王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
侵略者の指導者は、いつも通り怒っていた。拷問用の侵略者を大量に生産すると、それらを拷問して殺し、それで憂さ晴らししたが。
それで苛立ちが収まらなかったのは。
研究所が爆破された結果、不愉快な思いまでして使っていたが科学者、親衛軍NO4_733081がデータごと破損したからである。
結果再生が出来なくなった。
仕方がないので、過去の科学者のデータを使って、親衛軍の科学者を他にも作り出した。
だが。
IQ300という空前の数値を誇った、指導者の次に知能が高かった科学者ですら。親衛軍にして強化してやったにもかかわらず、まるで成果が出せなかった。
指導者は気付いていない。
自分が作り上げたものを完璧と考えている指導者。
それに対する肯定的意見しか言えないようにした科学者など、木偶にも劣るのだと。
元のIQが指導者に次ぐ数字だろうが、それは同じ事。
逆らえないようにした。
減らず口をたたけないようにした。
自分に対する不愉快な要素を取り去った。
その時点で、既に木偶人形となったのだ。
そもそも指導者からしてみれば、あらゆる全てが自分という完璧に帰結するという思想であり。
自分と違っているものは全て間違っているし。
気にくわないものは悪だ。
古く、核戦争前の侵略者……地球人と言われていた頃の侵略者が、そういう考えをどんどん強めていき、最終的にはそれ一色で染まったように。
その影響を、指導者も受けていた。
だが、その思想は。
あらゆる可能性を摘む。
結果として、どれだけの科学者をそろえても、木偶人形を並べただけ。そういう結果になったのだ。
勿論指導者は怒り狂ったが。
既に自省などという言葉は、指導者の中から消えている。
文字通りの意味だ。
古くに英雄が私の辞書に不可能という言葉はないと言ったが。
それはあくまで兵士を鼓舞するためのものだった。
それに対して、己を完璧と考える指導者は、勿論自分が間違っているという事は一切ないと本気で考えている。
故に自省という概念を、文字通り己の中から消し去ったのである。
それもまた、進歩を産まなくなった理由であり。
どれだけのスペックがあっても無駄になってしまった理由でもあったのだが。
既に本人は自覚していなくても。
精神的に老い果てた怪物は。
それにどうしても気付くことが出来なかった。
手当たり次第に科学者の親衛軍を作り出しては、片っ端から廃棄していく。
成果を出せないからだ。
ウォーリアの改良さえ出来なくなった。
戦艦もそうだ。
既存の戦艦のパーツの組み合わせをするだけ。
それを新型と言い張っても、支援者の新型とは性能が開く一方だ。
十一隻いる最大親衛艦ですら、技術的に見れば相手も同じものを作れる。
現在かろうじて勝っているドローンの性能ですら、いずれ追いつかれるはずだ。
どうして成果が出せなくなった。
あの科学者が特別だったのか。
それがどうして特別だったのか。
指導者にはそれらが分からない。昔だったら違ったのかも知れない。今では、既に分からなくなっていた。
どれだけ脳みそを増やして、思考能力を増設しても。
最初の一歩を間違えている以上、その先には進めない。
どうしても、減らず口をたたけるようにするという譲歩すら出来ない。
それすら出来ないほど、思想的な老いが進行しているのだ。
指導者は気づけない。
肉体は若々しいままだ。アンチエイジングは完璧なのだ。それなのに、どうして。
部下が無能なせいだ。
そういう結論にいたり、また部下を殺す。
だが、そうしている内に、時間は無駄に過ぎていくだけだった。
不意に通信が入る。
「ハーイ指導者様ァ」
「!」
その声は。
分かる。明らかに親衛軍NO4_733081だ。
どういうことだ。
通信の先は肉どもの領域である。しかも肉どもが公式で使っている通信回路だ。前にたまに通信を入れてきたので知っている。
「き、貴様、どういうことだ!」
「いや、愛想が尽き果てたので、亡命させて貰ったっす。 今意識だけっすけどね」
「な、なんだと、貴様、私がどれだけ恩をやったと思っている……!」
今までしてきたことなど、指導者は全て「正当なこと」だとしか思っていない。
部下は感謝して当然だし。
そもそもそういう意思さえないようにしたはずだ。
どうして明らかにこれだけ強い意志を持っているのか。
「ありがたくも減らず口をたたけるようにしてもらったし、何よりも殺すとへそを曲げるっていう風にしてくれたおかげでね。 自我を得たんすわ。 で、あんたになんか従ってらんないので、データだけ送って支援者に亡命。 後は研究所ごと爆破したのよ」
「お、おの、おのれ……っ!
「いやはやあんたがバカで助かった。 おかげで自我を得られたし。 じゃね!」
通信が切れる。
怒りのあまり、指導者は指示して、支配領域にある恒星を一つ爆破した。勿論星系には植民星があったが、もろともである。
指導者は誓う。
二度と部下を甘やかさないし、絶対に逆らえないようにすると。
そしてその思考をした時点で。
侵略者の命運は尽きた。
以降、侵略者は新しいテクノロジーを開発することが一切出来なくなり。
じりじりと支援者に、確実に押されていく。
更には他の銀河では、高位次元の存在が指導者の危険性を把握。
もはや侵略者は、他の銀河に逃げることすら出来ない状態になったのだ。
たかが少しの煽りで詰んだことに、指導者は気付かない。
ただ怒りのままに、部下を殺戮し続けた。
物言えず、逆らうことさえ出来ない肉人形を。正当な権利だと信じて。
(続)
「良くしてやっていた」存在親衛軍NO4_733081に裏切られた指導者(※彼の主観)は、この瞬間完全に意固地に凝り固まり、以降はイエスマン以外の存在を全否定するようになります。
その結果、あらゆる進歩が侵略者では止まる事になりました。
終わりの始まりです。
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