王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
決死の長征作戦、そしてその成果。
それらが一つずつ上がり始めます。
それらは驚くべきものでありながら、やはりと言わざるを得ないものでもありました。
序、上がり始める報告
戦線が安定したことで、状況の変動が止まった。ミランは新しい足になる艦艇が来るまで待機。今の時点で、特務が必要な戦線は存在しないらしい。他の特務にも、長期休暇が出ているようだった。
准将への昇進について話が出たが。
今すぐの話ではないらしい。
支援者の歴史でも数名しかいない特務の准将となると、それだけ人事も重要になるらしく。
ミランとしても、別に地位がほしいわけでもないので。
好きにしてやってくださいとしか言えなかった。
休暇を貰ったので、しばし過ごす。
ハーネイ少尉は、くだんの年が離れた友人と久々に会いに行くつもりらしい。手続きが面倒らしいが、それでも今回の戦績もある。中尉に昇進は確定らしく、それもあって会うことを認められたそうだ。
ハコトとアネカは別に休みを取ってまでする事もないらしい、のだが。
ハコトがアイドルのライヴにいきたいらしく。
アネカもそれにつきあって、ライヴを見に行った。
そういうわけで、一人の時間だ。
しばらく仮の住居である空母の一室で、寝て過ごす。
体を動かさないとなまるとは言うが。
健康診断で、体中無理をしすぎてダメージが蓄積していると出たため、この休暇は休めと命令も受けた。
それなら、休ませて貰うだけだ。
ありがたい話であるし。
ぼんやり横になっていると、連絡。
仕事の内容じゃない。
惑星アラタの情報だ。
ごろごろしながら内容に目を通す。
惑星アラタが牧歌的だった昔の状態に戻りつつある。
だが、高度文明を手に入れたこともあって、これからどうするかを長老達が今決めているようだ。
都市の建設については、支援者が文字通り支援してくれる。
それとは別に、ファーガをテフとともに世話する素朴な生活をしたい者達も当然いる。
支援者としては、新たの民には戦士を供給してほしいし。そうでなければ、何かしらの形で経済を回してもほしい。
それで今、長老を交えて色々話をしているらしい。
いずれにしても、資源の復旧と、自然の回復は順調に進んでいるようだ。ファーガを世話している幸せそうな新たの民の映像を見て、目を細める。
戦意が戻る。
また惑星アラタを襲わせる訳にはいかないのだ。
気力は戻ってきたので、横になって真面目に寝て、体力を戻す。起きたら食事をして、嫌だけど風呂にも入っておく。
そろそろ頃合いか。
訓練に戻る。
巨大な空母のデッキである。
シミュレーションマシンは当然あるし。
ウォーリア四型も、普段の専属ではない別チームが修理と調整を進めてくれていた。
シミュレーションマシンで訓練をして、それで軽く汗を流す。最高難易度で最近はずっとやっているが。
時々やられることはあるので。
それで気を引き締める。
訓練で良かった。
実戦でこうなったら死んでいる。
そう思って、気合いを入れ直す。
それだけだ。
訓練を終えた後、休んでいると連絡が来た。立ち会ってほしい、というものだ。
連絡先はパデラクスだが。
クアーラ議長も同席するらしい。
そうなってくると、かなり重要な情報だろう。
自室から、立体映像会議に参加する。三元帥も全員出ているようである。これは、かなり重要な案件だ。
無言でミランは会議に参加。
どうせ戦闘任務ではないだろう。
流石にここ最近の攻勢で、味方も兵力を休養する時期が来ている。
前線後方の領域を完全制圧する作業はあるが、それは二線級三線級の部隊がやっている。ミランが手を出すことではない。
クアーラ議長が、最初に発言した。
「重要なことが分かったそうですね」
「ええ、ええ! まさにまさに! 侵略者と言う種族がどうしてあの指導者を戴いたのか、分かりました!」
「ほう、どうして分かったのだ」
「新しく得られたDBは、実はセキュリティはガバガバだったのです。 恐らく侵略者の指導者は、あそこまで懐に入られると思っていなかったのでしょうね」
なるほど。
あの傲慢な指導者だ。
それは確かに考えられる話だ。
とりあえず、分かってきたことがいくつかあるという。
「今までも得られていたDBや、アルカラルドの民やアポカラプスの民の情報などからも、侵略者がどうしてあの指導者を受け入れたのかは諸説が上がっていましたが、決定打がありませんでした。 それに決定打が出たことになります」
「分かりました。 具体的な内容の説明をお願いします」
「了解です! こちらを!」
いきなり映像が出始めた。
かなり乱れてはいるが、恐らく侵略者だろう……肌の色は様々だが、確かに緑はいない。アルカラルドの民やアポカラプスの民に姿が似ているそれらが、都市らしい場所を行き交っているのが見えた。
治安はお世辞にも良くないな。
それに都市部は、見かけだけ清潔で、秩序も何もない。
遠くに見えているのは、枯れ果てた土地だ。
「侵略者という種族の母星、「聖地」の様子ですね。 これは彼らが宇宙に本格進出する前の状態のようです」
「この程度の文明ならいくらでもあるな……」
「はい、その通りです。 支援者に参加する前くらいの知的文明の水準がこの程度でしょうね」
パデラクスがつづける。
次に出てきたのは、惑星の大気圏内で核兵器を飛ばし合っている戦争のようだ。情け容赦なく破壊の限りを尽くし、互いに殺し合っている。
「先の映像の直後に起きた事です。 先の映像の時点で、侵略者は母星の資源を食い尽くした上に、200を超える主権国家がもはや取り返しがつかないほど利権が複雑化し、収拾がつかなくなっていたようです。 更に一部の連中が富を独占する状況も続き、何もかもが限界だったのでしょう。 核戦争が始まったと」
「観測していて、核戦争を起こしかけた種族は支援者の歴史でもいくつかありましたね」
「ええ。 宇宙進出する前くらいの知的生命体が手にできるもっとも手軽な破壊兵器が核兵器です。 どうしても用いられるケースは多いでしょう」
学者の一人が、クアーラ議長に説明をしている。
パデラクスが、次の映像を見せる。
荒廃した土地。
かなり映像が乱れているが、この時点で「聖地」の環境は破綻したようだった。
「100億を超えていた侵略者は、核戦争で8億にまで減りました。 生き残った連中は、神に選ばれたから生き残ったという独自の思想に至ったようです」
「核戦争を起こすようなことをしておいて、それが終わってもバカが治らなかったのか」
誰か会議に参加している大将が呆れる。
流石にこの状況を見て、それで反省しないのはどうしようもないとしか言えない。
パデラクスは、それにコメントをしなかった。
「元々核戦争前から侵略者は選民思想が強い種族だったようで、しかもこの核戦争で弱者が淘汰されたと本気で考えたようですね。 それを裏付けるデータがいくつも出ています」
「核の前に強者も弱者もないだろうに……」
「まあその通りですが、彼らはそういう思想に至っていたのでしょう。 そして彼らは、「生き残った優秀な」自分達の中から、更に最高の存在を作り出そうとしたようです」
既に「聖地」の状態は破綻していた。
いくつかの都市を支えるのがやっとの状態。其処に8億の侵略者が詰め込まれていた。
優秀も何も、わずかな物資を奪い合うばかりの侵略者達。
更にそれを、ほんのわずかな一部だけが見下しながら、自分達だけは安全な中で生きている。
当時から侵略者は腐りきっていたようだ。
「そしてアポカラプスの民の伝承にある「怪物」が出現しました。 怪物の映像はことごとく消されていますが、これは姿や名前を意図的に指導者が消して記録したから、のようですね」
「? なぜそのようなことをする」
「彼らの思想では、みだりに名前をつけたり姿を描写すると、神秘性が薄れるというものがあったようです」
「核で星の表面を焼き尽くしておきながら、そんな思想にまだ足首をつかまれていて、それでいながら自分達は選ばれた存在だなどと考えていたのか」
またくだんの大将が呆れるが。
皆が思っていることだ。
代弁してくれているだけと思う。
ミランも横になったまま、続きを見る。パデラクスも、色々と調べた上で、まとめてくれたのだろう。
「稚拙な遺伝子操作技術で、残り少ない遺伝子データから、「優秀な」存在を作り出そうとした計画は、ある意味大成功しました。 10万以上の失敗作が出ましたが、その中にとんでもない成功作が出た。 それが怪物と言われている存在ですね」
「指導者か……」
「ええ。 瞬く間に侵略者の科学技術を習得した怪物は、成体になる前に画期的な理論や技術を次々に開発。 その中には、宇宙進出を可能とするテクノロジーも多数あったようです」
喜んだのは侵略者の上層部だったが。
怪物は彼らの予想の上をいっていた。
成体になった頃には、怪物は多数の侵略者を手のひらの上で転がせるようになっていたのだ。
瞬く間に権力を握った怪物は。
形だけ動いていた議会で瞬く間に議長となった。
議長でありながら、画期的なテクノロジーをいくつも開発して。特に貧困層の絶大な支持を得た。
富を独占していた上層部は、いつの間にか怪物に次々に消されていった。
既に怪物にとっては邪魔でしかなかったのだ。
怪物はあまりにも優秀だった。
やがて、貧困層だった者達が言い出した。
あの方こそ、我らの皇帝にふさわしい。
最高の政治をしてくれる、と。
「侵略者の歴史では、古くに民主制が作り出されましたが、結局専制に取って代わられた歴史があります。 専制は随分と後の時代まで続いていたようですね」
「別に民主制が絶対的に優れているとは言いませんが、この流れは良くありませんね」
「ええ。 そして怪物は皇帝になります」
選挙が行われる。
聖地の皇帝として、怪物を即位させる選挙だ。
それを侵略者誰もが手放しで大喜びしている。殆どの者が、自主的に怪物を選挙で皇帝に押したようだ。
不正する必要さえなかった。
既にこの選挙が行われた時には、怪物を掣肘できる存在などいなかった。
逆らえる上層部はあらかたこの世から離れていたからである。
そして民主的に、皇帝が誕生し。
以降は地獄が始まる。
「怪物改め皇帝が開発したものの中に、例のナノマシンがあります。 この時点ではまだ限定的な性能しか無かったようですが、これを皇帝は万能ナノマシン接種と称して侵略者に投与しました」
「医療を悪用したのか」
「実際あらかたの病気はこれで駆逐できたようですね。 皇帝はそもそもとして、完全管理用のナノマシンとしてこれを自分だけで開発しました。 しかも、この時点で皇帝に異を唱えることは、既に死を意味していました」
既に国家組織の全てが皇帝に掌握されていて。
それらはあまりにもスムーズに動いていた。
だから、無能な自称「優秀な上層部」が動かしていた時代よりも遙かに幸福度が高く、皇帝は大歓迎されていたのだ。
更には皇帝は、完全な支配が確立するまでは、多くの侵略者の前に顔も出し、友好的に接していたようである。
性別関係なく、皇帝を見て皆が大喜びしている。
そういう映像があり、それは合成映像でもなんでもない。
今までの侵略者基準での「美貌」という言葉がかすむほどの容姿を皇帝はしていたらしい。
そして侵略者は、容姿を何より重要視する存在だったのだ。
こうして、完全な支配体制が確立されたが。
一部の人間は、それを察知して、逃げだそうとした。
皇帝は、敢えてそれらを逃がした。
ワープ航法の、最後の実験のためだった。
「完全にデータが一致しました。 このときコロニー船を用いて逃げ出したのが、惑星アポカラプスおよび、アルカラルドⅠの民の先祖です。 ただし皇帝としても、この時点で既に遺伝子改造の類を行えるようになっていて、「犯罪者」の肌を緑色にする事で、一目で分かるようにしていたようですが」
「それで緑肌になっていたのか……」
「しかしよく分からん。 体表面の色がそんなに大事か? 動物ならともかく、知的生命体だぞ」
誰かがぼやく。
支援者の中で暮らしていると、周りが自分と違っているのが当たり前だ。
肌の色なんかで相手を差別するのが理解できなくなる者も多いだろう。特に支援者に長く所属している種族はその傾向が強いようだ。
ミランも毛皮の色や性質で相手を差別する種族ではないから、肌の色で相手を差別することは分からない。
ただ、新たの民も聖人じゃない。
ファーガやテフを虐待する者に対しては、容赦の無い罰と軽蔑が与えられる。それについては知っているので、その考えに近いのではないか、とだけ考える。
更に映像が進む。
アポカラプスの民やアルカラルドの民はもう聖地を離れているし、此処からは彼らが知らない歴史というわけだ。
ともかく宇宙へ進出できるようになった侵略者は。
アンチエイジングをあっさり成功させ、事実上無限の命を得た皇帝の元で、宇宙進出に対する準備を初めて行った。
その過程で、「労働用成体ロボット」が作られた。
それが。
今の侵略者だ。
まだ第一世代だったころの「労働用成体ロボット」は、侵略者と同じく髪の毛があり、性別もあったようだが。既に生殖機能は失っていたようだ。
それを見て、侵略者達は指をさして笑った。彼らの主観から見て、醜かったからなのだろう。
だが、皇帝はこの頃になると、更に計画を進めていた。
豊かな生活を与えて完全に飼い慣らした侵略者を用いて、合法的に選挙で様々な法案を通していったのである。
それらは、基本的な人権をはじめとする、あらゆる全てを奪い去っていくものだったが。侵略者達は、歴史上最高と言われる生活水準の中、その恐怖についに気付くことが出来なかった。
皇帝は、合法的に。全てを得たのである。
別に非合法な手段など必要なかったのだ。強いて言うならば、無能な上層部を始末する事くらいしか、非合法な手段を使わなかったのだ。
そして、侵略者を縛るナノマシンが完成した時。
意思を持つ侵略者は、皇帝にとって用済みとなった。
「改良を重ねたナノマシンは、既に皇帝にとって邪魔な者、不愉快な存在を瞬時に抹殺するためのツールとなっていました。 そして、侵略者全員が、既にそれを体内に摂取していたのです。 健康を得られ、寿命も延びる。 末期では、凄まじい快楽を得られるようにまでなっていたようです。 彼らは進んでナノマシンを摂取していきました。 それが自分の死を招くとも知らずに」
「……」
あまりにも唐突にそれは起きた。
意思を持つ侵略者全部が、まとめて焼却されたのだ。皇帝が使えない、と判断したからである。
彼らは自分が死んだことすら分からなかった。
進んで皇帝の家畜になった彼らは、文字通り用済みになったから「偉大な御慈悲によって」苦痛もなくこの世から消えてなくなったのだ。
そして、皇帝は指導者となった。
統治する民がいないのだから、皇帝ではない。
無能な肉を指導するのだから、指導者だ。
そういう意味であるらしい。
指導者は自分の肉体すら捨てた。
脳だけを培養して、それを際限なく増やした。性能を極限まで増強したのである。脳以外の肉体には、もはや興味すらなかったのだろう。
意識の移設手術は既に完成しており、皇帝はそれを用いて、己の意識を増やした脳みその塊に移した。
そして性能を更に上げるために、脳みそを更に肥大化させていったのだ。
「なるほどな……」
ミランはぼやいていた。
それは聞いているだけで思ったが。
アポカラプスの民が怪物と言っていたのも納得だ。
否。
アポカラプスの民は、まだ怪物の真の姿すら見ていなかったのだろう。
アルカラルドの民の悪意なんて、皇帝に比べれば児戯に等しかった訳だ。
そんな皇帝が、侵略者さえやめた時。
文字通りの怪物の中の怪物が、指導者として宇宙に誕生してしまったわけだ。
アルカラルドの民の底が知れない悪辣さには、ミランは閉口させられたが。
あれは何も特別な集団だった訳ではない。
元から恐らく、侵略者と言う種族はああで。
更には、その中から怪物が出現した、ということなのだろう。
しばらくの重苦しい沈黙の後。
クアーラ議長が、諦めたようだった。
「分かりました。 侵略者と言う種族は、恐らくはあの指導者を打倒しても、一緒に宇宙でやっていくのは難しいようですね」
「DBからは、侵略者の様々な文化が出てきましたが、どれも結局は暴力、性欲、政治闘争によってのみ構成されていたようです。 むしろ知的生命体として振る舞わないことを賛美し、侵略者の全ての行為を肯定することをあらゆる文化で描いていたようですね」
「種族レベルで客観性がないのか。 アルカラルドⅠの連中の狂態は、恐らく侵略者の同祖だった頃から変わらなかったのだな……」
それはある意味絶望だった。
そんな種族がどうして宇宙に出てきてしまったのか。
そしてそんな種族にどれだけの種族が踏み荒らされたのか。
それらの行為すら、「弱肉強食」「適者生存」で肯定する癖に。
自分がされた時は徹底的に反発すると。
そういう種族だったというのなら。少なくとも、一緒にやっていくのは不可能なのだろうとミランは思った。
アルカラルドの民が、こっちを見てレッテルを貼ったりヤジを飛ばしているのを見て、どうしようもない連中だなと思ったが。
侵略者の祖も、ああだったのだろう。もはや救いようがない。
話せる奴もいるにはいるが、例外中の例外だったと言う訳だ。
ため息が出た。ミランには、どうして良いか分からない。
「研究を進めてください。 ある程度研究がまとまったら、また連絡をするように」
クアーラ議長がパデラクスに命じて、会議は終わった。ミランは、どっと疲れるのを感じた。
その存在が、合法的にしかも民主的に侵略者の社会を乗っ取り、更には皇帝になり、指導者になった。
その過程はあまりにも愚かしいものであり、そして侵略者と言う存在は、自分からそうしてしまったという事です。
なおこの過程をみて分かるかと思いますが、指導者にはモデルがいます。無論実在の人物ではなくて、ルで始まってムで終わるあの人です。
あの人が完璧な成功を遂げてしまった世界の末路……とも言えますね。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘