アビドス砂漠のアビドス敵対校(停戦中) 作:夜酒見
プロローグが終われば原作時系列入ります。
なおプロローグ終わったあと話の内容がガラッと変わる予定です。
説明不足な要素が多いです。
アビドス砂漠の対アビドス戦争校(停戦中)
「いっちにっ、さん、しっ、ごぉ、ろく、しち、はちっ」
教室一つのみが転移したような様相の建物。中に入ればただの教室があり、トイレや水道など最低限のライフラインは存在していた。トイレの周囲はカーテンで囲まれているのみ。
「にっに、さん、しっ、ごぉ、ろく、しち、はちっ」
そんな中は教室というには生活感にあふれ、いくつか横に並べられた机の上には布団が敷かれ、教卓の下には大量の缶詰が敷き詰められ、衣服が脱ぎ捨てられてもいた。
窓は段ボールで補強され、ガムテープと段ボールはどんな事態にも対応するためか保管されている。
「さん、にっ、さんしっ、ご、ろく、しち、はちっ」
そんな中、頭に光輪を光らせる少年がいた。少年というわりには色々あれだが。法的に見れば大人の歳には達していたりと
彼は少し爬虫類のようにも見える細まった瞳孔をもち、ギザ歯をもった長髪をしていた。その黒目に光はない。
そんな少年はラジオから流れるラジオ体操の音楽を背に体をくねらせひねらせ、ほぐしている。動きにオリジナルが混じっているが。
「よん、にっ、さんすっ「いい加減校舎明け渡せゴルァッ!!!!」……」
そんなときに段ボールで修繕された窓部分が全て破壊されるほどの銃弾が教室へと突き抜けていく。手慣れた作業ではあるが、窓一枚あたり修繕に5分はかかる。
5分、されど5分。段ボールをもらってきたりする作業なども考えればさらに伸びるだろうが、されど5分。それが複数枚で数十分。
朝のラジオ体操をしていた様子の少年はその怒声とかわすした銃弾へと目を向け、無惨にも吹き飛ばされた段ボールの先に見えるヘルメットを被った集団を目に入れる。
少年は無言で殺意を装備した。
「……」
「はっ、ようやく出てきやがったな!!テメェら!1人相手だろうが容赦はいらねぇ!う」
「ギルティ」
獅子をも上回る速度で銃弾が打たれる前になぜか戦前にいる指揮官的赤ヘルメットに肉薄する。
相手が困惑しているところをヘルメットを掴み、爪をヘルメットに食い込ませ固定する。そして、高速で小刻みに振り回すことでヘルメットの内側の頭が揺さぶられ、ヘルメット内の壁に衝突する。それにより脳も衝撃で揺れ、赤ヘルメットの意識は途絶えた。
「り、りーだー!?う、うてうてっぐぼぇっ」
混乱したままにとにかく銃を撃とうとする近くにいたヘルメットの1人をその奥にいるヘルメットにぶつけるように蹴りやる。しかし、混乱のままに銃をとにかく撃ってくる銃弾には手につかんでいた気の失ったリーダーヘルメットを盾にした。
「なっ、卑怯だz」
「今帰るならお前らのデコレーションされた銃は壊さない。帰らないなら」
「……なら?」
「ヘルメットごとスクラップにする」
「……やってやろうじゃねぇかぁ!舐められて下がれるk……ふぇ?」
ヘルメットの少女らがその瞬間見た光景はあまりにも異常だった。
少年はリーダーの銃を持ち、武器を奪うか有言実行で壊すかと思われた。壊されたという結果は事実そうなのだ。しかし、その壊し方が異常である。
その銃口を口へと持っていったかと思えば、まるでポッキーでも噛み砕くように銃口を噛み砕いていったのだ。
一噛みで銃口の先端部分は無くなり、ニ噛みは先ほどより深く、そして一度口を閉じると容易く切断されていた。
アサルトライフルから銃口部分はなくなり、少年が吐き出した金属は彼に噛み砕かれ、口内で圧倒的咀嚼力により圧縮されたであろうスクラップである。
「はぁ!?ちょ、おまっ」
彼女らも怪力は見たことがある。銃くらい容易くへし折られることもある。しかし、顎の力だけでそれを成し遂げる存在は滅多にお目にかからない。見たことがない。
ヘイローや神秘による強化があれ、顎の力に神秘が集まることなどそうそうにないのだ。
しかし、異常とはいえ所詮そこまでだ。混乱から抜け出した者から銃をまた構え始め、そしてまた止まる。
その少年は赤いヘルメットへと口を開けたのだ。頬の皮膚が伸びたのか、顎の関節はどうなっているのか、人が本来広げられるものよりずっと大きく顎が開けられ、歯が赤いヘルメットへと付けられる。
しかしそれでも相手はヘルメット。顎が大きく開かれたとはいえ、人の顎の大きさではまともに噛み砕くことなど出来はしない。ペットボトルが小さなハサミではそのまま切ることが難しいように、人の顎でヘルメットを噛み砕くなど到底不可能なことであった。
しかし、それにヒビが入る。
「!わ、わかった!降参だ降参!!リーダーを離してくれ!!」
「はぁ!?なにかってにいってんだよっ!負けて撤退ならともかく脅されて引き下がるのは依頼者になんて言われるかっ。依頼者わかってんのか!?」
「あのままあいつの行動見過ごせってのか!?そもそも考えてみろって、もしこのまま負けたら、私ら全員あれの餌食だぞ!?」
「は、ハッタリだ!少しヒビが入ったように見えるが、人にヘルメットを噛み砕けるわけが」
しかし、ヘルメットが軋み、嫌な音を立て、そして少年のギザ歯は確実に食い込んでいた。見間違いや聞き間違いでは到底説明のつかないその変形。ヘルメットのバイザーはすでに割れ、ヘルメットの金属部分も凹んでいる。穴さえ空いており、さらにはその顎はだんだんとその内部へと進めていた。このまま顎が進み、閉じられればそのまま中身ごと噛み砕かれることが容易に想像できない。
「ぐっ、わ、わかった、おい!そこの……開いた顎のキモい奴!降参だ!」
「おいバカっ!」
「……すでに天秤は降りた。少なくとも、全員再起不能にまで」
「ひぃっ!」
しかし、降参の言葉に対して今この瞬間にでもヘルメットを噛み砕かんとする顎にしては器用に話しをする。その内容は絶望だった。
一度忠告して断られたのだから徹底的にわからせる必要があると、そしてその上にキモいと言われたことや修繕の手間を増やしたことへの意思返し的な側面も含められてはいた。
本人もその顎の異質さというものは理解しているのである。そして、自身の顎が銃よりもある種恐ろしいということも。銃という顎なんかよりもよっぽど恐ろしい存在である凶器、どれだけ強くとも近距離しか対応できず、しかも噛むという殴る蹴る以上に人間が不得意とするもの。
だからこそである。銃はこのギヴォトスでは当たり前だ。それにあたっても死にはしない。しかし、顎はこのギヴォトスでも類を見ず、さらには銃よりも本能的に死を感じさせる。実際に死ぬかはさておき。
だからこそそれが脅しに使えると判断した。
「とりあえず、リーダーであるこいつは噛みこ「はぁい。そこまでだよぉアメくん」……アビドスの生徒会長にうちの小競り合いを止める権限はないはずだ、梔子ユメ」
そんなアメくんと呼ばれた少年とヘルメット団が向かい合う中、声を上げたのはライトグリーンの膝まで届く長髪を携え、タレ目に強大な胸部を携えた少女。
少年にも名前を呼ばれた梔子ユメ、アビドス高校の現3年生である。
「確かに権限はないけど、同じアビドスで起こったことだし」
「敵対高に指図されることではない」
「せっかく停戦したんだし、仲良くしたいな〜」
「停戦は和平ではない。戦争状態は停戦しても継続される。表面上であれ仲良くする気はない」
梔子ユメは少年へと歩みを進めた。距離を詰められる中、少年は赤ヘルメットから手を離してはいないが口は離しており梔子ユメの方を睨んでいる。
「私はアメくんと仲良くしたいって思ってるよ?それに、私は和平もしたい」
「個人的な感情で戦争の行末を決められると思うな。もしも、その言葉を裏の思考なく言っているのならお前はバカだ」
「なら、公式に和平しない?私には今その権限があるし、アメくんだって」
「黙れ。今すぐにで「流石に油断してるなら奴らにも勝てばっ!?」……」
少年が梔子ユメを睨んでいたとき、ヘルメットのうちの1人はそれを油断と捉え、一矢報いてリーダーを回収してとんずらしようと計画を立てた。
しかし、その動きは少年のその細い瞳孔によって捉えられており、次の行動も予測立てられてはいた。が、それを防ぐそぶりを見せてはいない。
その攻撃には梔子ユメも巻き込まれる可能性があったのだ。停戦中とはいえ、戦争が続いている相手。ヘルメットの攻撃を防ぐ=梔子ユメを守ったと勝手に解釈される可能性を嫌い、自分だけが赤ヘルメットを盾にするつもりでいた。
しかし、そんなヘルメット団の攻撃は防がれる。1人のみならずその周辺にいたやつもまとめて吹き飛ばしたのは少年ではない。それは桃色の短い髪をもち橙と水色のオッドアイのショットガンを持つ少女。
「馬鹿なんですか!?敵前でそんな優雅に会話しないでください!」
「……小鳥遊ホシノ」
「あ、ホシノちゃん!きてくれたんだぁ」
アビドス高等学校で梔子ユメの唯一の後輩であり、一年生。ゆるふわな感じの梔子ユメと異なりツンツンしながらもユメに懐いている小さな生徒。ギヴォトスの生徒で最上位の実力、神秘を持つ。
「先輩は過保護が過ぎます。わざわざこんなことのために援護に来る必要もなかったでしょう。事実、そいつ1人でどうにかなっていましたし」
「1人で戦うよりみんなで戦う方が」
「ユメ先輩が場に出て事態はおかしくなりましたし。その結果相手につけいる隙を作っていましたが?それに、だいいち下手に刺激してアビドスとデュアトの停戦が解けたらどうするんですか!!停戦になって早速こんなことするなんてバカじゃないですか!?」
「でもここで助太刀したらアメくんだって和平してもいい!って思ってくれるかm「実際邪魔してるから逆効果じゃないですか!」ひぃんっ!みんな仲良くできたらいいって思ってぇ」
梔子ユメは小鳥遊ホシノの激昂にひぃんと生徒会長としてなさけない声を漏らし涙目になる。
小鳥遊ホシノが2人に注意をしたというのに同様に先輩との会話に没頭している。無論、ホシノも警戒は解いておらず何かヘルメットが怪しい動きを見せた瞬間にでも刈り取る瞳を向けてはいたが。
「……おいヘルメット。こいつはやるからさっさと帰れ」
「ひゃ、ひゃい!お、おい!ずらかるぞ!」
「残りの奴らも回収してけ」
口喧嘩を始めた2人を尻目に、少年は手に持っていた赤ヘルメットをまだ立っているヘルメットへと軽くぶん投げ、他の近くに倒れている連中も掴んで投げつかんで投げ手が空いているヘルメットに回収させていく。
すでに攻撃をしてきたヘルメットたちに対する仕返しの意思など、敵対校の全生徒である2人が現れたことで潰えていた。
そして、ヘルメットの集団はいそいそとアジトへと帰還していった。むざんにもスクラップになった銃も持ちながら。
「お前らも帰れ。ここ周囲は我が学園の自治区だ。自治区内に入ることを禁じてはいないが、敵対校生徒が教室周辺にまで無断で侵入することは許していない」
「そうですよ先輩、命令口調で言われるのはかんにさわりますが、向こうも拒絶してるんですからわざわざ近づこうとしなくていいんです」
「えぇ!?でも、アビドス砂漠の状況はみんなで協力して」
「あいつがいてもいなくても変わりませんよ」
「……あまり小鳥遊ホシノの言うことを認めたくはないが同感だ。自分がいようが、ここが砂漠になったという事実に変わりようはない」
「!でもでも、宝の地図見つけて、もしかしたらどうにかできるものが見つかるかもしれなくて、一緒に掘りに行かない?何か見つかったら山分けでいいから」
「いらん」
少年は梔子ユメの提案を考えるまでもなく無碍にし、小鳥遊ホシノはわざわざ戦争中の相手に歩み寄ろうとする姿勢に頭を抱えた。
少年が歩み寄ってきているのならまだ良いが、拒絶されているのにわざわざ迫るのはリスクがあるとホシノは考える。梔子ユメは公道で歩み寄り、小鳥遊ホシノは時間に任せるべきと考えが異なっている。
「で、でもっ、停戦を受け入れてくれたってことはアメくんも歩み寄る気が」
「小鳥遊ホシノがいるアビドスと戦えばこちらの被害も甚大になりかねない。少なくとも戦争を続けるのは良くないと判断したまで。本質的にデュアトとアビドスが敵対関係であることに変わりない」
「でも、もともと同じだったんだし、きっと歩み寄れると」
「少なくとも今現在アビドス高校が抱える問題をどうにかしてから言え。こちらにまで借金を流してくることは許容しない」
デュアト学園は元々アビドス高校の一部である。そして、生まれたのはアビドスの歴史的にはここ最近の出来事と言えた。デュアトが生まれた瞬間から元々同一高だったアビドスとは敵対したという歴史が存在する。
互いに嫌悪していた理由があり、今現在の理由の一つはその借金に起因していた。
「借金の返済を手伝ってもらおうとはしないよ?」
「どちらにせよ、リスクに対して和平をするリターンがない。仲良くできること、それはリターンではない。以上だ、即刻退去を願おう」
「……そっか、ごめんねアメくん。でも諦めないから。きっと、デュアトはアビドスと手を繋ぎ合える」
「そうできるように事態を動かせたのなら皮肉なしに褒めてやろう」
「……いろいろ言いたいことはありますが、今回は帰りますよ先輩」
「うん。ごめんねホシノちゃんにも迷惑かけて」
「次からこのような行動をする時はちゃんと考えてからにしてください」
小鳥遊ホシノは上から目線でい続ける少年に対して多少の苛立ちをつもらせつつも、向こうから攻撃をしてくる意図もなく穏和に済ませようとしていることや本気で相対すれば無傷ですまないレベルの相手であることから言い返さないこととした。
ユメ先輩が愚弄されることを好きに容認するわけではないが、ここで自身が動けばそれは1番デュアトを刺激することになると理解した上で小鳥遊ホシノは梔子ユメを引き止めることに止める。
2人も去り、太陽が砂の地平線に沈む頃。
「くっくっくっ、素晴らしい戦いでした。あなたは自身の特性を理解した上でそれを行使していた」
「……なんのようだ。体よこせとかそういう取引に応じるつもりはないぞモノクロ亀裂ハゲ」
少年はツンデレです。多分。ツンツンツンデレくらいです。
次12:00