王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
侵略者の指導者は、科学者としては優秀だった。古くには、科学技術の世代を単独で十世代も挙げてしまうほどだった。
不世出の天才だった。
全て過去形だ。
今では、それは昔の夢だった。
「どうして以前以上のスペックが出ない!」
指導者が喚き散らす。
ついに業を煮やした指導者が直接指揮を執って、第五世代型の侵略者の作成に取りかかったのである。
第四世代型以上にあらゆるスペックを挙げ。
そして第四世代以上に忠実で。
思考せず。
意思も持たず。
逆らうこともしない。そういう存在だ。
指導者が直に研究に取りかかったそれは、遺伝子上での強化を徹底的にした。強化といっても、指導者の要素を更に強くした。
何しろ人類史上最高の人間のスペックだ。
強くなるはずだった。
それなのに。
全身に遺伝病が現れる。
健康で頑強どころか、立って歩くことさえ出来ない個体が続出していた。
馬鹿な。
指導者は喚き散らす。
指導者の中では、最高の遺伝子は文字通り究極の遺伝子だ。指導者の遺伝子こそそれで、最高で究極である以上不具合など起きることはあり得ない。
だが、指導者はこの時点で、自分の遺伝子を最高であるという前提条件から、思考の泥沼に陥っていた。
足を引き抜くには客観が必要で。
それこそ幼児並みの客観を持っていれば、それも出来た。
だが長い年月、己の周囲をイエスマンだけで固めてきた指導者に、それは出来なかったし。
何より裏切り者を出した第四世代は、今すぐにでも排除しなければならない存在であったのだ。
気づけなかった。指導者は。
あまりにも指導者の遺伝子を重ねすぎた結果、遺伝子異常が発生したことを。
古代の王朝が、「優秀である」王族同士での近親交配を重ねた結果、遺伝病だらけになり、皆病弱になって絶え果てた。皆同じ顔に成り果てた。
そのような事が実際に存在したのに。
指導者の偉大なる完璧な遺伝子では、そのようなことは起きないと高をくくっていた。
勿論起きた。
それは、指導者の遺伝子が究極でも完璧でもない証拠であったのだが。
それを疑うことは、もう指導者の心理構造的に出来なかったのだ。
更には、第四世代に裏切られたことで、指導者の中に恐怖が生まれ始めていた。
自我を得た第四世代の侵略者が、テロを始めている。
この間、何を吹き込まれたか。
親衛軍NO4_022311が、突如として愛機とともに、重要拠点を襲撃。それは各地のネットワークの集約点だった地点で、親衛軍NO4_022311が死ぬまでに全損させられた。
そして親衛軍NO4_022311は、その前に意識のデータを肉どもに送っていたことがはっきりしたのである。
目を掛けてやったのに。
指導者はそう吠えた。
だが、立て続けの裏切りだ。
それを考えると、恐怖が少しずつせり上がってくる。
二百以上ある肉体は、それぞれの場所を誰にも教えていない。自分だけしか知らない。
だがそれも、一つ肉体を奪われたことで、過去の話になった。
超光速通信で観測されているから、肉体を移動させたとしてもばれる。
更には、部下が裏切ったら。
それもあって、急いで第五世代に侵略者を改良しなければならないのに。
狂乱の中にある指導者に。
連絡が来る。
前線からだった。
「こちらに配置されている親衛軍が枯渇しました」
「で?」
「以上です」
「死ね」
報告してきた侵略者はそのまま焼き殺す。代わりは作らない。裏切られても面倒だからである。
第五世代を作らないと。
だが改良しても改良しても、性能が落ちるばかり。ついに9割が強烈な遺伝病を発症して、治療すらままならない状況になったのを見て。
指導者は思考停止した。
何かされているに違いない。
これからは、親衛軍をはじめとして、部下は誰も信用できない。
全て自動機械で対応するしかない。
だが、その自動機械をハッキングされたらどうなる。
されるわけがない。
だが、もしもを考えなければならない。
自身をそのまま作り出して、前線に大量に送り出すか。いや、駄目だ。既に脳だけの存在に自身は特化している。他の肉体を持っていた頃の自身は、既にデータを消去してしまった。
もっとしつけをして、第四世代を使うしかないのか。
いや、散々しつけをしてきたのに裏切ったではないか。
思考が完全に停止した指導者は、悲しみのあまり泣いた。
これだけ面倒を見てきてやったのに。
裏切りばかり重ねられて。
無能な部下どもに足をひたすら引っ張られて。
私はなんと不幸なのだ。
歴史上でもっとも不幸な存在なのだ。
本気でそう考えた。
指導者の所業を知る全員が、巫山戯たことを抜かすなと怒り狂うだろう発想だが。指導者の主観ではそれは正しかった。
そしてどれだけ泣いていても。
誰も助けなど来ない。
仮に泣いている者は誰でも助けるヒーローが存在したとしても。
この指導者を助けることだけはなかっただろう。
主観の究極。
それがこのような状態に陥ったのは皮肉でしかない。
昔、全面核戦争を引き起こした地球人の歴史を見て、皇帝だった頃の指導者は大いに笑った。
なんと愚かな連中かと。
だが、指導者は今。
その愚かな連中と、同じ末路に向けて驀進を続けていたのだった。
(続)
どんなに高いIQを持つ存在でも。
最初の一歩を間違えていたり。
自分を客観的に見られなければ、その真価を発揮できません。
侵略者の指導者は古くには地球の科学技術を10世代分単騎で引き上げた怪物的な天才ですが。
既に限界を迎えていました。
本人だけがそれを認めなかった。そして侵略者は彼の私物として構成されていた。
だから侵略者は滅ぶのです。
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