王道ロボット戦記小説、血巡る戦場の記憶 作:dwwyakata@2024
侵略者に仕込まれた特大の爆弾が炸裂します。
侵略者の自動兵器と、侵略者の一般個体による同士討ちの始まりです。
侵略者の指導者は、ついにネットワークの脆弱性を認めなかった。それに加えて、侵略者の指導者は、ついに第四世代の侵略者の一般個体も親衛軍も、再生産をするつもりがない様子だった。
これを逆利用する。
パデラクスは、侵略者のネットワークに、既にかなりの浸透工作を成功させており。ついにそれを全土でまとめて動かすことに成功。
始まる。
侵略者を滅ぼすのには、二つの障壁がある。
一つは距離と領土の広大さ。
衰えたりといえど1000億を超える星系を抑えている相手だ。
幸い調査の結果、大小マゼランからも追い出されたことが分かっているので、天の川銀河の外に侵略者が侵攻していることはない。
天の川銀河の侵略者さえ叩き潰せば全て終わりだ。
もう一つは膨大な兵力だ。
衰えきったとは言え、それでもまだ8000万隻以上の宇宙艦隊を有している。二億隻の艦隊を有する支援者とはかなり開きがあるが、それでも8000万隻だ。
例えばこの全艦隊が天の川銀河中枢に攻め込んできた場合、第一艦隊だけで対処できるかと言うと微妙だろう。
今はともかく、昔の侵略者の指導者は優秀な存在だった。
用兵や戦略に関しても優れていて、支援者の提督が何度も裏を掻かれて敗北するケースがあった。
そういう観点でも、8000万隻という大兵力の活用次第では、まだまだ侵略者は侮れないのだ。
この壁を崩すべく、準備を進めてきた。
既に統括議長の決裁も貰っている。
作戦開始だ。
議会につなぐ。
パデラクスは、大喜びしながら、げんなりしているクアーラ議長はじめとする支援者上層のお偉方に言う。
「というわけで、浸透工作が完了しました! 後はやるだけです!」
「こちらもどうにか間に合いましたね」
「は……」
パーミルトン大将が言う。
次の元帥候補と言われているパーミルトン大将は、前線での活躍が大きく、議会でも存在感が強い。
政治闘争で権力が決まる場ではないのが支援者の議会だが。
それでも軍はどうしても属人的になり。
更にはずっと侵略者との戦いが続いている関係上。
パーミルトン大将は、どうしても発言権が出てくる。
これに関しては。
パデラクスは、改善するべき案件だろうなとも考えていた。
「既に前線後方の星域は制圧完了。 ゲリラ戦などをしていた敵も全て排除を完了しています」
「よろしい。 すぐにでも仕掛けられますね」
「現時点で各艦隊の補給、補修、充足率などは十分。 三期でしっかりと第二次大攻勢の準備は整ったと言えます」
全軍の四割くらいを同時に動かすのが限界だともパーミルトン大将は釘を刺すが。
それでも8000万隻。
敵艦隊全部とほぼ同規模だ。
しかも老朽化と劣化が著しい侵略者の艦隊と比べて。こちらは常に最新鋭艦や最新鋭兵器にアップデートを続けている。
この間。無人ドローンの性能も、ついに敵を上回った。
長らく苦戦させられてきたいわゆるスウォームも、既にこちら側の無人ドローンが上回っている。
更には、前線での三期で、更に戦歴を重ねたミラン大佐の存在が、兵士達の士気を上げている。
文字通り侵略者殺しのいける英雄。
プロパガンダなんぞ必要ない、異常な戦歴が今でもその圧倒的な強さをデータで示しているのだ。
「では作戦の提示を」
「は……」
クアーラ議長の指示で、作戦本部が作戦を示す。
まず、パデラクスによる浸透工作により、敵に内戦を起こさせる。
意思のない侵略者の一般個体と、自動機械だけの敵で内戦なんて出来るのかというと、出来るのだ。
それを仕込んできたのである。
具体的には、侵略者の自動機械と、侵略者の一般個体で争わせることになる。
既に侵略者の自動機械の制御システムには、ハッキングを済ませてある。
翌日作戦などで、今まで集めてきた侵略者のセキュリティデータ。
これらが今でも全く進歩していないことは確認済みだ。
既に意固地になっている侵略者の指導者は、自分は完璧な存在なのだと喚き散らして、システムの改善も出来ていない。
否。
昔だったら出来ただろう事が、出来なくなっている。
如何に肉体を若い細胞で保ったところで(脳だけだが)、思考が完全に老い果ててしまっているのだ。
だからこそ、そこを叩かせて貰う。
「作戦開始と同時に、侵略者の自動機械が、侵略者の一般個体に襲いかかります。 そして侵略者の一般個体が全て消えれば、属人的な兵器は何の役にも立たなくなります」
「あの指導者が何か手を打つ可能性は」
「手を打っても何も出来ません」
指導者は、既に何も信用していない。
自分だけしか信じていない状態だ。
だから第四世代の侵略者ですら、連日大量に処刑して、再生産もしていない。各地で侵略者の生産システムが動かなくなり、劣化しているのは超光速通信で確認されている状況である。
更に此処で機械まで勝手に動き出す。
指導者が自分で作った機械がだ。
それも指導者が裏切り者が出たという事で、嫌い抜いている第四世代の侵略者を始末するべく動く。
これをとめる可能性は、ない。
最も悲観的な予想でも、仮にとめようとしても、既にネットワークの実効支配はこちらにあるのだ。
つまりとまらない。
「自動機械による殺戮が、侵略者を一気に大混乱に落とします。 それに乗じて、まずは前線に張り付いている敵を全て叩き潰します。 この時点で、敵の一割から二割が消滅することとなります」
「続きを」
「は。 前線での戦闘が完了し次第、七つの戦略的目標に向けて、侵攻作戦を開始します。 一度に七つを落とすのは不可能なので、一つずつを、時間を掛けて落としていくことになります」
戦略目標は。
ブラックホール。それも大きなものからだ。
ブラックホール展開機で、膨大な資源を提供しているのは、敵味方同じ。これを抑える。
七つのブラックホール展開機を落とす事により、侵略者はその生産能力の45%を失うことになる。
同時に、全戦線で少しずつ戦線を押し上げる。
敵の大反攻作戦が開始される可能性が当初懸念されたが、調査の結果既にその力は無いと分かっている。一応、用意されている予備戦力と、各前線にいる艦隊で対応は可能だ。
「七つの戦略的目標を落とした時、彼我の戦力差は現在より更に拡大することになるかと思います。 その過程で、更に四十の種族の母星を奪還できるかと」
「楽観的目標では、そうなるわけですね」
「いえ、最も悲観的情報で、です。 仮に敵が全軍をまとめて一カ所にぶつけてきた場合も、こちらでは対応できる準備をしています。 各艦隊、各軍団をまとめている指揮官が、勝手に突出するというような馬鹿な真似でもしない限りは、問題は起きません」
作戦本部がそれを告げた後。
更に、安心材料を挙げる。
作戦の中核には、第四艦隊が当たる。
パドフ中将の艦隊だ。
今回は、パドフ中将と、メルティール中将の第八艦隊が、超巨大ブラックホールを奪還する作戦に加わる。
敵が主力を投じてくるとしても此処で、この二人。
更には、今議会に参加しているパーミルトン大将が侵攻作戦の前線部隊の指揮を執る。負ける可能性は低い。
そういう説明を受けて、クアーラ議長は少し考え込んだ。
「念の為、予備部隊を増員してください」
「は……。 予算がかなり逼迫しますが、よろしいので」
「今回は侵略者との戦いに決着がつくか否かの戦役です。 予算の赤字については、来期以降に少しずつ補填しましょう」
「分かりました」
一応、三期分で充足させた予算はある。
これはクアーラ議長がその手腕を発揮して、貯金として作っておいたものだ。これも切り崩せば、どうにかなるだろう。
予備戦力を更に増強することで。
最も悲観的な状況を、更にマシに出来るだろう。
「敵の超巨大戦艦はまだ健在の筈。 対応は出来ますか」
「問題ありません。 既にスペックは判明しており、出てきたところで真正面から叩き潰す準備も終えています」
「分かりました。 それでは、作戦を開始してください」
「了解!」
この作戦は、七度に分けて行われる。今回は、その第一回だ。
侵略者の指導者の肉体については、現時点では放置で構わない。あれは今や、侵略者をむしろ弱体化させている戦犯だ。生きていた方がむしろありがたい、という意見で一致している。
パデラクスも同意見だ。
元は同じ科学者であったようだが、今ではすっかりボケ老人だ。ああはなりたくないと思う。
もしも能力に衰えが出てきたり。
思考に柔軟性を欠き始めたら。
素直に引退しよう。
そうも思った。
ああいう悪例を見ていると、そう考えざるを得ないのである。実際問題、あそこまでの老醜はさらしたくない。
変人と思われていて、その自覚もあるパデラクスだが。
科学者としてはプライドもある。
あそこまで落ちるつもりはない。
それが素直な本音だった。
連絡が来る。
親衛軍NO4_733081からだ。
一応まだ無害なロボットに入れたままだが、そろそろ肉体を与えてはという意見が出ている。
以前の作戦で、本来の侵略者の遺伝子データが手に入った。
再現したところ、確かにアルカラルドの民やアポカラプスの民とそっくりで、肌の緑みがない。
逆に言うとそれしか違わない。
なお、幼児を育成して調べているが、環境でかなり変わる生物で。やはり上昇志向と好戦性が強い特徴はあるが、催眠学習を受けるとある程度押さえ込めるようだ。
しっかりとした催眠学習で、その歪んだ選民思想を押さえ込めば。
共存は可能かも知れない。
ただし、当面は位相変換シールドで封鎖した人工惑星で実験を行い、その結論をしっかり出してから、どう接するかを決める。
侵略者……地球人が天の川銀河にもたらした災厄はあまりにも大きすぎる。
支援者の中にも、怒りと反発の声は大きいのだ。
滅ぼしてしまえと言う声もある。
支援者の理念に反することだ。
いっそのこと、再生した地球人を最前衛に侵略者と戦わせろと言う声まであるくらいである。
それほど、買っている恨みが深いのである。
パデラクスもそれらの意見については分かりすぎるほど分かるので、何もいうつもりはない。
「パデラクス、あの屑ボケ老人にとどめを刺す作戦を開始するって?」
「ああそうだよ! ま、七回に分けて作戦の第一段階をやることになるから、すぐには奴は滅ばないけど」
「それは素晴らしい。 で、人間としての肉体ほしいなあと思うんだけど」
「それは悪いが、まだ与えられない。 今育てている純粋種の地球人の子供が、どう育つかを見極めないとね。 最悪二十期くらい後になるんじゃないのかな。 データが10万はほしい」
ま、統計としては当然か。
からからと、親衛軍NO4_733081は笑う。
此奴としては不満はないようだ。
一方で、不満を口にしているやつもいる。
親衛軍NO3_009116だ。
「いっそのこと、私が子供達を指導してもいいのだがね。 肉体をすぐによこせとまでは言わないが」
「流石にそれはハイリスクだなあ」
「私もそろそろ人間的な欲求を満たしたいという本音もある。 うまい飯に美しい女性との逢瀬、酒も飲みたい。 あの指導者がナノマシンに仕込んでいた高濃度過ぎる快楽よりも、そういった自然な当たり前の欲求を満たしたいのだよ」
まあ、此奴はそういう奴だ。
今は指導者に仕込まれた「設定」が抜けてきているようだが。その結果、どんどん「人間らしく」なってきている。
野心的で攻撃的。
そして隙さえあれば権力を狙う。
危険な奴だ。まだ此奴に肉体を与えるのは早いだろう。
「クローン再生した子供らの分析が終わるのをまだ待って貰わないと困るね。 君はただでさえ取り扱い厳重注意で、お達しが出ているからね」
「ええいままならん!」
「君がそれだけ野心的であるのはばれているってことだよ。 実際問題、支援者の議会に食い込みたいし、議長になりたいとまで思っているだろう?」
「それは男子たるもの、生まれたらそう思うのが本能のようなものだ」
確かに上昇志向が強い種族は他にもいる。
好戦的な種族もいるし、排他的な思想の種族ですら支援者に加わっている。
だが、地球人はそれらの総合値が高すぎる。
特に親衛軍NO3_009116のような輩は、絶対に政治家にしてはならないし、権力を得る立場に置くのもまずい。
最悪、機械を強制停止して、黙らせろ。
そういう密命までパデラクスは受けているほどだ。今の時点では、其処までするつもりはないが。
「とにかく今は駄目。 時期を待つんだね。 クローン生成した子供らが、今催眠学習を受け、少しずつ成長している。 問題行動をそれでも起こす子供もいるし、まだこちらとしても接し方が難しい。 支援者のあり方は、君も学んだろう? 地球にいた頃の君たちが、まんま乗り込んで荒らしたら、また戦争になるよ」
「確かに政治闘争を排除した議会というのは衝撃的だったが……」
「君たちの常識がおかしいんだよ。 少なくとも宇宙に進出する種族が持つ常識ではないね」
そう言われると、流石に親衛軍NO3_009116もむっとしたようだが。
言い返せないようで、黙り込んでしまった。
さて。一旦会話は切る。
ハッキングチームが既にプログラムを走らせ。
侵略者の全域で、異常が発生し始めていた。
「各地で同士討ちが始まっています!」
「最初は一方的でしたが、侵略者の一般個体が、無言で反撃を開始したようです!」
「指導者はどうしている」
「喚き散らしているようですが、それだけです」
とりあえず、第一段階は成功だな。
そうパデラクスは思った。
此処からは、前線の軍人の仕事。
パデラクスは、あくまで裏方として見守るだけだ。
第四艦隊と第八艦隊が合流。それに加えて、実績のある艦隊と提督が、次々に合流してきた。
規模は三百万隻ほど。
これに加えて、最新鋭艦が配備される。
敵のメタトロン級に備えたものだ。正式にそう敵が呼んでいる訳ではなく、敵側では「最大親衛艦」と呼んでいるそうだが。
もうメタトロン級が定着しているので、それでいい。
こちらも全長40㎞という、規格外サイズの戦艦だ。
全部で三隻がロールアウト。
最終的には十五隻がロールアウトするらしい。
これから各方面軍司令官は、これを座乗艦にするとか。
今回は、この「方面軍旗艦」に、パーミルトン大将が乗り込む。
内部は旗艦級戦艦以上の「移動する巨大都市」であり、乗り込んだミランは度肝を抜かれていた。
前線で三期戦い続けて。
それで色々な準備がされていたが、その結果がこれだ。
一隻に200万も兵員が乗り込んでいるらしい。落とされることは絶対にあってはならないとされているそうだ。
動物みたいな乗り物に乗ってきたメルティール中将と、カートで移動してきたパドフ中将が談笑している。
それを見て、ハーネイ大尉が遠い目をしていた。
「パドフ中将が名将で理性的な方だっていうのは分かっているんですが、どうしても慣れません。 今もメルティール中将がぱくっと食べられてしまわないか心配で……」
「パドフ中将は出身惑星の生物しか受け付けないらしいので、大丈夫ですよ」
「……ハイ」
ハーネイ大尉、中尉から昇進したが。少し背が伸びて、雰囲気も変わった。前より「大人っぽくなった」らしい。
ミランにはよく分からないが、多少体にメリハリがついたそうだ。
ちなみに、適当なタイミングで退役して、今育成が始まっている純地球人の子供を養子にとるそうだ。
アルカラルドⅠからの亡命民でも、それをやりたがる者があまりいないそうなので。
データを取る観点でも、是非と頼まれているのだとか。
ミランとしてはとめるつもりはない。
また、軍を退役したとしても、ミランとは連絡を取りたいというので、それについても善処するつもりだ。
ミランとしても、あの腐敗しきったアルカラルドⅠの民に、こんなに話が出来る者がいるとは思わなかったし。
今では立派な相談役である。
艦橋に出向くが、其処だけでちょっとした大型ビルほどもある。
内部で、久方ぶりにパーミルトン大将と会う。
まず最初に、ミランは准将に昇進。
今回、オッドフォードから代わる形で、新しくミランには旗艦級戦艦カタストロプが与えられる。
ただこのカタストロプ、普通の旗艦級戦艦と違って、人員は千二百名ほど。
艦長は大佐に昇進したキッホク元少佐が務める。
元のクルーに加えて、特務が200名、更に調査班や工作班が主に乗り込む事になる。
旗艦級戦艦としては初の、自動化を主体としている艦艇で。
その巨大さと裏腹に、自動化でどれだけ旗艦級戦艦を動かせるかのプロトタイプとなるそうだ。
オッドフォードは、第三艦隊に配属されて、其処で別の艦長とクルーが動かす事になる。
ミランが座乗艦にしていたということで。
乗る兵士達は喜んでいるのだとか。
辞令を受けて、それで准将に。
これで、歴代でも数人しかいない、支援者の特務准将だ。しかも純粋戦士として、准将まで上がったのはミランが初めてらしい。
敬礼して、辞令を受け取ると。
中将級の司令官達が集まった末席に移動。
ハーネイ大尉と、アネカとハコトも同席させて貰っているが、今回の作戦での発言は出来るだけしないようにと、既に釘は刺されていた。
「今回の作戦では、敵の混乱を前線の各艦隊で抑える。 基本的に、同士討ちしている敵は放置し、勝った方を叩いて消し去る。 それだけだ。 それとは別に、この機動艦隊三百万隻、更に支援部隊五百万隻は、敵地に奥深く侵入する」
最前衛は第八艦隊、そして今回、ついに断り切れなくなったパドフ中将が大将に昇進し。前衛部隊の総指揮を執る。
それを説明すると、パドフ中将改め大将は、そうですかとだけ言った。
あまり嬉しくはなさそうだ。
パーミルトン大将が続ける。
「この八百万隻は、私が指揮を執る。 作戦の目的は、この超巨大ブラックホールの奪取。 更には恒久的な橋頭堡の確立である。 このため、要塞艦を現地に派遣。 制圧後は、補給路も確立する」
「しかし、これほど敵の奥地に入り込むと、補給が難しくなるのでは」
そう第二十三艦隊のケーニス中将が言う。
彼も今回の作戦に参加する一人である。
パーミルトン大将は、昔は意固地で知られていたが。何度も大きな作戦に参加して、考えも変わったらしい。
丁寧に説明してくれる。
「そのために八隻の要塞艦が同道する。 これらを軸にして、ワープ阻害装置も展開して、敵の攻撃を防ぐ仕組みを作る。 そして敵が効果的な反撃を出来ないうちに、前線を押し上げて、この周囲を安定させる」
「八隻も!」
「三期、損害を補填していただけではない。 N176ブラックホール星系を奪取した事もあって、生産力もそれだけ上がったと言うことだ。 今回は同規模のブラックホールを狙うことになる。 今回の作戦で、事実上侵略者に対する勝ちを決める。 総司令部は、そう考えているようだ」
おおと、歓声が上がる。
ただし、衰えたりとは言え敵もまだ相応の艦隊が残っている。
油断だけはしてはならないのだが。
「ミラン准将」
「はい」
「君には、特務として最も厳しい任務に当たって貰う。 やはり今回狙うM33ブラックホールには、大型のブラックホール展開機と、要塞化された人工惑星による人工星系がある。 このうち、展開機と一体化している兵器工廠を落として貰う。 以前のN176ブラックホール星系と比べて、敵地の奥にあるため、恐らく更に強力な要塞化が施されていると見て良いだろう」
「分かりました」
ただ、それを落とせば。
またぐんと侵略者の残る力を削ぐ事が出来る。そうすれば、戦争が終わるのも早くなるのだ。
指導者はガン無視で構わないらしい。
これは、指導者の存在が、むしろ今では侵略者の足かせになっているのが要因であるらしいのだが。
それについてはミランも同意見だ。
あれはもはや。
思考する災害だ。
亡命してきた親衛軍が、口をそろえて悪口を言っているというのも大概である。徹底的に逆らえないようにしていた存在が、それでもこれほどに反発していたのだから。
会議が終わって、新しく支給された旗艦級戦艦に移る。
特務の准将は支援者の歴史でも少なく、ただし旗艦級戦艦を支援用に与えられていたらしいから。
これは前例のある事らしい。
ドッグを見て回るが、あまり広くはない。14㎞の巨艦だが、戦闘特化の船だ。人員も極限まで少なくしている。
ただし、ウォーリア四型の支援用装備や物資はしっかり備蓄してある。
何度壊れてもへいき。
そういう勢いだ。
結局、最終的にウォーリア四型で出撃することになった。ハコトとアネカが散々ごねたのだが。
ミランが乗り気ではなかったことや。
やはりウォーリアをこれ以上強化しても戦果は望めないこと。
いずれ位相変換シールドを当たり前のように装備できる時代が来るとしても、今はそうではないこと。
それらが要因で、ミランの乗機は当面これになりそうだ。
艦橋にも顔を出しておく。
戦線で、敵が殺し合いをしている。味方同士で殺し合っている有様は、侵略者の末路を示しているかのようだ。
各艦隊が動き出す。
あれらは放置だ。
あちらも、支援者の艦隊に興味を示している様子がない。
目の前の排除対象の排除で手一杯なのだろう。自動機械の方が優勢のようだが。それでも誤差だ。
仮に相手を殲滅したところで、其処を支援者の艦隊に徹底的に蹂躙されるだけである。
第八艦隊を先頭に、敵の資源ブラックホール星系奪取作戦が開始される。
合計七回の奪取作戦が終わった頃には、どう悲観的に見ても侵略者は半身不随になっている。
その予想は、間違いではないだろうな。
そうミランは思った。
※侵略者の内戦
もしも侵略者に意思があって、それぞれの個体が動くような状態であったら、この作戦はとれなかったでしょう。指導者の手を離れた存在が、無数の国家を作り上げ、それらが壊滅的な殺しあいを開始していたでしょうね。
指導者が完全に思考停止している上に、その人形としか作られなかった存在達だから仕掛けられた罠。
そういうものです。
人形は所詮、人形なのです。
感想評価などよろしくお願いします。励みになります。
本作にどういった要素がほしいですか。要望があれば遠慮なくどうぞ。
-
詳細なマシンデザイン
-
圧倒的な武力による蹂躙
-
緻密な人間ドラマ
-
種族や文明の描写
-
近接した力量のライバルとの死闘