地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、殺し殺され現代ダンジョン物拾い生活   作:自縛霊

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グッナイ

「ただいマリー」

「おかえりぃ……ナニソレ」

 

 妙な台詞と共に、サナダが自宅に帰ってきました。買ってきたお土産を片手に、ベッドで丸まったミノムシマリーに話しかけています。

 

「ただいまマリー、略してただいマリー」

「それ私が言うべき台詞じゃない? 「マリーちゃんが帰ってきたぞ〜」みたいな感じで」

「確かに、じゃあこの「ただいマリー」はマリーにあげよう」

「わーい。じゃあ私はふて寝するから…………」

 

 マリー は 持ちネタ を てにいれた!

 一通り気の抜けたやり取りをしたマリーちゃんは、布団に頭を突っ込んでまたミノムシに戻ってしまいました。二つ並んだベッドの上でうねうねと悲しみに悶えている様が、なんともシュールです。

 

「わあ……ガチで落ち込んでる時のヤツじゃん。弓を撃てなかったのがそんなショックだったの?」

「うん……目の前の人に"差"を見せつけられたのも相まって、悲しい……」

 

 マリーは悲しみに暮れています。地味にカッコいいと思ってた弓を撃てないショックで、ベッドのフチから落ちそうになってます。

 

「悲しい……悲しい……」

「まあほら、お土産に良いもの買ってきたから。見てよこの「悲しいから……お前も道連れじゃーっ!」どわぁ!?」

 

 そうしてベッドのフチから転げ落ちそうになっていたマリーは、突如俊敏な動きでサナダに飛びかかったのです!

 突如布団ミノムシに飛びかかられたサナダは不意を突かれて床に転がってしまいます。そしてマリーがすかさずその上にのしかかり、自分ごと布団で包んでしまいました。

 

「ふへへっ、一緒にゴロゴロ悶えるがよいわぁ」

「ぐえー捕まったー」

「おらおらー! 一方的に捕獲される気分はどうだー!」

 

 棒読みで降伏したサナダをマリーは容赦なく責め立てます。のしかかった状態で手足をバタバタと振り回し、フラストレーションを全身で表現し始めました。普通に落ちそうだから、サナダが背中に手を回して支えてあげてますね。

 

「んにゃあぁーー!! 悔しい! 悔しー!!」

「うんうん、悔しいね。あと叫ぶなら耳元はやめてね」

 

 耳元に音波攻撃(70db)を喰らったサナダがグッとマリーを押しのけました。マリーが元の位置に戻ろうとしても、背中に回された両腕に捕らえられて動くことができません。

 結局マリーは諦めて、その場でサナダの胸に顔を埋めて呻き始めました。最低限音量に配慮しているのか、口を開かず「んんんんーー!」と鳴き声をくぐもらせています。普通に手足バタバタしてるからサナダにはダメージ入ってますけど。

 

「よしよし、大変だったねー」

「ムーー! ムムンーー!!」

「うんうん、良い子良い子」

 

 サナダが背中をぽんぽん叩いてマリーをなだめています。最初は大暴れして布団をバッサバッサさせていたマリーも、その甲斐あって段々落ち着いてきました。

 一通り落ち着いて身体のポカポカしてきたマリーが、数分ぶりに人の言葉を話します。

 

「うむ、まんぞく」

「そりゃよかった」

「まんぞくしたから、ねる」

「そっかぁ」

 

 マリーちゃん、おねむです。子供特有の眠気体温でポカポカしています。

 面倒見の良いサナダがせめてベッドで寝るようにと、マリーに掴まれたまま立ち上がりました。

 

「ほらマリー、ベッドに入りなさい。床で寝るとバッキバキになるよ」

「はーい」

 

 脱力したマリーはされるがままです。持ち上げられてベッドにポイッと投げ込まれ、かけ布団で封印されました。

 そうして無事に妖怪布団ミノムシを封印したサナダがその場を離れようとしたところ、ベッドから伸びた手がその服をガッチリと掴んだのです。

 

「ん」

「マリー? ちょっとお土産片付けるから離してくれる?」

「んーん」

 

 この一連の流れの間、件のお土産はずっと床に転がっていました。ようやくマリーの寝かしつけを終えたサナダが「よしっ、やっと片付けられる」と手を伸ばした矢先にこれです、わがままお嬢様め。

 

「サナダも、ねろ」

「えー」

 

 不服そうですね、服を掴む手をほどこうとしています。

 

「ぽんぽんして、いっしょに、ねろ」

「えー?」

 

 やっぱり不服そうです。マリーの指を一本ずつ引き剥がして、なんとか自由になろうと頑張ってますね。

 そうしてついに最後の人差し指を引き剥がせた…………次の瞬間には、服の代わりにその両手がガッチリと掴まれました。万事休すとはまさにこのこと。

 

「いっしょ! ねる! んん!!」

「しょうがないなぁ。分かった、これ置いたら寝てあげるから、ちょっと離して」

「はーい」

 

 サナダが諦めた瞬間、さっきまでの抵抗が嘘のようにマリーはあっさりと解放しました。マリーちゃんは現世の強制引きこもり生活のせいで人との交流が少なく、精神年齢が少し低いです。ですから時々こうやって、子供っぽく話が通じなくなくなる時もあります。サナダが甘やかしてる所為な気もしますが。

 そんなわけでマリーちゃんはワガママですから、律儀に戻ってきて横になったサナダへのしかかり、背中ぽんぽんを強要することもできるのです。

 

「大丈夫? 狭くない?」

「んー、ん」

「なら良かった」

 

 サナダとマリーの家ではシングルベッドを二つ並べて、手をつないで寝ています。マリーちゃん曰く「一人で寝るのは心にクる……」らしいですよ。

 そんなわけでシングルベッドに二人を詰め込んだ現状はちょっと窮屈です。しかしマリーちゃんはご満悦、リラックスして気持ちよさそうに微睡んでいます。

 

「マリーはあったかいねぇ、こっちまで眠くなってきた……」

「んー…………」

「そうだね……夏は大変だ……ね…………」

 

 そうしてあっという間に、二人とも夢の世界へ行ってしまいました。幸せそうでなにより。

 

 まあぶっちゃけ探索者は寝る必要ないんですけどね、死ねば寝不足解消されるので。精神疲労とか含めて全快するからマジで24時間働き続けられますよ、メンタルだってバッチリです。

 とはいえ無駄を贅沢と捉え楽しめるのが知的生命体の長所ですからね、こうして存分に昼寝するのもロビーの楽しみ方なのです。

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