私が社長でタイプ・グリーン   作:兼永一真

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ハドソン川協定

「ん?」

 

目を開けた先は見知らぬ天井。生きてるってことは成功したっぽいな

 

「痛ってて」

 

上半身を起こしただけでも体が痛い。どっかにぶつけたのか?というかハザードの副作用で意識を失ったせいで終結時の記憶がない。それに、

 

「左腕が、無い?」

 

変だな、どっかに落っことしたか?というか色々と聞いておきたいんだが誰か来ねぇかな

 

示し合わせたように病室のドアが開き、イズと愛梨が入ってきた

 

「あら、もう起きてたの」

「お目覚めですね」

 

「あぁ、今いつ?」

 

「9月22日、1週間は寝ていました」

 

マジかよ。ハザードの強化剤、大量のカック灰、4日間ほぼフルでビルドドライバーを使用、現実改変の使用。ここまでやったとはいえ1週間!?どうなってんだよ

 

「つうか私オーバーフローまで使ったんだけどどうやって解除させたんだ?」

 

「あぁ~、それはね」

「神格実体放逐の際に空間異常に巻き込まれ、バランスを崩してそのまま.......」

 

「落ちたっていうんじゃねぇだろうな?」

 

「.......」

「.......」

 

「言わねぇよな?」

 

この分だと左腕も空間異常に巻き込まれて千切れたな。まぁいいや

 

「それで状況は?多分勝ったんだろうけど」

 

「えぇ、私たちの勝利ですよ。アルト」

 

「悪魔どもは?」

 

ハザード+私の現実歪曲でも計算上はギリだったから悪魔どもの力でバフを盛った。対価は悪魔共とその領域の恒久的な安全。

 

「雇用契約制度及び連邦法とニューヨーク州法を契約内容に盛り込んで復興のための労働力として使用することが2日前に決定しました。同時にそれをGOCが管理する旨を盛り込んだハドソン川協定がUSNAとGOCの間で締結されました。」

 

「OK。まぁ万々歳だな」

 

今回のテロにおける被害状況としては、最終的な次元崩落の侵食はマンハッタン島全域、隣接するブルックリンおよびクイーンズ、ブロンクス、ニュージャージー州ハドソン郡の計720.8㎢に達し、関連して述べ1500万人が異常存在に直接的な影響を受けたと考えられているらしい。

 

「それに加えて、」

 

「どうかしたか?イズ」

 

「悪魔への監督のために現場監督型ヒューマギアの発注がアメリカ政府より多数届いています」

 

「それと、神格実体の終了成功に対して金の神盾に賞されるらしいわ。あと大統領自由勲章も」

 

どちらもエージェント・ウクレレ名義だがだいぶ凄いの貰うな

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2094年12月。マンハッタンクライシスから3か月、順調に復興は進んでいるらしい。

 

結局、無くなった左腕には多数の最新技術を盛り込んだ義手を着けている。違和感は無いし、なかなかいい性能をしてる

 

現実歪曲以外の手数と魔法科高校に入学するためにAランクに相当する性能の仮想魔法演算領域を生やしたし、ついでにマルチスコープもおまけした。

今はそれらを使いこなすための訓練中だ。

 

「そこはこうした方が良いですね」

「あぁなるほど。こうか」

 

身内に十師族がいるというのは本当にありがたい。ん?一色愛梨は十師族じゃないだろって?それがこの世界、GOCとのパイプが欲しかったのか知らんが五輪家に代わって一色家が十師族入りしている

 

「どうだクレッフィー?」

 

「まぁぼちぼち?とりあえずは受かるぐらいの事は出来るようになった」

 

「もっと上を目指しましょう!一色家の婿にふさわしくなるくらいに!」

 

そういや一色家ってどっちが継ぐんだ?長女の有栖姉さん?でも強さでいうなら愛梨なんだよな

 

「努力するよ。そういや将輝、海爆(オーシャン・ブラスト)の進捗はどうよ」

 

「だいぶうまくいってる。多分あと2か月もあれば実用化できるな」

 

原作では2097年に開発される戦略級魔法海爆(オーシャン・ブラスト)。原作じゃチェイン・キャスト*1とかいう今の日本じゃ作れない技術が組み込まれてるがAIを利用した予測演算と奇跡論由来の技術でそれっぽいものを作り上げることに成功した。この分なら来年には日本に新たな戦略級魔法師が誕生する。

 

戦略級魔法師っていえば石動惣一どうしてんだろ。2年間続報がないが、どっかで死んだか?と言うかもう原作との乖離が激しすぎて原作知識があんまり役立たない範囲まで来てる気がする

 

「アルト様、秘匿回線から通信が来ています」

「了解」

 

『エージェント・ウクレレ、新たな任務を与えます』

 

なんか愛梨と将輝も着いてきた。別にいいけど

 

『2095年4月より国立魔法大学付属第一高校へ入学してください。司波達也という男子生徒を監視してもらいます』

 

????????????????????????????????????????????

 

『私が三高じゃなくて一高に行って、その上監視?』

 

司波達也が何者かなんてことは原作知識で知っているが不審に思われないよう理由を聞いておく

 

『監視対象の司波達也は沖縄海戦で戦略級魔法を使用した戦略級魔法師です。性質上あなたと同じような存在なので監視してください。無用な干渉は不要です』

 

そこで通信がきれ、追加資料が送られてくる。

 

ーーOK。一通り読みこんだが知らない情報は無い、唯一の問題は.......

 

「二科生か、二科生ねぇ」

 

一色家の婿として、それはどうなんだ?という気がしないでもない。まぁエージェント・ウクレレであることを公表すれば普通にどうとでもなるか

 

こうして私は地獄への片道切符をつかまされた

 

「アルト様、もう一つ資料が」

「ーーあぁ」

 

ホントだ。なんか他に伝えることあんのか?司波深雪についてとかか?

 

そんなことを考えながら資料を開く

「は?」

 

本日2度目衝撃が私を襲った

 

 

 

『一色家の関係者とUSNAからの留学生?』

 

『ああ、前々から掴んでいた情報なんだが……受験勉強の真っただ中のお前に伝えるべきなのかどうか迷ってな』

 

『わざわざ一高へ。なんとも奇妙な話ですね。』

 

『全くだが、学びにやってくる人間を無下にも出来ん。今ごろ外務省はてんやわんやだろう』

 

『それで任務でしょうか?』

 

『いいや、とりあえず今は何も無い。留学生は『クドウ』の関係者だ。一色家の方は現当主の妻方の血縁らしい』

 

十師族絡みのことで、あれこれと嫌悪を示す少佐なのだ。画面越しの顔に苦渋が滲む。

 

『とりあえずこちらでまとめたプロフィールを送る。恐らく入学試験会場にも来るはずだから、今はそれとなく見てくれれば幸いだ』

 

『了解です』

 

『すまんな達也。人生で重大な時に、こちらの都合の些事や懸念で煩わせて』

 

『お構いなく。実技はどうか分かりませんがペーパーは完璧ですから』

 

実際、本当に今のところは妹の家庭教師までやっているようなぐらいだ。反面、実技は.......芳しくないだろうと思えた。

 

少しだけおどけた風間少佐の敬礼と一緒の言葉に礼を言うと家に備え付けの巨大モニターから消え去る。

 

同時に達也の手持ちの端末に情報が送られてきた。

 

解凍をするとそこには二人の男女のプロフィールが写真つきで存在していた。

 

ソファーに座り込みながらとりあえず今は軽く読んでおく。

 

女子ーークドウの関係者ーーの方はとりあえず写真で見る限りでは美少女。贔屓目無しで自分の妹、司波深雪と双璧を為すぐらいはある。

 

もう一人。男子ーー 一色家の関係者 ーーの方はさっ、と目を通すぐらいで終えておこうとした司波達也だが.......そちらを見た瞬間に息が詰まるのを感じた。

 

一目見ただけで分かった。こいつは異常だ。

 

アルト・飛電・クレフ。年齢は自分と同じなのは当然として、確か飛電インテリジェンスの御曹司で次期CEOだったはずだ。修めている魔法はナーブ・インパルス・ジャミング、奇跡論。前者は一色家の秘伝だったはずだが、後者はなんだ?まぁこれはいい。

 

日本国籍だが、外見はまさしく欧米人と言っていい。だが、父親が日本とフランスのハーフ、母親がイングランド系アメリカ人ということを考えればそこまでおかしくはない。事実、5~10歳までアメリカに居たようだ。だが、そんなことで片付けられない異常を感じた。

 

「……お前は、何者だ?」

 

自然と口を衝いて出た言葉。だが、答えるものなどいるわけがない。このおかしみは何となく師匠、九重八雲を思わせる。少なくともただの魔法師ではないだろうと思えた

 

いくら考えども答えは出ない。しかし、資料を読み込んでいる際にふとした考えが浮かんだ。

 

世界オカルト連合、通称GOC。二年前より表舞台に姿を現した正常性維持機関を名乗る謎の団体、だが各国の対応を考えるに裏の人間ならばある程度知っている名ではあるのだろう

 

一色家は東北に本家を持つ、ならば佐渡侵攻ーーイベント・ペルセポネーーに関わっていてもおかしくはない。それに今年の9月8日から9月25日にかけてUSNAへと出国している。これはマンハッタン次元崩落テロの9月11日~9月20日(始まりから終わり)までUSNAに居たことを意味する。

 

こじつけに近い仮説だが筋は通る。恐らくはこれ以上考えても無駄だろう。資料を閉じる

 

と、同時にリビングに入る戸の横で、一人暴走しがちになっていた妹のフォローに向かわなければいけなくなった。

 

何故わかったかと言えば気配云々以前にリビングが凍りつきそうになっていたからだ。

*1
魔法の発動対象であるエイドス上に元となる魔法とは異なる座標変換・時間変数で魔法式が魔法式を組み立てていく技術。チェイン・キャストは異なる変数が入力された小規模な魔法式を連鎖的に複写することで、空間的に大規模な魔法を発動させることを可能にしている。

この技術は元になる魔法式を複写展開する副次的魔法式の情報量が余りにも膨大であるため、扱う魔法師にも膨大な魔法力が求められる。




次回よりようやく入学編に入ります

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