地味スキル【荷物持ち】と【逃げ足】による、殺し殺され現代ダンジョン物拾い生活   作:自縛霊

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ミトラ山脈探検隊

「お前らー! 魔法が欲しいかーー!!」

「「おおーー!!」」

「俺も欲しいぞーー!!」

「「俺等も欲しいぞーー!!!」」

 

 祭りです、ロビーにあるギルド【デスマーチ】の拠点で祭りが開かれています。掛け声を上げるギルドマスター、そして追従する大量の参加者たち。彼らはある目的のため、そして集まって騒ぐためにここへ集いました。

 

 

 

 

 

 ことの発端はデスマーチのメンバーが取得した妙なスキルです。彼がミトラ山脈の森林を調査して、未知のモンスターに背中からまるかじりされ復活した後、スキル一覧に【発火】という妙なスキルが追加されていました。

 

『……? 火起こしが上手くなるスキルかな?』

 

 そう思った彼が試しに火起こしを始めた瞬間、不自然なまでの発火が起きたのです。その後検証をした結果、【発火】スキルは触れた物に火をつけるスキル…………つまり、炎魔法だと判明しました。

 

「条件は不明! 同じことしても覚えられなかった! だったら数でゴリ押せばいい!!」

「「行ったれ行ったれ!」」

「100人居れば1人くらいは何か起きるだろ! 行くぞお前らーー!!」

「「行くぞーー!!!」」

 

 参加者の中にはサナダとマリーも居ます。トップギルドの催し物、そして魔法という魅力的な言葉、これらは100人を超すほどの参加者を集め、このミトラ山脈探検隊を形成しました。

 魔法という言葉の持つ魔力はすさまじく、例え実態がマッチの代用品程度でしかないとしても、多くの人を駆り立てます。

 

「ではこれよりミトラ山脈に突入する! 俺の隣に立ってるハナマルが先導するから全速力で付いてくるように!」

 

 そう口にしたや否や、参加者全員が一斉にミトラ山脈へ転移しました。

 

「突撃ぃぃーっ!」

 

 マスターの掛け声と共に一同が走り出します。目指すは山の正反対、麓に広がる森林の奥地です。転移先に熊が出待ちしているようなこともなく、順調な滑り出しです。

 そして探検隊の先頭集団には我らがサナダとマリーもいます。マリーが背中にしがみついてサナダがひたすら走り続ける、王道の逃走スタイルで先頭集団に追随していますね。

 

「魔法かぁ、サナダは魔法欲しい?」

「欲しいなぁ。【逃げ足】の帰還能力も魔法っぽいけど、やっぱ魔法といえば炎が王道じゃん?」

「分かる、やっぱ魔法といえば炎だよね。私も派手に「炎よっ!」とか言ってみたいもん」

 

 魔法といえば炎を飛ばして攻撃するのが王道です、やっぱロマンがありますよ。

 

「帰還能力も便利だけどさ? ダンジョンから逃げる魔法ってゲームだと序盤に覚える簡単な魔法じゃんね」

「インベントリ能力だって要するにRPGの鞄だしねぇ。空間魔法って言えば凄そうだけども、やっぱ派手さが足りんよ」

 

 周囲を手練れに囲まれていることもあって、二人は和気藹々と話しています。先頭集団は脚の速い探索者で構成されており、つまり相応にスキルを鍛えている集団であるということ。熊を見つけるや否や俊敏な動きで両眼を斬り潰し、無力化すればまた前に走り出します。

 そんなわけで、周りが戦っている中まったく戦闘をせず、しかし荷物《マリー》を背負って追随しているサナダは異質というか…………有り体に言って浮いていました。

 ですから、先頭を走るハナマルが急に話しかけてきたのも、その特異な様子に興味を持ったからでしょう。

 

「やっほー。お二人さん、元気そうだね?」

「おかげさまで、二人そろって戦えないから助かってます」

「えっ戦えないの? マジで? そんだけ走れるのに??」

 

 そう、一般的な探索者はある程度バランス良くスキルを鍛えているものです。【剣術】【見切り】【踏み込み】等のスキルは戦闘ついでに鍛えられることもあり、多くの探索者がレベル5程度までは鍛えていますね。決して【荷物持ち】だけレベル10で他は3程度だったり、【逃げ足】レベル10と【暗殺】レベル5以外ロクなスキルが無いような極振りが一般的というわけでは無いのですよ。

 

「マジです、逃げ足スキルだけレベル高いからこうして置いてかれずに済んでます」

「ちなみに私マリーちゃんは荷物持ちスキルばっか鍛えてるよー! レベルは10でサナダとお揃いなんだー」

「ははーん、さては極振りってヤツだな?」

「ですです」「そういうヤツ」

 

 どうやらハナマルは二人に興味を持ったようです、二人ほど極端な能力育成をした探索者を初めて見たのでしょう。そんなわけでハナマルが、二人にこっそりと、わるーい提案をしました。

 

「……ねえ、これはナイショ話なんだけどさ」

「はいはい」

「三人で全力疾走して、行けるとこまで行ってみない?」

「他を置いて行くってことですか?」

「そんな人聞きの悪い~、先行偵察って言ってよ~」

 

 言葉を取り繕おうとも彼が集団行動から外れようとしている事実は消えません、組織の輪を乱すデスマーチの一番槍が二人を説得にかかります。

 

「というのもね、ぶっちゃけ俺らもうすぐ全滅するのよ」

「えぇ……? 本当ですか?」「なんかヤバイモンスターがいる感じ?」

「そうそう、バックアタックの得意なヤツが居るっぽくてね。ウチの精鋭部隊で突っ込んでも姿すら見れなかったんだ」

 

 ミトラ山脈の森は謎が多いです。熊以外のモンスターの姿が見えないこと、ミトラリンゴ以外にロクな食料の無いハズの熊が何故か絶滅せずにいること。開拓の済んだ山頂とは対照的に、麓の森は未だ全容が掴めていません。

 

「そこで俺達の出番ってワケ。俺は【突撃】スキルをレベル10まで上げているから、多分君たちの全速力と並走できる」

「ふむ、察するに【突撃】は速度補正が乗るタイプのスキルなんですね?」

「その通り、【逃げ足】も走ってれば上がる系のスキルだろ? 多分同レベルなら同じくらいの補正が乗るハズだ」

 

 探索者は保持しているスキルのレベルに応じて、身体能力に補正がかかります。例えば【逃げ足】と【突撃】は移動速度が高まり、【荷物持ち】は耐久力に補正がかかりますね。

 つまりこの場においてハナマルとサナダは最も早く移動できる探索者であり、即ち最も遠くまで探索を行えるということでもあるのです。

 

「俺たちなら森の奥にいる謎のモンスターからも逃げられるハズだ、そして二人なら未知の領域まで片方が生きて進めるかもしれない」

「……なるほど、面白そうですね」

「マリーちゃんそのハナシ乗ったよ! 行ってみよう森の奥地!」

 

 そんなわけで三人による森の奥への片道突撃が決定しました。調査隊も熊にヤられて数を減らしてきてますし、そろそろ死に時を考えるべきタイミングです。

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