ULTRAMAN GINGA with GOD EATER 作:???second
「ぐぬぬぬぬ…」
瓦礫の下敷きになりかけた子供を庇い、自身がその瓦礫に押しつぶされかけていたシュンは、頑張ってその瓦礫を押し退こうにも押し返し切れずにいた。
「おい兄ちゃん、大丈夫か!?」
シュンの耳に、瓦礫の外から居住区に住む一般人の男性の声が入る。さっきの子供が、シュンを案じて助けを呼んできてくれたのだろう。
「こ、こんな瓦礫なんざ…アラガミをぶっ飛ばすよりぃ…!」
自身の意地っぱりな性格もあって強がりながら瓦礫を押し返そうとするのだが、瓦礫が背中にのしかかった時、シュンは背骨に響くほどの強い激痛を与えられていたため、力を入れようとするだけで痛みが背中に走ってうまく押し返せず、それどころか背中に限界が訪れて、次第にシュンは瓦礫により一層のしかかってくる。
「おいみんな、全員でこの瓦礫退かすぞ!」
ここままではシュンが押しつぶされてしまうと見て、男性は他の皆に呼びかけると、ほかにも何人か人が集まり、シュンを押し潰そうとする瓦礫を持ち上げようとする。だがシュンが辛うじて支えている状態の瓦礫は、ゴッドイーターではない一般人が少し集まったくらいでは退かすことは難しいものであったようで、数人ほどの大人たちがなんとかシュンを救おうと瓦礫を押すが、それ以上びくともしなかった。
「あんたら、よせって!竜巻に巻き込まれるぞ!」
シュンは彼らに対し、自分の身の安全を優先して避難するように言う。
「あんた、カレルの同僚のゴッドイーターだろ?だったら尚更放って置けるか!」
助けにやってきた一人の男性がそう叫ぶ。どうやら彼はカレルの外部居住区における知り合いのようだ。友人が世話になった借りを返そうと考えてのことらしい。まさかカレルとの縁がこんなところで自分を救いに来るとは思わなかったシュン。
そんなシュンたちの顔に、防壁外から放たれた光が差し込んでくる。シュンは瓦礫をなんとか押し返そうとしつつもそちらに目をやると、二体の合成神獣と対峙する光の巨人の姿が目に入った。
「ウルトラ…マン…!?」
「っぐぅ…もう、だめだ…」
「うわああ!!」
彼が現れたことに気を取られた時、ついに彼らの力の限界が訪れてしまい、シュンや彼を助けようとした大人たちを、瓦礫が一気に押し潰そうと伸し掛かってきてしまう。
しかし、そんな彼らの窮地を救った者がいた。
考える間もほぼないほどの一瞬で危うく押し潰されそうになったシュンだが、急に背中が軽くなるのを覚えた。一瞬時が止まったように呆け、後ろを見ると、ガタン!と大きな音と共に、自分を押し潰そうとしていた瓦礫が、真逆の方向へ倒れていた。
「なにやってんだてめえ」
代わりに立っていたのは、入院中になっていたはずのソーマだった。
「おま…お前こそなんでここにいんだよ!?」
「てめぇを何度もツバキたちが呼びかけてるの聞いてなかったのか?」
どうしてここにソーマがいるのか状況が吞み込めずに動揺を露にするシュンに、ソーマはため息を漏らしながらそう答える。言われてみて自分の通信端末を見ると、ヒバリたちからの未読状態の通知がいくつも並んでいた。さっきまで瓦礫と格闘していたせいで全く気付きもしなかった。
「お前、それを知らせるために…!」
同伴した仲間の大半を死なせることが多い『死神』のイメージが付きまとっていただけに、まさかソーマがそのために自分のもとに来てくれるとは思いもしなかった。
しかもそのソーマは今、自分以上にひどく疲弊しきって息も荒く、顔を赤らめていた。ぐらっと彼の姿勢がふらつく。
忌まわしいP73偏食因子の恩恵で普通のゴッドイーターよりも回復力の高いソーマだが、合成神獣の攻撃による症状はいまだに回復しきれないほど大きかったようで、そんな中での救助活動はより彼の体に負担をかけてしまったようだ。
「おい、大丈夫かアンちゃん?」
「あぁ、悪い」
その場にいた他の大人たちが、ソーマが地面に倒れ込む前に彼を受け止め、肩を貸した。
「さっさとツバキのとこ行ってこい。謹慎中のお前を駆り出すっていってんだ。早くしねぇとまた謹慎が伸びるぞ」
「んだよそりゃ…そ、そんなに俺のことを頼ってたってのか?ったくしょうがねぇなぁ」
明らかに自分でもわかるような不健康溢れた様子で自分に気を遣っている姿が、シュンにはとことん驚きだ。だんだんと理解が追いつき始め、シュンは頭をかいて調子良く笑う。
「ってかお前、熱酷くなってんじゃねぇか?早く病室戻れよ」
「言われなくとも後で戻る。行け」
早くいくように催促するソーマに言われた通り、
シュンはアナグラの方へと走ろうとしたが、一方進んだところで足を止めてソーマの方を振り返る。
「お前…意外といい奴だったんだな」
「うるせぇ。さっさと行け」
「けっ、言われなくてもわーってるっての」
去り行くシュンを見送ると、ソーマのフードの中からタロウが人目に出ないようにひょこっと顔を出してきた。
『ソーマ、他の住民も避難が確認された。瓦礫に埋もれていた人も救出しておいたぞ。後はこの場にいる者だけだ』
「あぁ、俺たちも戻るぞ」
ソーマも外部居住区の住民に肩を借りながらアナグラへと戻るのだった。
「非オラクルの高エネルギー反応出現!ウルトラマンです!」
「今回も来てくれたのか」
作戦室でも、極東地域周辺のマップ上に、高いエネルギー反応が現れたことで、ギンガが現場に出現したことが確認された。
「いや、それよりもヒバリ、現場のメンバーの腕輪信号、バイタルは確認できるか?」
「大丈夫です。カレルさん含め、全員の腕輪信号あり、バイタルも十分です!よかった…」
毎度のように現れるウルトラマンの登場と、現場の仲間の生存に、ヒバリとツバキは安堵する。しかしまだ戦いは続いている。状況が完全に好転したわけではない。
召集にも応答がないシュンは戻る気配すらない。もしや竜巻に巻き込まれたりしたのだろうか。
『ツバキ君、少しいいかい?』
そんな時、サカキが自身の研究室よりリモート通信を切れてきた。
「博士、何か?」
こんな時になんだとツバキは思いながらも、サカキに要件を尋ねる。
『新たな試作メテオールを使って見てはどうかな』
「試作のメテオール?しかし博士、今の状況では、バレットもろくに撃つことが不可能な状況ですが…」
合成神獣たちの起こす竜巻によってこちらは攻撃もままならず、迂闊な離脱行動どころか一歩動くことすらも危険視されている状況だ。それでも試作のメテオールを勧めてきたサカキに、ツバキは耳を疑った。
旧GUYS基地より回収されたデータをもとに、オラクル技術によって開発されたオラクルメテオールだが、当初より問題があった。使用者の安全面と攻撃手段を考慮すると、近接型神機使いのためのメテオールが作れないこと…正確に言えば、近接型神機使い用のメテオールの安全面を考慮した開発イメージすら沸かないことにあった。合成神獣ほどの超大型アラガミを相手取るには、近接戦闘を行うこと自体が、攻撃・回避行動の両方において非常に困難だからだ。とはいえ、銃型神機使いのみで戦わせては残弾数確保のためのオラクルを確保できないデメリットも生じる他、合成神獣ではない純粋なアラガミの中でもっとも大型種とされるウロヴォロスの討伐例もあり、経験を積みさえすれば戦うことは不可能ではない。たとえ合成神獣が現れても結局近接型神機使いを向かわせる他はなかった。
ならせめてと、近接型神機使い用のメテオールのイメージとして、彼らのバースト状態をより強化したものも挙げられたが、それも却下された。討伐率・生存率を向上させるためにもバースト状態は一時的なパワーアップ手段として重宝されてこそいるが、同時にパワーアップした分だけ、ゴッドイーターと神機の双方に過剰な負荷がかかりかえって危険だとされたのだ。
結果、遠距離から敵を攻撃できる遠距離型神機使い用のものしか作れない…はずだった。
『バレットではないよ。近接型神機使い用のメテオールだ』
「近接型用!?」
ヒバリが驚いて声を上げた。
「博士、そのメテオールを使えば、少なくとも今の状況を好転できると?」
『確約はできないが可能性はある。
ツバキ君、今出撃可能な…いや、戦闘行動を行える健康なゴッドイーターは誰が残っているかな?』
「新たに投入可能な人材は…小川シュンです。今特例で謹慎命令を解いてこちらに赴くよう伝えておりますが…」
そのシュンがいまだに戻ってこないのだと伝えようとすると、作戦室の自動ドアが開かれ、そのシュンがようやく現れた。
「遅いぞシュン!何度も連絡したのに何をやっていた!」
「はぁ、はぁ…すんません教官!遅くなっちまった!」
全速力で走ってきたこともあって、肩で息をするほどバテバテであった。
「…まぁいい。シュン、メテオールを装備して出撃しろ」
「は?」
「時間がない、すぐに整備室へ向かうぞ」
突然のメテオールという単語に、シュンは目を丸くしたが、ツバキが有無を言わさずシュンを整備室へと連れて行った。
「デュア!」
ギンガは掛け声と共にザイシーゴラスに組み強いる。
一歩でも極東支部の反対の方角へ押し除けなければ。
力いっぱいに、ギンガは合成神獣を押していく。しかしザイシーゴラスたちも、狙いである極東支部を目の前に引き下がる気はさらさらなく、邪魔者であるウルトラマンを力を合わせて押し返そうとした。その光景は二体一というギンガに不利な相撲試合。
ギンガは、額のクリスタルから光線〈ギンガスラッシュ〉を放ち、至近距離から光線を受けた合成神獣たちは極東支部から反対の方へと転がった。
転がりゆく合成神獣たちに向かってギンガは飛びかかりる。ザイシーモンスの背に跨り、上からパンチやダブルスレッジハンマーを叩き入れる。そんな愛する妻に暴力を振るう輩にザイシーゴラスが角を突き出して突進を仕掛ける。ギンガセイバーでそれを防いだギンガだが、攻撃の手が緩んだところをザイシーモンスが背中をのけ反らせてギンガを背中から振り落とす。
地に転がるギンガに向け、ザイシーモンスが口から冷気の混じった毒ガスを吐き飛ばしてくる。
「ウォァ!?」
自身が体の不調を押したままの変身した焦りもあったのか、ギンガは反応しきれずその毒ガスを直に受けてしまう。
(しまっ…!)
ガスを吸い、さらに体が蝕まれていく。そこを狙ってザイシーゴラスが角を光らせ、雷を雷雲から降らせてギンガの体を痛めつけていく。
ギンガはけだるい体にムチ打って、雷撃の中をかいくぐり、ザイシーゴラスのみぞおちに飛び込むように強烈なタックルを叩き込む。後ろからザイシーモンスが夫を助けようと、角の先をナイフのように突き立てた状態で接近する。
ギンガはその攻撃に対して後ろを振り返りながらその際に回し蹴りを放ち、角で刺される前にザイシーモンスを蹴り飛ばす。
ザイシーゴラスが再び立ち上がってくると、ザイシーモンスと入れ替わる形でギンガに挑みに来て、ギンガの顔面にビンタを入れ、頭をギンガの懐に滑り込ませるように入れてしゃくりあげた。
背中を強打し、すぐに立ち上がれないギンガに、今度はザイシーモンスがのしかかってくる。過度な比重が彼を押し潰そうとする。振り払うようにギンガはザイシーモンスを蹴り上げて押し除けた。
「シュワ!」
ギンガは立ち上がって再度、今現在自分を挟み撃ちの状態で敵意を向けるザイシーモンスとザイシーゴラスの二体に対し身構える。
この極東支部は自分たちの帰る家。そして大勢の人々がこの残酷な世界で生きるための要。絶対に破壊されてなるものか。病弱な体を気力で持ち堪えさせる。
しかし…いつまでもそれは続かなかった。
ピコン、ピコン、ピコン…
戦闘開始からわずか30秒でギンガのカラータイマーが点滅を開始した。それに応じるように、ギンガも、マラソンで何百キロも走った走者のように肩で息をしていた。
それを見過ごさなかった合成神獣たちは、ギンガの正面と背後の双方より挟み撃ちにしながら、冷凍波や雷を振らせてギンガを痛めつけていく。
「どうしたんだよギンガ!?いつもはまだ持ってた方だろ!?」
コウタが声を上げる。
「動きが鈍いとは思っていたが、いったい何があった?」
(やっぱり…)
同じくブレンダンをはじめに仲間たちがギンガの体調不良らしき症状に不安を抱く中、アリサはやはりかと悪い予感の的中を悟る。
皆が心配そうに見つめる中、ギンガはザイシーモンスにとって体をしゃくりあげられ、宙を舞う。病弱な状態では、いつもなら避けられるはずの攻撃にも彼は対処できない。
数回宙に舞い上げられて受け身も取れずに、ザイシーゴラスの足元に落ちた。
しゃくり上げられ、投げ飛ばされ、ギンガは立ち上がることも困難になる程消耗しつつあった。
立ちあがろうと重きなるばかりの体を起こそうとするギンガに、合成神獣たちが執拗に迫る。
勢いよく近づき、掴みかかってきたザイシーゴラスにギンガは対処できず、至近距離から雷撃を受けてしまう。
「皆、ウルトラマンを援護するのよ!」
「了解!」
サクヤは仲間たちにギンガへの援護を命じ、銃型神機の弾丸の乱射が二体の合成神獣に降りかかる。二体が弾幕に包まれたところで、ギンガはでんぐり返しで二体の間から距離を開いた。
再度構え直し二体の合成神獣に応戦しようとするも、毅然と立つこともやっとであった。
ギンガに近づけさせまいと、サクヤ、コウタとジーナ、カレル、カノンの銃撃が合成神獣たちに降りかかる。
「やつらの足を狙う!もういっぺん行くぞ!」
「おう!」「はい!」
タツミもブレンダンとアリサと共に足を狙って近接攻撃を仕掛ける。
またも足やら弾幕による妨害を仕掛けるゴッドイーターたちに、何度もそれを許すまいと、ザイシーモンスとザイシーゴラスは近づかれる前にオラクルの毒ガスを周囲に噴霧した。
「危ない!一旦退け!」
合成神獣の足元に充満する毒ガスを避けるべくタツミたちは一時後退。だが執拗に、合成神獣たちはオラクル砲を放ってきた。毒ガスで弱ったところを仕留めるつもりだったが、タツミたちの離脱が早かったことと、後ろから二体の合成神獣をギンガが襟首を掴んだり首に腕を絡ませて取り押さえたころで叶わなかった。
二体の合成神獣は、タツミたちが後衛組と合流したところでギンガを振り払い、同時に頭突きでギンガを突き飛ばした。
病弱状態でまともに反撃もできず、ただひたすら痛めつけられ、ギンガは限界を迎えようとしていた。
すると、ザイシーゴラスはギンガの方を、ザイシーモンスはゴッドイーターたちの方へそれぞれの方角へ向き直り、角を光らせる。バリバリバリ!と雷を轟かせ、またもあの恐るべき大竜巻が巻き起こり始めた。それも…
(二つ!?)
たった一つだけでも凄まじいのに、二つともなると、それだけでとんでもないことになった。外部居住区の建物がさらに破壊されていき、アラガミ防壁までも風に大きく揺らされ、脆い箇所から次第に崩れ始めた。
「グアアァ!!」
ギンガも竜巻の中に囚われて身動きを封じられてしまう。吹き飛ばされないよう地面に倒れた姿勢のままを維持しようとしたが、そこにザイシーゴラスは毒ガスも竜巻の中に大量に混ぜ込んだ。逃げる間もなかったし、あったとしても体の不調で動くこともままならない。
(い、息が…!それに、体がまた凍り付く…!!)
ギンガはそのガスを吸い込んでしまい、さらに症状の進行が進み、その場で左手で口を押さえ、残った右手で風から身を守るしかなくなった。だが身を守ったところで、彼の体を前回の戦い同様に強烈な冷気が襲い、彼の体を白く染め上げると共に固めていく。
竜巻は今までにない勢いで、ギンガも、ゴッドイーターたちも、そして防壁内の人間たちの全てを吹き飛ばそうとしていた。
ゴッドイーターたちは吹き飛ばないように、またも適当な瓦礫等にしがみついたり神機を地面に突き刺して杭の代わりにするななどのやり方でしのごうとするが、今度ばかりは凌ぎきれそうになかった。ギンガと同様、彼らも合成神獣の夫妻が放出した、竜巻に混ざり込んでいる冷却と感電性の毒ガスを吸ってしまったのだ。
「っく、くそ…!」
「やだ、力が入らない…」
強い冷気と脱力感を覚え、死が迎えに来ようとしているのを予感するタツミとカノン。
「…あぁ、今度こそ、終わりかしらね」
「縁起でもないこと言うなよジーナさん!」
「そ、そうですよ!こんなところで、死ぬわけには…」
生と死の狭間に立つ意識で常に闘いに臨んでいたジーナも、自分にも最期の時がきたことを予感するが、コウタとアリサが抗議する。
そうだ。自分たちにはまだ守りたいものがある。だからこそ神機を手に取りアラガミと戦うのだ。
限界に近づく己の体を奮い立たせ、銃口をザイシーモンスに向ける。だが風が強すぎて照準も合わせることもできなくなった。これではなすすべがない。
(どうすれば…)
アリサの目に、竜巻の中で苦しむギンガの姿が映る。どうすれば良い?ろくにバレットも届かないこの状況下、カレルもどうにかしようと体を張ったが、結果的に徒労になってしまっている。ギンガも変身しているユウが病気であるため満足に戦えていない。
タロウは今何をしているのだろう。彼のことだから人命救助にあたっていることもあるだろうが…
いや、今ここにいるのは自分たちだ。この場にいる自分たちの手でどうにか打開しなければ。だがその自分たちも、竜巻で動きも封じられ、それどころかこの風に混ざっている毒ガスが体を蝕み、もはや打つ手を打とうにも浮かぶことすらできなかった。
…そんな絶望的な状況に、
「うおおおおおおおおおお!!」
極東支部の上から、空を割くような声が響き、そこから一つの流星のような光るものがこの戦場に向けて飛来した。
「なんだ!?」
新たな飛行型アラガミかと一瞬だけ疑ったが、違った。
「ありゃ、シュンじゃねぇか!」
双眼鏡を取り出し、その正体を見たタツミが叫んだ。
飛来した光の正体は、シュンだった。
「空を飛んでる!なんだあれ!?」
コウタも驚きの声を上げていた。
見ると、シュンの体には無数のケーブルで繋がれた、飛行機のウィングのような形状のアーマーが着いたジェットスーツと、口を覆うガスマスクを着て、空を飛び回っていた。
合成神獣の大竜巻に乗りながら高速で移動するシュンだが、そのため危機的状況でありながら今までにない高揚感で満たされた。
「っへへ、良い眺めじゃねぇか。アラガミ共を見下ろせるなんてよ。それに…風に乗るってのも、悪くねぇな…っとうぉお!?」
しかし大竜巻にのっているからこそ、空中でバランスを取りながら飛行するにはかなりの集中力を要した。少し気を抜いてバランスを崩したシュンだが、辛うじて姿勢を整えて、ハングライダーのように飛行を再開する。
『シュン、浮かれてる場合か。少しでも気を抜けば死ぬぞ。風に攫われるか、それとも地に落ちるかでな』
「さーせん…」
通信越しにツバキから厳しくしかられ、調子に乗って落ちかけたこともあって、シュンは心中穏やかではなくなった。
『シュン君、奴らの角を破壊するんだ。奴らはそこから風を起こしたり、それを利用して津波を起こす他、雷雲を呼び寄せる。
とにかく一定の距離を詰めたら、メテオールを使うんだ。あれなら竜巻の風力すら無視することができる。ただし、制限時間は30秒。その10…遅くとも5秒前には地上へ降りたまえ。そのアーマーはメテオールを使用して制限時間を過ぎれば、推進力を失い地方へ落下してしまう』
「りょーかい!」
さらに続けて伝ってきたサカキからの、合成神獣たちの狙うべき部位を示し、シュンは不敵に笑いながら合成神獣たちに向かって飛行を続ける。
合成神獣たちは、シュンの接近に気づき、地上から威嚇してくる。
シュンはそれを見て、ドクンと胸が高鳴る。空を飛んでいることもあって、興奮は確かにあるが、同時に…かつてない恐怖心も胸中に渦巻いた。自分でも不思議なくらいに手が震える。前回の戦いでは全くそんな気はしなかったのに、でも今は…あの巨大なアラガミたちを初めて恐ろしいと感じている。もしかしたら、今度こそ自分はあいつらに殺されるかもしれない。あるいは、他の仲間が傷つくかもしれない。前の任務における自分の失態で、ソーマとユウが病床に伏しているように、もしかしたらもっと最悪な未来が待っているかもしれない。
…否、これはビビっているのではない。寧ろ、大手柄を得る千載一遇の好機に対する高揚感だ。そうなのだとシュンは、本気でそう思い込むことで恐怖心を消し去った。
「っへ。今のうちにほえ面…かきやがれ!」
シュンは接近を試みながら神機を肩に担ぐ。
それを攻撃前の姿勢と見た合成神獣たちは、雷撃やオラクル砲をシュンに向けて放ってきた。
来た!シュンは、キッと目つきを変えると、身につけているジェットスーツの腰に出ているスイッチを押した。
「メテオール、解禁!『ファント…』……
……あぁめんどくせぇ!『超ウルトラハイパーシュンモード』発動だ!」
すると、シュンが身につけているジェットスーツが、黄金色の光を放ち始めた。地上から放たれた合成神獣の雷撃と砲撃が同時に襲い来る。
「シュン!」
避けろと叫ぼうとしたカレル。だが彼の声が届くより先に、雷撃と砲撃がシュンを貫いた。
しかし…
「!?」
あたったと同時に、シュンの姿は霞の如く消えた。
「シュンが、消えた…?」
これには地上で見ていたサクヤたちも、合成神獣たちですら驚愕を露わにしていた。
それだけではない。シュンは再び、先ほど合成神獣たちの攻撃を受けたはずの地点から離れた場所に、金色の残像を残しながら姿を現した。それに対する合成神獣たちの対応も迅速であった。即座に姿を現したシュンに向けて、今度はザイシーモンスが冷凍ガスを吐き飛ばした。だがその攻撃も、シュンが瞬時に姿を消したところでまた空振りに終わる。
「どうなってるんだ?あいつ、あれだけの竜巻の中にいるってのに、竜巻の中を自由に飛び回ってる!」
口に出したコウタもそうだが、コウタ以外の面々も不思議でならなかった。あれだけの大竜巻の中を飛び回ることなど、大型飛行機だってバランスを簡単に崩し確実に墜落するものだ。たかがジェットスーツを着てるだけの人間ならなおのこと。
そんな皆の疑問に答える解説役を、通信越しに会話を聞いていたサカキが買って出てきた。
『驚いてるようだね。その様子だと、今のところうまく稼働しているようだ』
「サカキ博士!?もしかしてあれって!」
『そう、これが旧GUYS基地のロストデータから再現した新たなメテオール「ファントム・アビエイション」だ』
「え?ふ、ファンダミ…?」
「ファントム・アビエイションです」
うまく聞き取れなくて適当な呼び方になったコウタに、アリサがちゃんと一発で聞き取れよと言いたげに指摘する。
『かつてこの星に侵略攻撃を仕掛けてきた数々の宇宙人の円盤のデータを元に、彼らに宇宙船の動きを地球の技術で再現したものさ。
小難しい説明よりも、今シュン君の動きを見れば、その性能はわかるだろう?』
サカキの言う通り、今金色の光を放つアーマー付きジェットスーツを着てるシュンは、突風を全くものともせず、まるで漫画に登場する空を飛ぶ能力を身につけたキャラクターのように空中を動き回っている。言葉通り重力を無視した変幻自在の動きをして、
こんなとんでもない代物がかつてこの星を狙っていたこと、それを見事再現して見せたサカキの技術力に、サクヤたちは改めて脱帽するしかなかった。