王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
機密にしておく理由もありません。
侵略者の指導者が何者であるのか。
それが全て公開され。支援者に衝撃が走ることになります。
序、公表される邪悪
機密にしておく必要は無い。それもあって、侵略者の指導者が、何をしてきたか。どうして指導者になったのか。
更には今存在する侵略者の全てに、指導者の遺伝子が埋め込まれている。
それらが全て公開された。
連日兵士達が話題にしている。
ミランもどうしてもそれらを聞くことになった。
「指導者の野郎がいかれているのは周知の事実だと思ったが、想像の千倍やべえ奴だったんだな」
「そうでなければこれだけの侵略と殺戮を平気でしないだろ……」
「同感ではある」
「自分の遺伝子を全部の侵略者に仕込むとか、どれだけいかれてるんだろうな……」
兵士達が戦慄している。
多様性の真逆の究極だ。
そしてそれは、侵略者が聖地……古くは地球と呼んでいたそうだが。其処にいた頃から、そうだったらしい。
多様性を口にしながら、自分が決めた多様性以外は認めない。
そういう存在だったらしい。
それらが怪物を作り出した。
侵略者と言う種族は、指導者の私物にされたが。
指導者は侵略者と言う種族の思考の集約点に過ぎず。結局の所、全ては自業自得だったのかも知れない。
とはいっても、奴らの罪業に付き合わされて皆殺しなんて御免被る。
クアーラ議長は、連日法案を通しているそうだ。
それらの法案は、詳細な解説付きで公開される。
誰でも分かるように法案を説明するシステムも確立されている上、催眠学習で誰もが高度な知性を持っているので。
それらについても、誰もが理解できるようになっている。
現状は概ね好意的に受け入れられているようだが。
アルカラルドⅠでの戦闘の結末などを知っていたり、何よりアルカラルド星系に赴任していた兵士は、あまり良く思っていないようだ。
「今の侵略者を滅ぼすのは大賛成だが、指導者のカス野郎に弄くられる前の侵略者を蘇生させて共存を図るなんて断固反対だ! アルカラルドⅠのゴミカスどもと仲良くするのと同じだろ! 絶対に嫌だ!」
そう声高に叫んでいる者もいる。
ハーネイ中尉は別に嫌な顔をしない。
実態を知っているからだろう。
流石に軍で戦歴を重ねているハーネイ中尉に文句を言ってくる兵士はいない。ミランが信頼しているから、もあるかも知れない。
ただ、ミランに意見を言ってくる兵士もいる。
今日も、一人で艦内にいる時に、そんな兵士に話しかけられた。
「ミラン大佐、どう思われます」
「自分もアルカラルドⅠには赴任して戦闘したので、アルカラルドの民がどれだけ腐敗していたかは知っています」
「おお、では……」
「ただ、調べると、アルカラルドの民は、母星から脱出した頃には、侵略者が染まっていた選民思想に足首をつかまれていたようです。 一から侵略者を復活させて、それから催眠学習でまともな倫理観を身につけさせて。 判断はそれからで良いのでは?」
ミランも現地にいたこと。
その上で、そういう結論が出る事。
それを聞くと、兵士も流石に黙る。
アルカラルドⅠに出向いたこともない者が語るのでは説得力も何もなかったかも知れないが。
ミランはアルカラルドⅠの攻略に貢献しているし。
何よりも、あそこで「義勇兵」から背中を意図的に撃たれる経験までしているのである。それで説得力が無いはずがない。
兵士はそうですか、としゅんとするが。
ミランは咳払いする。
「感情で動くより理性で動くべきです。 無論自分も、あの侵略者の指導者は、全部まとめて八つ裂きにしてやらないと気が済みませんが」
「はいっ! 小官もです!」
「ともかく、しばらくは平穏なようです。 鈍らないように訓練しながら、まだ母星を取り戻せていない種族のために頑張りましょう」
敬礼して、それで兵士と別れる。
自室に戻るとアネカが温かい飲み物を入れてくれたので、ありがたくいただく。
しばらくゆっくりしていると、通信が入った。
「こちら第二十三艦隊のケーニス中将だ。 ミラン大佐、今度の作戦任務で一緒になる。 よろしくお願いする」
「こちらこそ、お願いいたします」
ケーニス中将は植物系の種族で、その観点ではコヴァルライトと同じである。
ブリガルドと言われる種族で、乾燥していた惑星に出現した大型の植物知性体で、古くは途轍もなく巨大で、体内に多数の生物のコロニーが存在していたらしい。
現在では大きさはミランと大差なく、ただし動きそのものはゆっくり。
肉体も相当に重いようだ。
思考能力は高いので、専用のロボットに乗って移動する。指揮官として、それなりの数がいる種族であるらしい。
しばしして、辞令が来る。
第二十三艦隊で特務をするように、ということだ。
「準備ができ次第合流します。 それで、どのような任務ですか」
「それがまだよく分かっていないのだ。 そもそも第二十三艦隊自体が、再編成されたばかりでな」
ケーニス中将は、新任の艦隊司令官らしい。
色々な艦隊を歴任してきて、今回中将になったようだが。経歴を見る限り、能力は問題なさそうだ。
とりあえず、戦線の一つで合流することになる。
いくつかの打ち合わせをした後、戦艦オッドフォードで合流地点へ移動。それなりに距離があるので、時間が掛かる。
アネカとハコトと、ハーネイ中尉を交えて、軽く話をする。
「戦線の安定に努めている現状で、新しい任務やて? どうもきな臭いなあ」
「お姉ちゃん、そんな風に言わなくても」
「支援者の指導部は有能ですよ。 今更無為無策の作戦をしたりはしないと思いますが」
「それについては同意します。 古巣がこんなだったら、楽できただろうなって、なんども思いますし」
ハーネイ中尉が同意。
ミランとしては、勿論全面的に支援者を信頼する、とまではいかない。実際支援者にも屑がいるのは知っているからだ。
だが、それでもプラスの方が大きい。
惑星アラタから、兵を無理矢理徴収するとか、高い税金を掛けて虐げるとか、そういうことはしていないのも知っている。
他の星でもそうだ。
税金が高いとか、兵士がぼやいているのは見たことがない。
少なくとも軍規はしっかりしている。
それでも無能な司令官がいるのは、それはもう仕方がないことではあるのだが。
「それよりもハーネイ中尉、しばらくはデリケートな状況になるので、気をつけてください」
「はい、大丈夫です。 ハコトちゃんも大丈夫ですか?」
「ええ。 今のところみなさんに良くして貰っています」
誰にでも丁寧に接するハコトは、どの艦にいても信頼されている。侵略者と同じ姿をしていると言うことで、警戒されることもあったのだが。
今ではそれもない。
ただ、ガルバーリアムにいた頃もそうだったが。オッドフォードに座乗艦が移った今でも。
新入りが、警戒することはあるようだが。
いずれにしても、今は生粋のアルカラルドⅠの出身であるハーネイ中尉の方が心配だろう。
そういう観点では、ハコトの指摘は正しい。
何度かワープを繰り返して、合流地点に急ぐ。
もっとも第二十三艦隊も現在現地に向かいながら編成をしているそうで、状況的にはお互い様だ。
この間、パドフ中将が、ミランに対して。准将になったら、旗艦級戦艦を座乗艦として提供するように掛け合ってくれるという話をしてくれたのだが。
流石に旗艦級戦艦は足が遅い、ということもある。
現在の高速機動戦艦の方が良いと、やんわりと断らせて貰った。
ただ。通常の高速機動戦艦だと、支援スタッフに限りがあるらしい。
高速機動戦艦は性能に特化するあまり内部構造がギチギチで、特に艦載機などの搭載量に問題があるとかで、ミランが特務で動く時は、どうしても他部隊との連携が必要になってくる。
戦闘機、攻撃機、ウォーリア、いずれも小隊単位での戦力しか無いから。
それを懸念してくれているのだろうと言うことも分かる。
三度目のワープを終えて、通信が入る。
総司令部の、知らない少尉だ。
なんと新たの民である。
総司令部にいるのを見て、少し驚いた。
「ミラン大佐、作戦についてお知らせします」
「了解です」
「敵領内に、脱出ポットを確認しました。 それの回収任務となります」
「脱出ポット」
それで一艦隊が動くのは妙だ。
動くとしても、小規模な特務だろう。
咳払いすると、少尉は続ける。
「脱出ポットといっても、遊星に偽装したコロニー船と推測されます。 そこから救難信号が出ています」
「侵略者に気付かれてはいませんか」
「今の時点で、侵略者は前線に最低限の戦力だけを貼り付けていて、動いている様子がありません。 艦隊を出すのは念の為です」
コロニー船単位の脱出ポットとなると、多分内部に億単位の知的生命体が乗っているはずだ。
いずれにしても、侵略者の領内だ。
発見されれば全滅である。
下手をすると、撃墜される可能性さえあった。
「分かりました。 任務に念を入れます」
「お願いいたします」
通信が切られる。
事務的だったな。
そうミランは思った。
新たの民皆がミランに友好的なわけじゃない。出世しているミランを妬んでいる者だっているだろう。
それくらいは分かるので、特にどうとも思わない。
ともかく、現地に急ぐ。
更に二回のワープを終えて、現地に到着。
第二十三艦隊の規模は、30万隻程度だ。艦隊としてはそこそこの規模、というところだろう。
後一つ部隊が合流して、編成が終わるらしい。
状況は既にケーニス中将も知っているようだった。
「編成が終わり次第、現地に急ぐ。 現在前線でもいざという時には援軍を手配してくれる手はずが整っている。 何より、敵が今更大部隊を前線から割けるとは思わない。 それでも、念には念を入れてくれ」
「了解!」
幕僚達が応じると、艦隊が動き出す。
敵艦隊は動かない。
というよりも、下手に動くと前面に張り付いている支援者の艦隊から攻撃を受けるし、そうなるとひとたまりもない。
動けないのだ。
この戦線でも、戦力差は三倍まで開いている上に。
要塞艦も配備されていて、以前ヴァーグラット戦線を恐怖のどん底にたたき落としたメタトロンやその同型艦が現れたところで、対応は可能だ。
艦隊はゆっくりと前線を迂回して、敵領内に入り込む。
今の時点では静かだ。ワープを行って、目的地に近づく。ワープ阻害装置すらない。この辺りは、敵の領域ですらないのかも知れない。
「楽勝だな!」
「前線ですら敵はあれだけ劣勢なんだ。 こんな所に兵力を割く余裕なんかないだろ」
「油断するな! 前回の長征強襲作戦でも、大勝利だったとは言え億の戦死者が出ている! 侵略者は屑だが、侮るな!」
「りょ、了解!」
ケーニス中将が部下達を引き締めに懸かる。
思ったよりずっと出来そうだなと判断。ミランは、その段階で連絡を受ける。
「ミラン大佐、貴方に来て貰った理由だが、勿論ある」
「はい、それは理解しています。 コロニー船に何かあるのですか」
「ああ。 どうやら侵略者がコロニー船の存在に気付いている。 にもかかわらず、追撃を掛けていない」
なるほどね。
この辺りは、ずっと昔に支援者が侵略者に奪われた星域であるらしい。
侵略者の手に落ちて久しいこともあって、流石に生存者はいないだろうという事情もあるのだ。
罠かも知れない。
そういうことである。
「コロニー船が巨大な反物質爆弾である可能性もある。 まず調査班を送り込むが、その護衛をお願いしたい」
「了解しました。 ただ、あの侵略者が、そのような小細工をするでしょうか。 何か別の可能性は」
「勿論ある。 それも含めての調査班の護衛だ。 危険な任務になる可能性もある。 宇宙での戦闘は、我が艦隊が担当する。 安全だと判断し次第、工作船で即座にコロニー船を牽引し、領内に戻る」
なるほど、それならミランに声が掛かるわけだ。
ともかく理由は分かった。
程なくコロニー船が見えてきた。
それは遊星に見えた。
恒星の引力から何らかの理由で離れ、宇宙を漂う惑星をそう言う。惑星だけではなく、たまに恒星であるケースもある。
コロニー船は全長4000㎞というところか。
そこそこの岩石惑星くらいのサイズはある。全部凍り付いているようだが、遊星なら当然だ。
どこの恒星熱も受けられないのだから。
兵士達が不安そうに話している。
「調査班出ます。 可能性がある四地点を順番に調査します」
「了解。 ミラン出ます」
「支援チーム、出撃。 強襲揚陸艦降ります」
とりあえず、戦艦オッドフォードの人員がミランと同道。
更には、強襲揚陸艦が乗せてくる数個師団の陸戦部隊が展開という所か。
この規模の遊星だと、その程度の戦力では制圧できないが、もしも罠だった場合は、最悪の事態に備えなければならない。
宇宙にも測量用の調査チームが展開している。
まずは地上に。
見た目以上に重力がある。
「大気あります。 これは……」
「どうした」
「酸素15%、窒素主体」
「……嫌な予感がするな」
ケーニス中将がぼやく。
ミランも同意見だ。
この大気組成。
それに、1.22Gの重力。この小型遊星にしては大きすぎる。
侵略者が好む大気組成を、遊星が維持している。重力もそれに近い。それだけでも、色々とおかしすぎる話だ。
「周囲警戒!」
「ブリザードだ! 視界が悪いぞ!」
「全てのセンサーを使え!」
展開している部隊が会話している。
戦車隊はホバーに切り替えて、反重力で移動を開始。こんな状態では、地面を無限軌道で踏むわけにもいかないだろう。
偵察機が戻ってくる。
「熱源反応発見できません。 ただの遊星では」
「ただの遊星ではないことは、あらゆるデータが証明している! とにかく調査を続けろ!」
「りょ、了解!」
意外とケーニス中将は気が短いのかも知れない。
それとも異常を感じ取って、ぴりついている可能性もある。
何かしらの兵器が隠されている場合もあり、工作船で持ち去るわけにもいかない。工作船で運んでいる最中に攻撃でもされたら大惨事だからだ。この間の翌日作戦の時の白鳥星系第三惑星では、安全圏に運んだら自爆され掛けるという事件まで起きている。皆が神経質になるのも仕方がないだろう。
ミランも調査班クルーと同行して、周囲を警戒する。
調査班はあらゆる探査装置を持ち込んでいるが、やはりこの惑星はただの遊星ではないかという事で、結論が出ているようである。
「少なくとも惑星の内部に炉や巨大な施設はありません。 金属の含有量もそれほど多くなく、明らかに人工惑星ではないですね」
「これはコロニー船の筈だが……」
「ええ、確かに救難信号がこれから出ていたようです。 しかしながら、これは同時に、遊星でもあります。 救難信号は超光速通信ではなく、これの位置から考えて、七百期~八百期ほど前に発信されたものが前線で受信されたのかと……」
「何だというのか。 そもそも侵略者はそんな間どうして放置したのか」
困惑の声が上がる中。
調査チームが声を上げていた。
「細菌を確認!」
「調査を」
「休眠状態です。 ……これは在来種ではありませんね。 外来種です。 アルカラルドⅠやアポカラプスで確認された細菌と同一種とみてよろしいかと思います」
「連中がこの遊星に立ち寄ったのか?」
アルカラルドⅠやアポカラプスから回収されたDBや資料を見ても、どういうルートでコロニー船が移動したかはまだよく分かっていない。
ワープの技術も未熟で、あちこちをふらつくように移動していたようだということは分かっているが。
それ以外は何も分からないのだ。
「敵艦隊は」
「いえ、まだ姿を見せません」
「この状況だと、自爆装置などは仕込まれていないかと思います。 工作船で運んで、安全圏で調査すべきでは」
「……まだ分からない。 敵は大規模な艦隊を動かせる状態ではなく、更には前線との間にワープ阻害装置もない。 ならば、此処で調べる。 最悪の場合は放棄して撤退することになる。 各員、常に最悪の事態に備えろ」
ケーニス中将は慎重だな。
ミランはそう思いながら、護衛を続ける。
ブリザードが晴れてきた。
とはいっても、恒星から離れ、熱も受けていない惑星だ。絶対零度近い状態である事に変わりは無い。
酸素すら凍りかねない寒さなのだ。
これでどうして大気があるのかが不思議すぎる。
「……機械を発見! 原始的なテラフォーミング装置です!」
「此処はコロニー船ではなく、むしろアルカラルドの民やアポカラプスの民が、第二の故郷にすることを試みたものではないのか?」
「今の時点ではなんとも……」
調べてみたところ、このテラフォーミング装置で大気組成を侵略者が好むものに換え。
更には、数期単位を掛けて惑星の自転速度を上げて、引力を上げていたらしい。それで1G近くになっていたわけだ。
それでも不可解な事が多すぎる。
ともかく、まだ調査を続けなければならなかった。
※遊星
実在するものです。星系に属さず、何らかの形で宇宙を単独でさまよっている星のことですね。
何かしらの理由で星系からはじき出されたり、或いは星系がなくなってしまったりと出現要因は色々とあります。
ちなみに太陽系にも過去に遊星が入り込んできたらしいです。それも何度も。
色々な形で痕跡が残っているようですね。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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圧倒的な武力による蹂躙
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘