ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
シュンとカレルの性格、これで合ってたかな…?正直シュンは悪ガキ臭くしすぎて心配になってきた。…
エイジス島は、その名を冠する巨大シェルターと、それを建設するため周囲に無数の大型クレーン等の機械で溢れていて、自動でエイジスを組み上げていく。おそらくこれらの修繕や補助を行う作業員がいるはずだが、ここで働いている人数等は、極東支部の重役でも知らされていないものがほとんど。エイジスに関してはほぼ支部長であるヨハネスの管轄下にあるためだ。
到着した際、思った通りアラガミたちが集まっていた。エイジス計画の要であるため、当然他の支部よりも強力でアラガミを寄せ付けないアラガミ装甲壁がエイジスのドームを覆っているものの、中にはそれをものともせずに近づいてエイジスを食らおうとするアラガミもいる。ツバキの言った通り、アラガミにとってお菓子の家なのだ。
オウガテイルやコクーンメイデン、ザイゴートといった小型種だけではない。中型種のコンゴウやシユウの他、新たな種のアラガミも出現した。
右腕に砲身を宿した人型(と言っても人間そのものの姿であるシオと違って異形さに溢れている)のアラガミだ。それも3体ほど。
『気をつけてください!本部から提供されたデータに照合あり!そいつは新種のアラガミ…「ヤクシャ」!砲身から強力なオラクルの大砲を撃ち放ってきます!』
「了解、ありがとうヒバリちゃん」
ちょうど良いタイミングでヒバリの通信が入る。ならば受けないように立ち回りつつ、あの砲身を破壊してしまおう。
「まずは私とジーナが一発目を入れ、カレル・アリサ・コウタが援護射撃。ヤクシャの砲撃を相殺しつつ動きを封じる。その間にユウ君とソーマはシュンと一緒に追撃を入れてちょうだい!」
第3部隊には隊長が設けられていない。唯一隊長であることがはっきりしているサクヤがその場の全隊員に指示を入れる。
「了解!」「あぁ…」
「っへ、俺一人で十分だっての!」
各隊員たちがサクヤの命令を受け、立ち回り始める。
ヒバリの情報通り、ヤクシャが砲台からオラクルの砲撃を放ってきた。それも一度に3発を前方の三方向に向けて。一撃受けるだけならユウたちもダメージ程度で済むだろうが、何発も喰らえばひとたまりもない。遠距離からの威力を誇るスナイパー神機使いのサクヤとジーナが、ユウたちに最も近づいていた砲撃を一撃で貫き、アサルト神機使いであるカレルとコウタ、そして銃形態の神機でアリサが砲撃に連射することでその威力を弱め、あわよくばそれを相殺する。しきれなかった砲撃については、ユウたちがそれぞれ真っ二つに叩き切ってヤクシャの体を切り裂かんと神機を振るう。
ただ、ヤクシャもただではやられようとはしなかった。ヤクシャを守ろうと、ユウたちが前衛を貼るようにコンゴウやシユウが襲い来て近接戦を挑もうとする。アラガミもまたチームワークを築くことで目の前の獲物をしとめようというのだろう。
「はぁ!」
神機による一太刀が、コンゴウを切り裂く。悶えるコンゴウに向け、直ぐに態勢が整わぬようダメ押しに銃撃がコンゴウに降りかかる。
コンゴウは玉の雨の中で両腕を顔の前でくみ上げて盾にして、弾丸の雨をかいくぐりながらユウたちの方へと突進する。
目も覆い隠しているからスタングレネードも通じ辛いだろう。だが既に目の前が見えなくなった状態で多数を相手に、それは猿知恵ではなく浅知恵に過ぎなかった。
こちらに一直線に向かっていると分かっていたので、ユウたちは一斉に両サイドへ散り、コンゴウの突進を回避する。
銃形態のアリサとコウタとサクヤ三人を援護射撃の体勢を取らせたまま、ユウとソーマの二人はコンゴウに両サイドから同時に捕食形態を展開、左右から神機にコンゴウを食いちぎらせた。
三人はそのまま神機解放モードとなり、強化された身体を持ってアラガミたちへ挑む。
「オラァ!」
シュンの一太刀がザイコートの群れを切り裂く。彼は小柄で身軽な体を持ち、その分だけすばしっこい。ユウやアリサと同じロングブレードタイプの刀身を持つ神機を軽々と振り回しながら、続いてオウガテイルの堕天種やコクーンメイデンをも切っていく。無論そんな彼を食らわんと、一度に何体ものアラガミたちが襲い掛かるが、
「っへ、おっせぇんだよ!」
余裕の笑みと共に彼は一斉に襲い掛かってきたアラガミたちの足元をスライディングして見事に避け切って見せる。その結果、シュンに一斉に襲い掛かったアラガミたちは互いに噛みつきあったり頭突きし合うという、同士討ち状態へと陥った。そこをカレルたちがさらにダメ押しで狙撃して痛めつける。
シュンばかりに出張らせるわけにいかない。ユウとソーマもまた、再び神機を捕食形態に変え、食らいつかせる。
中型種のコンゴウや、シユウ、グボロ•グボロも迫る。
グボロの水砲とコンゴウの空気砲が放たれ、それに続くようにシユウが飛び掛かる。
ソーマが前に立ち、タワーシールドを展開して防ぐ。そこから飛び掛かってきたシユウをカウンター攻撃のパリングアッパーで斬り返そうとした時だった。
「退け!俺の獲物だ!」
「な…!」
シュンがその直前に前に飛び出してきた。しかもソーマの攻撃範囲内、ソーマは飛び出したシュンを見て攻撃を中断せざるを得なくなり、しかもその際にシュンに刃が当たらぬよう強引に刃を押し留めようとした結果、ソーマは自分が振るった神機の重みに引っ張られる形で転倒してしまう。
シュンはちょうどこちらに向かってきたシユウをそのまま迎え入れる形で捕食形態を展開し、神機にシユウを貪り食わせた。そこからすかさずバースト状態を継続したまま、神機でアラガミたちを切り裂いていく。
言葉通りのスタンドプレーであった。確かにノルンのデータベースで語られていた通り剣術の腕は確かなのだが、一緒に戦う仲間のことはあまり考慮していないのが動きで見て取れた。
「あいつ、ソーマの邪魔を…」
『ユウ!』
露骨なチームワームの見出しっぷりに、ユウは眉間に皺を寄せた。その時ポケットの中に隠れているタロウの声が耳に入った。
「ガアアアアアアアアア!!!」
アラガミの群れの中から、一つ飛び抜いた叫び声をあげた個体がいた。叫び声に釣られるように、一同は目の前のアラガミに応戦しつつ視線を叫び声の源へ向ける。
サイズ的には、大型種に属するヴァジュラと同じ程度の、怪獣や合成神獣と比較すると確かに小さいが自分たちと比べると確かに巨大なアラガミがそこにいた。
「どうやら奴が親玉のようだな」
カレルは、今回相手取っているアラガミたちの群れの主と推定する。
「堕天種ザイゴートの変異体かしら?」
同じくそのアラガミを見てジーナも推察する。
黒い卵のようなものに女体が飲み込まれているような姿。それだけならザイゴート…通常の白い女体ではなく黄色い肌の女体であることから、雷属性の堕天種のようにも見えるが、異様なのはそのザイゴート堕天種そのものが、大型アラガミの頭パーツそのものになったような、大型の黒い獣の姿形をとっていることであった。
『みなさん、そのアラガミは合成神獣と思われます!そのアラガミの内部にて、別の生物…スパークドールズの生体反応をキャッチしました!』
このタイミングで、ヒバリからの緊急通信が入る。
スパークドールズ。アラガミがそれを捕食することで合成神獣へと変貌させる、謎に満ちた生きた怪物の人形。アラガミの猛威で荒廃しきった結果、ウルトラマンや怪獣にまつわる記録が一切抹消されているこの世界で、ゴッドイーターたちはそのように認識していた。
「っへ、あれくらいなら楽勝だろ!俺がもらった!」
「ちょ…シュン、待ちなさい!」
真っ先にシュンが飛びついた。後ろから彼を止めるサクヤの声が聞こえるが、彼は合成神獣の姿しか認識していなかった。小型でも合成神獣を自分の手で倒してしまえばその分だけ報酬が自分に割り当てられると邪推したからだろう。
「ああもう。あの子ったらいつもいつも…仕方ないわ、みんな、シュンをサポートして!」
サクヤがやむを得ず、シュンを援護する形で皆に戦闘を継続するように要求した。
他の皆が、突出するシュンに群がるアラガミを倒していく中、ザイゴート堕天種の合成神獣に向かって行く。そんな彼に、大型のザイゴート堕天種?は、自身の周囲に黄色い煙のようなものを巻き起こす。本来のザイゴート堕天種もまき散らしていた、帯電性を帯びた毒ガスだ。ザイゴートはいずれの種も毒ガスをまき散らす。この雷属性堕天種の場合、攻撃力の低下を引き起こしてしまう。
それをこれまでアラガミと戦って来て理解しているはずのシュンは構わず向かって行く。格好の獲物だと見定めたのか、ザイゴート堕天?は毒ガスを吐くのを止め、その口を大きく開く。
その時、彼は待ってましたとほくそ笑みながら、スタングレネードのピンを口で外し、放り投げた。瞬く間にまばゆい光が一帯を包んで視界を塗りつぶす。ザイゴート堕天?もシュンを食らおうと開いていた口も、何より目も閉ざした。その隙をシュンは見逃さず、捕食形態と展開、ザイゴート堕天?の体を神機に食わせた。
その身を食いちぎられたザイゴート堕天の叫び声が響く。この叫び声はアラガミを引き寄せる側面があるのだが、先ほどのスタングレネードのフラッシュが効いて他のアラガミたちも視界を潰されどこへ向かえばいいのかわからず、連携が取れないままであった。
しかもその効果は、シュンが事前にグレネードを使うことを伝えてなかったせいで、ユウたちにも及んでいたのである。これも、手柄を独り占めしようとするシュンの我欲が強く出たせいだろう。
「っつ…あいつ、俺たちの目まで潰す気かよ!」
「っく…!」
辛うじて早くに視力が戻ったコウタが吐き捨てる。その一瞬の間、ユウにも危険が…同じ群れのアラガミの陰に隠れていたことでグレネードの目つぶしを免れた数体のオウガテイルや、グボロ・グボロが迫る。
「ユウ、来てるぞ!」
まだ視力が戻っていないものの、タロウの警告によって反射的にユウは、咄嗟にバックラー・ティアストーンを展開、襲い掛かってきたグボロの突進を受ける。バックラーは盾パーツの中でも一番軽量で展開も早いが、軽減できるダメージも少ない。強い衝撃が盾越しに伝わり、ユウは突き飛ばされる形となる。結果、敵の数がまだ減り切っていないアラガミの群れの方へと放り込まれてしまう。
「ユウ!」
「アリサ、射撃しつつ前進、ユウ君に近づいたら近接型に変形して助けてあげて!後は私たちが射撃で援護するわ」
「はい!」
いち早く気付いたアリサが、すぐにユウが建て直せる隙を作るべく射撃で援護する。サクヤも咄嗟に指示を下し、アリサの後を継ぐ形で狙撃する。
アラガミたちがユウを食らおうと取り囲み、立ち上がろうとするユウに牙を剥くが、
『ウルトラ念力!』
「ガ!?」
彼の服のポケットに隠れていたタロウが、一瞬だけ飛び出して念力をオウガテイルたちに向けて放射、襲ってきたオウガテイルは、目に見えない謎の力によってその動きを鈍らせる。そのおかげでさらにスムーズに、アリサは接近しながらの射撃と、ユウへの接近と同時にロングブレードへ可変した神機の一振りで薙ぎ払うことができた。
「立てますか!?」
「助かったよ!」
アリサの援護もあって余裕をもって立ち上がったユウは、今度は自分の神機を銃形態へと可変し、アリサと背中を合わせる形で共に射撃、周囲のアラガミをハチの巣へと変えていく。群れの数が減ったのを見て、ユウとアリサは今度は捕食形態を展開、ユウは目の前のグボロ、アリサはコンゴウを神機に喰わせてオラクルを吸収、さらに続けて銃形態へと再度変えて、互いに対してオラクルバレットを放出、『リンクバースト』を発動させた。
「行くよ!」「ええ!」
新型神機使いたちの本領発揮の時である。
リンクバーストを発動してからの二人の動きは著しく向上した。次々と迫りくるアラガミをなぎ倒し、打ち払っていく。しかもお互いの動きを意識し合い、決して誤って互いにぶつかるなどと言ったアクシデントもなく、まさに阿吽の呼吸というべきものであった。
「っち、あいつら…」
ちらっとその姿が目に入ったシュンは舌打ちする。ようやく体が温まって調子付いた矢先に、あのように調子に乗られているようでは、こちらの活躍が霞んでしまう。折角の獲物だって減らされ、その分だけこちらの報酬の分け前が下がってしまう。今自分が相手しているこの合成神獣だって、これまで現れた奴らと比べて小型な分、いかにも弱そうだ。この程度の奴でも十分な手柄となりうる。何としても、大物を仕留めて目にものを見せてやらなければ。
だがそのように気を取られている間に、今度はシュンを狙って無数のアラガミが押し寄せる。シュンは神機を構え直して迎え撃とうとすると、シュンを援護するためのものか、スナイパーによる鋭い一射とアサルトによる連射弾が、シュンを狙うアラガミの群れを射貫いた。ジーナとカレルの二人によるものだ。
「シュン、よそ見するな。食われるぞ」
「わーってるっての!」
意地を張って礼を言わずに、再度気を取り直してアラガミたちへ挑んでいくシュンに、カレルはため息、ジーナは特に何も言わなかった。シュンのあの子供っぽい意地はいつものことでもう慣れ切っているのだ。
ユウとアリサの勢いに結果として影響されたシュンは、後輩であるユウたちに対して、認めたくない感情が芽生えていた。劣等感という、負の感情が。
合成神獣は、シュンへの殺意を昂らせ、前足を振り下ろして彼を踏み潰そうとする。踏みつけられる前にシュンは捕食形態を展開し、神機に相手の体を食わせながら、捕食形態の角からエアを噴出、一気に後ろに飛び退く。プレデタースタイルの一つ〈ゼクスホルン〉だ。俊敏さに優れた彼には容易く避けることができた。一気に距離を開いたところでシュンはたまたま近くにあった瓦礫の影に隠れるそれと追ってザイゴート堕天種の合成神獣は追いついて瓦礫の影を覗き見たが、シュンの姿は既にそこになかった。
「ほれほれ、鬼さん手のなる方へ〜♪」
その声で後ろを振り返ると、シュンが手を叩いて挑発していた。ザイゴート堕天種の合成神獣は、変わらずシュンに狙いを定めて何度も踏みつけようと進行する。そんな合成神獣を手玉取るように後退していくと、ちょうど足元に転がっていた黒い缶二つが合成神獣に踏み潰された。その缶を踏み潰したところで、異変が起きた。踏み潰した缶の中から毒煙と電撃が巻き起こり、それに包まれた合成神獣は動きを止め、その場で悶え苦しみ出した。
「へへへ!引っかかりやがったな!ざまぁみろ!!」
イタズラ成功といった感じでシュンは笑った。今のは対アラガミ用のヴェノムトラップとホールドトラップ。その名の通り、近づいたアラガミを蝕む毒を発生させるものだ。瓦礫に隠れて後ろをとった隙に、こっそりトラップを仕掛けていたのである。
「手口が、セコいです…」
「別にいいんじゃないかしら?相手はアラガミだもの。良く言えば堅実的とも言えるから私とカレルは生き延びてる」
アリサはシュンの姑息な戦い方に引いている一方で、ジーナはさほど否定的な見解は見せなかった。
「ははっ、んだよ。合成神獣ってのも案外大したことねぇんだな!おらよ!!」
その間に、シュンは捕食形態を展開し神機をザイゴート堕天?の体に食い込ませ貪らせていく。シュンは勝ち誇ったように笑いながら、そのまま食いちぎらせていき、やがてザイゴート堕天?のコアを神機に飲み込ませていった。コアを奪い取られたこともあり、そのザイゴート堕天の合成神獣は、こと切れて倒れた。
「へへ、どうだお前ら!お前らなんかいなくても、俺一人で合成神獣を仕留めてやったぜ?」
露骨なマウントを取りに、合成神獣の遺骸の上で神機を担ぎながら、他のアラガミたちと交戦中のユウたちを見下ろす。本当のところ、多少の援護射撃を何度かしてるが、その事実を無視して見下してるような視線にユウやアリサ、コウタはカチンときたが、胸ポケットの中から今もこの戦いを見続けているタロウから「よせ、ユウ」と静止の声が聞こえてきて、なんとか堪えた。
「残念だったなカレル。あわよくば俺よりも早くこいつを仕留める魂胆だったんだろうが、そうはいかねぇぜ」
シュンはカレルに対しても同様にマウントをとってくるが、カレルは鼻息でふぅ、と漏らすだけだった。
「ふん…まぁ今回くらいは譲ってやる。お前に貸した金、まだ返してもらってないからな。それに所詮、従来の合成神獣共と比べると、小さい上にお前ひとりでも倒せた、とんだ雑魚だったな。金にはならなそうだな」
「あぁ?負け惜しみかよ」
「ちょっと、戦闘中に喧嘩しないでくださいよ!」
勝ち誇るシュンとそれに対してフンと鼻からため息を出すカレル。アリサが仲裁しようとするが、ジーナが彼女の肩を掴み、微笑みながら首を横に振る。
「いいのよ、放って置いて。さあ、残りのアラガミたちに花を咲かせてあげましょ?」
アラガミの群れたちは、ほどなくして最後に一体のコンゴウを残し、ユウとアリサによって体の両側を食われ、力尽きた。ユウが神機を補食形態に変形させ、コンゴウの骸を食らわせる。
「コンゴウの素材回収っと。探してる奴だといいんだけど」
シオの服に必要なコンゴウの素材は『猿神大尾』。流石にこの場でどんな素材を手に入れたか詳細なことはわからない。ただ、レアものを手に入れたかどうかについては、神機のコア部分の明滅の具合によってわかる。素材の詳細についてはアナグラに帰還してからだ。
「この場じゃわかんねぇの?」
「神機にそこまでの機能はないわ。コアを捕食させた神機を整備班に見てもらって、コアを摘出するの。それでやっと素材の詳細がわかるの」
首を傾げるコウタに、サクヤがそう説明する。旧型の銃型神機使いである二人、当然同じくジーナとカレルには、素材回収作業とは無縁だ。
「ひとまずこの辺りのコンゴウは掃討し尽くした。アナグラに戻って、素材を確認しよう」
「そだな、シオも待たせてるだろうし」
ユウは仲間たちにそういうと、コウタもそう答える。ただ、うっかりシオの名前を口に出してしまった。
「シオ?知り合いかしら」
興味を示してきたジーナがシオの名を口にしたことで、アリサは言葉ではなく目で「コウタ!」と厳しく注意を入れる。やべっとコウタは口を覆う。シオはアラガミだ。サカキの命令によるとはいえ、匿っていることがバレてしまえば大事だ。
「最近知り合った外部居住区のガキだ。犬のようによくはしゃぐ」
コウタのうっかりに呆れつつも、咄嗟にソーマが機転を入れに嘘をついた。
「へぇ、お前にそんな奴がいたなんて思わなかったな」
シュンがソーマに向けて口角を上げる。死神と呼ばれ他者を寄せ付けない彼を、子供も当然のように近寄ってこないだろうと皮肉っているのだ。突っかかってくるシュンに、ソーマはユウたちと分かり合う以前と同様に、どこ吹く風のように無視した。その反応が気に入らなかったようで、シュンは面白くなさそうに舌打ちする。
「ふん、例の合成神獣とやらはさっきの雑魚だけか?さっきから金にならないアラガミばかりだ。『メテオライト作戦』の時に大物が狩り尽くされたか?」
「そう?綺麗な花が咲いていたから私は特に気にしてないけど」
「それはお前だけだ」
カレルもあまり機嫌がよくない様子だ。過去に数えきれないほど討伐したアラガミたちの相手で不満が募っている。とはいえジーナのように戦狂いというわけではない。単に、討伐したところで大した報奨金にならない個体しかいなかったことが不服であった。さっきの合成神獣も大して強くなかった。特徴として現れていたアラガミも堕天種ザイゴート、金になるかどうか怪しいものだ。
一方、タロウも今回の合成神獣について思うところがあったのは同じであった。
(おかしい、合成神獣にしては弱すぎる。素体となった怪獣も小型…おそらく『カンガルー怪獣チンぺ』程度の小型怪獣だ。しかしアナグラのレーダーでは確かに大きなオラクルエネルギー反応を示していたが、今シュンが倒した奴がその発生源とは考えにくい…)
そんな折であった。このタイミングで急遽、ヒバリから緊急連絡が入った。
『緊急事態発生!強大なオラクル反応を探知、合成神獣です!』
合成神獣と言う単語を耳にして、一呼吸おいていたゴッドイーターたちの間に警戒が高まる。
「なんだよ、さっき俺が倒した奴がそうだったんじゃないのかよ!」
『すみません!どうやらもう一体いたようで…おそらくさっきシュンさんが倒した個体とほぼ同じ地点にいたからではないかと…』
通信越しにヒバリに文句を言うシュン。
…が、彼らが辺りを見渡しても、目に入るのはエイジス島の海岸に転がる、次第にオラクルの黒い粒子となって消えていくアラガミの死体の山くらい。
が、異変はすぐに起きた。ユウたちのいるエイジス島全域を、大きな突風が襲った。突然吹き荒れ始めた風に、ユウたちは足をとられてしまう。
「なんだこれ、台風!?」
「見て!」
地面に四つん這いになったコウタが慌ててると、同じ組を屈めたサクヤが海岸の方を指さす。風に靡いて、その方角の海面が大きく波打っていた。それは大きな津波となってエイジスに押し寄せてきた。
「まずい…何かに掴まれ!」
「うおぉ!!」
押し寄せてきた波が、エイジス島ドームの外壁に波打つほどに、ユウたち全員に覆いかぶさった。水とはいえ、大量に浴びせられるとその分だけ大きな比重がかかる上に、水が引く際にそのまま海の方へと投げ出されてしまう。ゴッドイーターたちは互いに手を取り合ったり、手すり等の掴まれる何かにしがみ付いて津波にさらわれないように持ち堪える。
「けほっ、けほっ!みんな…無事!?」
波が引き始めて、ユウが仲間たちに呼びかける。
「うっへぇ…しょっぱ!」
「大丈夫?海水は飲まなかった?」
「うぅ、水着持って来ればよかったです」
津波を思い切り被った影響で、皆服がぐしょぐしょだ。それぞれが水を吸って重くなった服や、舌に染みついた塩の味に辟易している。
「くっそが、ずぶ濡れじゃねぇか。誰のせいだよ」
シュンが上着を雑巾のように絞りながら、ソーマを睨みつけた。お前の呪いのせいだよとでも言いたげに。
ソーマも津波で濡らされ、あまりいい顔はしていない。そうこうしているうちに、海面より大きな顔が現れた。
「見たところ、あいつが本当の合成神獣か。となるとさっきシュンが討伐したのは、やはり只の雑魚だったようだな」
カレルが神機の銃口を構える。後ろで「あぁ!?」とシュンが睨みつけるが、カレルはどこ吹く風。ヒバリの情報通り、あれこそがレーダーに探知されていた合成神獣であった。
「だとすると、さっきまでシュンが倒した小型の合成神獣は一体…」
結局先ほどのザイゴート堕天種の合成神獣はなんだったのかが疑問だ。
「津波を起こす能力とあの姿…もしや、シーモンスが素体か!」
「知ってるの、タロウ?」
胸ポケットから顔を出してきて、津波の中から現れた合成神獣の姿を見上げたタロウに、ユウが尋ねる。
「あぁ、私の見間違いでなければ、あの合成神獣の素体となった怪獣は『シーモンス』。津波や嵐を引き起こすことができる」
現れたその合成神獣の姿は、見氷属性堕天種ザイゴートの体の内、黒い卵のような部位が恐竜のような一本角の黒い怪物の顔となっていて、女体部位が怪物の背に仰向けで張り付いて翼を広げているような形であった。
後にその合成神獣は『津波神獣ザイシーモンス』と名付けられた。
ザイシーモンスは海面から顔を出したままドームの方へと近づき始める。その目に見えるのはエイジスのドーム。いずれ起こるとされる終末捕食から人類を守るために建設されたエイジス。世界中の貴重で豊富なアラガミ素材を用いている以上、アラガミでもある合成神獣が餌として狙っているのだ。
「奴を近づけないで!」
エイジスには、シェルター建設用の機器で溢れている。シェルターが破壊されなければエイジス計画も失敗までに至らないとはいえ、機器が一つでも破壊されれば大きな遅延にも繋がる。
銃型神機のサクヤ、コウタ、カレル、ジーナと共に、ユウとアリサも神機を銃形態に変形させ、ザイシーモンスに向けて射撃を開始した。ザイシーモンスに幾度も弾丸が突き刺さり、血飛沫をあげる。だがザイシーモンスは、彼らの射撃に怯むことなくエイジス島へと上陸してしまう。その単眼からは涙が浮かんでいた。
「っへ、泣くほど痛いならとっとと帰ればいいのによ」
シュンがそんなザイシーモンスの姿を小馬鹿にした。
ザイシーモンスの目には、シュンに倒され、オラクルの黒い霧となって消え去っていくザイゴート堕天種の合成神獣の死体が映っていた。
「グルアアアアアアアアア!」
死体が消えると、ザイシーモンスは、轟くような叫びを響かせた。あまりの煩さに、ユウたちは耳を塞ぐ。
その直後、ザイシーモンスは周囲のクレーンや津波で横転していたトラックを蹴飛ばし、破壊活動を開始した。
「いけない!みんな散って!」
サクヤが全員に退避を命じ、ユウたちはそれぞれの方向へ散った。