入学式
一高じゃ私のイカした帽子が被れない。普段は帽子と前髪で隠している二つの右眼ーー緑の目と榛色の目ーーを隠すために前髪をとある方法で固定する。
不満は多いが良いこともある。司波達也の能力を鑑み、俺はレベルIII相当までの現実歪曲、要は物理法則の改変、局所的な物質変換、因果律操作、etc.......を自己判断で使用できる。今まではレベルⅠ相当ですら許可が必要だったからな
一高でもイズは着いて来ることになった。名目上は魔法検知機器を内蔵した新型ヒューマギアの実験ということになっている。目的はもちろん俺の監視だが
母さんはこっちに来ていない。社長業の方*1が忙しいみたいだ。
入学式に来れないことを随分と悲しんでいたが別にそこまでか?と思ったことは内緒にしておく。だって入学式ってそこまでのもんじゃなくない?卒業式ならわかるけど
「確認終わり。行くぞ」
入学式関係の書類、端末、学生証、予備の小物。まぁ確認するほどの物量は無い。
「承知しました」
一高には入学式が始まる少し前、ぐらいのタイミングで着いた。
まぁ司波達也の監視についてはある程度の裁量権を持たされてるし、別に初日から接触する必要もあるまい
イズは保護者席に向かい、そこで別れる。ちなみに事情があってこれない親が映像記録用のヒューマギアを短期レンタルすることはそこまで珍しい事じゃない。自動調理器と合わせて今の時期は結構な稼ぎ時なのだ
講堂に入った瞬間にマルチスコープを発動して空いてる席を見つけ、そこに座る。そういや司波達也ってマルチスコープ感知できたよな。まぁいいか
「ーーはぁ、もう一人が来たか」
マルチスコープにそれが映った。しかもこっちに向かってきてる。なんで?一科生の席は前だぞ?いや、別に決まってるわけではないが
「隣、いいかしら」
「空いてるんならどうぞご自由に」
アンジェリーナ・クドウ・シールズ。原作だと三学期ぐらいに来るはずの女がどうしてこんなに早く来るんだと思ったが、資料読んだら普通に理由が判明した。
コイツ、スターズに入っていないのだ。代わりにハロルドとかいうやつがシリウスになっている。調整体らしいが詳細は不明。別に興味もないけど
「ワタシはアンジェリーナ・クドウ・シールズ。あなたは?」
「ーーアルト。アルト・飛電・クレフ」
「今回は2番だったノヨ?次は負けないケド」
「前に集中したら?」
そういうと同意しながら素直に前を向く。今行われてるのは司波美雪のスピーチだ
入学式が終わり、今はIDが配られている
「ワタシは1-Aだったけど、アルトは?」
「1-Eだ」
そういや工作して司波達也と同じクラスになるようにしたって言われてたな。
そのタイミングでビルドフォンが鳴る。
「失礼。ーーもしもし?どうした」
『アルト!無事に入学できましたか?』
『あぁ、できたよ』
そっからの話はそっちでも頑張ってという励ましと目移りしないようにという注意、それと寂しかったら会いに来てということだった。昨日も聞いた気がするな、これ
別にアポーテーション使える私にとってはだからなんだって距離だし、私が目移りするなんてことはありえない。だって愛梨はこんな私を受け入れてくれる女だし.......ま、こんな色男なら寄ってくる女もいるだろうけどな
今も視線感じるし、ちょうど通話終わったから冷やかしにいくか
「どうした?そんな熱い視線を私に向けて。確かに私は色男だが、そんなに熱い視線を向けられても何も出さないぞ?」
「いや、違うんです。その、」
おぉ、焦っとる焦っとる。そういやコイツ、原作キャラか。柴田美月、クラスも同じだったな
「なになに~?美月。一目惚れ?」
お、またも原作キャラだ。千葉エリカ、そういや原作だと司波達也の隣に座ってたな。ってことはここで司波達也と会うのか
「違います。その、オーラが違くて」
オーラ?EVEパターンのことか。それなら確かに魔法師と私じゃ異なるな。演算領域生やしてるって言っても、生物学的には違うからな。サイボーグのクローン作ったってそいつに機械の腕や足がないようなもんだ
「そういや、アンタおんなじクラスだったわね。名前は?」
「アルト、アルト・飛電・クレフだ。」
「飛電?なのに使ってる端末はライズフォンじゃないんだ」
「まぁな」
私はライズフォン*2とビルドフォンの二台持ちなのだ。
基本はビルドフォンがライズフォンの上位互換だから普段使いはビルドフォン、ライズフォンは仕事用だ
「アンタらは?」
「千葉エリカ。よろしくね」
「柴田美月です。よろしくおねがいします」
「あぁ、よろしく」
「ーーエリカ、美月。彼は?」
来たか、歩く地球破壊爆弾
「アルト・飛電・クレフだ。よろしくな、えっと、名前は?」
「司波達也だ。宜しく」
「達也か。よろしく」
あ、コイツ私のこと知ってるな。飛電是之助の孫が次期社長って話はあるはずだがそれが私ってことは知らないはずだ。多分、軍から聞かされたんだろ。一色家にいるのに三高じゃなくて一高来たのは普通におかしいからな
「つうか、司波?あの主席の親戚?」
「兄だ。あとお前に手を振ってるぞ」
生徒会長たちと話している司波深雪について聞くとそう返される。面倒は御免だし、逃げるか
「私予定あるから。それじゃ」
イズと合流し、そのまま一高を去る。
家へと帰った後、冷蔵庫にポータルを展開して一色家本宅へ、アポーテーションする。
「アルト!どうですか?」
「制服姿の愛梨も綺麗だよ」
12時間ぶりくらいのハグとキスをする。
「制服姿のアルトも素敵ですよ」
「ありがと。愛梨」
いや、今日の目的はこれじゃないんだよ。あとでするつもりだったけど
うちの家墓に花を供え、屈んで手を合わせる。隣では愛梨も手を合わせてる
父さん、爺ちゃん、私は元気に生きてるよ。もう高校生になったんだ。それで、それで..............父さん、殺してごめんなさい。何度謝ったってきっと許してはくれないだろうけど、でも、何度でも謝らせて。父さん、殺してごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。.............
「アルト?」
いくら時間が経っただろうか、嗚咽を漏らしながら泣いていた。心配したのか隣で手を合わせていた愛梨が声を掛けてきた。
「大丈夫ですよ、アルト。あなたは立派な人間ですよ」
そう言って愛梨は私を抱きしめてくれる
「愛梨、でも私は父さんを.......私はダメな人間なんだよ」
「5歳のあなたはそうだったかもしれません。でも、人は変われる。今のあなたは立派な人です」
そう言って右目の涙を手で拭い、前髪を上にあげ、私の、醜い二つの左目から流れる涙を舐めとる
「ーー愛梨!」
抱き返す私のうなじから背中にかけてを優しく擦ってくれる。
温かい。このぬくもりを感じる度に自分は愛梨にふさわしくないんじゃないか、そんな思考が頭をめぐる。
ちがうだろ。愛梨は私を人生の伴侶として選んだ。なら私は、アルト・飛電・クレフは、男として、一色愛梨という女に愛されている者として、ふさわしい人間にならなきゃなんないだろ
「ありがとう。愛梨」
「私が必要になったらいつでも言ってくださいね。あなたは笑ってるのが一番素敵ですから」
「ーーありがとう」
いつまでこうしていたいけど、そろそろ昼食だ。
「じゃあ帰ろっか」
そう言って手を差し出す
「えぇ」
愛梨はその手を取り、一緒に歩きだす
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PHYSICS部門フィールドマニュアル2からの抜粋:装備と器材
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