王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
白鳥星系第三惑星が解体されていく。何があるかしれた物ではないので、工作艦を用いてこの場で解体することにしたのだ。
敵艦隊は既に追い払ってある。
距離もあるし、規模は四分の一。
サリナス戦線を挟んでこちら側に来る事は不可能だ。
パドフ中将は、陸戦部隊を呼び集めた後は、宇宙空間で待機。切り出されてくる第三惑星のパーツを、工作艦で次々に運び出していくのを見送る。
輸送艦でも大きすぎて入らないので、こうやって分解するのだ。
その後は強力な位相変換シールドが展開されている実験星系に運んで、パデラクスなどが調査する。
期単位で調査が必要だろう。
そういう話もされていた。
DBと、侵略者の指導者の肉体、その周辺は最初に切り出して運び出した。特にDBは絶対に必須だ。
下手にアクセスするとどんなウィルスが出るか分かったものではないので、これも実験星系に運び、隔離してから調査することになる。
パドフ中将は、一連での作戦の被害を聞いて、そうかとだけ応えていた。
撃沈、未帰還艦艇97万隻。
合計の戦死者は一億をまた超えた。
ヴァーグラット戦線の時ほどの被害ではないのは、今回は敵艦隊の攻撃がそれほど苛烈ではなかったこと。
そして、被害の三割が第四艦隊をはじめとする、白鳥星系に突入した前衛艦隊に集中していたからだ。
第四艦隊の損害も大きい。
惑星規模の重粒子砲を何度も受けたのだ。
対策は練っていたとはいえ、それでも耐えきれないほどのダメージだった。
何よりも、陸戦部隊の損害がとにかく大きい。
部隊によっては師団がほぼ全滅した部隊もあったようで。
パドフ中将は口数が少なくなるのを自覚せざるを得なかった。
名将と言われる。
勝利を確実にもぎ取ってきてくれるとも言われている。
だが、今回の戦闘でも、旗艦の半分を持って行かれて、乗っていた兵員の半数が戦死した。
名将と呼ばれても、部下が死ぬのを防げるわけではない。
そういう現実が、パドフ中将の前にある。
「パドフ中将」
「如何しましたか」
声を掛けてきたのはヴァッハー少佐だ。
出来るので、直下の参謀に移した。今後、活躍を見ながら出世させていくつもりである。最終的にはパドフ中将の階級を追い越すかも知れない。
別に構わない。
階級にこだわりはない。
ただ、そろそろ総司令部が、大将になって方面軍司令官となってほしいという話を持ってきている。
こればかりは、断り切れないかも知れない。
「一つ、パデラクスさんから連絡が来ています。 今疲れているだろうから、君から話しておいてほしい、と」
「分かりました。 伝言承りましょう」
「ありがとうございます。 ええと、以前コヴァルライト星系で入手したDBで、興味深いデータが見つかったそうです。 今回のものと合わせると、ひょっとすると何か大きな事が分かるかも知れないと」
「面白い事とは」
しばらくためらった後。
ヴァッハー少佐は言った。
聖地の場所、だと。
「侵略者は母星から見える星を、星座と呼んで一種の神格化をしていた……時代があったようです。 その名残が、回収されたDB類から出てきました。 それらを調査すると、或いはですが、母星がどこにあるか特定できるかも知れません」
「聖地と呼んでいるほどの場所です。 指導者の体がある可能性は高いですね。 しかしながら、指導者は今回の件で、多数の肉体を有し、それらを並列化している事もはっきりしました。 その上あれは……」
多数の脳みそが寄り集まった異形の中の異形。
侵略者という存在、殻を脱ぎ去った怪物の中の怪物。
もはや思考すると言うこと以外には興味をなくし、恐らくは寿命を克服するための措置でもある。
侵略者の母星を落としても。
この戦いは終わらないだろう。
「聖地と呼ぶほどの場所です。 それでも、制圧すれば何かが分かる可能性もあります」
「そうですね。 しかし今回の作戦でも、これほどの被害を出しました。 あるかも知れないで、これ以上戦力を消耗できません。 恐らく今期から来期に掛けては、後方の平定と戦力の補充が最優先されるでしょう」
奇しくもだが。
N176ブラックホール星系にある物質展開機と、兵器工廠の完全掌握が完了したらしい。
此処は比較的前線に近く、此処から大量の新鋭艦や兵器を生産して前線に送り出せるだろう。
勿論天の川銀河中枢にある超巨大ブラックホールに比べると、ささやかな規模に過ぎないが。
「ミラン大佐には、新しい座乗艦が必要ですね」
「それについては、既に手配しているようです。 今回も戦線全域の破綻を防いだ功績もあって、最新鋭艦を出してくれるとか」
「……それが妥当でしょう」
それに、ミラン大佐は特務だ。
これからも危険な任務に出て貰う事になる。
天の川銀河から、侵略者を駆逐しても、大小マゼランなどに逃げられる可能性だってある。
長命種であるパドフ中将はいい。
ミラン大佐の種族新たの民は、精々80期程度しか生きないと聞く。
勿論支援者のテクノロジーで延命とアンチエイジングはなんぼでも可能だが。
ミラン大佐がそれを喜ぶだろうか。
それは分からない。
ミラン大佐は惑星アラタを守りたいと考えてはいるようだが。侵略者には軽蔑の視線を向けても憎悪は向けていないようである。
また、話が分かる相手は、たとえ侵略者であっても敬意を払うようだ。
それを考えると、寿命を延ばしてまで戦いたがるかというと、微妙だろう。
これから、また忙しくなる。
特にあのパデラクスだ。
どうせろくでもない事をすぐに見つけ出して、大騒ぎになる可能性が高い。
それを思うと、パドフ中将も、これからが大変だなとしか思えなかった。
(続)
死闘の末に、ついに敵の中枢を鹵獲することに成功しました。
それはもはや怪物の肉体ですが、それが実際に手に入ったことで、今後大きく戦況を動かすことが可能になったと言えます。
侵略者に破滅が近づいています。
天の川銀河の四割弱を制した勢力の終わりが見え始めているのです。
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