ULTRAMAN GINGA with GOD EATER   作:???second

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飛べ!シュン(中編)

アラガミ防壁外では、ヒバリの放送通り、先日のエイジス島の任務の時のように合成神獣…ザイシーモンスが接近していた。しかももう一体お供に別の合成神獣もいる。

黒い怪獣にザイゴートが取り込まれているような点や一角獣のような角もあり、その外見はザイシーモンスと似ているが、そちらと違い二足歩行で頭髪のような体毛が後ろ向きに垂れている。

ザイシーモンスの元になった怪獣シーモンスには、夫に当たる怪獣がいた。その怪獣『竜巻怪獣シーゴラス』が、雷族のザイゴート堕天種と融合した合成神獣が、この『竜巻神獣ザイシーゴラス』なのだ。

「ガアアアアアアアア!!」

ザイシーモンスとザイシーゴラスの二体は、聴くもの全てを震えさせるほどの咆哮を上げながら、アナグラに向かって進撃していた。その胸中には、我が子であるザイミニモンスを殺された怒りで満ち溢れていた。ザイシーモンスに至っては、番であるザイシーモンスを傷つけられた怒りもあって、人間に対する憎しみは絶頂に達しようとしていた。その視線の先に、自分たちの子供を奪った人間たちを、その更に先に奴らの住まう家…極東支部を見据えながら。

アナグラにいたゴッドイーターの内、戦闘可能なメンバーが病欠負傷者以外全員揃った状態で迎え撃つ体制にあった。

『各員配置についたな?

奴らはザイゴート堕天種の能力のほか、竜巻と津波を引き起こすことができる。もしアナグラでその能力を使えば、一瞬でこの極東支部は壊滅するかもしれん。

なんとしてでも奴らをアナグラから遠く離れたこの地点で仕留めろ!』

インカム越しにツバキの声が入り、ここであの二体の合成神獣たちを仕留めるように伝える。

「竜巻と津波を引き起こす超大型アラガミ…おいおい洒落にならねぇな」

「だが、教官が仰ったように我々がここで食い止めねば、俺たちが守ってきたもの全てが無に帰るだけだ」

ただでさえ相手は巨体だ。噂の超弩級クラスのアラガミ『ウロヴォロス』もこれくらい大きいのではないだろうか。それだけでも、旧型の近接型神機の自分達にはかなり不利だ。でも引くわけにもいかない。

「わ、私も微力ながら頑張ります!」

タツミとブレンダン、そして二人に続くようにカノンも気を引き締めた。

「さて、あの馬鹿がいない分しっかり稼がせてもらおうか」

「新しいバレットの威力、早く試したいわ」

シュンが不在となっている第3部隊のカレルとジーナだが、こんな時だからこそなのかいつも通りの様子を崩さない。

「皆、今回はソーマとユウ君、そしてシュンもいない。私たちだけでなんとしても合成神獣を倒しましょう!」

「はい!サクヤさん、指示お願いします!」

「ユウたちの分もやってやる!」

アリサは神機をロングブレード『アヴェンジャー』に切り替え、サクヤに指示を仰ぎ、コウタも気合いを入れる。

「タツミ君、ブレンダン君は奴等を陽動して!私たち銃型神機使いは遠距離から奴らの足や目を狙って動きを止める!アリサはタツミ君の援護!状況に応じて神機を切り替えて立ち回って、みんなをバーストさせて!十分なダメージが入ったら、『メテオール』で止めを刺すのよ!」

ユウとソーマ、そしてシュンもいない中、第1、2、3の3部隊のゴッドイーターたちは、合成神獣に向かって迎撃を開始した。

「ほらほら!遠慮しないでいっぱい味わってねぇ!肉片にしてあげるから!」

いつもの温和さから一転して好戦的にブラスト神機からバレットを放つカノン。的が大きい上に二体も相手がいる分、逆に彼女の欠点である誤射癖がカバーされていた。

ブラスト神機の威力はオラクル消費量が大きい分、銃型神機の中で最も威力が高いため、合成神獣たちに対して手応えのあるダメージを与えた。

「ふん、カノンめ。いい具合に調子づきやがる」

カレルもカノンのはっちゃけ具合を見ながらも、アサルト神機で連射を続けた。アサルト神機は単発の威力こそ銃型神機で一番低いが連射性が高く、とオラクル消費量が少ないため扱いやすい。ユウとアリサもその点を好んで銃身をアサルト神機パーツにしている。

「じゃあ、私も一発…メインディッシュ前の綺麗な花を添えましょうか」

ジーナがスナイパー神機で、ザイシーモンスに向けてバレットを撃つ。鋭く突き刺さるだけで無く、まさに花が咲くような爆発がザイシーモンスの体に咲いた。

「そのまま姿勢を崩すなよ!

ブレ公、アリサ!俺たちは足を狙うぞ!」

「了解した!」「はい!」

前衛のタツミ、ブレンダン、遊撃役としてアリサが進撃を開始する。

自分たちに向かってくるゴッドイーターたちに、ザイシーモンスとザイシーゴラスも気づく。我が子を奪ったあの人間の仲間であることを確信。

二大合成神獣はザイゴートから引き継いだ、オラクルのエネルギー弾を口から放ってきた。

「させん!」

それを見たブレンダンが前に出て、タワーシールドを展開する。

「アリサ、ブレ公の影に隠れろ!大丈夫だ。こいつの装甲は簡単にゃ突破出来ねぇ!」

「は、はい!」

銃型に可変し、アリサはブレンダンの影に隠れると、ガン!叩き殴るような振動がブレンダンの神機装甲に行き渡る。ブレンダンはぬぅっと苦悶の声を僅かに漏らしたが、ぐっと踏ん張って耐え抜いた。

「グレネード行くぞ!」

その間にタツミがスタングレネードのピンを外し、合成神獣の方へ放り投げ、強い光が合成神獣らの視界を潰した。

「今だ!」

タツミを筆頭に再び前衛組が飛び出る。

後衛組に合わせてアリサが銃撃しつつの接近で二人を援護して合成神獣たちの動きを止め、三人共に近づいたところで剣形態へ神機を可変させ刃を振るう。

視界が回復した合成神獣たちだが、足元と銃撃による表皮のダメージで動きを止められていた。それに怯んでいる間に、三人は神機に合成神獣の体の一部を喰らわせてバースト状態に移行する。そこからさらに動きの機敏さと攻撃の重さが増していく。

(普通に考えれば、二体の合成神獣を相手に、私たちだけで勝てるとは思えない。でも!)

「みなさん、どうぞ!」

アリサは、適度に銃形態に神機を可変し、オラクルエネルギーを後衛組の方へ譲渡してリンクバーストに移行させ士気向上を図る。

「これって、もしかしてバースト状態!」

「ほう、これが…悪くないな」

「いいわね。体がいい具合に熱くなってきたわ」

旧型の銃型神機は単独でバーストできない。サクヤ以外の後衛組…防衛班の銃型神機使いの三人は初めてのバースト状態に、力のみなぎりに高揚感を覚える。

とはいえバーストしたところで、合成神獣たちと、自分たちゴッドイーターの戦力に覆しようのない戦力差があるのはもはや言うまでもない。だがそれでも人類の守護者として、勝つつもりで意地を見せなければならない。

(ここで一つでも多く、再生が追いつかないくらいのこいつらにダメージを与え続ければ、ユウが戦わずに済む!)

先日の戦いでユウとソーマは入院中だ。もしその状態で変身したとしても体調不良でまともに戦えない。変身した後も体調面の不調が引き継がれるのだとタロウは言っていたから無理はさせられない。

ユウのために。その思いが彼女に力を与えていた。

無論足元にいる虫ケラの如く小さな生き物に邪魔をされて何とも思わないほど、ザイシーモンスとザイシーゴラスは寛容ではない。アリサたちを踏み潰そうと足を振り下ろすが、それもサクヤたち後衛組の射撃で叶わない。

ならばと、二大合成神獣は次の手に出る。口からそれぞれ毒ガスを振り撒き始めた。二体の合成神獣の元になったザイゴート堕天種は、それぞれ氷属性と雷属性の2種。

「まずい!いったん下がれ!」

タツミの指示で前衛組は一時後退、直後に彼らの立っていた場所に抜けて二大合成神獣の毒ガスが充満する。

氷属性ザイゴートは防御力低下、雷属性ザイゴートは攻撃力低下を促す。これを浴びればせっかくのバースト状態も無意味だ。

しかし、この後退は合成神獣たちの狙いでもあった。アリサらが引き下がったところで、ザイシーモンスとザイシーゴラスは互いに向き合って目を合わせると、互いに角を光らせ始める。バチバチと電撃を纏うように光が放たれる。

奴らの今の仕草、もしや…!

「まずいわ!アナグラ、応答して!」

『こちらヒバリ!大変です!合成神獣のオラクル反応が増大しています!』

危機を感じたサクヤがアナグラの作戦室へ通信を入れると、オペレートしていたヒバリからも危機感に溢れた返答が返ってきた。直後に同席していたツバキからも怒鳴るような声が響いてくる。

一同の中に、特に前回ザイシーモンスと戦ったメンバーたちに、次に起こる災厄が浮かび上がった。こうなれば手はひとつしかない。

『サクヤ、メテオールバレットを使え!奴らの角を破壊しろ!』

ツバキからついにメテオールの使用許可が降りた。

「了解!」

サクヤは神機の銃口を即座に合成神獣たちに向け、『METEOR』の文字が刻まれたバレットを神機に装填する。ジーナがその傍で「私が撃ちたかったわ」と呟いていたが気にしない。

以前アリサも使ったこの『オラクルスペシウムバレット』はかなりダメージを与えた一方で、その反動が強いとアリサから感想を聞いていた。

とにかくあの角を破壊しなければ、おそらく…

 

極東支部に、大規模な自然災害が起こる。

 

「メテオール解禁、『オラクルスペシウムバレット』、発し…!」

 

サクヤの神機の銃口から、青白い光線が合成神獣たちに向かって放たれようとした…が、

 

ザイシーモンスとザイシーゴラスの二体の角の輝きの方が早かった。

 

ザイシーモンスが角を光らせると、ザイシーゴラスもまた角を光らせる。

嘆きの平原の竜巻など比較にもならない、怒りの黒い風が吹き荒れ始めた。

 

角の輝きは周囲の空気を冷まし、暗雲をもたらす。その暗雲もまた雷鳴をも轟かせ、風を巻き起こす。

「く、間に合わなかった!」

竜巻が二体の合成神獣によって巻き起こり、サクヤはバランスを保つどころか立つこともままならず、バレットを撃つことができない。

竜巻の勢いは1分もしないうちに勢いが倍増した。かろうじて残っていた廃屋の住居や廃ビルも、竜巻から近い順にバラバラと崩れて瓦礫となって舞い上がり、竜巻へと吸い込まれていく。

その先が光さえも通さないほど真っ黒に染まった、まるで地上にできたブラックホールのような竜巻だった。

「みんな、何かに隠れろ!竜巻から離れるんだ!」

仲間たちに退避を呼びかけ、タツミは早速近くのボロボロのコンテナの影に隠れる。

 全員、なんとか廃屋の陰に隠れることこそできたのだが、外は彼らの隠れている廃屋が、それを吸い込もうと吹き荒れる竜巻によって、いずれ現場のゴッドイーターたちが廃屋や瓦礫諸共竜巻の中へ吹き飛ばされるのは時間の問題であった。

そんな中、カレルは何かを思ったのか、アナグラ…極東支部の防壁の方を見やった。

防壁の内側からも、屋根や板などと言った瓦礫が少しずつ舞い上がり、他にもガス管の破損が原因なのか爆発が起こり、火の手が上がったのを遠目で確認した。

(外部居住区のあの位置は、確かあいつの…!)

「おい、居住区の状態はどうなっている!?」

カレルはすぐさま作戦室のヒバリに外部居住区の状況説明を求めた。

 

 

 

「はい、こちらでも強風によって、既に外部居住区に被害が出ています!現在、一般職員の方々を集めて対応していますが、被害は拡大中です!

みなさんの方は大丈夫ですか?!」

カレルからの通信に対し、ヒバリは外部居住区も被害が大きく出始めていることを伝える。こちらで計測できる現場メンバーのバイタルは正常値のままだが、竜巻で一気に全滅…と言う最悪の事態も予想された。

「くそ、もっと早くメテオールを撃たせるべきだったか?」

ツバキとしては、サクヤたちにジワジワと合成神獣たちにダメージを与えさせてから、メテオールで一気にトドメを指す流れで任務を完了させる魂胆だった。もしメテオールでも仕留めきれなかった場合、メテオールのバレットに対し合成神獣がダメージを回復させるのみならず、2度目以降も万一食らうことがあっても、よりダメージを軽減できるよう適応化する可能性が大きかったためだ。それに今回は二体もの合成神獣を相手にとっている。なるべく一体ずつ確実に仕留めるためにもこの流れを維持する必要があった。だがその慎重な作戦の流れなど、合成神獣がたちの起こした竜巻で脆くも崩れ去ってしまった。これでは攻撃どころか撤退もままならない。

すると、ヒバリとツバキはドドド…と部屋全体の揺れを感じた。

「アナグラが揺れてる…!」

竜巻の影響だろう。彼女たちのいる作戦室も、地震が起きたように揺れ始めていた。ここから距離は十分に離れておいてこの揺れだ。津波を起こすだけあって竜巻の風力は計り知れないほどだろう。それこそ、この極東支部を破壊できるほどに。しかもこのアナグラ…極東支部はやや海に近い位置に点在している。合成神獣がアナグラに近づいた状態で竜巻を起こせば、ここは津波にも飲まれてしまう。

「ツバキさん!」

その一声と共に作戦室の扉が開かれる。ツバキとヒバリが振り返ると、患者服の上からフェンリルの制服を着たユウ、そしてソーマの二人が立っていた。

「お前たち、今は入院中のはずだ。医務室へ戻れ」

二人を見てツバキは追い返すように言った。実際今の二人は顔色がまだ優れておらず、立っていると言っても、杖代わりに作戦室の扉口に手を添えた形だ。手を離したら簡単にふらつく。

「んなこと言ってる場合か。他にこっちへ割ける人員はいねぇんだろ」

「ならお前たちが行ってどうなる?今のお前たちはまだ万全の状態ですらない。死に行くようなものだ。それがわからないお前たちではあるまい」

ソーマも自分たちの出撃を促すが、それでもツバキは許可を下さない。ソーマのいう通り、他に手の空いているゴッドイーターは謹慎中のシュンも含めて自分たち計三人しかいない。このままでは現場にいる皆が最悪の事態となる。

だがツバキの言う通り、アラガミとの戦いは小型種が相手でも命懸け。万全の状態で望んでも死ぬことすらある。だが、だからこそ万全の状態で挑むことは、生存率を高める上でも必須事項。ザイシーモンスの冷凍攻撃をきっかけに高熱を出してる状態でまともに戦えるはずもない。

「ですが、このままだと外部居住区に大きすぎる被害が!」

 ユウのいう通り、このままでは真っ先に外部居住区の大勢の住民たちに犠牲が出る。なら、たとえ病弱であっても自分達がいくしかないではないかと訴える。

「その心意気は買うが、今はお前たち自身の体調を気にかけろ。お前たちを犬死にさせたくはない」

ツバキから出撃許可は降りず、ユウとソーマはやむなく作戦室を後にした。

二人が出ていったのを見て、ツバキはアナグラの館内各地にて勤しんでいるフェンリル職員たちに通信を入れる。

「こちら雨宮。外部居住区の住民の避難状況は?」

『こちら梅津!総員、避難誘導に当たっておりますが現在、避難状況は混乱の一途をたどっています!まだ逃げ遅れた者がいるようです!』

『おい、早く先行けよ!』

『無茶言うな!まだ奥まで入り込めてないんだ!』

『あたしが先よ!レディファーストって言葉も知らないの!』

『わしら老人の方を先に行かせんか!』

『バカ言わないで!子供たちが最優先でしょ!』

『うああああん!パパ、ママ何処おお!?』

通信を受けた職員以外の喧騒が聞こえる。避難状況もよくないようだ。何せなんの前触れもない突然の大嵐。急な大災害に住民たちはそれこそザイシーモンスが起こした津波のような勢いでアナグラ内に押し寄せているだが、彼ら大勢の人々をスムーズに避難させるにはアナグラの入り口は狭すぎる。事実今の通信内でも、現場では我先にと、住民同士の喧嘩も起きているようだ。

外も内も、この極東支部は危機に瀕していると言えた。

ツバキは私情を押さえて規律も重んじている一面もあって、この決断にいささかの躊躇を抱いたものの、この極東支部を壊滅させられては元も子もない。今、このアナグラ内にて戦うことが可能な健康状態のゴッドイーター……現場を除けば一人だけだ。迷いを捨て決断を下す。

「謹慎中のシュンを呼び出せ!」

「はい!こちらヒバリ、シュンさん応答してください!」

ヒバリはツバキに言われた通り、シュンに連絡を入れる。

 

 

 

「おら!退け!」

「押すなよ!」

「痛いじゃない!止めてよ!」

「ヤダヤダ、死にたくない死にたくない死にたくない!」

アナグラの入り口前では、施設前に大勢の外部居住区の住民たちが押し寄せていた。だが、水路の放出口に溜まった流木が堰き止められているように、中々内部への避難が完了していない。既にエントランスは避難民や救護班の者で足場の踏み場も無く、奥へ移動させようにも、支部内の奥まで続くエレベーターも非常階段も、避難希望者たちが多すぎてうまく流れることができない。

外は合成神獣が竜巻を起こした影響で、次々と家屋を吹き飛ばす強風が吹き荒れている。

「お前ら落ち着け!注もーーーーく!!」

パニックに陥る避難民たちに、少年の怒号が轟く。まだ中に入り切れていない避難民たちが目をやると、帽子とグリーンのジャケットを着た少年が仁王立ちしていた。腕輪をしているため、彼がゴッドイーターなのだと誰もがわかった。

シュンだった。謹慎を下され戦うことが許されていない身だが、ならせめてこの緊急事態に対応しようと独断で動いたのだ。

「おい、ゴッドイーターは何してるんだよ!早く外のアラガミをぶっ倒してくれよ!」

住民の一人がシュンに向けて鬼気迫る表情で怒鳴る。気弱な者なら萎縮するだろうが、シュンは元の意地の強さもあって折れなかった。

「ガタガタ抜かすんじゃねぇ!今、防壁の外で俺の仲間たちが体張ってあんたらを避難させようとしてる!

でも、それができてねぇからあんたらの避難が難航してるんだ!!側から見たら状況もわからねぇで押し競饅頭やってるようにしか見えなかったぜ?

いいか!アラガミの餌になりたくないってなら押すな!走れ、喋るな!俺が今言った『お•は•し』をきちっと守れ!そして今俺が言ったおはしを守ることだけを考えろ!それができねぇって言うなら、俺があんたらをアラガミ共の方へ放り込むからな!」

その言い方は、最後の方は脅迫めいたものだった。そのためシュンに向けて怒りを見せた人もいたものの、身体能力の優れたゴッドイーターが相手では自分たちに勝ち目なんてないため、渋々従うしかなかった。

しかし今のやり取りの間にも、竜巻の被害はさらに拡大する。

アナグラの入り口から遠く離れた場所にまで避難民の列が出来上がっており、特に後方においては風にさらわれまいと、近くの建物や鉄骨等にしがみ付く人々もいたが…

「うわあああああ!!」

シュンがちょうど後列の方を見た時、風にさらわれはしなかったが、風で吹き飛ばされたり崩れて倒れだした建物の瓦礫に襲われた者が見えた。しかもよりによって幼い子供だ。強風や恐怖心のせいでその場から動けないその男の子は、その場で縮こまって死を待つしかない。

「っくしょう!!」

やばいと思ったシュンは、俊敏に駆け出し、予想以上の速さで子供の元まで辿り着いた。しかし、離脱するまでの時間は確保できず、背中に押しかかってきた廃屋の壁に伸し掛かられてしまう。

「…ってて…大丈夫か、おい」

「あ、ありがとう…あ、お兄ちゃん血が出てる!」

瓦礫の下、シュンは庇った子供の安否を本人に問うが、逆に自分の頭から血がしたたり落ちている

「心配すんなって。俺は天才のゴッドイーターだぜ?これくらい楽勝…重っ」

なんとか背中に伸し掛かってきた瓦礫を押し返そうとするも、ゴッドイーターであるシュンでもその瓦礫を押しのけるには重すぎたようだ。庇った子供が、この瓦礫の下を脱する駄目のスペースは確保できているが、このままでは自分の体重込みでこの子を押しつぶしてしまう。

「い、今の内に、早く外に出とけ…!」

「でも…」

「早くしろ!俺諸共ぺしゃんこになりてぇのか!?それともあの竜巻の餌食になりてぇのか!?」

シュンの身を案じるあまりその場から動くことを躊躇していた男の子だが、シュンから怒鳴られたことで、どこか逃げるように、でもシュンの言葉を受け止めて、彼の下を走り去ってアナグラへの方へと逃げた。

子供はうまく逃げくれたようだ。が、肝心のこちらは正直よろしくない状況だ。

「ふぬぐぐぐぐぐ…」

自分を押し潰そうとする何百キロもの瓦礫を押し除けようと必死になるシュンだが、瓦礫の重みの方が強すぎて脱出できずにいた。そうしてもたついている間にも、合成神獣たちの起こす竜巻や、合成神獣そのものが極東支部に迫っていた。もう防壁のすぐそばまで接近していた。

 

 

 

 

 

合成神獣たちの竜巻により、ゴッドイーターたちは廃ビルや打ち捨てられたコンテナから出て動くこともままならなくなっていた。

こちらが動けないことをいいことに、ザイシーゴラスとザイシーモンスはアナグラに向けて動き出す。間違いなく防壁内の大勢の人々を襲うつもりだ。

第1部隊は、第3部隊のジーナとカレルと共に近くの廃ビルに避難していた。

「く…そっちは無事!?」

『こちら第2部隊、全員いるぜサクヤさん!』

サクヤが第2部隊の生存確認の通信を入れると、タツミからそれぞれ返信が入る。

「くそ、これでもくらえ!」

サクヤと同伴していたコウタが、ビルの外に向けて銃口を向け、極東支部の方へ歩き出しているザイシーゴラスの角を狙ってバレットを撃った。しかし、彼の撃ったバレットは虚しく風に吹き飛ばされ、合成神獣に当たることなく空振りに終わってしまう。

『だったら私が!』

カノンもコンテナの陰から合成神獣に向けて、豪快な一発を放つ。だが、元より誤射率の高さ、加えて竜巻の風力が影響して、彼女のバレットも空を切った。

「やっぱり風が強すぎてバレットの照準が合わない!」

ビルの内部にも風がやや強めに入り込んでおり、アリサは帽子を吹き飛ばされないように頭を防止の上から押しとどめている。

『うぅ…やっとアラガミを穴だらけにしてやるチャンスだったのに…くそ!』

通信越しに、カノンの悔し気な声が聞こえてくる。この強風下で動けない以上、遠距離型神機でしか攻撃できないが、肝心のバレットも強風でかき消されてしまう。この調子では、残ったオラクルを全て消費して撃っても、アラガミバレットを撃ったとしても、風に吹き飛ばされてしまうだろう。

「困ったわね。どうするべきかしら」

ジーナも撃ちたい衝動こそあるが、攻撃が届かないようでは無駄撃ちだ。次に打つべき手が浮かべようにも浮かばない中、カレルが口を開いた。

「サクヤさん。メテオールのバレットはまだ残ってるか?」

「え、ええ。尤もこれだけの風じゃ、下手に撃つわけにいかないわ」

言われて、メテオールバレットを見せるサクヤ。外の強風と、防壁に向かって行く二体の合成神獣を見て、サクヤは歯噛みする。すると、カレルは次の瞬間予想外な提案を口に出した。

「なら、届く範囲まで近づいて撃つしかないな。

おい、新型。アラガミバレットはまだ残ってるか?」

カレルは、アリサに捕食形態時に取得したアラガミバレットの残弾数を尋ねてくる。

「え、ええ。あの…できればちゃんと名前で呼んでくださいよ」

「いいから、少し寄越せ」

早くしろと強引に迫るカレルに、アリサは何か不満を言いたげにしながらも、アラガミバレットを摘出しそれをカレルに渡した。

「俺が奴らに近づいて撃つ。その間、あんたらは牽制してくれ」

「ちょ…カレル、それは危険よ!」

アリサからバレットを受け取ると、今度はサクヤから強引にメテオールバレットを取り上げ立ち上がるカレル。この竜巻が吹き荒れる中を動く前提の提案に、サクヤは反対する。

『俺も聞いたぜ。カレル、ちとそいつはいただけねぇぞ』

「いくらお金目当てで深追いすることが多いあなたでも、ちょっとらしくないんじゃないかしら?」

通信越しにタツミも反対し、ジーナもやや顔をしかめている。カレルは常に金を欲しており、任務においてもそれが討伐数稼ぎや必要以上の敵の深追いと言う形で表れる。とはいえ、完全な命知らずと言うわけでは決してない。さすがの彼も命と金は天秤にかけられない。命のやり取りに関しては、むしろ自分の方だろうとジーナは思った。

「だったらこのまま竜巻の藻屑になるのを待つか?だったら誰かひとり、少しでも事態を好転できる行動をとるしかない。

とにかく任せたぞ」

「カレル!」

ジーナの指摘に折れることなく、カレルはすぐに飛び出していった。

追うことができなかった。カレルが出たその直後に、風がさらに強まってしまい、行く手を阻んだためにサクヤたちはカレルを止めることができなかった。

 

 

 

バイタル信号の位置が一つ、サクヤたちを表すそれから離れた様子は、作戦室のヒバリにもモニターマップから確認が取れた。

『こちらタツミ!カレルがメテオールを持って突出した!』

「なんだと!?カレル、聞こえるか!?無茶はよせ!」

ツバキからの連絡に、カレルからの応答はなかった。外部居住区の防壁に向かう合成神獣の方へ、カレルのバイタル信号は移動し続けているため、生存は確認できるのだが、同時に合成神獣たちも外部居住区を囲うアラガミ防壁へと後少しまで進行していた。

この状況を即座に終わらせるには、やはりあの合成神獣たちを倒すしかない。だが現場は、奴らの起こした竜巻が影響してゴッドイーターたちですら手の出しようがない。

「シュンさん、すぐにアナグラ作戦室へ来てください!シュンさん!応答してください!シュンさん!」

ヒバリもシュンに何度も連絡を取ろうと必死になっていたが、残念ながら応答はなかった。

「シュンさん!…だめです。やはり応答ありません」

ツバキの方に向き直りながら、ヒバリはシュンからの応答がないことを告げる。

「ええい、シュンまでこんな時に何をやっている…!」

歯噛みするツバキだが、ちょうどこのタイミングでシュンが、子供を庇って河暦の下敷きになりかけていたのである。シュンにヒバリの連絡に応じる余裕などなかった。

 

 

 

突出したカレルは、極東支部から合成神獣たちを引き離すために注意を引こうと、風に飛ばされぬよう周囲の物陰でやり過ごしながら合成神獣たちの射程距離まで接近した。

ここからなら、バレットが風に飛ばされることもない。すぐさま彼は銃口を向け、連射を開始した。

防壁の一歩手前。あと少しのところで被弾した合成神獣の夫妻は、カレルの方を振り返る。

怒りに震えている感情を露わに、猛獣のような鳴き声を漏らし、そして咆哮を上げると、カレルに狙いを定めて、ザイゴートのオラクル砲を口から放った。

ザイゴートのそれと比べると、巨大化したこともあって圧倒的に大きい。しかしザイゴート程度のアラガミと腐るほど討伐してきたその攻撃は、カレルには通じない。彼はオラクル砲の軌道をザイシーモンスたちの視線から推察し、発射と同時に避けてお返しの連射を見舞う。

回避したオラクル砲は、カレルがついさっきまで立っていた場所の地面を抉り取っていた。避けることは不可能ではないが、いずれスタミナが切れたところを狙われれば、自分は肉片も残さずに消し飛ばされるだろう。

カレルは、アリサから受け取ったアラガミバレット『フリーズショット』を装填し、ザイシーモンスに向けて放つ。

「ガアア!」

フリーズショットは、ザイシーゴラスのベースとなった氷属性ザイゴート堕天種から採取できるバレット。名前の通りザイシーモンスの動きが鈍り出し、風もそれに影響されてか、若干風力が落ちた。

「よし、今…」

今だ!とメテオールバレットを装填しようとしたその時であった。カレルは直後に、まばゆい光を受け。その一瞬でカレルの意識はあっさりと途切れた。

間を置いた後、ゴロゴロゴロと夕立のような雷の音が、カレルの倒れた地点より空に轟いた。

『カレル、大丈夫!?今そっちに雷が落ちたみたいだけど…カレル?カレルどうしたの!?返事をして!』

『カレルさん!?』

『おいカレル、生きてんのか?返事をしろ!おい!』

一瞬で体のあちこちが黒いすすのような汚れを帯びていたカレルだが、聞こえていたはずの雷鳴にも、インカムの向こうに聞こえる仲間たちの声にも全く反応することはなかった。

 

 

 

「カレルさん!バイタル危険域です!後退してください!」

モニター上に表示された、各ゴッドイーターたちの内、カレルのバイタルを示すゲージが、一気に底を突こうというほどのギリギリの位置まで減らされていた。ヒバリは通信越しに交代を呼び掛けているのだが、シュンのパターンと同様に返信はなかった。

「少なくとも手傷を負わされたか…あいつめ」

突然深入りしたかと思ったら、結局このざまとは…これも自分の監督不行き届きなのだろうかとツバキは悔やむ。

これではメテオールを使っての逆転どころじゃなくなる。

(こんな時、ウルトラマンが来てくれたら)

流石にお手上げの状況を痛感し、ツバキの手前では口に出せないが、ヒバリはウルトラマンの助けを祈るしかなかった。

 

 

 

作戦室から締め出され、ユウとソーマは、壁に背中を預けてため息を漏らした。

「やっぱ却下されちゃったか」

「無理もねぇか。ツバキはアラガミをぶっ殺すより自分たちが生き残ることが最善としている。リンドウと同じようにな」

彼女が引退するまで共に戦ってきたソーマも、ツバキが今の自分たちを出撃させないであろうことは予測していた。してはいたが、それでも打てる手を打つべきと思って願い出た。

とはいえ、ツバキが指摘した通り今の自分たちは顔が赤く火照っている通り、ザイシーモンスの冷凍によって高熱を発している。今頃医務室で勤務中の医師たちが自分たちを探していることだろう。

「それだけ君たちが心配だということだ」

タロウもユウのポケットから顔を出してそう言う。

「だが、このままじゃ現場にいるサクヤさんたちが危ないことに変わりないよ」

ユウの言う通り、合成神獣たちが起こす竜巻のせいで攻撃するどころか、迂闊に動くことすらままならない。

「それに聞いたところ…今はカレルもまずい状況らしいな。シュンもツバキ君の通信に応答していない。もしかしたら何かあったかもしれないな…」

タロウも、盗み聞きにはなってしまうが、作戦室のヒバリとツバキの会話からカレルの突出とシュンの応答無しとの声が聞こえていた。

サクヤたちが竜巻に巻き込まれてしまうにしろ、その隙に合成神獣たちが極東支部を直接攻撃するにしろ、シュンたちも合成神獣たちの餌食になりかけているにしろ、最悪な状況へ辿る一途だ。

「なおのことまごついてる場合じゃねぇな。

…ユウ、行け」

そう一言言ったソーマを、ユウは見つめ返す。

「いいの?」

「確かにツバキの言うとおり俺らは万全じゃねぇ。だが、ウルトラマンであるお前ならまだ連中とも渡り合えるはずだし、病室から一度いなくなった時くらいの言い訳は。俺から言えば適当にでっち上げられる。

シュンの方は俺に任せろ。あいつは謹慎中で、状況から察して外部居住区にがるはずだ」

ソーマは壁伝いにふらっと立ち上がりながら「さっさと行け」と首を捻る。

「ありがとう、ソーマ」

背中を押された以上、行くしかない。ユウはギンガスパークを取り出す。

「ユウたちのことは私にも任せたまえ」

タロウも、病状のユウを無理に戦わせる以上、バックアップ役を買って出るのだが、それに対しユウは首を横に振った。

「タロウはここにいる人たちを守ってよ。あの竜巻は遠くにいる人たちにも被害を及ぼす。倒壊に巻き込まれる人もいるはずだ。それに今のタロウ、体が小さすぎて簡単に吹き飛ばされるだろうし、かえって危ないよ」

「むぅ…」

人形の姿でも自在に浮遊できるから大丈夫、とは言えなかった。事実ユウの言う通り、あれだけの暴風の中で一定の場所に留まり続けられないことはタロウもわかっていたことであった。

「死ぬんじゃねぇぞ」

「ソーマとタロウも無理しないでね」

ソーマのその言葉を受け、頷いたユウはタロウと共にその場を後にした。

一人残ったソーマは、現場の仲間たちの状況を知ろうと、作戦室にいるツバキたちの声に耳を傾けた。

 

 

 

アナグラ、極東支部の屋上までエレベーターで登ったユウ。この時、カレルの奮戦で一時的に合成神獣たちは竜巻の発動が収まっていた。

だが今はそのカレルが危機に瀕し、現地の仲間たちも竜巻の影響で手出しができなかった以上、すぐに彼の救援に間に合い切れないかもしれない。

ユウは、屋上から防壁外を見やると、ある一点に向けて二体の合成神獣が向かっていくのが見えた。

ユウはすぐにギンガスパークを取り出し、現れたギンガのスパークドールズのライブサインをに差し込んだ。

 

【ウルトライブ!ウルトラマンギンガ!】

 

 

 

雷を落とされたカレルの下へ、ザイシーゴラスが近づく。既に彼の体はザイシーゴラスの影にすっぽり収まっていた。いつでも食らいつくことができるほどに。

案の定、ザイシーゴラスは口を開けてカレルに顔を近づけた。

「止めろおお!」

この時竜巻は一時的に収まっていたものの、カレルを救出するには距離が開き過ぎていた。スタングレネードで視界を潰しにかかっても、遠くで花火をしたような程度の効果しか望めない。

このままカレルが食われるのを黙ってみているしかないというのか。

タツミの声が虚しくこだまし、サクヤたちももうだめだと目を逸らすしかなくなった時、

 

「シュワッ!!」

 

「グゴオオォ!?」

ザイシーゴラスは突如横から現れた巨人に顔を蹴飛ばされた。

ちょうどこのタイミングでサクヤたちもカレルのもとへ追いつく。

「カレル、しっかりして。立てるかしら?」

「っぐ…」

ジーナが彼に向けてリンクエイドをかけると、彼女の体力を分け与えられたカレルは目を覚ました。

「俺は…?」

一体何が起きたのかと思い、体を起こすカレルの目に、全身にクリスタルを埋め込んだ銀色の巨人の背中が映る。

同じくその巨人を見て、仲間たちが口々に待ち望んでいたように叫ぶ。

「ウルトラマン!」

「来てくれたか!!」

救世主の登場。サクヤたちの希望に満ちた視線を受けつつ、ウルトラマンギンガは敵意を向けてくる合成神獣の夫婦に向けて身構えるのだった。

「…借りができちまったな」

カレルはギンガを見て、そう呟いた。

 

一方、アリサだけは反応が違った。

ユウは、アリサたちが出撃してここに来る直前まで、病室で大人しくしなければならない身だったはずだ。

(ユウ…)

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