよ。確かに我らが長兄は少々猪というか、前にしか進めないタイプの人ではあるが……。“有事”の際、旗頭にして動くのにはちょうどいい相手だろう? 少なくとも裏で何を考えているか解らない次男、ネヴァーク兄上よりはマシさ!」
「ふむ……。確かにタルクト兄上にそのような気質があるのは理解していますが、あの人も猪というほど愚かでは無いでしょう? 感情的なのは、確かですが。」
「おっと! 思ったより高評価だね?」
(……切り込み方を変えるか。)
このまま行くと“彼の思案通り”に物事が進む恐れがあったので、少し口出しして相手の動きを変える。
だが。この長兄への評価は、事実だ。
確かにあの人は私に強い恨みを持ち、今すぐにでも排除しようとしているはずだ。なにせ元々彼のものであったはずの爵位を、私の誕生によってひっくり返してしまっている。この伯爵位争奪戦が起きたのも自身の『鑑定』とそれを評価してしまった父であることを考えると……、やはり負い目がある。恨まれても仕方の無いことだ。
それに、彼には人を率いるカリスマがあるのだ。私兵500が高い練度で纏まっていることからも、それは認めざるを得ない。ちゃんとした上下関係と忠義があり、長兄の元で1つに纏まっている。このような上に立つ者の資質は、敵であろうと評価すべき。
思考を纏めながら、口を開く。
「えぇ。“自身の友人”も言っていましたが……。たとえ感情的な時でも、下からの声はしっかりと聞き入れるだけの冷静さを常に保つことが出来る、と聞き及んでいます。確かに今は自身への強い恨みで動いているようですが、それが頂点としての資質に欠けることを意味するわけではありません。」
「なるほどなるほど! となるとウチの長兄殿が勝手にエドのことを嫌ってる形になるね!」
(友人……、あの私兵集団にも既に諜報員がいるのか。それを自身に明かしたということは“ここで私を消せる”という意味でもある。……はッ! “やる気”がないのは偽装だった、ってわけね。)
「ふふ、ですね。」
ウチのトップがすまないね! という風に笑うザーン兄上だったが……。内心こちらを酷く警戒し始めてしまった。想定通りなため問題は無いが、自身のやる気の無さが“演技”だったと思われ始めている。あ、あの。マジでやる気はないですからね?
……まぁ、『いつでも排除できる』ってのは事実なんだけど。
鑑定が使えない彼では正確な位置を掴むことは難しいだろうが、既にこの部屋は自身直属となった護衛部隊。母の身をこれまで守っていてくれた者たちが囲んでいる。長兄陣営の人員も、次男陣営の人員も、誰も覗き込めない鉄壁の布陣だ。
更にリシエラさんにもお願いして、余分をもって部屋の周囲を魔法で覆ってもらっている故、基本的に中を覗くことは不可能。つまり“処理”という点で考えれば、いつでもできるわけだ。
(けれど、それは致命的な悪手。長兄陣営との全面戦争が始まってしまう可能性があるため、こちらがその手段を取ることは“基本的に”出来ない。……私の“最終目標”の為にも、ね?)
三男ザーン兄上は、長兄陣営からのメッセンジャーだ。
それを切り殺してしまえば、相手からの心情は更に悪くなってしまうだろう。それに彼は長兄にとって、唯一同じ母から生まれた大事な弟。貴族的な価値観を持つ故大きなダメージを受けることは無いだろうが……。弔い合戦として即座に攻勢をかけて来る可能性があった。
こちらの戦力が護衛部隊とエロフしかいない以上。数に勝るあちらに勝つ見込みは無い。そう言った力関係を彼も理解しているからこそ、眼前の“三男殿”は顔色一つ変えていないのだが……。
まぁ、本人の能力もありそうだよね。
「だが……。そこまでエドがタルクト兄を評価してくれるのなら、『彼が意見を変えるかもしれない』ことも解ってくれるんじゃないかい?」
「自身への恨みを捨てる、と?」
「その通り! まぁ確かに今は色々と酷いけど……、その根本は『伯爵位を奪われた』ことに起因してる。つまりこの無駄な争いをさっさと終わらせて、彼をトップにしてしまえば溜飲も少しは下がるはずさ! そこでこう、僕が良い感じに、ね?」
(まぁ、確約は出来ないが。)
「間を取り持ってくれる、と。」
そう聞くと、大きく頷いてくれる彼。
うん。でも『鑑定』で確約できないって思ってるの解ってるからね? 内心『多分無理だろうなぁ』って思ってるの解ってるからね? 滅茶苦茶いい笑み浮かべて『信用してよ!』な顔してるけど、解ってるからね?
まぁ、こっちとしてはそれが聞きたかったんだけど。
「しかし、それでは“兄上”の気が済まないのでは?」
「ははは! 安心するといい! さっき言ってくれたように、我らが長兄はまだ物分かりが良い方だ! 君には苦労を掛けてしまうが、頭さえ下げて謝って貰えれば、そう悪いことには成らないはずさ! 僕も母上に声をかけて、君と君の母上。その命と最低限の権利は確保できるよう動くつもりだしね!」
「あぁいえ、失礼しました。先程“兄上”はタルクト兄上ではなく……。“ザーン兄上”。貴方の事ですよ?」
「…………僕かい?」
警戒のためか、少しだけ張り付けた笑みが緩む彼。
対応の為に高速で思考が動いていることが見て取れるが……。纏まり切る前に、こちらから話しかける。
「えぇ、“前々”から思っていたのですが、ザーン兄上はタルクト兄上に対し強い感情を抱いていますよね? それは何か解りませんが……。」
「あはは、まぁ長兄は武力に関しては凄く優秀だから憧れが……」
「『これを機に全員を殺し合わせれば、後継者を自分だけにできる』でしょうか。確かにこれなら『父上も母上も』、ザーン兄上にだけお心を向けてくださるでしょうね?」
「……。」
表情に変化は無いが……、その目の奥に宿る温度。それが一気に下がったことが理解できる。
先程まで雪崩のように組み立てられていた彼の中の“思案”も、一瞬にして全て吹き飛んでしまった。
何せそれは、彼が一度も口にしたことのない願望。
ずっと頭の中で向き合って来た感情にして、どうにかして実現させようと考えていた『極秘の策』に他ならないのだから。
(……本当に、『鑑定』は無法だね。)
確かに彼は優秀な人間ではあるが、『兄』がいたせいで表舞台に立つ機会を失ってしまった存在。やはり血を分けた存在といえど、何も思う所が無い、というわけにはいかなかったようだ。
「先程も言いましたが、長兄は優秀な方ではあります。有事の際は前に立つことで味方を鼓舞出来る。それは得難い才でしょう。しかしソレも、優秀な後方がいることで成立するモノ。……我らが父のように全て一人で熟せてしまうタイプではありません。」
「……そこは、同意しようかな?」
伝え聞く限り。我らが長兄には軍人としての能力はあるが、それ以外は大いに足りていないらしい。
つまり今の支配者である父のように1人で9つの大都市をまとめ上げ、強固な伯爵領を維持するのは難しいのだ。確かに戦では勝ち続けるだろうが、いずれ後方が荒れ補給が滞り崩壊する恐れがある。それを長兄も理解しているからこそ、たとえ『気に食わない意見具申』でも受け入れ、その通りにするだけの理性があるのだろうが……。
そんな彼を支えられそうな存在が、今の所“次兄”しかいないのが問題なのだ。
「つまりこの継承戦は完全な悪手なのです。もし我らと兄上たちが手を組めば、“次男陣営”。ネヴァーク兄上は立ちどころに消滅してしまうでしょう。力関係がひっくり返る以上、それは致し方の無いこと。そして敗北した派閥の長、その末路は総じて決まっています。」
ザーン兄上の言葉に従い、手を組んだ場合。表の力である私兵集団と、裏の力である此方の護衛部隊が一つにまとまるわけだ。金の力はあるとはいえ、纏まった武力を持たない次男陣営はすぐに滅ぼされてしまうだろう。その後各都市長の離反に注意する必要があるが、ソレもタルクト兄上の支援者に軍部長官のランツァル殿がいる限り、鎮圧出来てしまう。
つまり、この継承戦の早期決着が可能になるのだ。
そしてその後に行われるのが……。ネヴァーク兄上と、その母上であるオリエール様の秘匿処刑だろう。一度敵になった以上、その後も敵になる可能性があるのだ。もし残して子が産まれてしまえば、今後自らの子供が危険にさらされる可能性もある。“我らが父上が一度親族全てを処理”していることからも、長兄もそれに倣う可能性があった。
(けれどその後、我が領の経済が狂うのは確実。)
父が生きている間は何とか回るだろうが、彼の死後どうなるかは一切の不明。もしかすると市井から良い人材がやって来るかもしれないが、国が真面に回る可能性がぐんと下がるだろう。
そして今すぐにでも起きるかもしれない“奴隷反乱”。そしてその後巻き起こる“帝国崩壊”を考えれば……。
まともな後方がいない長兄では、伯爵領を壊すことしかできない。
「ですがザーン兄上なら、それを防ぐことが出来る。でしょう?」
「……。」
「継承戦が終わった直後に、この身が長兄を排除しようとしている情報を流し、互いに殺し合わせる。我が護衛部隊を長兄の暗殺に。私兵部隊を私と我が母上の排除に向かわせる……、でしょうか? 多少手間がかかりますが、互いの陣営からの信用を稼げば、不可能では無いでしょう。」
そんな“終わり”の結末が起きる前に、ザーン兄上が動く。
彼は未だこの帝国が壊れるとは思っていなかったようだが、『現在低下しつつある皇帝の権力がより小さくなっていく』とは思っていた様だ。故に私の想定と似たようなことを考え、彼自身が一番利益を得られる方策を考えていた。
ソレが、さっき自身が口にした概論だ。
これが成功すれば、両者のトップが死に絶え後継者が1人だけになるわけだ。
軍部も『唯一の血族』を守るために介入してくるだろうし、財務長官である彼女も今後の為に彼に接近していくことだろう。長兄直轄であった私兵集団は解体され、こちらの護衛部隊も軍部によって処理、解体、放逐されていくことだろう。
“常に背後に警戒し続けなければならない”というデメリットこそあれど、ザーン兄上は頂点に立てる。これほど彼にとって素晴らしいことは無い。
「父上は唯一の息子である貴方を気に掛けてくださるでしょうし、長兄に掛かり切りだったトクシア様の愛もザーン兄上に向くことでしょう。……大層、素晴らしいですね。」
「……ふ、ふふ。皇位継承戦から逃げたい逃げたいと言っていた君が、よく言うものだね。」
「おっと、これは痛い所を突かれましたね?」
そう言いながら、彼に笑みを送る。
ソレが本意ではあるのだが、この場で肯定してしまえば此方側に傾いた流れが途切れてしまう。今は肯定も否定もせずに切り替え、全て終わった後の場で説明させてもらうことにしよう。今は彼を、“怒らせる”必要がある。
少しだけ耳を触り“指示”を送りながら、言葉を続ける。
「ですが兄上も薄々気が付いているのではないのですか?」
「何が、だい?」
「どちらにせよ、長続きしないことですよ。」
確かにザーン兄上は優秀な方だ。
けれどそれは統治者というよりも……、外交官寄りの能力に関して、である。
何せ彼は相手にとって最適な動き方を見つけるのが酷く上手い。タルクト兄上にとって最適な『イエスマン』になることや、私が内心ずっと求めていた『こちらに親愛を向ける兄』というのを、すぐに把握して取り繕っていた。その完成度も申し分ないレベルで、『鑑定』が無ければ勘違いしていたかもしれない程。兄の腰巾着に成り切ることで周囲の警戒を解いたり、そしてそんな境遇に耐え続けたりと。そういった“現場働き”に関しては非常に有能であることが見て取れる。
だがそれが統治者として評価できるかどうかというと、また別の話だ。
「ザーン兄上の事です。確かにある程度捌くことは出来るでしょう。しかしこの広大な伯爵領を全て手中に納めるにはいささか足りていない、というのはご自身でも理解されているはずです。長兄という鎹を失った軍部は増長し始めるでしょうし、各都市長は『此方が攻め取った』という過去から離反してもおかしくありません。そも、親族を殺したことから領民たちの支持も危うい。そんな領主であれば父上も見捨てるでしょうし、トクシア様も『タルクトであれば』なんて零すことも……」
「貴様に何が、ッ!?」
激昂して彼が立ち上がろうとした瞬間。あらかじめ指示してあったライカが『分身』を起動。
彼のすぐ横に分身体が現れ。抜かれた剣がその首元に添えられる。
……うん、完璧。流石だねライカ。最近あんまり見てないその氷のようなすまし顔も雰囲気に合っていて良い。後でしっかり褒めてあげませんと。
「おっと、失礼ザーン兄上。少々口が過ぎてしまったようで。……しかしながら“兄弟”として忠告しているのです。ここは落ち着いてもらいたい所ですね?」
「……よく言うよ。“セヴェリオの乱”かい?」
(……よく言うよ。“エルディスの乱”かい?)
「ふふ、それを言うのであれば“セヴェル”でしょうに。」
兄からのひっかけ問題を、軽く交わす。
先程口と思考で言われたのは、この世界独自の政争の名前だ。どちらも少しだけ発音が間違っており、この世界の歴史にも興味を示す私が“指摘しやすい”様になっている。
両者ともに兄と弟の口喧嘩から始まり、両者ともに実際に殺し合わず未遂に終わった事件。それをなぞらえて、私の行動を言い表そうとしたのだろうが……。
(予定通り、“勘付いた”ね。)
このタイミングでわざわざカマを掛けて来たということは、彼も私が『何らかの特異なスキルによって思考を抜かれている』ことに気が付いたのだろう。私が引っ掛からなかったことで、『私のスキルではなく奴隷や部下のスキル』という選択肢も彼の中に生まれただろうが……。
今回は、大いにこちらを警戒してくれるだけでいい。
当初の計画では、彼をこちら側に引き入れ長男陣営に放り込むことで、私兵集団を引き裂きあちら側をズタズタに引き裂く、というモノだったが……。その主な考案は、リシエラさん。そしてそれを求めるのは我が母ミトラだろう。
……自身が掲げた最終目標には、不適合な策だ。
だからこそ、今ここで押し切る。
この人の生存。そして“引き入れ”は必要不可欠なのだから。
「ザーン兄上。改めてですが、自身は伯爵位に興味はありません。『皇帝になるならば不必要』なのです、直轄として納めることも出来るでしょうが、どちらにせよ代官を置かねば真面に管理は出来ない。そしてそれでも荒れる可能性があるのなら……、最初から取る意義は欠片も無いのです。」
「…………続けて。」
「故に目指すのは完璧な“後援”。兄上たちが互いに協力し合える未来。勿論……、ザーン兄上が多大な利を手に入れることが出来る、という。」
自身は皇帝になる気はさらさらないが、ここで言葉にしておかなければ後々もめる。故に、明言せねばならない。少なくとも兄たちの前では『皇帝目指すから伯爵位はちょっと要らないというか……』というスタンスでなければ、納得させることは出来ないだろう。
そしてそこから先、彼のもっとも求めるモノ。両親からの評価が手に入る術を、提示する。
「ぜひ兄上には、中央との橋渡しを行って頂きたいのです。自身は確かに継承権を持っていますが、下位であることには変わり有りません。どうしても伝手が足りないのが現状です。しかし次兄の母上、オリエール様が持つ伝手や、我が母の伝手。そして父上が用意しているであろう伝手を使えば、活路は開けます。」
「……その先鋒として、君の為に働けと?」
「兄上ならば、結果を出せるでしょう?」
少しも疑っていないという口調と顔で、そう言葉を紡ぐ。
実際、彼ならば一定の結果は残せるだろう。対『鑑定』は聊か問題になって来るだろうが、ソレも外交官としての。相手の懐に入り込む能力は高く評価している。
そしてソレは、父も。あちらの母も同じはずだ。
「結果を出せば、認められます。少なくとも我らが父は、優秀なモノには成果に見合う評価と褒章を与える。これはザーン兄上も理解しているはずです。そしてトクシア様も……、思っている以上の結果を見せれば、すぐに見直してくださるはず。確かに貴族然とした方ですが、“母”としてはこれ以上ない方でしょう?」
「……我が母をお褒め頂き感謝、とでも言っておこうかな?」
「それでよろしいかと。……そして私も、それに見合ったものを確約します。伯爵のひとつ上……、侯爵なんて、如何です?」
これは、完全な口約束。彼が最初に持ちだした『長兄から身を護る』と同様のモノではあるが……。もし自身がそのような立場に成れば、絶対に守る約束でもある。こちらに“達成する気が一切ない”という大変心苦しい契約ではあるが……。
長兄よりも上に立ちたいと考えている彼からすれば、大変魅力的な提案であるだろう。
事実、『鑑定』で覗き込めば先程よりも高速で思考が回っているの見て取れる。
「……あははは! 成程! そう来たか!」
「兄上?」
「あぁ、いや悪いねエド。つい、ね? ……その話、受けさせて貰うとするよ。どうせ、断ったらここで“処理”するつもりだったんだろう? 正確な位置は解らないが、どうせこの場も君の手勢で囲まれているだろうし。」
「さぁ、どうでしょう?」
内心『私の母もそれを承知で送り込んでいるだろうし』と付け加えた彼に対し、あいまいな言葉で誤魔化しておく。
「確かに、君の言葉は正確だ。そのようなコトは考えていたし、業腹だがその分析。いずれ立ち行かなくなるというのも真実だろう。けれど身の丈に合った仕事を熟し、成果を上げる事が出来れば……。タルクト兄よりも“上”に行けるのだろう? これほど面白いことは無い!」
「でしょう? あぁ勿論、トクシア様とタルクト兄上の身柄は保証いたしますよ。評価者がいなくなれば意味がありませんし、悔しがる兄上の姿は私も見たいので。」
「それはいい!」
そう言うと、大きく笑う兄上。
内心まだ幾つか思考を回しているようだが……。少なくとも、友好関係を築けたことだろう。現在はまだ内応者という括りでしかないが、今後彼が我らに大きな利を齎してくれるのは確実だ。
「っと! もういい時間だね! じゃぁそろそろお暇するとしようか!」
「そうですか? 先ほど頼んだ軽食もまだ届いていませんし……。」
「帰り際に貰うとするよ!」
「ですか。なら、お見送りを。」
立ち上がりこの場から離れようとする彼を見送るため、自身も席を立つ。
あぁそうだ。彼の性格であればまだ足掻く可能性もあるわけだし、少々釘を刺しておくべきだろう。勿論、さっきの“言い間違い”に関して、だね。
「そうそう兄上。先程“エルディスの乱”なんて『考えていた』様ですが……。正確には“エルディオンの乱”ですよ? 彼らとは違い『最初から切り捨てる予定だった』などの愚かなことはしないように、願いますね? ……いつでも、見ておりますから。」
「…………肝に銘じておくとするよ。」
人好きする笑みを張り付けたまま、そう言う彼。
……うん、これで大丈夫だね。
〇ご主人陣営
・ご主人
わーい、ザーン兄上の協力取れた! これで各段に動きやすくなる! 誰も死なず、なおかつ私の安全も確保して、伯爵位を手に入れないためにも! これから頑張るぞ! ……でもまだ人の頭の中覗くの抵抗あるなぁ。
・ライカ
言われた通り頑張った! ふんすふんす!
・リシエラさん
うーん、愛玩動物。というかエド様、大丈夫なのソレ? いやあの場では最適というか、ほぼ満点叩き出してるから“知識奴隷”としては言うことないんだけど……。
・護衛部隊
え、エド様が『皇帝を目指す』と明言なさった、だと!? ほ、報告しなくちゃ……!!!
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