地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、殺し殺され現代ダンジョン物拾い生活   作:自縛霊

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強化レジ袋

 さて、前回インベントリに酸素をため込む戦術を覚えたマリー。勝利を確信した彼女はオウミ氷海の海底で、サナダと一緒に燃料採掘をしています。

 

 

「~~♪」

 

 

 ご機嫌に身体を揺するマリーが、サナダに引っ張られて海中を進んでいます。

 

 どうも【逃げ足】の速度補正は泳ぐ速度にも乗るようでして、サナダは水中でもスイッスイ泳げるんですよね。そんなわけでいつもおんぶされてるように、マリーはサナダに引っ張られているのです。

 

 

「~~~♪」

 

「♪~~」

 

 

 ご機嫌に燃料を採掘する二人。インベントリも半分近く燃料で埋まって、順調な様子です。

 

 

「っ!」

 

 

 しかしボンベの空気が尽きて、タイムリミットが来てしまいました。

 

 

「~~~!」

 

 

 だがしかーし、マリー達には秘策があります。ヒノ考案の「インベントリから酸素補充作戦」があれば、空気切れなど恐るるに足りません。

 

 作戦通りマリーがインベントリから空気を取り出し、そして…………!

 

 

 ボコン!

 

 

 取り出した空気の泡が大きな音を立て、海面へ浮かび上がっていきました。

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 どうやら今のマリーでは、ボンベの中に直接空気を補充することが出来なかったようですね。作戦失敗です。

 

 慌てたマリーが纏まった量の空気を一気に取り出します。泡に顔を突っ込んで、なんとか空気を吸おうとしますが…………

 

 

「グブッ!?」

 

 

 当然失敗、それどころか海水を大量に吸ってしまいました。吸った水を吐き出そうと身体は強く咳き込みますが、空気を吐いたならその分吸わねばなりません。

 

 

「……っ!!……っ!…………」

 

 

 その結果更に大量の海水が肺に流れ込み、マリーは溺死しました。そして彼女が死んだことにより、インベントリの中にあるアイテム……つまり大量の空気が、海底にドロップ・放出されたのです。

 

 

「グッ……!?」

 

 

 大量の空気が水を押しのけ、強い衝撃が発生します。それによって、サナダの身体が海底に叩きつけられてしまいました。

 

 

「ぅ……ぎ……ぁ…………」

 

 

 ただでさえ息切れ寸前だったところに追い打ちが入ったのですから、当然サナダも溺死します。

 

 こうしてアルバイターたちの、初めての創意工夫は失敗に終わってしまいました…………

 

 

 

 

 

 

「お二人ともお帰りぃ……って、スコップどうされやした?」

 

 

 死んでタコ部屋で復活した二人をヒノが出迎えます、どうやらエスケープ能力で帰ってきたと勘違いしている様子。

 

 

「んにゃー! 死んだぁ!!」

 

「上手くいかなかったねぇ……」

 

「あっダメでしたか」

 

 

 二人のスコップは死んで落としました、来週にはダンジョンの養分になっていることでしょう。

 

 まあ熟練経営者のヒノにとって、一回目なんざ失敗して当然です。スムーズに事情聴取をして、改善策を考えます。

 

 

「どんな感じで死にやしたかね?」

 

「空気をボンベに補充できなかったんだよ! 手元から泡が『ボコン!』って出るだけだった!」

 

「しかもマリーが死んだら大量の空気が一気に出て来て、吹き飛ばされて死んだんですよ。なんですかこの人間爆弾」

 

 

 マリーは メガンテを おぼえた!

 

 まあ冗談は置いといて、このままでは燃料採掘ウッハウハ計画がパーです。ぼろ儲けの機会を逃すほどヒノは甘くありません。

 

 

「ふむ、つまりインベントリの中身は「手元にしか出せない」ってワケで?」

 

「そうみたいだねー」

 

「ボンベに手を当ててもダメ?」

 

「どうだろ」

 

 

 運よく持ち帰れたボンベに手を当てたマリーが、空気補充を試みます。

 

 

 シュー……

 

 

「…………ダメそう」

 

「ダメだね」

 

「ダメですねぇ」

 

 

 ダメでした、手元から空気が出てくるだけです。

 

 

「うーむ…………それならいっそ、別の容器を用意した方が良さそうですねぇ」

 

「と、言いますと?」

 

「そうで御座いますねぇ。こう、水中に部屋を出して、その中を空気で満たすような……いや、重すぎると入らないし……木製? でも浮きますしねぇ…………」

 

 

 ヒノがああでもないこうでもないと悩んで、自分の世界に入っていきます。

 

 

「ヒノさん? 大丈夫です?」

 

「水にも弱いし、しかし重すぎるのも…………」

 

「ヒノさーん? 返事してー?」

 

 

 二人の声も気にせず、ヒノは更に悩みます。

 

 

「空気で浮かない……しかし重すぎない…………ヘルメット?

 

 

 

 

 

 

 …………あっこれだぁ!!」

 

 

 何か閃いたのか、ヒノが唐突に叫びました。

 

 

「どひゃぁ!?」

 

「わっ!?」

 

 

 マリーたちは驚いてビクッとしました。しかしヒノは気にもせず、言いたいことをまくし立てています。

 

 

「良いこと思いつきました! ちょっと待っててくださいな!」

 

 

 そう言って部屋の外に走り去ってしまいました、サナダとマリーは呆気に取られています。

 

 

「…………サナダ、あの人大丈夫かな?」

 

「まあ大丈夫でしょ…………多分」

 

「あれくらいならま「お待たせしやしたぁ!!」ひゃぁ!?」

 

 

 一分も経たずに鉄の……布? 布のような何かを抱えたヒノが帰ってきました。あと驚いたマリーはサナダに引っ付いて縮こまっています、かわいいですね。

 

 

「お二人にイイモノを持って来やしたよぉ!」

 

「なんです?」

 

「これこそ【ダルマ落とし】の総力を挙げて行っているレジ袋を作る研究!

 

 

…………の、失敗作です」

 

「失敗作です?」

 

「失敗作なんです」

 

 

 失敗作でした。

 

 

「…………それで、そのメタリックなサムシングは一体何なの?」

 

 

 ショックから立ち直ったマリーがヒノに問いかけます。まだサナダに引っ付いてますけど。

 

 

「ふふん! これは青鉛を特殊な製法でフニャフニャの袋に加工した「金属製レジ袋」です!」

 

「なんですかその物理法則に喧嘩売ってる物品は」

 

「ロビーに不可能は無いんですよ、素材さえあればですけど」

 

 

 モンスターの素材は割と物理法則に反した性質をしています。それをうまく使えば、こういう様子のおかしい品も作れるのですよ。

 

 

「そんなわけで。海中にこの袋を出して空気を溜めれば、問題無くインベントリから酸素を吸えるハズですよ」

 

「あっなるほど、確かにそれならイケそうですね」

 

「ヒノ頭良い! お代は給料から天引きしといてー」

 

「はぁい。まあ不良在庫なので、安くしときやすよぉ」

 

 

 こうして二人の酸素補給問題は無事に解決しました。

 

 覚醒したサナダとマリーの収集効率たるや凄まじく、これからの二人は長い間「燃料採掘の専門家」として、ダルマ落としから重用されることとなります。

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