王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
一度堤防が壊れると、後は雪崩を打つように、です。
親衛軍が次々と亡命をしてきます。
その中には、ミランが何度も戦ったあいつもいました。
序、亡命者続々と
侵略者に異変が起きつつある。
主に親衛軍だが、自我を得た存在が出始めた。
それらが意識のデータを送ってきてから、自爆して果てる。そういうことが連鎖しているようだった。
それらの亡命親衛軍の中には、あの解体屋もいるらしい。
ミランは話してほしいと亡命者が出るたびに言われて。
そして、話してみて、毎回げんなりした。
今回話すのは、その解体屋だ。
「何度も君とは戦ったね。 ミランと呼べば良いのかな」
「よろしく」
当然ミランとしても警戒する。
此奴は度を超した偽善者だった。はっきり言って、話していて極めて不愉快な存在だった。
位相変換シールドを搭載し、ドラゴンキラーを装備した強力な親衛軍ウォーリアを指導者に渡されていたが。
その性格の悪さから、好かれていたのではないかとしか思えない。
だが。
分析が進んでいるが、親衛軍ウォーリアは基本的に古くに侵略者の指導者が好んでいたアニメーションに登場したものがモデルとなっている。
解体屋の親衛軍ウォーリアもそれで。解体屋もそのパイロットに歪んでいるながらも性格が寄せられていた。
元は此処までは酷くはなかったらしい。
指導者による曲解がこうなる原因だったのだろう。
指導者は分析によるとアニメーションにおける「ロボットの色」だとか「戦闘シーン」だとかにしか興味がなかったようだ。
パイロットの人格再現なんてそれこそどうでも良かったのだろうから。
解体屋も無害なロボットに意識を移されて、パデラクスが見守る中、ミランと話に来ている。
相手はうきうきのようだが。
ミランはげんなりし通しだ。
「やっとあの外道の所から離れられたよ!」
「外道ですか」
「僕や他の親衛軍が、どんな目に遭っていたか教えてあげようか? あいつのことが好きな親衛軍なんていなかったと思うよ」
「……」
そうか。
とてもそうだとは思えないが。
いくつか話を聞いていくが、侵略者の中では、支援者を肉と呼ぶ事が決められていて。敵なんて呼ぼうものなら即座に処刑が普通だったそうだ。処刑されても「お気に入り」なので即座に再生されるし。
もしも倒されようものなら、凄まじい拷問を受けてまた殺され。その拷問の記憶を植え付けられたらしい。
そうか、そういうことをしていたのか。
ただし、それでも。
解体屋に同情するつもりにはなれないが。
「いずれにしても、もしも僕の愛機を再現してくれたら、あいつを相手に大暴れしてみせるよ」
「それは自分にではなく、いつも話しているパデラクスや、或いは議長にでも提案してください」
「そうか、分かった! 是非やって見るよ!」
凄く楽しそうだ。
もっとも、どうでもいいが。
通信を切る。
パデラクスが、嬉しそうに言ってくる。
「送られてきた意識データには、精神的なブロックがいくつも掛けられていてね。 だがあの解体屋くんは、それをくぐり抜けて、密かに反発することに成功していたようなんだよ!」
「さいですか」
「そうなんだ! これほど興味深い事はあるかい! 指導者のお気に入りで、意識を持っている時間が長かったとはいえだよ! AIが自我に目覚めるぐらい大変な事だと思うね、私は!」
「……」
苦虫を噛み潰すミランに。
本当に楽しそうにパデラクスは続ける。
「今、科学者だった親衛軍NO4_733081と相談しながら、指導者への精神攻撃と、自我を持てそうな親衛軍に粉を掛けているんだ。 ここ最近の亡命はその結果でね! 自分が作ったネットワークシステムを完璧だと信じて、穴があっても塞がない指導者のおかげで、とにかく対応が楽だよ!」
「前線で親衛軍ウォーリアによる被害が減ると良いのですが」
「もう少し戦闘データがほしいのが本音かな」
死ねと言いたいのをこらえる。
本当に此奴は。
議長が此奴を制御できているのは良かった。此奴が敵に回っていたら、何が起きるか考える事すら恐ろしい。
とにかく会談が終わったので、休憩する。
第八艦隊と連動して動くようになってから一期が過ぎた。
後方での制圧作戦は順調で、既に40億ほどの星系の完全制圧に成功したそうだ。
残り半分。
それも殆どは無人星系で、敵艦隊の排除を優先したから、後は制圧よりも調査と支援拠点の設立が主体になるそうだ。
既に取り返した惑星などにはテラフォーミングが開始されていて。
其処を母星としていた種族の帰還計画が開始されているらしい。
ミランとしてはそれらは好ましいが。それはそれとして、第八艦隊が極めて好戦的なので。
楽をする訳にもいかなかった。
アラートが鳴る。
出撃だな、これは。
前線に敵艦隊が次々ときているが、報告通り最新鋭艦の筈なのにテクノロジーが進歩している形跡がない。
増えた分だけ叩いておく。
味方の兵器工廠も稼働を開始しており、補給地点としての要塞艦も機能している状態である。
とりあえず、心配は無い。
支援者の戦線全域で見ると、戦術的な敗北は時々あるようだが。
指揮官が気を抜いていたようなケースばかりで、敵に上をいかれたような事は滅多にない。
また、一期殆ど大きな戦闘をしなかった事もある。
味方艦隊は順調に損害を補填し、更にはバージョンアップを続けているようだった。
戦艦オッドフォードが動き出す。
自室から出ると、ミランはクルーに手を叩いて声を掛ける。
「例の通りメルティール中将は苛烈な用兵をします。 相手が如何に弱体化し始めているからと言って、今回も乱戦になるはずです。 それぞれゆめゆめ油断はしないようにしてください」
「了解!」
「それでは、戦地に到着し次第、出撃します!」
「おおっ!」
ウォーリア四型に乗り込む。
最前衛で第八艦隊の旗艦が突貫していくので、周囲の護衛の艦艇はヒヤヒヤしているようだ。
如何に戦闘力に特化したタイプの旗艦とは言え、数十万隻の敵艦隊には絶対に勝てないのだ。
恐らくメルティール中将が最前衛に出るのは、味方をそれだけ必死にさせるため。
司令部の適切な指示があれば、更に破壊力をふるえるタイプの司令官なのだろうとミランは思う。
早速出てきていた敵艦隊との乱戦が開始される。戦地に到着したオッドフォードから、ミランは出撃。
親衛軍ウォーリアがいないな。
ここしばらく、殆ど姿を見ていない。
通信を傍受した所によると、指導者は完全に疑心暗鬼に陥っているらしく。
更には五世代型の侵略者を作ろうとしてうまくいっていない。
立て続けに四世代型から「裏切りもの」が出ている事もあり、四世代型の侵略者を作る気も失せているようで。
属人的な兵器であるウォーリアの能力は落ちる一方のようだ。
今日も無人機ばかりである。
特に新造された艦隊は、力が落ちる一方であるのが分かる。
どうやら本当に、侵略者は破滅が近いらしい。
そうミランは感じる。
だからこそ。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
立て続けに四機のウォーリアを撃破すると、イーターをパルスレーザーで撃ち抜く。連射連射。
今ではイーターの方が脅威度が高い。
敵がウォーリアを使ってこなくなると、こちらもいずれ使わなくなるかも知れない。
どうしても属人的な兵器であり。
コスパが優れている訳でもないからだ。
味方艦隊の猛烈な砲火で、敵が次々爆発四散していくが。接近戦を挑んでくる敵を倒していくことで、その火力投射を更に効率的にする。
ミランは無言で、ひたすら敵を斬る。
親衛軍ウォーリアはもう出てこない。
中に侵略者の一般個体が乗っているウォーリアすら、まばらになりつつあるようだ。
妙な動きをしている敵艦も多い。
どれも侵略者の一般個体が乗っておらず、プログラムだけで動いているのかも知れない。
それに問題があるのだとすれば。
あの動きもまた、必然なのだろう。
何度か出撃と帰還を繰り返し、それが四度目に達した時点で、敵が引き上げ始めた。第八艦隊は今日も極めて苛烈な戦い方をして、時々ひやりとさせられた。
何しろ最前衛に旗艦がいるのだ。
今回も多数の被弾を受けており、位相変換シールドのダメージもかなり大きかったようだ。
火力が集中するのだから当然だろう。
メルティール中将は人気があるそうだが。彼女の座乗艦には乗りたくないという兵士も多いらしい。
ミランとしても分かるので、窘めるつもりにはなれない。
とにかく、戦後処理が始まる。
メルティール中将が、皆に話をする。立体映像で、愛くるしい笑顔を浮かべて話しているが。
あれだけ激しい用兵をしている人物と同じだとはとても思えない。
兵士達をねぎらう言葉は丁寧で。
ミランとしても模範的だなと思ったが。
ともかく、通信も終わったので、後は休むとする。残存している逃げ遅れた敵も、味方が十分に対処できるだろう。
何でもミランのキルカウントは、支援者の歴代記録のトップを更新し続けているそうで。二位の戦士と倍近くにまで開きつつあるそうだ。
それも興味がないので、それこそどうでもいいのだが。
兵士達がそれを喜んでいるので、邪険にも出来ない。
サインを求められる事も多いので。
ミランとしては、自室にこもることも多くなっていた。
休憩を済ませて、訓練をしようとしていると。
ハーネイ中尉が来る。
クーリアと少し話したそうで、嬉しそうだ。
「とにかく栄養状態がきちんとしているようで、どんどん背が伸びています。 きっと凄い美人になります」
「それは良かった。 壮健な友人と話せるのは良いことですね」
「はい!」
それで、と話を区切られる。
声を落とされたので、察して他の兵士が聞いていない場所に移動。
遮音フィールドも念の為に展開する。
「クーリアの学者としての下積みはほぼ催眠学習で終わったそうです。 本格的に学者になるとか」
「それは良かった」
「今、侵略者の文化研究に加わる調整をしているそうです。 他のアルカラルドの民とは別格の知性だそうで、私としても鼻が高いです」
侵略者の文化研究は、回収したDBの中身の解析が主な仕事だ。
実際文化の形態が似ている存在がやるのなら、更に効率は上がるだろう。
あの親衛軍NO4_733081ともよく話しているそうで。友人関係だと親衛軍NO4_733081に認識されているようだ。
クーリアは言葉を濁して、どう考えているかのコメントは避けているようだが。
あのパデラクスと同レベルの変人である。
確かに、染まるのは困りものだから。そうやって線引きを出来るのは良いことなのだろう。
「それともう一つ、アルカラルドⅠなんですが……」
「はい」
「故国が滅びました。 観測班によると、国家元首をはじめとした首脳部は全員他の国に処刑されたようです」
悲しそうではない。
同僚の兵士も、ハーネイ中尉を「高官のお手つき」くらいにしか考えていなかったようだし。
更には、その前には散々心身を蹂躙された相手ばかりだ。
同性の兵士もいたが、それらからも向けられるのは嫌悪と嫉妬。
高官のお気に入りで贅沢をしているらしいとか、ハニトラで取り入ったとか、そういう噂を流されていたらしくて。だったら代わってやるとなんども思っていたそうだ。
それらもあって、故国が滅んだことに、なんら感傷はないそうだ。
「「敵国」に対する徹底的な虐殺を何処の国でもしているせいで、この戦争で人口が元の10%程度まで落ち込むのは避けられないとか。 終わった後も、過去の技術に頼りきりで、新しいものを作り出したり、リバースエンジニアリングをする習慣がないアルカラルドⅠの住民は、原始時代に戻るしかないのだとか」
「こちらとしては、そうなることを選んだのは彼らだとしか言えません」
「……そうですね」
たまにミランも立場上聞くのだが。
まだ支援者は、亡命者の救出作戦を時々やっているそうだ。
だが、助けた亡命者がやっぱり選民思想に染まっているのは当たり前なので。まずはそれからどうにかしなければならないし。
要求を聞くと際限なくそれが拡大していくので。
ほとほとあきれ果てているらしい。
それでクーリアの立場が悪くなったら困ると、ハーネイ中尉はぼやく。
「私はもう大人だから、我慢できます。 でもクーリアが。 あんな良い子が、酷い目にこれ以上あうのは看過できません」
「……ならば、ハーネイ中尉が戦線で戦果を挙げて、同胞の失点を上回るほどの活躍をしてみせるのが一番でしょうね」
「分かりました。 この身が焼き果てるまで」
「いえ、必ずチームリーダーの指示に従ってください。 此処で戦死されたら、クーリアは一人になってしまいます」
頷く。
それでハーネイ中尉は敬礼すると、持ち場に戻った。
ミランはウォーリア四型のコンディションを見に行く。
アネカがハコトと相談していたので、何かと聞くと。最終形態型のウォーリアに出来ないか、考えているそうだ。
「現状でも最強やけど、やっぱり位相変換シールド積みたいな、思うてるねん」
「しかしそれだと、膨大なコストがかかると思いますが」
「それはそうなんですが、毎回ミラン大佐の戦闘は苛烈で、ミラン大佐もウォーリア四型も生傷が絶えません。 技術的に劣っている侵略者ですら出来る事なので、こちらもやるべきかと思います」
確かにその通りだが。
そもそもウォーリア四型の時点で、とんでもないハイコスト機だ。
ウォーリアに出来る事は知れている。
戦艦などと渡り合うことは絶対に出来ない。
この兵器の元になった創作では、戦艦を落としたりしているようだが。現実の戦艦相手にウォーリアは絶対に勝てない。
トップエースであるミランですら無理だ。
様々な条件が重なった上で、ダメージは与えられるが、それ止まりだ。
そんな兵器に、これ以上の高コストを掛けていいものか。
そもそもとして、戦艦に積めるような巨大な反物質炉と、ウォーリアに積める反物質炉では、パワーが違いすぎる。
そして高性能の炉を開発する事が出来たなら。
まず積むのは、戦果を挙げている戦艦だ。
それはミランにも分かるので、身内びいきとも思える二人の発言には、あまり賛同は出来なかった。
ともかく、その辺りは二人に任せる。
ミランとしては、後二期。
味方の工作が成功するのを信じて、この戦線で戦い続ける。
それだけだった。
瓦解し始めた侵略者に、それを加速させる特大の仕込みが始まります。
その間、ミランは前線でただひたすら戦いを続けることになります。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
-
詳細なマシンデザイン
-
圧倒的な武力による蹂躙
-
緻密な人間ドラマ
-
種族や文明の描写
-
近接した力量のライバルとの死闘