王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
ついに親衛軍ウォーリアにさえ侵略者の劣化が見え始めます。
侵略者の崩壊が始まったのです。
前進してきた敵艦隊に、第八艦隊が猛烈な攻撃を仕掛ける。
威力偵察のつもりだったのだろうが、それに対しての第八艦隊の攻撃は猛烈だった。敵が後退しようとした所に最大戦速で突っ込むと、乱戦に持ち込む。
旗艦級戦艦が敵の至近にまで迫る猛攻で。
メルティール中将は挨拶をしに行った時、ぶかぶかの軍服を着て愛くるしく笑顔を浮かべていたのだが。
本質はこれなのかと、ミランは呆れた。
いずれにしても、この状況だと出るしかない。
ウォーリア四型で出て、周囲の戦況を少しでも良くする。
凄まじい速度で飛んできた親衛軍ウォーリア。此奴を放置しておくと、大きな被害が出る。
あれ、こいつ。
動きに覚えがあるな。
「見つけたぞ、肉ゥ……!」
「その声、狂犬だな」
「俺の名前はそんなじゃねえ! その巫山戯た口を永久に閉じさせて、修正してやる!」
惑星アラタで交戦した相手だ。
激しく数度切り結ぶが、戦闘機形態とウォーリア形態を切り替えながら、猛烈に攻め立ててくる。
更には、自爆しそうな勢いで突貫してくる。
少し動きが変わったか。
いや、違う。
親衛軍が、どのような手を使ってでもミランを殺すつもりの動きになったと言うことか。
今までは、明らかに肉とこちらを侮っていた。
それが侮らなくなったのか。
そうとは思えない。
相変わらずこちらを肉呼ばわりしているし。
だとすると、なんだ。
「随分と余裕がないようですが」
「貴様のせいだ! 貴様があちこちで暴れまくったせいで、指導者様がキレ散らかしてる! 俺はもう次がない! お前を殺さないと、もう蘇生させないと指導者様は仰った!」
「そうですか。 貴方が殺してきた者達にだって、次なんてなかったんですが」
「俺と肉を同列にするな、修正してやる!」
そればっかりだなこいつ。
いきなり親衛軍ウォーリアで殴りかかってきたが、十分に引きつけてから腕を絡め取り、そのままへし折る。
武芸はある程度出来、それをウォーリアの動きに反映できるようだが。
はっきりいって、侵略者の肉体能力は、どれだけ背伸びしても知れている。
新たの民と比べると、まるで次元違いだ。
遺伝子操作していても同じ。
腕をへし折られても、狂犬は喚きながら離れる。戦闘機形態になろうとするが、腕の破損でうまくいかない。
パルスレーザーを連続でたたき込むと、それでも意地を見せて、回避してみせる。
動きは大したものだ。
だけれども、以前交戦した時と全く変わっていない。
次がないとか吠えているが。
死んだ兵士はみんなそうだ。
中にはクローンに意識を移してまた戦う兵士もいるが、それを希望する兵士は殆どいないらしい。
やったとしても、一度でうんざりしてもうやらなくなるそうだ。
熱剣を抜くと、突貫してくる。
周りに近づくなと言って、ミランは攻撃を受けてたつ。
何度も振るわれる熱剣だが、冷静さを欠いている上に、ウォーリア四型のパワーは親衛軍ウォーリアに劣らない。
それでも、数カ所を浅く切り裂かれた。
だが、其処までだ。
完全に見切った。
ガツンと、長槍で熱剣をはじき返す。もろに体勢を崩した狂犬に、真正面から蹴りをたたき込む。
それで吹っ飛ぶ狂犬に間合いを詰めると、熱剣を持つ腕を、そのまま長槍で切り落とし。更には頭、両足と、親衛軍ウォーリアを即座に斬り伏せていた。
そして、コアを貫く。
爆発四散はしなかった。
コアを完全破壊した訳ではないから、かもしれない。いずれにしても回収は任せて、一度オッドフォードに戻る。
細かい破損箇所の修復は任せる。
休憩。
その間に、オッドフォードに何度か直撃弾があるが、位相変換シールドで防げている。それに、オッドフォードが沈んだらどのみち助からない。
焦っても仕方がないし。
焦らずのほほんとアネカが入れてくれたホットドリンク(そういうらしい)を飲んでいるミランを見て。
クルー達もみな落ち着くようだ。
「ウォーリア四型、破損箇所修復完了!」
「出ます」
「カタパルト用意!」
ホットドリンクを飲み干して、トイレに。
トイレを済ませてから、すぐウォーリア四型に乗り込む。
カタパルトから、即座に射出される。宇宙空間に出て即座に、ぐんと加速して、飛んできたレールキャノンの弾丸を回避。
対空砲火に撃墜されなかったイーターからの射撃だ。
即座にパルスレーザーを返礼にたたき込んでたたき落とす。
そのまま、味方部隊と交戦している敵ウォーリア隊に突っ込んで、右左に斬り伏せた。味方部隊がそれで一気に押し込むのを横目に、次。
逃げ遅れた敵戦艦の周囲に、多数のイーターが集まっている。ミランは加速すると、イーターの群れを片っ端から長槍で切り伏せていく。懐に入られたイーターは動きが鈍くなり、いいように斬り伏せられるが。
それでも無抵抗ではなく、反撃をしっかりしてくる。
それを回避しながら、ミランはウォーリア四型で飛ぶ。
ミランに向けて、主砲を旋回させてくる戦艦。
それでいい。
ミランを狙っているのは分かっている。そのまま、加速して戦艦を更に追わせる。戦艦の横っ腹に、恐らくメルティール中将の旗艦級戦艦の主砲である硬X線ビーム砲が突き刺さったのは、その時だった。
即座にその場から離れる。
一撃で戦艦の位相変換シールドが消し飛び、更に其処に味方の攻撃機が放った亜光速ミサイルが突き刺さったのだ。それも多数。
連鎖爆発をしながら、戦艦が吹き飛んでいく。
次。
メルティール中将の攻勢は猛烈で、敢えて乱戦に持ち込んで、質の差を生かして徹底的にすりつぶしていく。
それでいながら、深追いもしない。
敵が本格的に逃走するのを見て、不意に停止を指示。
味方艦隊も、それで一斉に停止していた。
どうやらあの見かけでも、伊達に中将をしていないらしい。兵士達も信頼しているのが、艦隊の動きを見てもよく分かる。
第八艦隊は被害も小さくないが、敵にその数倍の損害を常に与える。
最前線に常に立ち、常に先陣を務める。
メルティール中将が、それを皆に告げると。
兵士達が歓声を上げていた。
幼い子供の声だが、どうしてか不思議な威厳がある。
そういう指揮官もいる。
パドフ中将が老練の見本と言って良い名将だとすると。
メルティール中将は、部下を統率し、自身も最前線に立つ陣頭の猛将だ。それでいながら、引き際も心得ている。
用兵の質はだいぶ違うが。
確かに重要戦線で主力を任されるだけある。
人材を大事にしている支援者ならではの、指揮官だと言えるだろう。
工作艦が行き来しているのを、オッドフォードに戻りながら見る。破壊された敵の艦隊や兵器を回収しているらしい。
デブリの掃除も兼ねているそうだ。
病院船も行き来している。
圧倒的な勝利とは言え、これだけ苛烈な肉弾戦を挑んだのだ。味方の損害だって決して小さくない。
この戦線では、敵が少しでも出ると、第八艦隊が猛烈に噛みつきにいくので。それで敵の損害を大きく稼げている。
もっとも、それで第八艦隊の被害も決して小さくないので。
後方の星系を制圧した艦隊が、少しずつ合流してきているらしい。規模は四十五万隻ほどだが。
それがずっと変動していないそうだ。
確かにこれは、後方に工廠が必要になるなと、ミランは思った。
とりあえず、会戦も終わったので、オッドフォードで多少くつろぐ。生還したハーネイ中尉だが、今回の戦果は振るわなかったらしく、撃墜はなかったそうだ。
なんでも親衛軍らしい戦闘機に追い回されて、それどころではなかったらしい。
もっとも敵親衛軍戦闘機は、深追いしてきた所をオッドフォードの対空砲火に引っかかって爆発四散。
それで助かったが。その時には既に戦闘は終わっていたそうである。
まあ、ハーネイ中尉は良い腕だが。
親衛軍の戦闘機が相手となると、まあそんなだろう。
ミランも、自分と同じ活躍を皆には求めない。
特務の支援クルーではあっても。
ハーネイ中尉は、特務ではないのだから。
「分かってはいましたが、勝てる気がしません。 あんなのと良く毎回戦って勝っていますね」
「自分にも良く強さの理由は分かっていません」
実は、この間報告が来た。
クローンを育成している話を以前に聞いていたのだが。育成しているクローンのミランは、どれも新たの民の標準的な強さしか持っていないそうである。
戦闘適性も別に高くないそうだ。
同じ遺伝子なのにどういうことか。
体の構造などもそうで、普通に発情期が来たら繁殖できそうな状況であるらしい。
そうなると、ミランはなんだったのだと思えてくるが。
まあ、それについては気にしない。
戦場での後片付けを終えると、第八艦隊が下がり始める。ミランは自室に、休憩していると、クラスネスから連絡が来ていた。
「ミラン大佐、あのシェルターのDBに経緯が記録されていたよ。 君も関係者だ。 話しておく」
「……良いんですか」
「上層部の許可つきだ」
「わかりました」
ミランは別に侵略者や、同祖の存在の専門家ではないのだが。
ともかく、話を聞かせて貰う事にした。
ベッドに腰掛けて、話を聞く。
まずコロニー船の内部は、あの遊星を見つけた頃にはやはり腐りきっていた。少なくとも七つの派閥に別れていて、実弾兵器を使って殺し合いまでしていたようだ。
それでも遊星をどうするかで、テラフォーミングを決めた。
コロニー船が痛み始めている。
それも理由であったようだ。
人工太陽まで作る計画もあったらしい。
もしも人工太陽を作れていれば、あの遊星にコロニー船の者達は住んでいたのかもしれなかった。
しかし、それはうまくいかなかった。
「技術的な問題ですか」
「いや、違う。 利害が調整できなかったのだ」
「利害……」
「そうだ。 まだテラフォーミングが終わってもいない惑星の領有権を巡って、コロニー船の指導者達が争い始めた。 其処で、少数の学者が先に動いた。 彼らは、聖地から持ち出したデータを、遊星に隠そうとしたのだ」
寡黙だったクラスネスが淡々と話す。
或いは、必要が無ければ喋らないだけで。
本当はいくらでも喋る存在なのかも知れない。
あの遊星は最初に見つけたのだから自分のものだ。
いやもっとも高貴な血筋を持つ自分のものだ。
そんなくだらない争いをしている内に、テラフォーミングは半端な段階で切り上げ。上の腐敗は既に下にまで浸透しており、働いていた者達はやる気をなくした。
むち打ってでも仕事をさせようにも、そもそも指揮系統がぐっちゃぐちゃだからどうにもならない。
科学者達は、この遊星にデータを隠すことにした。
聖地から持ち出した、膨大な遺伝子データをだ。
どうせ移住計画は失敗する。
このコロニー船は中途で破壊される可能性も高い。
それどころか、どこかの惑星にたどり着く頃には。聖地を脱出した時の理想も理念も忘れた民が、聖地同様の醜い争いを繰り返す。
だったら、此処に情報を隠し。
それをいずれ、まともになったら回収しに来た方が良い。
そういう決断を、一部の科学者達がした。
彼らは、小型の射出式シェルターを確保すると、内部にDBを格納。
だが、そこで。
計画がばれた。
武装した兵士達に襲われ、片っ端から殺戮された科学者達は、それでも計画を実行に移す。
シェルターには、その過程で殺された、科学者の家族の子供も乗せた。
このシェルターがお気に入りだったから。
それが理由であったらしい。
シェルターは、あの遊星に射出されて、地下深くに潜った。
わずかな科学者達が捕らえられ、そして。
あの遊星に追放され。
コロニー船は去った。
「……シェルターが射出された後のデータも分かったんですか」
「科学者達は、廃棄された遊星のコロニーにて、まだ動いている機器から、あのシェルターにデータを移し続けていた。 日記のような形でな」
「それは……」
「遺言だ」
劣悪な環境の中で、ばたばたと科学者が倒れていく。
そして、ワーカーが来た。
来たのは数機だけだったが、遊星にあった旧式戦車程度では、その数機であっても致命的だった。
必死の抵抗もむなしく、ほぼ相打ちの形で科学者達は全滅。
コロニー船は、もうその時にはワープして、遙か遠くに去っていた。
それが、あの遊星で起きた事だったそうだ。
「むごい話ですね」
「ああ、そうだな。 まだ良心を持っていた者達が、コロニー船からは排斥された。 だが、DBには遺伝子データだけではない。 様々な文化や、聖地の情報が多数含まれていた。 我々の手にそれが渡った。 それだけで、科学者達は勝ったのだ」
確かに、それはそうだ。
アルカラルドⅠでは、既に核兵器抜きとは言え、どの国も狂ったように殺し合いを続けているそうだ。
資源を使い果たすのはもう至近。
滅びる国も出始めているそうで、勝った国もいずれは潰れる。
それが目に見えているのに、残り少ない資源を食い潰しながら殺し合っている。既に殺し合いの理由なんて、誰も分からない。
いずれ破滅する。
支援者も、さじを投げた連中だ。
破滅の後、完全に原始時代に戻ったら、助けにいくくらいで良いのではないのか。そうミランは思う。
アポカラプスでも、あの都市国家はずっとそのまま。
技術を進歩させる気もなく、これ以上何をするつもりもない。
もはやアポカラプスに不時着した人間は、文化的に死んだ存在だ。
指導者という怪物が出る前の、侵略者……地球人と言ったか。
それが支援者の手に渡った。
勿論対応は極めて慎重にやらなければならない。
だが、いずれにしても。
これで侵略者と言う種族は、滅びることもなくなっただろう。
「勝者」が嘲笑いながら捨てたデータが。
優れていると自称している「勝者」よりも遙かに価値のある存在となって。価値を理解できる者の手に渡った。
指導者は、いずれ破滅する。
これは楽観的でもなんでもない事実だ。
出来る事はどんどん減りつつあり、いずれは内部から崩壊するだろう。
アルカラルドⅠには未来はなく、アポカラプスは永遠に過去の檻にとらわれたままである。
とりあえず、此処からはパデラクスと相談して、以降の対応をするそうである。
ミランはそうですか、とだけ言って。通信を切った。
侵略者に起きたのは文明の終焉だな。
そう感じた。
それが少しだけでも、他の存在の手でよみがえるのなら。それはまだマシな事なのかも知れない。
メルティール中将の率いる第八艦隊は、カルファール戦線を主体的に牽引し続けていた。
そもそも此処の指揮官である方面軍司令官が、第八艦隊を放し飼いにしている事もあり。メルティール中将麾下の第八艦隊は、敵艦隊が下手な動きをすれば即座に噛みつき、徹底的に打ち砕いた。
ミランもそれで、第八艦隊に配属された理由がよく分かった。
この艦隊、とにかく戦闘を挑み続けるので、親衛軍との接触も多いのだ。
可能な限り親衛軍ウォーリアとの戦闘データを上層部も取っておきたいのだろう。
侵略者も増援を送り込んできている。
戦線の敵をまだ殲滅するな。
そんな奇矯な命令が総司令部から来ている。
前線に敵を引きつけることで、戦況をコントロールするためらしい。確かに前線後方の星系には、まだ完全制圧されていない星系もある。
必死に多数の小艦隊が制圧して回っているが、制圧を雑にする訳にもいかないのである。
小規模ながら、まだ逃げ遅れた敵との艦隊戦も発生しているようだ。
敵の新造らしい艦船が前線に出てきているが。
ハコトが分析を送ってくる。
「あの艦艇、おかしいですね」
「どうしたんですか」
「侵略者もこちらより遅いとは言え、兵器のバージョンアップはしてきています。 しかしあの艦艇、バージョンアップどころか、新品なのに明らかに劣化しています」
「何かしらの罠の可能性は」
ない、という。
猛烈な火力に曝されて、作られたばかりの艦艇が破壊されていく。やがて、火球となって消し飛んでいた。
敵が下がり始める。
もう十分といわんばかりに、第八艦隊も追撃を止める。
破壊した艦艇の回収などで、工作艦が動く。ミランは戻ろうかと思ったが、メルティール中将から連絡が来る。
「ミラン大佐、少しよろしいですか」
「はい、問題ありません」
「旗艦に来ていただけますか。 どうやらあのパデラクスさんが、私も交えて話をしたいそうです」
「……」
げんなり。
恐らくだが、クラスネスの話していた件だろう。
まあ、近々何か動きがあるのはわかりきっていた。
クルーには、旗艦に寄ってから帰ると連絡して、旗艦に。
途中、デブリに潜んでいた敵ウォーリアの生き残りが奇襲を仕掛けてきたが、一刀両断。そのまま飛び去る。
乗っているのは肉人形だ。
意思すらない。
指導者の私物として設計されて、お人形遊びに付き合わされる哀れな存在。だが、加減してやる意味も無い。
旗艦に到着。
旗艦はあちこち傷があって、最前線で常に戦っている貫禄がある。
14㎞のサイズを誇る旗艦級戦艦は、戦艦から見ても凄まじい巨大さで、まさに移動する大都市だ。
何度も旗艦級戦艦には乗ったことがあるが。
メルティール中将の旗艦は、指揮能力よりも戦闘能力を重視しているらしく。
なんだかかわいく軍服を着ているメルティール中将とのギャップが凄まじい、威圧的で攻撃的な外見をしていた。
艦橋に出向く。
ヒューマノイドであるが、メルティール中将の種族バルカラは、虹色の髪と瞳を持つ特徴がある。
メルティール中将に限らず、幼体の方が頭脳が優れ。
年老いると急速に衰える頭脳と反比例して身体能力が上がる。
このため、若い個体が社会を主導し。
年老いると肉体労働に移る。
そういう変わった社会を形成していたらしい。
ピークの頭脳を迎えるのがだいたい七期くらいらしく。メルティール中将は、その七期のままアンチエイジングをしているらしい。
ちなみにどの提督よりも見かけの人気が高いらしく。様々な種族が、メルティール中将の立体映像ブロマイドを喜ぶそうだ。メルティール中将も、それを嫌がることもないらしい。
ともかく、ぶかぶかの軍服で、大きすぎる指揮シートにしがみついているメルティール中将に敬礼する。
ウォーリア四型は、後から来るクルーに任せてしまう事とする。
どうしても最前線に立ち続けるから、消耗も激しいのだ。
「とりあえず、会議室に移動します」
「分かりました」
浮遊式の小さな乗り物が来た。
なんというか、何かの動物っぽいデザインであり、それにまたがって移動するものであるらしい。
常に浮かべている愛くるしい笑顔と言動。
用兵とのギャップが激しすぎる。
既に部下達から話を聞いたのだが、別に戦闘中も人格が変わって吠え散らかしたりしている事もないらしく、普段通りらしい。
だとすると、ますますよく分からん人だ。
会議室には、ハーネイ中尉も来ていた。
ふよふよ浮かんできた乗り物にまたがっているメルティール中将を見て、ハーネイ中尉が口を押さえていたが。
よく分からないが、笑っていると言うよりも、かわいすぎて感極まっているらしい。
よく分からない。何度でもそう思ってしまう。
ともかく、何名かの幕僚も席について、パデラクスとの回線を開く。
パデラクスは、いつも通りだった。
「やあやあメルティール中将! 私より年上とは思えないキッズぶりですな!」
「この年齢が最高のスペックを発揮できるのですよ。 それで、ミラン大佐も交えてなんのご用かしら」
「ああ、最終作戦が始まる可能性が出てきましたのでね」
最終作戦。
ミランも思わず、顔を上げていた。
「詳しくは後で説明がされると思いますが、侵略者に対する……というよりもあの指導者に対する決定的な弱点が見つかりましてね」
「!」
「勿論この作戦一発で終わるほど話は甘くないですが、既に前線でも確認できているのではないですか? 侵略者の進歩が止まりました」
そういえば。
あの新造にもかかわらず、むしろ劣化している戦艦。
あれの事か。
ミランがそれに気づいたらしい事に、パデラクスは敏感に気付く。そして、大喜びしていた。
「流石ミラン大佐! 既に気付いておられるようですな!」
「それは良いとして、敵が進歩を止めたとしても、なお八千万隻くらいの兵力はいるのでしょう。 それに制圧している星系だって1000億を超える」
「その通りですが、指導者に致命的な弱点が発覚した今、今までのように後数千期は戦争が続くという話が、後百期程度で終わるかも知れないという話になり始めていましてね」
「十分の一以下」
それは、大きい。
侵略者相手の戦争は、戦争というよりも殲滅だ。
特に今の侵略者は、完全に滅ぼし尽くさなければならない。
あれらは生物兵器というよりも、生体ロボットに近い。
そして指導者には、もはや死以外に償う方法がない。
それはもう、ミランもどうこう言うつもりはない。事実だから、受け入れるしかないのである。
「とりあえず、後三期ほど、前線で戦っていてほしい状況です。 それまでに後方の制圧と、準備を整えますので」
「前線の敵を駆逐しないように戦えというのですね。 なんとも無理難題を言うものですね」
「それは前線の提督の方々に期待しています! いずれにしてもメタトロン級の超大型戦艦を出す気にも敵はなれないでしょう。 油断だけは、しないようにしてくださいねー」
通信終わり。
メルティール中将は、小さな手で肩くらいまである頭髪を掻き上げる。虹色の髪が、きらきら輝く。
なんでも、困った時にやる仕草らしい。
「恐らくですが、第八艦隊はこれからしばらくは、敵艦隊と激しくやり合うと思います。 敵の増産戦力をそれで削り取ることになりますわ。 ミラン大佐には、厳しい戦闘をずっと強いることになりますが、お許しください」
「いえ、問題ありません。 ずっとそうでしたから」
「ふふ。 後三期と言っていましたね。 その三期が経った後には、私から貴方を准将に推薦します。 支援者の歴史でも数名しか出ていない特務の准将として、貴方は恥じない存在だと私は見ました。 それをこれからのしばらくの戦歴で、補強していってください」
「死ぬことがなければ」
敬礼すると、戻る。
ハーネイ中尉が、メルティール中将がかわいくて抱きしめたいとか色々言っていたが、半分聞き流す。
ハーネイ中尉はアルカラルドⅠでの非人道的な扱いと虐待で子供を作る体機能を失ってしまったが、それでも母性はなくしていないのだろう。
収斂進化で近い姿をしている相手だから、こういう感情が出るのかも知れない。
ミランにはもうその感情は湧かない。
ある意味、羨ましい。
「それにしても准将になると、どうなるんですか」
「……良くは分かりませんが、旗艦級戦艦がバックアップに与えられると聞いています」
「この超巨大艦と同レベルのものが!」
「准将は以前第108小艦隊を見た時分かったかも知れませんが、一万隻以上の艦艇を率いる立場です。 特務の准将は最も危険な任務に常に赴く職務。 ……アンチエイジングを、自分も受けるべきかも知れないですね」
あまり気は進まないが。
肝心な時に、肉体が衰えて駄目になるのは避けたい。
だが、侵略者の指導者に決定打を入れたら、後は引退して、ファーガの世話をして、テフとともに暮らしたい。
それは確かにある。
でも、引退なんてさせてもらえないだろうな。
そういう諦めも、ミランにはあった。
いずれにしても、摂理を超えすぎたアンチエイジングはしたくない。
それをすれば、いずれはあの指導者と同じになる。
ミランは新たの民であるつもりだ。
或いは生物という概念を超越した存在となるのであったら、アンチエイジングはありなのだろう。
逆に言うと。
あらゆる神より優れているとかほざきながら、結局侵略者と言う種族を超越できなかったあの指導者は。
自分を完璧で究極だとか抜かしているから。
その先に行けなかったのではないかとも、ミランは思う。
「しばらくはこの戦線に張り付きですね」
「ハーネイ中尉、子供に未練があるなら、今のうちに治療を受けては」
「いえ、私は自分で子供を産もうとは思いません。 もしも子供がほしくなったら養子でもとります」
「そうですか。 自分は種族的な体質もあるので、これ以上多くは言えません。 その辺りは任せます」
ただ、何時死んでもおかしくはない。
それは分かっている筈だ。
まあミランもそれは同じか。
ハーネイ中尉の場合、まだ子供の頃から、最悪の大人に心身を蹂躙され続けた事もある。
そういう意味でも、子供を作る気になれないのかも知れないから。それをミランはどうこういうつもりはなかった。
オッドフォードに戻る。
敵は一度戦線を下げて、艦艇の修理をしているようだ。仕掛けてこないなら、相手にしない。
暇な時は徹底的に暇になるだろう。
そうミランは思った。
実のところ、惑星アラタを離れて、もう三期が経過している。
これからまた三期が経過したところで、別に思うところはない。
ただ、この三期で、永遠と続いていた侵略者との戦いが終わりに向かい。最終的にあの指導者が滅び。
侵略者……いや地球人との和解が成立する準備が整うのであれば。
ミランには、これ以上望むことはなかった。
後は、その前に死なないこと。
親衛軍ウォーリアを出来るだけ倒すこと。
それがミランの仕事だ。
侵略者の聖地は、古くは地球と言われていたらしい。既に場所は確定済み。超光速通信で観測したところ、やはり既に死の星と化しているそうだ。
其処に攻め込むのか、或いは別の何か策をとるのかも。
今は、ただ待つしか無かった。
終わりの始まりです。
この長い戦いが、終わる時が近づき始めました。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
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詳細なマシンデザイン
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圧倒的な武力による蹂躙
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緻密な人間ドラマ
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種族や文明の描写
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近接した力量のライバルとの死闘